1 / 79
第1話 超久々のレベルアップ
「よしゃあっ! これで30レベっ! 新スキルきたーっ!! このまま深層行ったるぞ!」
「おい、あんまり大きな声出すのは止めとけって――」
ふっ。青いな。
レベルが30になった所で次の階層にはもっと危険なモンスターがうじゃうじゃいるのさ。
むしろレベルアップは死ぬ可能性を高める事象。
気が大きくなってすぐ金になるモンスターを狙うなんて……愚の骨頂。
ダンジョン探索者としての長生きのコツは欲を出さず、コツコツと店や会社から受けてるノルマ素材だけを集める事なのさ。
――だからそんな憐れみの目で俺の事を見るのやめてくれるかな!?
10年間このFランク探索者、新米探索者向けダンジョンに通い続けて、しかもこんだけモンスターを倒してもまだレベル【9】の俺をそんな目で見ないでくれ!
俺だって探索者になったときは大手の会社に就職する事を夢見て頑張ったさ、あんたみたいにキラキラしてたよ。
でもレベル上がんねぇんだよっ!!
就活も失敗したよっ!!
いい素材手に入れらんねえから昇給もボーナスもねえよっ!!
「――あの、レベルアップおめでとうございます」
俺は喉奥から出てきそうなやっかみの言葉をぐっと飲み込んで、憐れみの視線を向けてきた若い探索者に祝いの言葉を掛けた。
「え? ど、どうも」
「まさか、あの万年Fランクの【永遠の新米おじさん】が……。今日は雪でも振るんじゃないか?」
失礼にもほどがあるだろっ!
いつもならガン飛ばして唾でも吐き捨てて小言を言ってやるところだが、こいつらは運がいい。
「これからも頑張ってください。はは」
「あ、ありがとうございます。じゃあ俺達はここで……。失礼します」
俺が精一杯の笑顔を送ると、どっかの会社の探索者達はそそくさとその場を去った。
「ふぅ……。レベルアップねぇ。……ふふふふふ」
レベル。レベルアップ。
いつもなら嫌い過ぎて聞くのも嫌な言葉。
だけど、今日、この時だけは俺もこの言葉が好きになる。
「『ステータス』」
【レベルアップまで残り僅か。残り必要経験値1】
世界にダンジョンが現れてから表示が可能になったこのステータス画面。
この必要経験値の左側に2年ぶりに【レベルアップまで残り僅か】の文字が。
いやぁ、これは笑いも漏れてしまいますわな!
「よし。早くコボルト殺してレベルアップしてやるか。待ってろよ店長。約束通りボーナス貰ってやるからな」
『レベル10になったらボーナスをくれてやる』。
店長との約束を思い出しながら、俺は辺りを見渡してコボルトを探す。
「いたっ!!」
「がぁっ!!」
剣とかの装備をしていない俺を狙って岩陰からコボルトが飛び出してきた。
コボルトは獣らしい素早い動きで俺の背後に回ると、肩に噛み付いてきた。
「ぐ、ううあああああああああっ!!!」
俺はその攻撃を敢えて受けて、コボルトごと体を地面に叩きつけた。
普段はヒット&アウェイで長時間掛けて1匹倒すけど……今日はレベルアップで全快ボーナスがあるんだよなあっ!!!
「う、ぐ!?」
「いてぇ……けど、残念てめぇを倒せばこれ治るんだよ!!」
怯まない俺に対して動揺が隠せない様子のコボルトを俺は右の拳で何度も何度も殴った。
貧乏探索者は素材の品質にもこだわる。だからこそのステゴロ。
「10年間鍛え続けた俺の喧嘩殺法を舐めんなっ!!」
「ぐ、お……」
コボルトの頭にDEATHの文字が浮かぶ。
さぁてこの後はお楽しみのレベルアップの時間だ。
『レベルが10に上がりました』
来た来た来た!
頭の中に流れるこのアナウンス!
仕組みは分からんけど、スキルとレベルアップの時に流れるこの声を俺は待ってたんだよ!
『条件を満たしました。スキル【大器晩成】が覚醒し――』
「うわああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
アナウンスを遮ってけたたましい声がダンジョン内に響いた。
声からしてさっきの探索者か。
一体どこからこの声が――
「ってそっちは侵入禁止のはず……。あーこれが倒れてたのか」
ここは洞窟型ダンジョンの開けた場所であり、分岐点。
いくつかの道がある中には俺が探索者になったときからずっと落石の危険があるとかで侵入禁止の道があった。
立て看板が倒れているからきっと間違って入ってしまったんだろう。
「仕方ない。一応年上の探索者っていう立場だからな。ま、やばかったら逃げるか」
俺はレベルアップによって癒えた体を起こすと、駆け足でその道に進むのだった。
あなたにおすすめの小説
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!
IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。
無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。
一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。
甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。
しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--
これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話
複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
『今日も平和に暮らしたいだけなのに、スキルが増えていく主婦です』
チャチャ
ファンタジー
毎日ドタバタ、でもちょっと幸せな日々。
家事を終えて、趣味のゲームをしていた主婦・麻衣のスマホに、ある日突然「スキル習得」の謎メッセージが届く!?
主婦のスキル習得ライフ、今日ものんびり始まります。
ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。