最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職

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第1話 超久々のレベルアップ



「よしゃあっ! これで30レベっ! 新スキルきたーっ!! このまま深層行ったるぞ!」

「おい、あんまり大きな声出すのは止めとけって――」


 ふっ。青いな。

 レベルが30になった所で次の階層にはもっと危険なモンスターがうじゃうじゃいるのさ。

 むしろレベルアップは死ぬ可能性を高める事象。

 気が大きくなってすぐ金になるモンスターを狙うなんて……愚の骨頂。

 

 ダンジョン探索者としての長生きのコツは欲を出さず、コツコツと店や会社から受けてるノルマ素材だけを集める事なのさ。



 ――だからそんな憐れみの目で俺の事を見るのやめてくれるかな!?



 10年間このFランク探索者、新米探索者向けダンジョンに通い続けて、しかもこんだけモンスターを倒してもまだレベル【9】の俺をそんな目で見ないでくれ!


 俺だって探索者になったときは大手の会社に就職する事を夢見て頑張ったさ、あんたみたいにキラキラしてたよ。

 

 でもレベル上がんねぇんだよっ!!

 就活も失敗したよっ!!

 いい素材手に入れらんねえから昇給もボーナスもねえよっ!!



「――あの、レベルアップおめでとうございます」


 俺は喉奥から出てきそうなやっかみの言葉をぐっと飲み込んで、憐れみの視線を向けてきた若い探索者に祝いの言葉を掛けた。


「え? ど、どうも」

「まさか、あの万年Fランクの【永遠の新米おじさん】が……。今日は雪でも振るんじゃないか?」



 失礼にもほどがあるだろっ!

 いつもならガン飛ばして唾でも吐き捨てて小言を言ってやるところだが、こいつらは運がいい。


「これからも頑張ってください。はは」

「あ、ありがとうございます。じゃあ俺達はここで……。失礼します」


 俺が精一杯の笑顔を送ると、どっかの会社の探索者達はそそくさとその場を去った。


「ふぅ……。レベルアップねぇ。……ふふふふふ」


 レベル。レベルアップ。

 いつもなら嫌い過ぎて聞くのも嫌な言葉。


 だけど、今日、この時だけは俺もこの言葉が好きになる。


「『ステータス』」



【レベルアップまで残り僅か。残り必要経験値1】



 世界にダンジョンが現れてから表示が可能になったこのステータス画面。

 この必要経験値の左側に2年ぶりに【レベルアップまで残り僅か】の文字が。



 いやぁ、これは笑いも漏れてしまいますわな!



「よし。早くコボルト殺してレベルアップしてやるか。待ってろよ店長。約束通りボーナス貰ってやるからな」


 『レベル10になったらボーナスをくれてやる』。

 店長との約束を思い出しながら、俺は辺りを見渡してコボルトを探す。


「いたっ!!」

「がぁっ!!」


 剣とかの装備をしていない俺を狙って岩陰からコボルトが飛び出してきた。


 コボルトは獣らしい素早い動きで俺の背後に回ると、肩に噛み付いてきた。


「ぐ、ううあああああああああっ!!!」


 俺はその攻撃を敢えて受けて、コボルトごと体を地面に叩きつけた。


 

 普段はヒット&アウェイで長時間掛けて1匹倒すけど……今日はレベルアップで全快ボーナスがあるんだよなあっ!!!

 


「う、ぐ!?」

「いてぇ……けど、残念てめぇを倒せばこれ治るんだよ!!」


 怯まない俺に対して動揺が隠せない様子のコボルトを俺は右の拳で何度も何度も殴った。


 貧乏探索者は素材の品質にもこだわる。だからこそのステゴロ。


「10年間鍛え続けた俺の喧嘩殺法を舐めんなっ!!」

「ぐ、お……」


 コボルトの頭にDEATHの文字が浮かぶ。


 さぁてこの後はお楽しみのレベルアップの時間だ。



『レベルが10に上がりました』



 来た来た来た!

 頭の中に流れるこのアナウンス!

 仕組みは分からんけど、スキルとレベルアップの時に流れるこの声を俺は待ってたんだよ!



『条件を満たしました。スキル【大器晩成】が覚醒し――』

「うわああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」



 アナウンスを遮ってけたたましい声がダンジョン内に響いた。

 

 声からしてさっきの探索者か。

 一体どこからこの声が――


「ってそっちは侵入禁止のはず……。あーこれが倒れてたのか」


 ここは洞窟型ダンジョンの開けた場所であり、分岐点。

 いくつかの道がある中には俺が探索者になったときからずっと落石の危険があるとかで侵入禁止の道があった。


 立て看板が倒れているからきっと間違って入ってしまったんだろう。


「仕方ない。一応年上の探索者っていう立場だからな。ま、やばかったら逃げるか」


 俺はレベルアップによって癒えた体を起こすと、駆け足でその道に進むのだった。
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