最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職

文字の大きさ
34 / 79

第34話 ミディアムレアなハンバーグ

しおりを挟む


「神、お疲れ様です」

「お疲れ様です、あれ? 今日は1日ダンジョン潜るって言ってませんでしたっけ?」


 本日の閉店時間。

 俺は店長に今日の事を話す前に小鳥遊君と細江君を問いただす為に休憩室で2人を待っていた。


 昼休憩にでも、と思ったけど気にし過ぎて業務に影響が出たら悪いと思ってこの時間になってしまった。


 今日も店は混雑していたみたいで2人の顔からは疲労が見える。


 そんな2人にこんな事を聞くのは気が引けるけど……。


「お疲れ、あのさちょっと2人に聞きたい事があるんだけど……。遠藤良平って知ってる?」

「「えっ!?」」


 2人は男の名前を聞くと、顔色を悪くした。


 これはどういう反応なんだろうか? まさか本当に……?


「神、もしかしてあいつに会ったんですか?」

「小鳥遊君達の上司なんだよね。ダンジョンモールでここ最近話し掛けてきてて、それで今日ちょっと気になる事を遠藤が言っててさ……2人に地下の養殖場の情報を流してもらってるって――」

「そんな事してないですよっ! 僕も細江も今はここで誠心誠意頑張ってるんですから! な、細江――」

「昨日、電話で色々聞かれ――」


 小鳥遊君は目の色を変えて無実を証明しようとする。

 だけどそれとは反対に細江君から出た言葉は情報を漏らしたという事を肯定するような……。


 するといつも温厚な小鳥遊君は細江君の胸元を掴み上げ、細江君の目をじっと見つめた。


「細江、お前あんな奴に加担したのか? お前、向こうにいた時だってあいつにちょっかい掛けられて困ってただろ?」

「加担したつもりはないです! ただ、『今の仕事はどうだ』とか、『肉はどうやって仕入れてるんだ』とか聞かれて……俺、適当にそれとなく答えて、養殖場の事なんて一切喋ってないけど、俺との会話であいつが何かを知るきっかけが出来てしまったのかもしれません」

「あんなでも頭は切れるからな。多分自分の中で生まれた可能性を使って神に吹っ掛けてきた……。細江、とにかくあいつとは縁を切れ。もうお前とあいつは上司と部下って関係じゃない。あんなのに怯えた生活は止めろ」


 小鳥遊君はそう言って細江君から手を離した。


 今のやり取りを見て、前の会社で細江君は相当遠藤にいびられていた、いや、虐められていた事が想像出来た。


 優秀な新人を目の敵にするのは糞上司の十八番って聞くからな。


「神、すみません」

「細江君に落ち度はないって。それより、図星を突かれてくそ真面目に答えてしまった俺に問題があった」


 その場は重い空気に包まれ、沈黙が生まれる。


 折角店が昇り調子だってのに。俺何やってんだよ。


「おーい。まかない出来たぞ! 小鳥遊、細江早く来……宮下帰ってたのか、って何やってんだ男共だけで」

「……店長」

「なんだなんだ情けない声だして。宮下、お前もう32歳だろ。もっとこうどしっと出来ないのか? とにかく話があるなら聞く。勿論飯を食いながらな。さ、早く来い肉は冷めると硬くなる」


 俺達はのっそりと立ち上がると店のフロアに移動するのだった。





「なるほどなぁ。脅されて、提携を強要されてる、か。まぁいいんじゃないかそのくらい。なぁ一ノ瀬ちゃん」

「利益は出そうですし、生産の目途が立たないって分かれば勝手に撤退するかと。向こうからの要望での提携なら、たとえ商品が売れなくてもその負債は『佐藤ジャーキー』が持つのが妥当ですし。契約の際にちゃんとその辺り言質をとれば問題ないかと思います。まぁその時は私も店長も同席するので問題ないですよ」

「でもあんな奴の思う通りに進めるのは悔しいというか、結局弱みを握られてる事には変わりないですし……」

「宮下、向こうさんがやるだけやって満足してくれりゃあそれでいいじゃないか。大人の関係は時にドライじゃないと」

「そうですよ、弱みも今回の件が終われば利用されるものじゃないはずですし、気にすることないですよ。これはただのビジネスチャンス。割り切っていきましょう」


 俺や小鳥遊君、細江君の反応とは打って変わって店長と一ノ瀬さんが割とやる気で……なんかこう、気が抜ける。


「そんな事より、今日はハンバーグですか! 景さんのまかない飯はもうまかないの域を出てますよ!」

「一ノ瀬ちゃん……あんまり褒められるのは、ちょっと照れる」


 俺達の前に置かれたのは半熟の目玉焼きが乗った大判のハンバーグと真っ白なライス。

 デミグラスソースの香りとライスの香りの所為か、さっきまでのシリアスな雰囲気が嘘のように俺、小鳥遊君、細江君の腹の音が店にこだました。


「はっはっはっはっはっはっ!! 働き盛りの男はとにかく食って汗かいてりゃいいんだよっ! 今日は全員ビール1杯だけ驕ってやるぞ!」

「んっく! ぷはぁゴチになります店長!」

「一ノ瀬ちゃん、もう飲んでる。ふふ……」


 豪快な店長と一ノ瀬さん、それを見て微笑む景さん。


 もしかして、俺達ただの杞憂民だったのかもしんない。


「神っ! このハンバーグめちゃくちゃうまいっすよ! 小鳥遊先輩も食ってみてくださいよ!」

「……。うまいっ! コボルトの肉だからこれぐらいにレアにしてもいいって事か! 弾力があってステーキみたいに肉々しいっ!」

「はは、小鳥遊君大袈裟――。うんまあぁっ!!! デミグラスと溢れる肉汁が口の中で混ざって、なんかもうこういう飲み物自販機で売ってくんないかなあ」

「ふふ、宮下君が1番大袈裟」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!

心太黒蜜きな粉味
ファンタジー
※完結しました。感想をいただけると、今後の励みになります。よろしくお願いします。 これは、今まで暮らしていた世界とはかなり異なる世界に移住することになった僕の話である。 ようやく再就職できた会社をクビになった僕は、不気味な影に取り憑かれ、異世界へと運ばれる。 気がつくと、空を飛んで、口から火を吐いていた! これは?ドラゴン? 僕はドラゴンだったのか?! 自分がドラゴンの先祖返りであると知った僕は、超絶美少女の王様に「もうヒトではないからな!異世界に移住するしかない!」と告げられる。 しかも、この世界では衣食住が保障されていて、お金や結婚、戦争も無いというのだ。なんて良い世界なんだ!と思ったのに、大いなる呪いがあるって? この世界のちょっと特殊なルールを学びながら、僕は呪いを解くため7つの国を巡ることになる。 ※派手なバトルやグロい表現はありません。 ※25話から1話2000文字程度で基本毎日更新しています。 ※なろうでも公開しています。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム 前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した 記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた 村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた 私は捨てられたので村をすてる

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

処理中です...