最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職

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第54話 俺ポ●モンじゃねえんだけど!

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「おはようございます神様! 見てください、早めに着いたので武器もこの通りピカピカに磨き終わりました! 気合い十分です!」

「あのあの今日はどのダンジョンに侵入するんですか? 宮下さんがいるなら安心安全だし、出来れば昆虫系のモンスターがいるところにしませんか? 殺したモンスターを素材ではなく剥製にする許可を店長にも頂いて……いいですよお昆虫のモンスターは。足についたギザギザを1日中撫でるのなんて至福――」

「いやそんな事して楽しいのは一ノ瀬さんだけですから! っていうか何で2人がここにいるんですか!?」



 店は定休日、今回の休日の昼は細江君と2人でこっそりレベル上げ……の筈だったのに、何で約束を一切してない小鳥遊君と一ノ瀬さんがダンジョンモールで待ってるんだよ!



 まぁ小鳥遊君は向上心も高いし、細江君から話を聞いていた可能性もあるから分からんでもないけど……一ノ瀬さんは何で? もしかして今日一ノ瀬さんの剥製用モンスター集め回にならないよな? 大丈夫だよな? そんで1番肝心な細江君は?



「僕は細江から『彼女との約束忘れてたどうしよう。今度ばっかりはすっぽかせないよ』って今朝連絡が来て、じゃあ代わりに僕が行かせてもらうよって事で来ました。細江のやつ大分慌ててたから神様に謝罪の連絡するのはちょっと遅くなるかもしれないですね」


 KA・NO・JYO!?

 細江君、ちゃっかり彼女がいたとか……許せねえ許せねえよ。

 32歳の独身おっさん上司の誘い断ってきゃっきゃうふふとかこの世で1番重い罪で償ってもらわないといけない案件じゃん!

 謝罪? ふざけんじゃねえ! 着信拒否して非通知でイタ電しまくってやるよ!



 ……ふぅ。まぁそれは半分冗談だとして。

 細江君、俺に連絡するのが気まずくなってるかもしれないから後でさらっと俺はあんまり気にしてないって感じのメッセージを送っといてあげるか。



 若いもんね。彼女がいるのは当たり前当たり前。

 はぁー……妬ましい。



「私はたまたま2人が休みにしこしこレベル上げしに行くって話を聞いたのと前に店長と剥製の話をしててダンジョンのモンスターの死体を剥製に用に持ち帰るのはokって言質とってたので来ちゃいました! 平日は仕事で一緒にダンジョンに潜れないけど今回はいい機会だなって。前の会社の時はダンジョン探索イコール厄介な仕事っていうだけだったんですけど、2人と一緒でしかもモンスターの剥製を作れるなんてなったら……ぐへへ」



 一ノ瀬さんは口の端から溢れた涎を服の袖で拭うとにちゃあと笑った。

 盗み聞きからの合流。

 この人行動力のお化けかな?



「それでどこのダンジョンにしますか? レベル上げといっても一ノ瀬さんがいるならそんなに強いところはあれかなって思うんですけど」

「あっ! すみません。そうですよね。私が来たらそういった問題が出てきますよね」

「いや、あの、すみません。決して責めるつもりで言った訳じゃなかったんですけど……」



 真面目一筋って感じの小鳥遊君とあれな一ノ瀬さんの組み合わせはシナジーないっぽいな。



「そもそも景さんから強いモンスターのいるダンジョンは禁止って言われてるので、その辺に関しては一ノ瀬さんが気にしなくても大丈夫ですよ。侵入するダンジョンも事前に決めていた訳じゃないですし……今日はその昆虫系のダンジョンに行きますか」

「……いぃよっしゃあ! 宮下さん! あなたが神様って言われてる理由を私、今実感してます!」

「はは、大袈裟ですって」

「決まったなら早速侵入しましょう! レベル上げするなら敵は何より時間です」



 俺達は小鳥遊君に急かされて早足でダンジョンの入り口に向かう。



 なんかしっかりものと変態の温度差でどっと疲れた……。



 こりゃ今日は軽めに探索の早めに解散で家でビールだな。







「神様! モンスターが右から来ます!」
「りょ、了解」

「次は上! 下から土蜘蛛が4匹! 奥から弱めの溶解液が飛んで来ます!」

「2人とも頑張って下さーいっ!」



 ……このダンジョンやっばぁ。

 強いモンスターこそいないけどそこら中からうじゃうじゃ湧いて来るですけど。



 しかも蜘蛛、蛾、ムカデとか害虫系だらけで気分悪くなりそう。



 小鳥遊君の報告がなければ尻とか口から出るあのドロッとした液体を浴びる事にも……。

 ふぅ……ダンジョン選択しくじったわ。



「ふ、ふふふ! 滾るっ!」

「宮下さん、かわせぇっ! かわして右ストレート! 飛び上がって弱め弱め弱めのファイアボール!」



 俺が意気消沈してるのに小鳥遊君は不敵に笑いながらも楽しそうだし、安全な場所に隠れてる一ノ瀬さんは応援じゃなくてなんか楽しそうにいっぱい指示出してくるし、今更場所変えよなんて言えないよなぁ。



「宮下さんかわせぇっ!」



 ……一ノ瀬さん、俺ポ●モンじゃないんですけど。

 その指示の出し方は完全にサ●シじゃん。



 そんで右手にはカメラも持って……レベル上げする気なんてさらさらないだろ!
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