最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職

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第74話 ドリル式突破術

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「はぁ、はぁ、はぁ……削れないってこれ」

「鱗の下もそれなりに硬い、それにHPが尋常じゃない。パワーには自信があったんだどなぁ」

「脂肪が邪魔してるんじゃないか?」

「なんだとこのコボルト!」


 圭子が鱗を剥ぐ、俺、コボ、坂本さん、鈴木さんがその下を攻撃する。

 これをしばらく繰り返しているが僅かしかHPが削れない。

 フラストレーションが溜まるせいで『橘フーズ』の坂本って人とコボは喧嘩し出すし……。

 全滅するのは時間の問題か?


「もう一丁! 鈴木さん! 直之! いくよ、【雷閃】」

「はい! 【閃光】」

「圭子が諦めない限り俺もやるっきゃないか!」


 愚痴を一切言わず、圭子はドラゴンの背辺りの鱗をスキルと魔剣を使って剥がす。

 俺達はそこ目掛けて攻撃に出るが、そもそもドラゴンの尻尾攻撃や炎の息、それにでかい図体に似合わない俊敏さと爪による攻撃が邪魔でしょうがない。


 鱗は十数秒で再生する。

 それまでにこれを避けて攻撃に繋げるのは至難。

 このメンバーだから何とかダメージを与えられているけど、普通の探索者だったらノーダメで殺されるはず。


「ヤバい! 社長が俺の名前呼ばなくなったぞ!」

「脳筋過ぎて見捨てられたかもねぇ」

「何をっ!! まだだ……俺が会社に必要な人材ってとこを見せつけてやる!」

「その前に俺がダメージ与えて倒してやるよ!」



 俺が攻めあぐねていると、コボと坂本さんが真正面から突っ込んでいった。


 バカ、それじゃあ丸焦げにされるのが落ちだ!


「ぐがああああ――」


 案の定炎が吐き出されてコボと坂本さんを襲った。

 だが2人は避けるどころか突っ込んでいく。

 あれを突破する策でもあるのか?


「俺の爪の耐久度を舐めるなよ! こ、これくらいの炎だって切り裂けるんだからな!」


 吃りながら虚勢を張るコボ。

 おい声が震えてるぞ。


「だったらその爪を最大限活かせるように俺が特別に手伝ってやるよ!」

「ちょっ、まっ、HA☆NA☆SE!」


 坂本さんはコボの体を持ち上げると、高速のジャイアントスイングを始めて、そのまま炎にコボを投げ飛ばした。


「うあああああああああああっ!」

「爪を頭の上に! そんで体をドリルみたいに回すんだ!」


 坂本さんの無茶苦茶な指示が出るとコボはもうすがるようにしてそれに従う。
 するとコボの爪がグリグリと炎を2つに割き、自身もドラゴンへと向かっていく。

 ドラゴンはこの異常事態に逃げる、ではなくてより一層炎の出力を上げる。


 その場所から動かないのはありがたい。


「たぁっ!」

「はあぁっ!」


 俺と鈴木さんはドラゴンの死角から鱗の剥がれたところに駆け寄ると、同時に剣を突き刺した。

 あまり深くは刺さってくれないけど、切りつけるよりもこっちの方がダメージは大きい。


 初めからこうすれば良かっ――


「があぁっ!」

「くっ! こいつ……大人しくしろ!」


 俺達が剣を指したからなのか、ドラゴンは炎を止めて身をよじった。

 そしてコボはその隙にドラゴンの鼻の穴に爪引っかけて、中を攻撃。


 しょぼいけど初めての有利な状況。

 この勢いを殺さずいけるか?


「全員全力で肉を抉れっ! 私ももうそろそろスキルを――」


 こちらを見ていた圭子の目の色が変わった。

 あの顔、額に皺が寄るくらいの目の開き加減は初めて見る。

 圭子には何かヤバいものが見え――


「あっつ!!」

「大丈夫か? くっ、このドラゴン熱を発散させられるのは口だけじゃないみたいですね。一旦ここから降りて――」


 ドラゴンの体から熱風が吹き、俺と鈴木さん、それにコボも地面へと落とされた。


「……これ、何か溜めてるよね?」

「私達の攻撃じゃこれは止められない! 早く近くの階段に! 他の探索者には悪けど、あれが放たれたら私達はお仕舞いだわ! さあ逃げて!」


 圭子の合図で俺達は走った。

 次第に赤くなる風景、充満し出す熱気、そして……その原因であるドラゴンに向かっていく一匹のドラゴンと人影。


 あ、これもう大丈夫だわ。


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