最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職

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第77話 一件落着?

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「神、様?」



 天井付近で爆発したドラゴン。

 それに巻き込まれた神様。

 轟く爆音。猛烈な爆風。でも地上に吹くそれは、人を焼き尽くす程の熱もなければ吹き飛ばす程の勢いもない。

 高過ぎる天井がこんな風に自分たちを助けてくれるなんて思っていなかった。



「崩れてくる! 他の探索者に当たらないように破壊するわよ!」



 崩れた天井から落ちてくる岩々。

 圭子はそれを見て俺達に声を掛けた。



 でも俺とコボの足は動かない。

 それはそうだ。神様が、神様が自分達を助ける為に目の前で犠牲になったのだから。



「直之、危ない!!」



 自分の頭上に迫った岩を圭子が慌てた様子で砕いてくれた。

 圭子の頬には切り傷が……。

 ヒーリエを使ってあげなきゃ――



 ――パンッ!



 頬がヒリヒリとする。

 痛い。



「馬鹿っ!! 直之は救ってもらった命を無駄にする気!?」

「圭子……」



 痛みの原因は圭子のビンタだった。

 まさか圭子が俺に手をあげるなんて……。



「そっちのコボルトも主がいなくなったからって、ぼけっと突っ立てんじゃないわよ! あんたの主が守ろうとしたものを守ろうとしないテイムモンスターなんて野良と変わらないわよ!」



 コボはその言葉を聞くと瞳から涙を溢しながら歩き始めた。

 そして落ちてくる岩を鍛えられたその爪で切り裂く。


 俺よりも付き合いが長くて、しかも理性を保つのが難しいはずのモンスターがああやって動いてるのに俺は……



「コボ……お前だけいけないよな。神様の意思を受け継ぐのは……。はあああああああああああああっ!!」

「直之……」



 俺は誰よりも必死に岩を砕いた。

 そうする事しか、神様の死に報いることが出来ないか――



 ――ガラ



「まずいわ!! あれは1人じゃどうにもならない! 全員一斉攻撃の準備を!」



 一際大きな岩が落ちてくる。

 でかい。けど、これ位壊せないでどうする俺。



「うらあああああああっ!」

「直之!?」



 俺は飛び上がるとその岩に剣ではなく、拳をぶつけた。



「あの人みたいに、俺は強くなるんだああああああ!!!」



 ――ボキ



 骨の折れる音。

 激痛が襲う。

 それでも俺は手を引っ込めない。喚かない。絶対これは俺が、俺が……



「無茶し過ぎだって。景さんに怒られるのは俺だけでいいよ」



 岩が粉々に砕ける。

 俺の力じゃない。

 こんな事を余裕でやってのけるのはあの人しかいない。



「――いで……。神様!! 生きてたんですね!!」

「勝手に殺さないで欲しいんだけど……。まぁ、爆発が大袈裟だったから仕方ないか」



 尻もちをつきながら地面に着地すると、神様は困った顔で頭を掻きながら笑った。

 そうだよな。この人があれくらいでくたばるなんてありえない事だったよな。

「橘伸二は倒して気絶。最下層で水晶に触れて、計画通りテイムしたドラゴン達で各階層を占領。あとはこの状況を使って『橘フーズ』と交渉するだけ。おつかれ細江君」

「神様……。こちらこそお疲れさまでした! ただ、えっとその言い辛いんですけど……」

「ん?」

「私は『橘フーズ』の社長、橘圭一といいます。あのドラゴンを仕留めて頂きありがとうございました。無茶な勧誘は止めるようにと弟に命令させていただきます。直之の迷惑になるような事はしたくありません。それに、交際も続けたいので」

「え? 社長? 勧誘はしない? ……そんなことより交際を続けたい?」

「あの簡単に説明すると、俺の彼女は男性で。『橘フーズ』の社長だったって事です」

「え? え? 情報が多すぎて頭が追い付かないんだけど」

「と、とにかく『橘フーズ』はもう敵じゃないって事です」

「ええ。今後は直之の為……。ごほん、焼肉森本の為に助力させていただきます。ただ、その、私達にも生活がありますからダンジョンの占有というのはちょっと……」

「こちらの不利益になるような事に何もしないっていう契約してくれるのなら良いですけど……。発生装置も手に入れましたし。……っていうかこんなに簡単でいいのかよ!?」



 神様はあまりのあっけなさにぷしゅっと気が抜けたようで、その場に座り込んだ。



「大丈夫ですか神様」

「は、ははは。なんか、気が抜けて……。あ、なんかちょっと眠――」

「神様!?」

「なんだかんだHPがかなり減ってたみたいね。それにMPも。MPはガス欠状態になると意識を失うの。しばらく大人しくすれば元気になるわ」

「そっか。そういえばイベントは――」

「「社長!!!」」

「あんた達遅すぎるわよ! それに、もう話は済んだわ。帰るわよ」



 『橘フーズ』の人間が上の階層からぞろぞろと降りてきた。

 多分イベント中止の為に加勢に来た人たちだと思うけど、何もかももう終わった後。

 こっちの目的も果たしたし、結局もうイベントを注視して問題なし。



「全部終わったって小鳥遊先輩と店長に連絡するか。はぁ、券を配るだけの楽な仕事かと思ったら一番の外れくじだったかも……。あ、もうカメラ止めていいよ」



 俺は隅で丸くなりながらもカメラを担いでいたオークの元に駆けよると、放送を切らせた。

 一応店の放送の様子を見てから連絡入れようかな……って本チャンネルの放送もう終わってるな。

 コメントはどうなってるんだろ?



『ラブロマンスを見た』

『これは映画』

『一途な店員さん素敵』

『無茶する神はカッコいいけど、心配させちゃいかんな』

『走れ』

『女性の表情マジだったな』

『続き気になる』

『大胆な告白は主人公の特権』



「なにこのコメント?」
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