79 / 79
最終回 あの人の結婚式
しおりを挟む『それでは誓いのキスを』
「……あなた」
「……圭子」
『橘フーズ』との1件から半年。
焼肉森本と『橘フーズ』は協力関係を築き、【NO9】のドラゴン狩りは共同で行われる事になった。
また【NO9】の30階層以降のドラゴン狩りは他の企業も可能となった。
だが、危険な場所という事で、こちらで審査したものだけが侵入可能という条件が設けられた。
その審査や受付に掛かる人件費等は他の企業に出資してもらう事となり、焼肉森本は『橘フーズ』以外の企業とも関係を築く事となった。
その結果、コラボ商品や焼肉森本からの派生店舗なんていう話し合いも行われている。
そんな環境が徐々に忙しくなる中、空いた時間を利用して焼肉森本で細江君と橘圭一こと圭子さんの結婚式が行われていた。
同性だから籍は入れられない。
それでも結婚式だけは執り行ってあげたいと思った俺達は焼肉森本で簡易ではあるものの結婚式の準備をし、この日までこぎつけたのだ。
「……素敵」
「細江君、あの1件の後冷静にいろいろ考えてたけど……。遠藤とか小鳥遊君とか上司達が揶揄うんじゃなくて真剣に相談に乗ってあげたのが良かったのかもしれないね。その、俺達も間見て……」
「今はお店が忙しいから無理しなくていい。でも、落ち着いたらいろいろ考えよ」
「そうだね」
俺と景さんは式こそ上げていないものの籍は入れて、正式に夫婦となっていた。
ちょっと2か月前からは同棲もしていて、仕事でもプライベートでも一緒。
ずっと一緒なのは窮屈に感じるかなとも思ったけど、10年間もどかしい思いをしていたからか、景さんは自分の時間を削って俺といる時間を増やそうとしてくれる。
景さんは家では甘やかされたいみたいで、俺もそれも嫌じゃない。むしろいつも姉三谷過保護な景さんに甘えられるのは嬉しい。
「よし! そんじゃこっからは飲むぞ! 食うぞ! この日の為にとびっきりの肉を用意したんだ! 参列者も細江と橘の社長も存分に食ってくれ! 今日は俺の驕りだ!」
「お父さん! それじゃあ普通の飲み会に……」
「いいんです。私達はこうした場を設けてもらっただけで本当に嬉しいんです。本当にありがとうございます」
「……圭子さん」
「ほら! 小鳥遊先輩も神様も遠藤さんも弟君も飲んだ飲んだ飲んだ!!」
「いいわよ直之! 今日は無礼講! みんな! 飲んだくれるわよ!!」
豪快な夫婦は俺達の元にあったコップに酒を注いで、自分達も酒をあおった。
へべれけになっちゃってこの後用意してたケーキ入刀が出来なくなるとか無いよな?
「ふふふふ、2人とも楽しそうで良かった」
「そうだね。仲も良さそうだし」
「でも私達の方が仲いいよね。宮下君、ううん。要君」
「もしかしてもう酔ったの?」
「……そうかも」
景さんはそっとその細い手を俺の手に絡ませた。
俺もそれに答えるようにギュッと手を握る。
「俺、店にも、景さんにももっと恩返し出来るようにがんば――」
「景……」
「え?」
「私の事景って呼んで。恩返しよりそっちの方が嬉しい」
「……景」
「うん」
そういって景は目を瞑ってこちらを向いた。
周りが立ち上がってどんちゃん騒ぎしてるからって言っても、ここで催促なんてやっぱり酔い過ぎじゃ――
「私、もう待たない」
「ん!? ……景」
「続きは家に帰ってから。ふふ、これからもよろしくお願いします」
景は自分から唇を軽く触れさせると、悪戯に笑って見せた。
「あーっ!! なぁにあなた達!? 今日は私達の結婚式なのよ! イチャイチャするんじゃないわよ!」
「神様がそうされているなら……一ノ瀬さん! 俺達も!」
「それなら私家に帰ってから小鳥遊さんの身体を触ったり舐めたりしたいです。ぐへ、ぐへ……」
「神様の奥さんって事は女神様と呼び方を変えた方がいいかも? 他のコボルトにもそういう風に伝達しないと……ってあいつら喋れないか」
「遠藤さん、もっと飲んでくださいよ!」
「細江、お前俺を酔いつぶす気か!?」
「あっはっはっ! ようやく孫の顔が見れそうだな」
……殆どの人に今の見られてたのかよ。うっわはっず。
「え、えっと、よろしくお願いしますってことで……。さ、ケーキ入刀やるぞ!! 小鳥遊君手伝って!」
俺は景にだけ返答すると、雑に話を逸らしたのだった。
91
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(11件)
あなたにおすすめの小説
薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。
異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!
心太黒蜜きな粉味
ファンタジー
※完結しました。感想をいただけると、今後の励みになります。よろしくお願いします。
これは、今まで暮らしていた世界とはかなり異なる世界に移住することになった僕の話である。
ようやく再就職できた会社をクビになった僕は、不気味な影に取り憑かれ、異世界へと運ばれる。
気がつくと、空を飛んで、口から火を吐いていた!
これは?ドラゴン?
僕はドラゴンだったのか?!
自分がドラゴンの先祖返りであると知った僕は、超絶美少女の王様に「もうヒトではないからな!異世界に移住するしかない!」と告げられる。
しかも、この世界では衣食住が保障されていて、お金や結婚、戦争も無いというのだ。なんて良い世界なんだ!と思ったのに、大いなる呪いがあるって?
この世界のちょっと特殊なルールを学びながら、僕は呪いを解くため7つの国を巡ることになる。
※派手なバトルやグロい表現はありません。
※25話から1話2000文字程度で基本毎日更新しています。
※なろうでも公開しています。
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!
IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。
無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。
一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。
甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。
しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--
これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話
複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています
【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。
どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!
スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!
天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム
前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した
記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた
村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く
ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた
そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた
私は捨てられたので村をすてる
職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!
よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。
10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。
ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。
同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。
皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。
こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。
そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。
しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。
その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。
そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした!
更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。
これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。
ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
38話
わざとなのか誤字なのか...
『爪が甘いのよ爪が。』
爪 → 詰め
『詰めが甘いのよ詰めが。』
完結お疲れ様でした。
どこまでも駆けていけるストーリーなので丁度いい所で終わるのもありかもですが、個人的にはもっと読み続けたかった。
後日談とかコボ達の外伝とかあったらいいなぁ。
楽しい時間をありがとうございました!
完走おめでとうございます。
楽しく拝見してましたがもう終わりかと思うと少し残念です。
正直ようやく覚醒したチートでレベル11(劇中レベル2しか上がってなかった)のでまだ続くのだとばかり・・・・
まあ設定上成長速度(レベルアップ)が遅いのでレベル10までで30過ぎだから必要経験値の関係上、上がりにくくなるしそもそも現時点でドラゴン指先一つでダウンできそうですしね(笑)
魔王とか出ない限りレベル12以降は日常生活に支障きたすだけなのかも知れませんし(レベル10で千レベル11で二千とレベル毎に千能力値増えるし)終わるタイミングは今しか無かったのかな・・・
と色々考察しましたがお疲れ様でした。