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~真夏の遠足~
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セミの大合唱が鳴り響き、容赦なく照り付ける真夏の太陽の下、生物部一行は植物園を目指して大きな公園の中を歩いていた。
「暑い~」
「溶ける~」
アスファルトから立ち上る陽炎を見て順子はうんざり顔で丸山を見る。
「植物園まであとどのくらい?」と訊く順子に丸山があと少しと答えた。
「あと少しねぇ…ここからそれらしき建物見えないんですけど?」
疑わしい目になった順子に田中が「ここからなら、あと5分もかからわよ」と笑顔で言う。
「律ちゃん来た事あるの?」
順子の問いに律ちゃんと呼ばれた田中が頷く。
「この公園で私よく遊んでるから、大体どこに何があるかは知ってるよ」
「へぇ、そうなんだ」
田中律子(たなか・りつこ)は今年入った新入部員ではあるが、順子と同じ二年生である。お茶会がきっかけで入部したのだが、生物部としての活動を彼女なりに楽しんでいるようであった。
彼らが目指しているのは鶴見緑地の咲くやこの花館という植物園で、1990年に開催された「花と緑の万国博覧会(通称:花博)」のメインパビリオンとして建設された施設である。
今日は部員たちのレクレーションを兼ねた遠足の為にこの場所にやって来ていた。
「こんな大阪市内で万博があっただなんて信じられないよな」
よく手入れがされた木々や花壇を見ながら高橋が呟いた。
「今日、鶴見緑地公園に行くって言ったら、うちのババさまが懐かしいって言ってた」
「懐かしい?」
加山の話に藤原が首を傾げる。
「うちのババさまが若い頃、彼氏とデートで花博に通ったらしくて、遊園地みたいなのもあったって言ってた」
「何年前の話だよ…それ」
祖母世代の若い頃というのが想像が出来ず藤原が笑う。
「…少なくても30年以上前の話だと思う」
「俺達が生まれるずっと前の話かぁ…」
そんな話をしながら歩いていると、総ガラス張りの変わった形の大きな建物が見えてきた。
「——もしかしてこの建物?」
建物の横に広がる人口池を見ながら順子が訊く。
「そうよ、入り口はあそこ」
そう言って律子が池の側にある建物の一角を指し示した。
「助かった~、中、エアコン効いてるかな?」
そんな高橋に丸山が「中は温度湿度のコントロールはしてあるはずだから、炎天下の屋外よりは快適だとは思うけど、冷蔵庫みたいには冷えてないと思う」と笑う。
「ここは公園だし緑が多いから、夏の甲子園よりはマシだろうけど、暑いのには変わらないから早いとこ中に入ろうぜ…」
そう言った後、野球部にいた頃に比べれば軟弱になったものだと自嘲気味に笑う高橋に、丸山が頷いた。
入口で入館料を支払い中に入ると、炎天下の外に比べて一気に快適と感じる温度になったので、一同から安堵の声が漏れる。
「やっぱり外と全然違うね」
ほっとした様子のユウに空が頷く。
「…じゃあ、ぼちぼち回りますか」
館内案内のパンフレットを手にした丸山がそう言うと、見学コースの最初にある熱帯雨林植物室に歩を進めた。
「あ、丸先輩、あそこに咲いてるの蘭ですよね?」
熱帯雨林植物室に入った瞬間、入場者たちを出迎えるように咲いていた花を目にしたトキが丸山に話しかける。
「そうだね…花屋なんかで見かけるやつ以外にも、いろんなのが咲いてるね」
丸山はそう言うとトキは嬉しそうに頷いた。
見慣れない熱帯雨林の植物ばかりあるせいか、藤原が周囲を見渡しながら「熱帯雨林の植物って、なんか気持ち悪くね?」と呟く。
「気持ち悪い?」
その呟きを聞いていた加山が怪訝そうに藤原を見た。
「花は毒々しい色柄が多いし…何と言うか、うねうね動き回ったり、蔓とかを伸ばして餌を絡めとって喰いそうだからさ」
「マンイーターかよ」
藤原の妄想に加山が思わず噴き出す。そんな会話を傍で聞いていた丸山が、笑いながらこの先に食虫植物が集まる場所があると笑う。
「あ~ハエトリソウとか?」
「熱帯雨林ならやっぱウツボカズラとかじゃね?」
口々に思い浮かんだ食虫植物の名を出しながら先に進むと、さまざまな大きさと形をしたウツボカズラの仲間が彼らを出迎えた。
「…ここの植物って奇妙というか、なんか異様な感じ」
植物が虫を捉えて、その虫を分解して栄養として吸収するという事に違和感を感じているのかユウが呟く。
「普通、植物って虫に花粉を運んでもらう為に蜜を出したりして虫を集めるのに、その虫さんを食べちゃうなんて」
律子がそう言いながら、確かに変な植物だとユウの意見に同意する。
「こいつらって土地がやせている場所に育つ事が多いから、虫を消化して栄養補給をしてるって話らしいね」
髙橋の説明に空が納得顔になる。
「そっかぁ、虫から栄養を補わないと生きていけない場所に生えてるんだ…」
「ウツボカズラの種類は落とし穴タイプで、モウセンゴケの仲間は粘着力の強い液体でからめとるタイプ、モウセンゴケの仲間だけどハエトリソウなんかだと虫を挟み込んで捕まえてから溶かすタイプだから、食虫パターンんもいろいろあるみたいだよ」
「いろんなのがあるんですね」
髙橋の詳しい説明に空の目が輝く。
「イメージ的にマンイーターぽいと言えばやっぱラフレシアだと、私は思うな~」
そう言いながら律子が展示したあったラフレシアの標本の前で足を止めた。
「うえ…すげぇデカくてグロデスクな花…」
ラフレシアを初めて目にしたのか、加山が唸る。
「なんたって世界最大の花って言われてるもんね――発見された当初は、直径1mはある真っ赤な花だし臭いがすごいんで、人食い花だと思われていたみたい」と言って律子がケラケラ笑う。
「臭い?」
「この花の匂いって、死肉の腐敗臭だとか汲み取りトイレみたいな臭いなんだって――その臭いで蠅なんかをおびき寄せて受粉の媒介をさせてるみたい」
「汲み取りトイレ…」
律子の説明に順子が顔をしかめる。
「ラフレシアの標本が樹脂で固めてあるのは、花の寿命は3日から5日ぐらいで、開花と同時に腐っていくんだって」
「律っちゃん、良く知ってるわねぇ」
感心する順子に律子は「ラフレシアってアニメとかゲームにもよく出てくる名前だし」と笑う。
「そうなの?」
アニメやゲームといったカルチャーに触れる機会が少なかったのか、順子が不思議そうな顔で律子を見た。
「あれ? 順ちゃんってアニメとかゲームに興味ないの?」
「アニメとゲームは小さい頃は見たり遊んだりしたけど、小学校の高学年ぐらいからは全然」
「あ~、順ちゃんはわかんないか…」
真面目な図書委員風の律子にすれば、ギャルファションの順子は別世界の住民としか思えない様である。
「ギャルとレイヤーって生きる世界が全く違うもんねぇ」
「…レイヤー?」
クエスチョンマークを飛ばす順子に、律子はやっぱりわからないかという表情を浮かべた。
「コスプレイヤーの事――アニメやゲームなんかのキャラのコスプレを趣味にしている人たちの事で、見ただけで何のキャラかわかるぐらい、リアルでクオリティが高いのよ」
「見ただけで…ああ、サンタのコスチュームとか、ハロウィンの時の血まみれナースとか?」
「ん~ちょっとレイヤーとは違うんだけど、確かにイベントコスも何のコスプレなのかは見ただけでだいたい想像がつくわね」
律子はそう言うと、順子に頷いて「コスプレって、違う自分になったみたいで楽しいのよね」と笑う。
「ああ、なんかわかるような気がする…って、もしかして律ちゃんもコスプレしたりするの?」
そんな順子の質問に律子は大きく頷いた。
「——さっき、私この公園でよく遊ぶって言ってたでしょ? 大池の向こうの山のエリアに花博の時のパビリオンの跡地にその名残がいろいろ残っているの」
異国情緒漂う廃墟っぽい雰囲気がまるでファンタジーの世界のようなので、レイヤーたちの人気の写真スポットになっていて、律子はそこでよく遊んでいるのだという。
そんな話をしながら、一行は原色の花が咲き乱れる熱帯花木室から乾燥地植物室に移動をしていた。
「この部屋はさっきまでの部屋に比べて全然違うな…」
温度も湿度の高い環境の熱帯環境から移動した直後、乾燥した地域の湿度の変化を敏感に感じ取った丸山が呟きを漏らす。
「そんなに違います?」
「違うね――俺は皮下脂肪が多いせいか寒さには強いけど、蒸し暑いのは大の苦手だから」
乾燥しているので、空気は肌にまとわりつく感覚が無いので随分快適になったと丸山がトキに笑った。
「浴衣って涼しいらしいんで、丸先輩もお相撲さんみたいに夏場は浴衣を着ればいいのに」
「浴衣ねぇ…俺が浴衣を着て街をウロウロしていたら、弟子入り直後のお相撲さんにしか見えないよ」と言って丸山は肩を竦める。
「…丸ちゃんの場合、ハワイの服なんかも似合いそうな感じだけどなぁ」
丸山とトキの会話を聞いていた高橋が会話に加わると、トキが「確かにアロハシャツとかに合いそう」と高橋の意見に同意した。
「…アロハシャツって、元々日本人移民が浴衣生地で作ったシャツって知ってた?」
「え? そうなの?」
アロハシャツはハワイのお土産としても人気なのでハワイの民族衣装だと思い込んでいた高橋が驚き顔になる。
「ハワイの民族衣装って言えば、宣教師が来る前は上半身裸で腰蓑だけだったって話だよ?」
「腰蓑…なんかそういうの見た事あるな」
そんなたわいのない雑談をしている丸山たちの側で、藤原と加山が柱状の巨大なサボテンを指さして「サボテンダーだ」と言ってはしゃぎ出した。
「確かにこの棘を千本も喰らえばダメージがすごそう」
「サボテンダーの攻撃と言えば、やっぱ針千本だよな…あれ、結構HPが削られるんんだよな」
藤原と加山の会話に丸山が食いついたのをきっかけに、男子たちはゲームの話題で盛り上がる。
そんな乾燥植物室のサボテンや多肉種のアロエ、バオバブの木といった砂漠地帯を連想させる風景から一転、次の部屋は高山植物室で、小さくて可憐なという言葉がよく似合う植物の姿がそこにあった。
「——こうしてみると、この星ってほんといろんな植物があるんだなって思いますね」
「その植物と共生する虫なんかもいるって考えたら、自然ってすごいんだなって思わずにはいられないね」
そんな話を空と高橋がしていると、律子が「動物だって多種多様じゃないですか」と笑う。
「それを考えたら、生物って一言で言っても、研究対象が無限にあるって思えてくるよな」
生物部らしい会話をしているうちに館内を一回りしてきたらしく、見覚えのある入り口が見えてきた。
「いったんここで休憩でもしようか」
丸山はそう言うと、休憩スペースの椅子に腰を下ろす。
「この後、どうするんですか?」
トイレに行く者やミュージアムショップでお土産を物色する者がいる中、律子がペットボトルに口をつけていた丸山に尋ねた。
「…ん? この後、バーベキューの予定って言ってなかったっけ?」
「あ~、お昼ご飯の心配はいらないって、そういう事だったんですか」
「そそ、今頃、渉先輩やあおいちゃんがバーベキューの用意を始めてるんじゃないかな?」
スマホで時間を確認した丸山がそう言うと、横で話を聞いていたトキが、今日はそんなにお金を持って来ていないと呟く。
「バーベキュー代は卒業した先輩が出してくれてるんで、心配ないよ」
「卒業した先輩?」
不思議そうな表情になったトキと律子に、去年の夏のバーベキューもその先輩が出してくれたと丸山は説明をした。
「太っ腹の先輩がいるんですねぇ」
驚き顔の律子に丸山は頷く。
「俺も詳しい事はよく知らないんだけど、お金持ちの先輩がいるらしいよ」
丸山が入部した頃には、洋司はとっくの昔に卒業していたので、昨年のバーベキューで顔を見知ってはいたが、細かい経緯はよく分からないのは仕方がない話であった。
「まあ、タダで腹いっぱいバーベキューを食えるのは間違いないから、安心して楽しんだらいいと思うよ」
丸山はそう言うと、鳴き出した腹の虫をなだめるように自分の腹をポンと叩いて笑った。
鶴見緑地公園にはせせらぎの川という場所があって、水遊びを楽しむ子供たちが歓声を上げている。その側に今日のもう一つの目的地、バーベキューサイトがあった。
丸山からの連絡を受けた渉がバーベキュー場の入り口で待っていて、植物園から移動してきた一行を出迎える。
「お疲れさん、もう準備は出来てるよ」
片手を挙げて出迎えた渉はそう言うと、一行をレンタルしたバーベキュースペースに案内をする。その案内された場所を見た順子が歓声を上げた。
「今年もすごーい」
オープンスペースのテーブルでバーベキューを楽しんでいる親子連れやグループがいる中、生物部のメンバーが案内されたのは大型テントタイプのバーベキュースペースだった。テントの中なので日焼けを気にする心配をしなくていいのは女子的には嬉しい配慮である。
「やっほー、みんな座って座って~」
テントの中で待っていたあおいが出迎えると、大型のクーラーボックスからよく冷えた飲み物を配ってまわった。
大きなアルミ皿に盛られた肉や野菜などの食材を目にした藤木と加山が歓声を上げる。
「うわ~、うまそう!」
あおいは慣れた様子でコンロに火を入れると、網の上に食材を乗せて焼き始めた。
「後は自分たちで好きなように焼いて食べてね~」
食材はたくさん用意してあるので、無くなったら声をかけて欲しいと言うあおいに、全員元気に返事をする。
「——今日のあおいちゃん、なんかいつもと違いますね」
焼きあがった肉を食べながら丸山が隣の席の渉に話しかけると、「あおいちゃんのバイト、洋司先輩の家のゲストの食事の給仕とからしいから、いつもやってるからじゃない?」と答えた。
「なるほど…」
学校では突拍子の無い言動が多いあおいの印象であったが、てきぱきと仕事をきっちりこなしている様子に、少しあおいの事を丸山は見直した様である。
ワイワイと和やかにバーベキューを始めた一同を見ながら丸山は、今回のスポンサーである先輩は来ないのかと尋ねると、渉は「洋司先輩は、隣のテントで同窓会をやってる」と笑う。
「同窓会って事は…まさか…」
去年のバーベキューの時の事を思い出したのか、丸山が何とも言えない表情を浮かべていると、上機嫌の藤木が乱入してきた。
「おお、みんな盛り上がっている様だな!」
「…?」
突然テントに入って来て、親し気に大声で話す見知らぬ青年を一二年生の生物部部員たちは「誰?」といった顔で見ていると、後からやって来た藤木の後頭部を叩く。
「だからやめろって言ったでしょ! みんなびっくりしてるじゃない!」
そんな静香を見た順子が嬉しそうに「静香先輩!」と声をかけた。
「あ、順ちゃん、おひさ~」
再会を静香と順子が喜んでいる横で、話しかける相手を探していた藤木が渉に目を付けた。
「おう少年、みんなを紹介してくれ」
「ええっと…」
突然の藤木の依頼に渉は返答に窮していると、静香が「お邪魔してごめんなさいね~」と言いいながら、藤木の耳を引っ張ってテントの外へ出て行く。
「…」
嵐の様な闖入者たちが去っていった後、テントの中は奇妙な沈黙が流れた。
そんな沈黙を破る様に渉が口を開く。
「今の、卒業した生物部の先輩たちなんだけど――いきなりだったから、みんなびっくりしたよな」
苦笑いを浮かべる渉の説明に、ようやく一二年生は闖入者の正体を理解した。
「同窓会って、他の先輩たちも隣に?」
そんな丸山の質問に渉は頷く。
「優子先輩、香奈子先輩、岡部先輩、洋司先輩、古谷先輩もいるよ」
面識がない先輩たちがたくさんいては後輩たちが気を使って楽しめないだろうから…という配慮で、テントを分けたらしかった。
「なんか怖そうな先輩…」
藤木の大声に驚いたのか困惑した様子のユウのコメントに、空も頷く。
「ああいう大きな声出す人って怖いわよね…」
丸山のような朗らかなタイプが好みのトキも同じことを思ったのか、同意するように小さく頷いた。
「あの人の大声は昔からだからなぁ…」
渉の呟きに丸山が「確かに、あの先輩、いつも大声って気がするね」と苦笑いを浮かべる。
「卒業した先輩で良かったかもな…現役の先輩だったら、俺、生物部無理だったわ~」
藤木の第一印象で苦手と判断したのか、藤原はそんな事を言いながら、食べかけのソーセージを口に放り込んだ。
「あの先輩はノリが体育会系だからなぁ…僕は慣れてるから平気だけど、そうじゃない人間にしたら確かに怖いかも」
元野球部の高橋のコメントに、加山も「俺も無理」と首をふる。
「このご時世、ゴリゴリの体育会系なんてダセーと思うし」
「だよな」
藤原と加山の感性は似ている所があるらしく、話がよく合う様であった。
「でもあの先輩、いつも静香先輩に怒られてるのよね…」
そこが痛快でたまらないのだと言う順子に「確かに、昔から藤木先輩って静香先輩に勝ったところって見た事がないかも」とあおいが笑う。
「でもね、普段の藤木先輩はあんなのだから怖そうだけど、文化祭の時はノリノリで面白かったんだよぉ」
「ノリノリ?」
体育会系で怖そうな藤木と、ノリノリといった軽い言葉が不釣り合いな感じを受けたユウが訊き返す。
「なりきりマッドサイエンティストとか大人気だったんだよぉ」
「…はあ」
そんなあおいの話に、一年生たちは何とも言えない表情で顔を見合わせた。
「——文化祭と言えばさ、今年どうするの?」
話に出た文化祭という言葉を聞いた渉が丸山に尋ねる。
「…あ、忘れてた」
「まだ夏休みなのに、今から文化祭の話ですか?」
しまったといった表情の丸山を見たトキが不思議そうな顔で首を傾げた。
「文化祭での集客と収益が大切で、部費確保の為の実績作りもしなきゃいけないから、毎年、うちの部は夏休みぐらいから企画を考えてるんだよ」
「実績…」
「…収益?」
かつての渉や丸山たちがそうだった様に、生物部と集客、実績といった言葉がつながらない一年生たちが顔を見合わせる。
「詳しい説明はそのうちするけどさ…人が集まりそうなアイディア無い?」
丸山の問いかけに応える者はなく、その様子を見ていた高橋が「バーベキューをしながら文化祭の企画を考えろってのは無理があるんじゃないか?」と笑う。
「やっぱり?」
丸山が笑ってごまかしていると、あおいが「目指せ三年連続黒字!」とはやし立てた。
「…プレッシャーだなぁ」
部長としての責任を感じて、そう呟かずにはいられない丸山であった。
「暑い~」
「溶ける~」
アスファルトから立ち上る陽炎を見て順子はうんざり顔で丸山を見る。
「植物園まであとどのくらい?」と訊く順子に丸山があと少しと答えた。
「あと少しねぇ…ここからそれらしき建物見えないんですけど?」
疑わしい目になった順子に田中が「ここからなら、あと5分もかからわよ」と笑顔で言う。
「律ちゃん来た事あるの?」
順子の問いに律ちゃんと呼ばれた田中が頷く。
「この公園で私よく遊んでるから、大体どこに何があるかは知ってるよ」
「へぇ、そうなんだ」
田中律子(たなか・りつこ)は今年入った新入部員ではあるが、順子と同じ二年生である。お茶会がきっかけで入部したのだが、生物部としての活動を彼女なりに楽しんでいるようであった。
彼らが目指しているのは鶴見緑地の咲くやこの花館という植物園で、1990年に開催された「花と緑の万国博覧会(通称:花博)」のメインパビリオンとして建設された施設である。
今日は部員たちのレクレーションを兼ねた遠足の為にこの場所にやって来ていた。
「こんな大阪市内で万博があっただなんて信じられないよな」
よく手入れがされた木々や花壇を見ながら高橋が呟いた。
「今日、鶴見緑地公園に行くって言ったら、うちのババさまが懐かしいって言ってた」
「懐かしい?」
加山の話に藤原が首を傾げる。
「うちのババさまが若い頃、彼氏とデートで花博に通ったらしくて、遊園地みたいなのもあったって言ってた」
「何年前の話だよ…それ」
祖母世代の若い頃というのが想像が出来ず藤原が笑う。
「…少なくても30年以上前の話だと思う」
「俺達が生まれるずっと前の話かぁ…」
そんな話をしながら歩いていると、総ガラス張りの変わった形の大きな建物が見えてきた。
「——もしかしてこの建物?」
建物の横に広がる人口池を見ながら順子が訊く。
「そうよ、入り口はあそこ」
そう言って律子が池の側にある建物の一角を指し示した。
「助かった~、中、エアコン効いてるかな?」
そんな高橋に丸山が「中は温度湿度のコントロールはしてあるはずだから、炎天下の屋外よりは快適だとは思うけど、冷蔵庫みたいには冷えてないと思う」と笑う。
「ここは公園だし緑が多いから、夏の甲子園よりはマシだろうけど、暑いのには変わらないから早いとこ中に入ろうぜ…」
そう言った後、野球部にいた頃に比べれば軟弱になったものだと自嘲気味に笑う高橋に、丸山が頷いた。
入口で入館料を支払い中に入ると、炎天下の外に比べて一気に快適と感じる温度になったので、一同から安堵の声が漏れる。
「やっぱり外と全然違うね」
ほっとした様子のユウに空が頷く。
「…じゃあ、ぼちぼち回りますか」
館内案内のパンフレットを手にした丸山がそう言うと、見学コースの最初にある熱帯雨林植物室に歩を進めた。
「あ、丸先輩、あそこに咲いてるの蘭ですよね?」
熱帯雨林植物室に入った瞬間、入場者たちを出迎えるように咲いていた花を目にしたトキが丸山に話しかける。
「そうだね…花屋なんかで見かけるやつ以外にも、いろんなのが咲いてるね」
丸山はそう言うとトキは嬉しそうに頷いた。
見慣れない熱帯雨林の植物ばかりあるせいか、藤原が周囲を見渡しながら「熱帯雨林の植物って、なんか気持ち悪くね?」と呟く。
「気持ち悪い?」
その呟きを聞いていた加山が怪訝そうに藤原を見た。
「花は毒々しい色柄が多いし…何と言うか、うねうね動き回ったり、蔓とかを伸ばして餌を絡めとって喰いそうだからさ」
「マンイーターかよ」
藤原の妄想に加山が思わず噴き出す。そんな会話を傍で聞いていた丸山が、笑いながらこの先に食虫植物が集まる場所があると笑う。
「あ~ハエトリソウとか?」
「熱帯雨林ならやっぱウツボカズラとかじゃね?」
口々に思い浮かんだ食虫植物の名を出しながら先に進むと、さまざまな大きさと形をしたウツボカズラの仲間が彼らを出迎えた。
「…ここの植物って奇妙というか、なんか異様な感じ」
植物が虫を捉えて、その虫を分解して栄養として吸収するという事に違和感を感じているのかユウが呟く。
「普通、植物って虫に花粉を運んでもらう為に蜜を出したりして虫を集めるのに、その虫さんを食べちゃうなんて」
律子がそう言いながら、確かに変な植物だとユウの意見に同意する。
「こいつらって土地がやせている場所に育つ事が多いから、虫を消化して栄養補給をしてるって話らしいね」
髙橋の説明に空が納得顔になる。
「そっかぁ、虫から栄養を補わないと生きていけない場所に生えてるんだ…」
「ウツボカズラの種類は落とし穴タイプで、モウセンゴケの仲間は粘着力の強い液体でからめとるタイプ、モウセンゴケの仲間だけどハエトリソウなんかだと虫を挟み込んで捕まえてから溶かすタイプだから、食虫パターンんもいろいろあるみたいだよ」
「いろんなのがあるんですね」
髙橋の詳しい説明に空の目が輝く。
「イメージ的にマンイーターぽいと言えばやっぱラフレシアだと、私は思うな~」
そう言いながら律子が展示したあったラフレシアの標本の前で足を止めた。
「うえ…すげぇデカくてグロデスクな花…」
ラフレシアを初めて目にしたのか、加山が唸る。
「なんたって世界最大の花って言われてるもんね――発見された当初は、直径1mはある真っ赤な花だし臭いがすごいんで、人食い花だと思われていたみたい」と言って律子がケラケラ笑う。
「臭い?」
「この花の匂いって、死肉の腐敗臭だとか汲み取りトイレみたいな臭いなんだって――その臭いで蠅なんかをおびき寄せて受粉の媒介をさせてるみたい」
「汲み取りトイレ…」
律子の説明に順子が顔をしかめる。
「ラフレシアの標本が樹脂で固めてあるのは、花の寿命は3日から5日ぐらいで、開花と同時に腐っていくんだって」
「律っちゃん、良く知ってるわねぇ」
感心する順子に律子は「ラフレシアってアニメとかゲームにもよく出てくる名前だし」と笑う。
「そうなの?」
アニメやゲームといったカルチャーに触れる機会が少なかったのか、順子が不思議そうな顔で律子を見た。
「あれ? 順ちゃんってアニメとかゲームに興味ないの?」
「アニメとゲームは小さい頃は見たり遊んだりしたけど、小学校の高学年ぐらいからは全然」
「あ~、順ちゃんはわかんないか…」
真面目な図書委員風の律子にすれば、ギャルファションの順子は別世界の住民としか思えない様である。
「ギャルとレイヤーって生きる世界が全く違うもんねぇ」
「…レイヤー?」
クエスチョンマークを飛ばす順子に、律子はやっぱりわからないかという表情を浮かべた。
「コスプレイヤーの事――アニメやゲームなんかのキャラのコスプレを趣味にしている人たちの事で、見ただけで何のキャラかわかるぐらい、リアルでクオリティが高いのよ」
「見ただけで…ああ、サンタのコスチュームとか、ハロウィンの時の血まみれナースとか?」
「ん~ちょっとレイヤーとは違うんだけど、確かにイベントコスも何のコスプレなのかは見ただけでだいたい想像がつくわね」
律子はそう言うと、順子に頷いて「コスプレって、違う自分になったみたいで楽しいのよね」と笑う。
「ああ、なんかわかるような気がする…って、もしかして律ちゃんもコスプレしたりするの?」
そんな順子の質問に律子は大きく頷いた。
「——さっき、私この公園でよく遊ぶって言ってたでしょ? 大池の向こうの山のエリアに花博の時のパビリオンの跡地にその名残がいろいろ残っているの」
異国情緒漂う廃墟っぽい雰囲気がまるでファンタジーの世界のようなので、レイヤーたちの人気の写真スポットになっていて、律子はそこでよく遊んでいるのだという。
そんな話をしながら、一行は原色の花が咲き乱れる熱帯花木室から乾燥地植物室に移動をしていた。
「この部屋はさっきまでの部屋に比べて全然違うな…」
温度も湿度の高い環境の熱帯環境から移動した直後、乾燥した地域の湿度の変化を敏感に感じ取った丸山が呟きを漏らす。
「そんなに違います?」
「違うね――俺は皮下脂肪が多いせいか寒さには強いけど、蒸し暑いのは大の苦手だから」
乾燥しているので、空気は肌にまとわりつく感覚が無いので随分快適になったと丸山がトキに笑った。
「浴衣って涼しいらしいんで、丸先輩もお相撲さんみたいに夏場は浴衣を着ればいいのに」
「浴衣ねぇ…俺が浴衣を着て街をウロウロしていたら、弟子入り直後のお相撲さんにしか見えないよ」と言って丸山は肩を竦める。
「…丸ちゃんの場合、ハワイの服なんかも似合いそうな感じだけどなぁ」
丸山とトキの会話を聞いていた高橋が会話に加わると、トキが「確かにアロハシャツとかに合いそう」と高橋の意見に同意した。
「…アロハシャツって、元々日本人移民が浴衣生地で作ったシャツって知ってた?」
「え? そうなの?」
アロハシャツはハワイのお土産としても人気なのでハワイの民族衣装だと思い込んでいた高橋が驚き顔になる。
「ハワイの民族衣装って言えば、宣教師が来る前は上半身裸で腰蓑だけだったって話だよ?」
「腰蓑…なんかそういうの見た事あるな」
そんなたわいのない雑談をしている丸山たちの側で、藤原と加山が柱状の巨大なサボテンを指さして「サボテンダーだ」と言ってはしゃぎ出した。
「確かにこの棘を千本も喰らえばダメージがすごそう」
「サボテンダーの攻撃と言えば、やっぱ針千本だよな…あれ、結構HPが削られるんんだよな」
藤原と加山の会話に丸山が食いついたのをきっかけに、男子たちはゲームの話題で盛り上がる。
そんな乾燥植物室のサボテンや多肉種のアロエ、バオバブの木といった砂漠地帯を連想させる風景から一転、次の部屋は高山植物室で、小さくて可憐なという言葉がよく似合う植物の姿がそこにあった。
「——こうしてみると、この星ってほんといろんな植物があるんだなって思いますね」
「その植物と共生する虫なんかもいるって考えたら、自然ってすごいんだなって思わずにはいられないね」
そんな話を空と高橋がしていると、律子が「動物だって多種多様じゃないですか」と笑う。
「それを考えたら、生物って一言で言っても、研究対象が無限にあるって思えてくるよな」
生物部らしい会話をしているうちに館内を一回りしてきたらしく、見覚えのある入り口が見えてきた。
「いったんここで休憩でもしようか」
丸山はそう言うと、休憩スペースの椅子に腰を下ろす。
「この後、どうするんですか?」
トイレに行く者やミュージアムショップでお土産を物色する者がいる中、律子がペットボトルに口をつけていた丸山に尋ねた。
「…ん? この後、バーベキューの予定って言ってなかったっけ?」
「あ~、お昼ご飯の心配はいらないって、そういう事だったんですか」
「そそ、今頃、渉先輩やあおいちゃんがバーベキューの用意を始めてるんじゃないかな?」
スマホで時間を確認した丸山がそう言うと、横で話を聞いていたトキが、今日はそんなにお金を持って来ていないと呟く。
「バーベキュー代は卒業した先輩が出してくれてるんで、心配ないよ」
「卒業した先輩?」
不思議そうな表情になったトキと律子に、去年の夏のバーベキューもその先輩が出してくれたと丸山は説明をした。
「太っ腹の先輩がいるんですねぇ」
驚き顔の律子に丸山は頷く。
「俺も詳しい事はよく知らないんだけど、お金持ちの先輩がいるらしいよ」
丸山が入部した頃には、洋司はとっくの昔に卒業していたので、昨年のバーベキューで顔を見知ってはいたが、細かい経緯はよく分からないのは仕方がない話であった。
「まあ、タダで腹いっぱいバーベキューを食えるのは間違いないから、安心して楽しんだらいいと思うよ」
丸山はそう言うと、鳴き出した腹の虫をなだめるように自分の腹をポンと叩いて笑った。
鶴見緑地公園にはせせらぎの川という場所があって、水遊びを楽しむ子供たちが歓声を上げている。その側に今日のもう一つの目的地、バーベキューサイトがあった。
丸山からの連絡を受けた渉がバーベキュー場の入り口で待っていて、植物園から移動してきた一行を出迎える。
「お疲れさん、もう準備は出来てるよ」
片手を挙げて出迎えた渉はそう言うと、一行をレンタルしたバーベキュースペースに案内をする。その案内された場所を見た順子が歓声を上げた。
「今年もすごーい」
オープンスペースのテーブルでバーベキューを楽しんでいる親子連れやグループがいる中、生物部のメンバーが案内されたのは大型テントタイプのバーベキュースペースだった。テントの中なので日焼けを気にする心配をしなくていいのは女子的には嬉しい配慮である。
「やっほー、みんな座って座って~」
テントの中で待っていたあおいが出迎えると、大型のクーラーボックスからよく冷えた飲み物を配ってまわった。
大きなアルミ皿に盛られた肉や野菜などの食材を目にした藤木と加山が歓声を上げる。
「うわ~、うまそう!」
あおいは慣れた様子でコンロに火を入れると、網の上に食材を乗せて焼き始めた。
「後は自分たちで好きなように焼いて食べてね~」
食材はたくさん用意してあるので、無くなったら声をかけて欲しいと言うあおいに、全員元気に返事をする。
「——今日のあおいちゃん、なんかいつもと違いますね」
焼きあがった肉を食べながら丸山が隣の席の渉に話しかけると、「あおいちゃんのバイト、洋司先輩の家のゲストの食事の給仕とからしいから、いつもやってるからじゃない?」と答えた。
「なるほど…」
学校では突拍子の無い言動が多いあおいの印象であったが、てきぱきと仕事をきっちりこなしている様子に、少しあおいの事を丸山は見直した様である。
ワイワイと和やかにバーベキューを始めた一同を見ながら丸山は、今回のスポンサーである先輩は来ないのかと尋ねると、渉は「洋司先輩は、隣のテントで同窓会をやってる」と笑う。
「同窓会って事は…まさか…」
去年のバーベキューの時の事を思い出したのか、丸山が何とも言えない表情を浮かべていると、上機嫌の藤木が乱入してきた。
「おお、みんな盛り上がっている様だな!」
「…?」
突然テントに入って来て、親し気に大声で話す見知らぬ青年を一二年生の生物部部員たちは「誰?」といった顔で見ていると、後からやって来た藤木の後頭部を叩く。
「だからやめろって言ったでしょ! みんなびっくりしてるじゃない!」
そんな静香を見た順子が嬉しそうに「静香先輩!」と声をかけた。
「あ、順ちゃん、おひさ~」
再会を静香と順子が喜んでいる横で、話しかける相手を探していた藤木が渉に目を付けた。
「おう少年、みんなを紹介してくれ」
「ええっと…」
突然の藤木の依頼に渉は返答に窮していると、静香が「お邪魔してごめんなさいね~」と言いいながら、藤木の耳を引っ張ってテントの外へ出て行く。
「…」
嵐の様な闖入者たちが去っていった後、テントの中は奇妙な沈黙が流れた。
そんな沈黙を破る様に渉が口を開く。
「今の、卒業した生物部の先輩たちなんだけど――いきなりだったから、みんなびっくりしたよな」
苦笑いを浮かべる渉の説明に、ようやく一二年生は闖入者の正体を理解した。
「同窓会って、他の先輩たちも隣に?」
そんな丸山の質問に渉は頷く。
「優子先輩、香奈子先輩、岡部先輩、洋司先輩、古谷先輩もいるよ」
面識がない先輩たちがたくさんいては後輩たちが気を使って楽しめないだろうから…という配慮で、テントを分けたらしかった。
「なんか怖そうな先輩…」
藤木の大声に驚いたのか困惑した様子のユウのコメントに、空も頷く。
「ああいう大きな声出す人って怖いわよね…」
丸山のような朗らかなタイプが好みのトキも同じことを思ったのか、同意するように小さく頷いた。
「あの人の大声は昔からだからなぁ…」
渉の呟きに丸山が「確かに、あの先輩、いつも大声って気がするね」と苦笑いを浮かべる。
「卒業した先輩で良かったかもな…現役の先輩だったら、俺、生物部無理だったわ~」
藤木の第一印象で苦手と判断したのか、藤原はそんな事を言いながら、食べかけのソーセージを口に放り込んだ。
「あの先輩はノリが体育会系だからなぁ…僕は慣れてるから平気だけど、そうじゃない人間にしたら確かに怖いかも」
元野球部の高橋のコメントに、加山も「俺も無理」と首をふる。
「このご時世、ゴリゴリの体育会系なんてダセーと思うし」
「だよな」
藤原と加山の感性は似ている所があるらしく、話がよく合う様であった。
「でもあの先輩、いつも静香先輩に怒られてるのよね…」
そこが痛快でたまらないのだと言う順子に「確かに、昔から藤木先輩って静香先輩に勝ったところって見た事がないかも」とあおいが笑う。
「でもね、普段の藤木先輩はあんなのだから怖そうだけど、文化祭の時はノリノリで面白かったんだよぉ」
「ノリノリ?」
体育会系で怖そうな藤木と、ノリノリといった軽い言葉が不釣り合いな感じを受けたユウが訊き返す。
「なりきりマッドサイエンティストとか大人気だったんだよぉ」
「…はあ」
そんなあおいの話に、一年生たちは何とも言えない表情で顔を見合わせた。
「——文化祭と言えばさ、今年どうするの?」
話に出た文化祭という言葉を聞いた渉が丸山に尋ねる。
「…あ、忘れてた」
「まだ夏休みなのに、今から文化祭の話ですか?」
しまったといった表情の丸山を見たトキが不思議そうな顔で首を傾げた。
「文化祭での集客と収益が大切で、部費確保の為の実績作りもしなきゃいけないから、毎年、うちの部は夏休みぐらいから企画を考えてるんだよ」
「実績…」
「…収益?」
かつての渉や丸山たちがそうだった様に、生物部と集客、実績といった言葉がつながらない一年生たちが顔を見合わせる。
「詳しい説明はそのうちするけどさ…人が集まりそうなアイディア無い?」
丸山の問いかけに応える者はなく、その様子を見ていた高橋が「バーベキューをしながら文化祭の企画を考えろってのは無理があるんじゃないか?」と笑う。
「やっぱり?」
丸山が笑ってごまかしていると、あおいが「目指せ三年連続黒字!」とはやし立てた。
「…プレッシャーだなぁ」
部長としての責任を感じて、そう呟かずにはいられない丸山であった。
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