旅するコロボックル

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~episode7 神と悪魔と宇宙人~

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 この世は泡沫。
 かつて巨人族でありながら、精神世界に精通した者たちが口にしてきた言葉である。
 精神世界では同じような波長を持つ者たちが集まる為、違う価値観と触れ合う機会が無い。物質界は様々な価値観を持つ者がいる為、さまざまな価値観や経験を通して、魂の成長を促すために存在する。
 魂は永遠であるが物質である肉体は有限である。肉体の使用期限が切れるのが「死」であり、死とは肉の衣を脱ぎ棄て精神世界に戻り、学び足りなかった事があれば再び新たな肉体を身に付け、新しい学びの為に物質界で暮らすのである。宇宙の新陳代謝ともいえる理であったが、時の定めがある物質界は儚い故、泡沫という例えをする者が多かったと思われる。
――余談ではあるが、生まれ変わりにもルールがあり、物質界で学びを途中放棄して自死を選んだ場合、学びを放棄したとして新たな肉体を持つ権利を失い、自死をした時の自らが発した低波動の周波数の世界に囚われる事となり、いわゆる幽霊と呼ばれる存在となる。
 地縛霊という言葉があるが、正確には「自縛霊」と表記するのが正しいのかもしれない。
 また巨人の世界に出没する幽霊と呼ばれる者たちが発している周波数は17Hzで、かなり低い周波数の世界の住民である事を証明していた。
 何度も繰り返すが、低波動の周波数自体が悪い訳ではない。ただ高周波の世界から見れば暗く感じ、苦しみや悲しみなどのネガティブな波長が満ちる世界は、地獄的なものを感じてしまうのは否めないだけである。

「物質界でも周波数に応じた振り分けが行われる世界再編の刻…」
 アオが静かに呟く。
 それは太古の昔から定められていた事で、巨人たちの世界でも最後の審判だとか、三千世界の極楽浄土になると言い伝えられてきた事だった。
 それぞれに応じた振り分けが最後の裁判であり、その次元と同じ周波数を持つ者が集まればそこは心地の良い場所——極楽に感じる事となる。
「今まで巨人達は欲にまみれ、動植物から搾取して多くの恨みつらみを生み出し、その強い低周波の影響を受け、自らが低周波を発する者となった」
 くくっとサタンが喜びを押し殺すように喉で嗤う。
「巨人族が低周波次元の住人となれば、低周波次元のエネルギーが強化され、銀河連合が進める全宇宙高周波次元化を阻止できるのだよ――低周波次元の影響が大きくなり、全宇宙が低周波で満たされれば、私は全宇宙を支配する神となる」
 弱肉強食の支配主義のオリオン星雲のトカゲ頭たちは、博愛を第一とする銀河連合との仲が悪い。そんなトカゲ頭たちとサタンが手引きして手を結んだのも、利害が一致したからだというのは明らかだった。
「巨人さんたちに悪い事を教えてさせていたのは、サタンちゃんが宇宙の神様になる為だった…?」
「奴らに強要した訳ではない…自らが選び喜んでやってきたのだからな」
 ピリカの言葉にサタンは涼し気な顔で答える。
「悪い事だって知っていたら、巨人さんはやらなかったはずだよ」
 そんなピリカの反論にサタンは鼻で嗤う。
「巨人達の長のほとんどは、自らの望みをかなえるのと引き換えに、喜んで一般の巨人達が低波動の周波数を好む様に立ち回ってくれた――楽を謳い自然環境を破壊し、薬と言って毒をばら撒き病気を生み出す。飢饉や戦争を起こし、多くの魂を苦しめ嘆き悲しませ、その低波動のエネルギーを我らに送り続け、彼らは巨万の富や不老不死に近くなる我々の技術提供を受けてきたのだからな」
「ほとんどって事は、中には悪いって知ってやらない巨人さんもいたって事だよね?」
「異を唱えればいったん物質界から退場してもらう――世界の仕組みを知らぬ故、肉体を失う事を恐れて協力を自ら申し出る者も後をたたないし、時間はかかったが定めの刻には間に合ったようだ」
 そういうサタンは満足そうだった。
「…ひどい」
 眉間に皺をよせ、声を押し殺すようにピリカが呟く。
「ん? 聞こえぬなぁ」
 サタンがピリカの感情を逆なでするように嘲笑する。
「欲を自ら制御できない存在は下等ゆえ、我らが有効利用してやっているだけの事」
 冷酷な響きを持つその言葉には一切の感情など存在していなかった。

「下等って…命に優劣なんてないのに」
 悲し気なピリカに「知恵のある者、力がある者、美しい者、他より秀でた所が無い者はゴミと同じ。ゴミを有効利用しているのだから、巨人達が好きないわゆるエコロジーというやつだな」とサタンは自賛する。
「ゴミ…」
 成り行きを見守っていたエルが怒気をはらんだ声を漏らした。サタンは怒りに震える野ネズミを冷たく一瞥しただけで、ピリカに視線を戻す。
「博愛主義など笑止千万。愛など何の役にも立たぬ」
「…」
 ピリカは言い返すことなく、勝ち誇ったような表情を浮かべるサタンの顔を見つめる。
「私が全宇宙の神となれば、銀河連合の奴らも愛など茶番であると気が付き、力による秩序が正しい事を知るだろう」
 高らかにそう語るサタンは自分の正しさを確信しているのか饒舌だった。
「…サタンちゃん、間違ってるよ」
 何か心に決めたのか、ピリカは真っ直ぐにサタンを見つめると、はっきりとサタンの言葉を否定する。
「この世界は愛で出来ている。愛があるからこそ、みんな存在出来るんだもん」
「そんな戯言聞き飽きたわ」
「聞き飽きても、それが真実——サタンちゃんだって愛の恩恵を受けているから、こうして存在出来るんだよ?」
「愛の恩恵など…どこにそんなものがあるというのだ? 宇宙で一番私の知性が優れているし、精神エネルギーも彼らよりずっと強大であるというのに、属性が低波動と言うだけでこんな辺境で、原住民が発する波動のつまらぬコントロール作業ばかり」
 銀河連合での待遇に不満が募るばかりだったらしい。
「銀河連合の奴らは博愛と言いながら、私を虐げてきたのだ」
「虐げるって…いじめられたりしたの?」
「辺境でくだらぬ作業をさせる事自体、嫌がらせではないか」
「…⁇」
 どうしてそういう解釈になるのか理解できずにピリカは首を傾げる。
「高周波高エネルギーが優遇され、低周波高エネルギーが虐げられるのはおかしい…やられた事はやり返すのみ」
「…それ、逆恨みじゃない?」
 頭痛の様なものを感じながら、ピリカが呟く。
「何を言う。低周波の波動は悪として忌み嫌われてきた。巨人達も同じ…自分たちが欲を制する事が出来ず、喜んで悪徳の美酒に酔いしれてきたのに、その結果の責任を私に転嫁し、私を諸悪の根源として抹殺しようとする者も後を絶たない――私はただ私の役目を果たしているだけだというのに!」
 サタンは魂の叫びにも近い主張をした後、「しかし、その屈辱の日々も終わりを告げる…我を虐げてきた者たちが私に首を垂れる事となるのだからな」と喜びを隠せない表情を浮かべた。
「サタンちゃん…」
 ピリカが何とも言えない複雑な表情を浮かべる。
 サタンの主張を聞いた事によって、神の存在は宇宙人である事や、その宇宙人間の勢力闘争によって巨人族が住む黄昏の国がおかしな事になった事情などがわかってきたからである。勿論、サタンが全くの被害者という訳ではないが、全面的に非難に値する訳でもなさそうだとピリカは感じていた。
「——ピリカ。こんな奴の言葉を信じちゃダメだ」
 サタンと考え込むピリカの間にエルがそう言いながら割って入る。
「こいつが全宇宙の支配者となれば、世界は永遠に苦しみや悲しみ、争いごとで満ちてしまう事になるんだ…俺はそんな世界まっぴらだ」
 サタンに敵意を向けながらエルがピリカに訴える。
「お前も私に敵意を向けるか…お前ごときが私に勝てるとでも?」
 サタンがエルに対して嘲笑する。
「アオ、三種の神器があればなんとかなるって…それがあるって言っていたよな?」
 サタンを見据えたままエルがアオに声を掛けた。それを聞いたサタンが鼻で嗤う。
「八咫鏡に草薙剣、八尺瓊勾玉も元は我々銀河連合の指導担当者が与えたものではないか。本物は既に失われ現存するのはただの物質界のレプリカ…この世界では何の役にも立たぬ」
「え…」
 そう指摘されてエルは慌て、どういう事なのかと言った表情でアオを見た。
「三種の神器とは本来働きであって形無きもの…」
 そう答えながらアオもエルに並ぶと、口元に笑みを浮かべる。
「剣とは、言霊の事…巨人達の指導者のひとりであったキリストが口から出した剣も同じもの」
「言葉…?」
 エルが戸惑いの表情を浮かべる。そんなエルに答える事なくアオは言葉を続ける。
「勾玉は神働きの動きを表す――神である「核」から放出されるエネルギーの動き…すなわち渦海の仕組み」
「神だと? 神とは巨人達にとっての我らの事では無いか」
 サタンのその指摘に今度はアオが鼻で嗤う。
「何を勘違いしておる――大宇宙の神とは法則の事」
「法則だと⁈」
「光や闇があるのも世界が波動で構成され、全てがそうある理由そのものが神」
「!!」
 サタンが驚愕の表情を浮かべる。
「おぬしがそんな事も知らずにいたから、神を名乗るおぬしを信じた巨人達が、神には人格があると妙な勘違いして、偶像を造り崇める事となったのじゃ」
 アオの指摘にサタンは絶句する。
 銀河連合から派遣された指導担当者たちはそれを知っていたから、精神の成長を促す為、心の在り方、使い方を指導してきた。その結果、消し去られた古代文明や黄昏の国などでは自然そのものの働きを感じ取り、その法則の中で共に生きて暮らして命に感謝するという風習が醸成されていた。
「それがおぬしの度重なる介入によって、嘘で固めた金儲けに走らせ、心の目を濁らせ精神の成長を妨げる偶像崇拝を重要視するようになってしもうた」
 これもおぬしの企みであったなら上出来であったがな…とアオが呟きをもらす。
「おぬし自身も思い込みという金メッキに覆われていたようじゃがな」
「…くっ」
 アオの皮肉にサタンは唇を嚙み締めた。

「…何とでも言うがいい、既に私の勝利は決まったようなもの」
 アオの指摘にサタンは自分の思い込みの間違いに気が付いたが、大した問題でないと判断したのか開き直る。そんなサタンをアオは憐れむ様な視線を向けた。
「…世界を恐怖と悲しみ、怒りで支配しておぬしはそれで幸せか?」
「勿論。全て私の意のままとなるのだからな」
「違う!」
 サタンの言葉をピリカが即座に否定する。
「強制は出来ても、心から喜んで従う人は居ないじゃない…そんなの、幸せとは言わない」
「では、何が幸せだと言うのだ?」
「一人ぼっちでない事。喜びや悲しみを共に分かち合ってくれる存在が居る事が幸せなの」
 そう言った後、ピリカは「それが判らないなんて、サタンちゃん可哀想」と呟く。
「私が可哀想だと? 私の何処が可哀想だというのだ?」
 心外だといった様子でサタンはピリカに問う。
「強制ではなく自分の意思で、自分の為に何かをしようとしてくれる存在をサタンちゃんは知らないんだ…それって寂しい事だよ?」
「寂しくなどない。命すら私の意のままに出来るのだから」
「それって本当の自分の意思じゃないじゃない」
「結果が全てだ」
 話は平行線をたどり、相互理解を深める事は不可能に思えた。
「ピリカ…こいつに何を言っても無駄だ」
 エルが説得を続けようとするピリカを止めに入る。
「…でも」
 ピリカはまだ納得がいかないのか、不満げにエルとサタンを交互に視た。
「悔しいけれどこいつが言うように俺たちの世界は低周波の次元に落ちるのは確実そうだけど、俺は黙って従う気はない」
「無力なゴミが何を言うかと思えば。従う気が無ければ従わせるのも消すのも私の意のままである事がまだ理解出来ていないようだな」
 エルとサタンの視線が激しくぶつかり合い、火花が散る。
「…決裂の様じゃな」
 アオもピリカの試みは失敗したと判断したのか、ため息交じりの言葉を漏らした。それを聞いたピリカが「違うの! それじゃダメなの!」と悲鳴のような大声を上げる。
「…何が違う?」
 小さな妖精の大きな叫びに、その場にいた者たちが戸惑いの表情を浮かべた。

「…もういいの」
 そう言いながらピリカは何を思ったかサタンの傍に歩み寄り、怪訝そうにしているサタンの体にそっと触れた。
「サタンちゃん…ありがとう」
 ピリカはそう言いながらサタンの体を愛おし気に撫でる。
「あ…ありがとう?」
 予想外のピリカの行動にエルやアオが驚いた様子であったが、サタンはそれ以上に驚いたのか、戸惑いを隠せない。
「そう。ありがとう。光だけじゃその明るさに気が付かないからって、それに気が付くように神様は闇を作った――何度もアオからお話を聞いていたのに、私ちゃんとわかっていなかった」
 そう言ってピリカはサタンに優しく微笑みかける。
「サタンちゃんはその闇のお役目を一生懸命頑張って来ただけ。サタンちゃんがいなければ、私達は皆、光の明るさに、嬉しい、楽しいという事も当たり前すぎて気が付く事がなかったのに、みんなサタンちゃんが悪いって言って責めるばかり。嫌な想いばかりさせてごめんね…」
 想いもかけないピリカの言動に、サタンが「…あ」と、小さな声にならない声を漏らす。
「サタンちゃん自身そうあるだけなのに、その存在が悪いと言うなら、闇を作った神様自体が悪いって事なんだとピリカは思うの」
「…」
「神様が存在していいから作り出したちゃんと意味のあるもの――良いも悪いも視点が変われば見方が変わる主観的な話で、本当はそんなもの存在しないのかもしれない」
 そんなピリカの意見にエルが口を開く。
「じゃあ、ピリカはみんなが低波動次元に落ちて苦しんでもいいって言うのか?」
「良い訳じゃないけど、元は銀河連合とかいうところの宇宙人さん達の間違いで低周波波動が悪い事、サタンちゃんに損な役回りを押し付けた事が原因じゃない――宇宙人たちの主張を何も考えずに鵜呑みにしてきた私たちがした結果だからその責任はちゃんと取らないといけない」
「…むぅ」
 ピリカの言う通りではあるが、感情的に納得しかねてエルが唸り声を上げた。
「サタンちゃんの辛い想い、悲しみを誰も知ろうとしなかったんだよね――ずっと心の中でサタンちゃん、ひとりぼっちで泣いていたのに…」
 部屋の隅で膝を抱えて悲しみに耐えている子供に話しかけるように「もうひとりじゃないよ」とピリカはサタンに話しかける。
 勝利を確信した笑みを先ほどまで浮かべていたサタンだったが、ピリカの思わぬ言葉が衝撃だったのかその顔から笑みは消え、代わりにその目には涙が浮かんでいた。
「…なんだこれは?」
 目から頬を伝う涙に気が付いたサタンが戸惑いの声を上げる。
「それは涙」
「これが涙? 私が涙を流しているというのか? 私は今、苦悶している訳でも悲嘆にくれている訳でも無いのに、何故涙を流しているのだ?」
 どうやらサタンは涙は苦しんだり、悲しんでいる時だけに流すものだと思っていたのか、自分の目からとめどなく流れ落ちる涙の意味が理解できないようだった。そんなサタンに「嬉しくても涙が出るんだよ」とピリカが微笑む。
「嬉しい…これが嬉しい…」
 今まで味わったことが無い魂の震えの様なものを感じ、それをどうしていいのか解らないといった様子をサタンはみせた。
「きっとね、心を封じ込めていた氷が解けて涙になったんだよ」
 小さな妖精の言葉を聞く度、魂が震え暖かいと感じる何かが自分の中に広がってゆくのをサタンは感じていた。
「…教えてくれ。私の中に広がるこの暖かく感じるものは何なのだ?」
 自分の中で起こっている感覚が理解が出来ないからか、サタンは不安そうにピリカに教えを乞う――もうそこに闇の帝王の不遜さなど欠片も残っていなかった。
「それが『愛』」
 ピリカはそう言って穏やかに「暖かいでしょ」と微笑みを浮かべる。
「…!!」
 まるで雷に打たれた様にサタンは驚愕の表情を浮かべたまま凍り付いた。
 今まで愛など戯言だと馬鹿にし、散々踏みにじってきたものが、本当は自分は何一つ理解していなかった事に体験して初めて気がついたのである。
「こんなに暖かいものだったのか…」
 魂が暖かいと感じる不思議な感覚。魂が癒されるという感覚は非常に心地が良いものだとサタンは思い始めていた。
「良かった、サタンちゃんが愛の感覚を知ってくれて」
 にっこりとピリカはサタンに笑い掛けた後「じゃあね」と突如別れを告げる。
「…え?」
 サタンが戸惑っていると、成り行きを見守っていたエルとアオの方にピリカが視線を向け「元の世界に帰ろう」と笑顔を見せた。
「…いいのか?」
 エルが何とも言えない表情を浮かべピリカに問う。
「低周波の次元にみんなが落ちたら、美味しいもの食べられないかもしれないから、後悔しないように今のうちにいっぱい食べないと」
 そういうピリカはいつもの食いしん坊妖精である。
「いや…まあ…ピリカがそう言うなら…」
 サタンと戦って倒すことが出来たとしても、低周波の次元に自分たちの世界が落ちる事を回避する事は出来そうにない事を受け入れるしかなさそうだと感じ始めていたのもあり、元々ピリカとの旅はこの小さな妖精が心配で同行したので、ピリカの意向にエル自身は異論はなかった。
「そうじゃな、では物質界に戻るとするか」
 反対するかと思っていたアオもあっさりとピリカの提案に同意する。
「サタンちゃん元気でね」
 ピリカは呆然とするサタンに屈託のない笑顔を浮かべ手を振ると、振り返ることなく部屋を後にした。
 唯一人部屋に残ったサタンは閉ざされた扉をしばらく無言で見つめた後、糸が切れた様に椅子に座り込み、自分の頭を抱え込んだ。

 サタンとの対話を終えたピリカ達は物質界に戻る為、元来た階層を下り、来る時に立ち寄った茶屋で再び休憩を取っていた。
 緑が美しい穏やかな場所に落ちついてようやく一息つく事ができたのか、何かをずっと考えている様子だったエルが口を開く。
「三種の神器の鏡の事が気になって仕方がなかったんだけどさ…」
 三種の神器の剣と勾玉の説明はサタンとの対面の際にアオから聞いたが、鏡についての説明が無いままでいたのが気になっていて、エルは下って来る間、その正体についてずっと考えていたらしかった。
「…鏡?」
 美味しそうにグラスを傾けていたアオがエルの問いに手を止める。
「剣は言葉、勾玉は神働きの動きっていう説明は聞いたけど、鏡は聞くような状況じゃなくなったし…」
「そうであったな…まあ、ピリカは何も知らずともちゃんと使いこなしておったようだが」
 そう言ってアオは小さく笑った。
「どういう事?」
 果物を無心で頬張っているピリカを横目で見ながらエルは首を傾げる。
「鏡とはすべてを映す鏡。ピリカは言葉の剣でサタンの閉ざされた心の壁を切り裂き、その奥に閉ざされていた想いを映し出し、そこに神働きである愛を流し込んだ」
「あ!」
 エルはアオの説明を聞いて、不遜なサタンがピリカとの対話によって困惑し動揺し、最後には教えを乞うた変化を思い出し、ようやくその意味を理解した。
「ピリカは純粋無垢で心の鏡に曇りが無い故、サタンの心の奥底にあるものまで映し出す事が出来たのだろうな」
 普通は心に曇りやゆがみが多少あるので奥底に隠されたものまで映し出すことは出来ないのだとアオは苦笑いを浮かべる。
「これから奴はどうするかのぉ」
 どこか面白がっている様なアオの言葉にエルが「サタン?」と訊く。
「永久凍土のように凍り付いていた奴の魂が震えた――おそらく奴は変わるぞ」
 その言葉にエルの目が丸くなる。
「どう変わるかまでは我もわからぬが、これ以上悪い様にはならんよ…きっと」
 何か吹っ切るものがあったのか、そう言うアオの目の奥にあった愁いの様なものが消えている事にエルは気が付いた。
「ピリカが帰ると言い出した時、アオが何も訊かなかったのも気になっていたんだけど…そういう理由だったからか…」
「なんじゃ。そんな事が気になっておったのか?」
 エルは考えすぎで気苦労が多いので、もう少しピリカみたいにお気楽で良かろうにとアオが笑う。
「俺までお気楽だったら、アオに出会う前に旅は終わっていたのは確実だったと思うけどな」
 口ではぶつくさと反論をするエルだったが、その目は笑っている。
「おなかいっぱい~。もう食べられない」
 至福の表情を浮かべてようやく食べる手を止めピリカが声を上げたので見ると、山の様にあった果物はきれいさっぱり消え失せていた。
「その小さな体の何処に消えたのか…謎だな」
 いろいろあったが、そんなピリカは今も昔も変わらない事に何処か安堵をした想いを抱きながら、呆れたようにエルが呟く。
「今だから言うけど、サタンと対話していた時のピリカは、俺の知っているピリカじゃないみたいで少し怖かったんだ…」
 いつものお気楽食いしん坊の可愛らしい妖精の姿を見て安心したのか、エルがぽつんと呟きを漏らす。そんな小さな呟きをアオは聞き逃さなかった。
「相変わらずおぬしは勘が良いのう――あの時、ピリカには神がかかっておったからそう感じたのも無理はない」
「え?」
「鏡じゃよ。かがみから「我」を抜いてみなされ――「かみ」となるであろう」
 確かにあの時、一心に相手の幸せのみを祈るピリカに「我」など存在しなかった。
「!」
「無我の境地——それすなわち神がかり」
 アオの言葉を理解した瞬間、全身の毛が逆立つ感覚におそわれエルは身震いせずにはいられなかった。

 高次元最下層——赤い絨毯が敷き詰められた部屋は最初に来た時と見た目は何一つ変わってはいなかったが、ただ一つ来た時に感じた扉越しから伝わって来る異質で嫌な雰囲気はきれいさっぱり消え失せていた。それをいち早く感じたのかピリカが喜びの声を上げる。
「良かった。嫌な感じしなくなってる」
「空間の歪みの結合はまだ続いているようなので、巨人の都の長が集まる場所に出るはずじゃ」
 ピリカとエルに注意を促し、アオはゆっくりと扉を押し開いた。
「うっ…」
 扉を開いた瞬間、その向こうに広がる光景にエルが言葉を詰まらせる。
 大理石作りのホールの様な場所の床には幾何学的な図形がいくつも組み合わって描かれ、その図形の周囲にはいくつもの曲線と記号の様な文字と思しきものがびっしりと書かれていた。それは奇妙なものであったが、問題はその上にまき散らされるように部屋中に転がっている様々な動物のものと思われる半分溶けた骨おぼしき物体、そして飛び散った黒いシミが異様であった。
「何これ…」
 さすがのピリカも言葉を詰まらせる。
「悪趣味じゃな…この様子だと黒魔術の儀式でもやっておったのだろう」
 部屋の中を見回してアオが不愉快そうに顔をしかめた。
「ここ、巨人達の長たちが集う場所なのに何故こんなものが…」
「サタンが言っておったじゃろ、自分たちの欲を満たす為なら、悪い事だと知りながら喜んで協力する巨人の長たちがいると…おそらくここは闇勢力を崇拝する場所であったのじゃろう」
 そう言いながらアオは祭壇と思しき場所へ歩み寄り、床に残っていた緑の粘液を指に付けると、その正体を観察し始めた。
「こんなものまで呼び寄せておったか…」
「どうしたの?」
 苦々しい表情になったアオにピリカが訊ねる。
「これは異次元宇宙の生命体の体液…クトゥルフの仲間のものじゃ」
 アオの説明によると、この星の太古の神々と言われた事もある存在だったが、精神体を含む生命体を捕食する存在であった為、銀河連合によってこの時空間から追い払われた存在だったという。
「異様な気配はこいつのものじゃな…空間の歪みの原因はこいつが居たせいか…」
 ひとり納得するようにアオはそう言うと、深くため息を吐く。
「巨人たちにろくでもない存在がさまざまな形で裏で介入しておったようじゃな…こんなにも寄生虫がおっては、黄昏の国がめちゃくちゃになるのも当たり前じゃ」
「もう大丈夫なの?」
「クトゥルフはとりあえずは去ったようじゃ――異次元空間の生命体はサタンがどうこう出来る存在では無い故、トカゲ頭たちが仲介したと考える方が自然であるが、理由は我にもわからぬ」
 アオは高次元世界に繋がる扉に視線をやり、歪みの原因が居なくなったので、時期にここの空間の歪みも解消されるだろうと呟いた。
「変な気持ち悪いのが居なくなったのは良かったけれど、巨人さん達がみんないい子になった訳じゃないんだし、もうここには用はないし行こうよ」
 悪趣味な部屋の中に長居したくないピリカはアオとエルを促す。
「そうじゃな。低波動の次元に落ちるまでの時間はそんなに残されている訳ではないしの」
 アオは同意するとピリカとエルを肩に乗せると、儀式の間を後にした。

 物質界に戻り、巨人の都がある街に出たピリカたちが目にしたのは巨人たちの騒ぎだった。大きな巨人達の建物に上の巨大な動く絵があるのだが、有名らしい巨人の顔がいきなり剥がれ、その下から爬虫類の顔が出てくるというものが何種類も表示されたからである。それを見た街の巨人達がパニックを起こしていた。
「世界の政治家や有名セレブ、実業家に芸能人がなんで爬虫類⁈」
「いっぱい爬虫類人間がいる⁈」
「何んなのこれ⁈」
「怖いよ~」
「気持ち悪い」
「夢だ…これは夢だ…」
 叫ぶ者、悲鳴を上げるもの、茫然と立ち尽くす者、頭を抱え座り込む者とその反応は様々であったが、歴史的大事件になっているのは明らかだった。
「巨人さんの皮を被った爬虫類がいっぱいだねぇ」
 ピリカがのんびりした声で建物の上の絵を見上げて笑う。
「そりゃあ驚くと思うよ。俺も世の中に爬虫類の巨人が居るなんて初めて見るまで、想像もしなかったんだから」
 そう言うエルも巨人たちの騒ぎを他人事として笑っている。
「今まで誰も気が付かなかったとは、よく出来た仮面じゃ」
 巨人たちは映画などで使うものにそういう精巧な仮面があるのは知っていたが、それを多数の上級巨人と呼ばれる者たちの多くが実はオリオン星人だらけだったのはアオも予想外だったらしく、半分呆れながらも笑っていた。
「間違いなくトカゲ頭たちに何かあったようじゃ…サタンが何かやりおったかな」
「そう言えば、アオはあいつが変わるって言ってたよな」
「これは面白い事になってきた」
「そんな事を言ったら巨人さん達が可哀想だよぉ」
 自分たちのリーダーやカリスマたちの正体が異形のものであり、ずっと騙されたいた事を知ったのだから、何一つ疑問を持つことなく平和な生活を謳歌してきたのであるから、その混乱は無理もない話である。問題はパニックが収束してから巨人達がどういう選択をするのかである。
「騒ぎが収まる迄はこの場所に居るのは賢明でなさそうじゃ」
 何処か行きたい場所はあるかとピリカにアオが訊ねる。
「ん~」
 少しピリカは考え込んだ後、黄昏の国に来たのに想像と全然違ったし、まだ故郷に帰りたい訳でもないのでよく分からないと首を振る。
「平穏時なら一般的な観光地に案内しても構わぬのだがな…」
 混乱の最中、何があるか予想が出来ない為、アオも考え込む。
「安全に巨人たちがどうするのか見届けられる場所に心当たりはないの?」というエルの言葉を聞いてアオが何かひらめいたのか悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「なら我の住まいがよかろう」
「アオのおうち?」
 ピリカの表情がぱっと明るくなり、その目は期待に満ちたものとなる。
「——この状態では、まともに巨人達の交通機関は使えまい。非常時じゃ一気に飛ぶぞ」
 そう宣言するとアオは振袖を身につけた巨人の姿をやめ、元の龍の形をした霧に戻った。アオの霧はピリカとエルを包み込み空へ舞い上がる。
「わわっ」
 一気に巨人たちの建物の遥か上空まで上昇し、雲を眼下に見下ろしながら空を高速で移動し始めたのでエルが驚きとも悲鳴ともつかない声を上げた。
「安心せい、少しの辛抱じゃ」
 笑いを含んだアオの声が風を切る音に交じって響く。
 不安を隠せないエルに対してピリカの方は無邪気に高い早いと喜んでいるのだから、こちらは相変わらずの能天気ぶりである。
 飛行機と巨人たちが呼ぶ空を飛ぶ乗り物よりアオは早く高く飛ぶ事が出来る為、ものの数分で黄昏の国の北の湖に舞い降りた。
「ようこそ我が神殿へ」
 最初に出会った鳥居のある湖畔ではなく、直接神殿内に戻ったアオはピリカとエルをテーブルの上に下ろすと再び巨人の姿に姿を変える。
「アオのおうちって、エンマちゃんの居た場所の建物に似てるね」
 興味深げにピリカが周囲を見回して感想をもらす。
「神殿の中の空間はあの世と似たようなものじゃからの」
「似たようなものって…でも俺、物質である肉体のままだけど?」
 エルの言葉を聞いたアオはエルの体は既にピリカと同じ半霊半物質になっているので問題無いと言った。それを聞いてエルは驚きの声を上げる。
「ええ⁈ いつから⁈」
「こちらに戻ってきてからずっとじゃったが」
 何を今更といった様子でアオが笑い解説を加えた。
 あの世やら高次元やらに行き来したからので、その環境に馴染んだ精神体が以前の肉体に収まりきらない故、精神体の記憶を元に半霊半物質の体を再構築してあるという。
「…いつのまに」
「銀河連合の者たちをはじめ、我らはこの星に住む知的生命体よりずっと文明や科学というものが進んでおるのでな」
 エルの言葉に返事を返しながらアオは壁側にあったアジア文化の特徴を併せ持つ調度品を何やら触り始めた。
「あ、巨人さんだ」
 突然、空中に巨人の動く絵が浮かび上がったのを見て、ピリカが驚いたように声を上げる。
「これで巨人たちの様子を観察できる」
 ピリカとエルがいるテーブルまで戻って来たアオは椅子に腰かけると、天板の一部にそっと手を振れた。その次の瞬間、半透明の板の様な光がテーブルの上に浮かびあがる。
「これは?」
 エルの問いにアオが高次元の最下層にあった情報端末と似たようなものという返答をして、浮かび上がった光の板の付近に指を躍らせた。光の板にアオが神代文字と言っていたものに似た形が埋め尽くす。
「…ほう。サタンが役目を降りたとあるな」
 神代文字読んだのか、アオが興味深げにつぶやいた。
「サタンちゃんがどうしたの?」
「この世界の低波動操作の責任者を辞め、どこかに行ったとある」
「旅?」
 首を傾げピリカは不思議そうな表情を浮かべる。
「低周波波動不正操作、禁止されているオリオン星人の共謀及び手引きを自ら銀河連合の上層部に報告して辞職の申し出をしたが、処分保留で遺留され、それを断わって出奔だそうだ」
「出奔?」
「どこかに行ってしまったって意味」
 エルの説明にピリカは「サタンちゃんどこに行ったんだろう?」と心配そうに呟く。
 サタンの行き先はわからないが、ピリカとの対話で思うところがあったのだろうとアオは言う。
 そんな話をしている間にも巨人たちの世界の様子を映しているモニターの方は、刻々と彼らの混乱の様子を映し出していた。
「なんか巨人さんがいっぱい集まってるよ?」
「世界各地で暴動が起きている様じゃな…まあ、騙されていた事に気が付いたのだから当然ではあるが」
「イトは大丈夫かな?」
 混乱を極める巨人たちの街の様子を見つめて、エルが優しいイトの事を心配する。そんなエルにアオはイトの村は田舎だし敢えてテレビを置いていない家も多いので、もしかしたらこの歴史的大混乱の事も何ひとつ知らないかもしれないと笑った。
「巨人さん達どうなるのかな?」
「さて…どうなるかは我も解らぬか、これまでの様な酷い事になる事はなかろう」
「こんなにぐちゃぐちゃになってるのに?」
 そういうピリカは不思議そうである。
「そう「あく」であるサタンの本来の本領発揮じゃ」
「?」
「あく(灰汁)」そのものは癖が強すぎて、さまざまな問題を引き起こす為取り除かれることが多いが、使い方次第で優れた働きをする。特に様々なものが混ざり合って複雑に絡み合ってしまっているものを分離し、新たに結合する手助けをする役目を持つという――石鹸や染物なんかに灰汁を利用するのが判りやすい例と言えた。
 近目で見れば無駄に思えるものでも、大きな目で見ればこの世に存在するものに無駄はないように、微妙なバランスでこの世は構成されているのであるが、巨人族は短絡的なのでことごとくそれを「要らないもの=悪」としてきたとアオは言う。
「嘘で塗り固められていた事が露わになり、今は大混乱…すなわち混ざり合っている状態なので、そこに灰汁を投入すれば分離を促され、あるべきものがあるところに集まる事となるじゃろう」
「…あ、前にアオが「悪は灰汁」って言っていたのはそう言う事か」
 その言葉を聞いた時は意味不明であったが、アオの解説を聞いてエルはその言葉の意味を理解したようだった。
「言ったであろう…面白くなってきたと」
 混乱が落ち着いた後に現れるものが楽しみでたまらないといった様子のアオである。そんなアオをエルは複雑な表情で見つめる。
――この旅で自分たちとは明らかに違う次元の存在と様々出会ってきたが、この旅の同行者であり案内人であるアオの存在だけ、どうも彼らとは似て非なるものの様な気がして仕方がなかった。
「貴方はいったい…」
 本当は何者なのだ? そう問おうとエルがした時、ピリカが声を上げた。
「お空に銀色の大きなのがいっぱい!」
 モニターに映し出されていたのは、光を放つ銀色の様々な物体だった。

 突如、世界中の巨人達の都上空に出現したそれは、初めて目にする事になったが巨人達はその存在は知っている。
――UFO
 巨人たちは昔からそれの事をそう呼んでいた。

「銀河連合が直接介入を決断したか…」
 モニターを見ていたアオが呟きを漏らす。
「あの銀色のはなあに?」
「巨人たちの車みたいな乗りものじゃよ」
 UFOにも自家用の少人数乗りのものから、バスの様なもう少し多い人数が乗れるものもあるという。
「銀河を走る列車の様なものもあるのじゃが、それを巨人族の一人が夢物語としてそれを皆に広めた時には驚いたわ」
 その者は無意識に精神世界にアクセスして「視た」のかもしれないとアオは言う。それが巨人族の潜在能力の高さを示すものでもあった。
「これだけオリオンのトカゲ頭どもが保護指定されている星に巣食っておったのじゃから、銀河連合も放置できなくなって大掃除に出動したな」
「トカゲ頭はどうなる?」
「逮捕されて、まずは奴らの母星に厳重抗議じゃろう」
「殺したりとかは?」
 エルの問いにアオは死刑などという野蛮な事はないと苦笑いを浮かべる。
「サタンちゃん自身が居なくなったけど、低波動の次元にみんな落ちちゃうってのはどうなるの?」
「次元再編に伴う移行は決まっておるのでそれ自体はあるが、偽りで隠されていた真実が明らかになったし、銀河連合介入の動きが始まったので、この巨人族たちの低波動の次元移行は回避されたかもしれぬ」
「間に合ったの?」
「九分九厘決まっておったが、一厘の可能性でひっくり返ったようじゃ」
「一厘?」
ピリカが訊ねるとアオは小さく頷いて小さな妖精に優しく笑いかけ、その頭を撫でる。
「悪の総大将の中に隠された一厘の神仕組み。自らがあやまちに気がつき、改めなければお仕組みは発動する事はなかった…苦(九)の花を咲かす事が出来たのじゃよ。ほんに見事である」
「?」
 何の事か理解できないピリカは小首を傾げる。
「巨人達の混乱が収まれば、もう何も心配する事なく旅をする事ができるが…」
 改めてピリカはどうしたいのかとアオが尋ねる。
「憧れの黄昏の国に来たけど、なんか普通じゃない所ばかりに行ってた気がするから、おじいちゃんがお話してくれた場所に行ってみたいけど…その前に、スサをあそこから出してあげなきゃ」
 ピリカのその言葉を聞いたアオは目を丸くする。
「忘れておらなかったのか…」
「うん。だって約束したもん」
そう言ってピリカは屈託のない笑顔を見せる。
「ピリカは決めたら絶対だもんな」
 話を聞いていたエルが笑う。
「ピリカ嘘つかないもん」
 その言葉を聞いたアオは楽しそうに笑い声をあげると「そうであった」と大きく頷く。
 この小さな妖精に不可能という言葉はないのかも知れないという想いを密かに胸に抱いて――。
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