転生スライム食堂~チートになれなかった僕の普通に激動な人生~

あんずじゃむ

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第1章 生きるために食べる

第4話 お金がない

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「え…えっとっそのぉ…」

まずい、テンパっている。

異世界に来て初めての会話が巨体の兵士。当然入門証なんて持っていない。でもここで街に入らなければまたスライム飯が待っている。もうあんな残飯は口にしたくない。

ショウの食べ物への感謝の気持ちは乱高下している。

でも何も言い手が思い浮かばない。しどろもどろしている俺に、門兵はっと気づいたように叫ぶ。

「初めての方っすね!自分説明させていただきますっす!入門証は城門手前のショップでお買い求めになれますっす。1日証は2000イエン、3日証は5000イエン 1ヶ月証は30000イエン。年間パスは180000イエン。その他混雑時に入門の順番を早められるファストパスが1000イエンとなっておりますっす!」



なんかテーマパークみたいなシステムがある!

なんで?ランドなの?ユニバなの?ってかお金なんて無いに決まってんじゃん。スライム喰ってんだから俺。ゴミ喰ってんだから俺。

「あっもしかして!!」

ビクッとなり思わず下を向く。金がないのがばれたらマークされるかもしれない。一体どうすれば…

「自分のサインが目的っすか?確かに自分はいずれ騎士になる将来有望貴族っすが、まだ只の門兵ですし、照れるっす!何か書くものあるっすか?」

門兵が鉄兜を掻きながら体をクネクネさせはじめた。身の丈185㎝はありそうな筋肉質のこれは、中々に気持ちが悪い。でもわかった。この兵士はどうやら頭がちょっとあれのようだ。

しかしどうしよう。無理やり入る?でも捕まったら、いやでもそれなら臭い飯は食えるか…

臭い飯とモンスター飯どっち…うーん両方拒否したい。汗が止まらず妙案も浮かばない。どうすればいいか固まっている中、怪訝な顔の別の兵士が近づいてきた。

「モブモブ!何をやっているんだ!このボケッ!」

後ろから思い切りクネクネ男の頭に斧を叩き付けた。

「これは姉上!自分はただ説明をしてるだけっす!・・・あぁなぜか頭がすごく痛い!!」

「子供にまで迷惑かけてんじゃねえよ!ボケ!」

「迷惑なんてかけてないっす。ただ自分は説明を、あぁだめだ頭が割れるように痛い!!何が起こっているんだ!?」

「人はいくらでも入ってくるんだ!きちんとテメェの分のノルマ確認しろボケ!」

「わかりましたっす。姉上は落ち着いてください。そんなんだから婚期をあぁやめてください。斧で頸動脈を狙うのはやめるっす!」

どうやらこの2人は姉弟のようだ。全く似ていない上、姉の方はとても小さい。140cmくらいか、自分の身の丈より大きい斧を振り回し、弟の頸動脈を巧く狙っている。俺にももし兄弟がいたら・・・

うん、絶対嫌だ。何この状況。あっ弟のモブモブの顎に斧が。膝から崩れ落ちた。

立ち尽くす俺に気づき、姉上さんが踵を返して斧を突きつける。

「お前も!うん?小さいな。12才…よりは下だろう?今日は31日だから12歳以下は無料の日だ!さっさとショップで入門証もらってこいボケぇ!」

「えっあっありがとうございます」

俺は逃げるように彼女の斧が指すショップと呼ばれる小屋の前の列へと急いだ。

助かった。この世界に来て二度目の奇跡だ。無料で入れる。なんと素晴らしい月末のシステム。

ショップの中に入ると、入門手続き書を書きこむ事になった。この世界も万年筆があるらしい。

住所・氏名・年齢・・・この世界の文字が理解できるのはこの体のおかげだろうか。日本語感覚でスラスラ書ける。住所は隣で書いてる人の物を真似て偽造、年齢は取りあえず12才にしておいた。

受付の女性は書類に目を通し、俺をまじまじと見た後に判を押す。そして皆がつけているのと同じ、入門証と書かれた腕章を手渡した。

「初めての方のようなので説明させていただきまーす。当王国への入退は夜の9時まで。12歳以下の子供は大人の同伴者がいない限り、6時までになっております。時間は鐘の数でお知らせしております。6つなると6時になったという事です。もし万一、城内でお泊りになった場合は、1日分の入門証を追加でご購入しないとご退場できません」

「また3日を超える勝手な延長は不法滞在とみなされてしまいます。もし料金が支払えない場合は逮捕、監禁、強制労働、人ではなく家畜として扱いますのでお気をつけください」

サラッと怖い事言った!門に入ってもお金がなければ犯罪者か、しかしそうバレるものなのか?

「その腕章が巻かれている限り、我々はお客様の位置を把握できます。また魔法により、取り外しはできない構造になっております。無理やりはずそうとしたりすると、キュッと締まって腕を引きちぎりますのでご注意ください。」

怖い怖い怖い!!何その奴隷にでも付いていそうな監視器具は!?

でもなるほど。つまりこれが城への入退をチェックする機能を有しているようだ。

それに今の説明…言い換えれば金さえ稼げれば城内で暮らし続けることもできるって事になる。

これはでかい。安全に生活ができる希望が久々にショウの頬を緩ませる。それに魔法という言葉。

さすがは異世界。やっぱり魔法ははずせないよな。腕が引きちぎれるという言葉は聞かなかったことにして、家畜扱いとか意味が解らないことにして、魔法があるなら俺も覚えられる。そうすれば何か開花するものがあるかもしれない。俺は腕章を腕に付け、改めて門へとすすんだ。

先ほどの門兵達はまだ言い争っている。

というより一方的に弟が殴られ続けている。姉上さんの表情は恍惚としている。

「あっそういう癖か」

と呟きながら、俺は門の中へと足を踏み入れた。
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