レヴェレナット —機械的でも、それでもー

ヒゲ虎

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レヴェレナット ―起ノ壱―

機械少女を愛する少年

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 この俺、桐谷優きりたにゆうの学校には、いわゆる絶世の美女と呼ばれるような女子生徒がいる。
 学校中の人間から美しいと称される美貌を持つ、圧倒的な美女。
 その名は、烏丸愛理からすまあいり

 烏丸愛理を簡単に言葉で表すなら、完璧超人だろう。
 頭もいいし、顔もいいし、性格もいい。
 スタイル抜群で運動も得意。
 まるで人間じゃないみたいだ。
 だが、その完璧さこそが彼女の売りであり、彼女が絶世の美女と呼ばれる理由だ。
 かく言う俺も、彼女の美貌は凄まじいと思う。
 思うのだが、俺はそんな彼女を、烏丸愛理を好いていない。
 好いていないというのは、別に嫌いというわけじゃない。
 単に彼女に対して、他の男子が目を♡にして好意を寄せるほどの熱量が存在しないのだ。
 彼女に対してあるのは、その完璧さを維持している努力への尊敬と恐怖だけだ。

 それに、俺はそんな絶世の美女よりも、もっと素敵な人を知っている。
 同じクラスで、俺の隣の席の女子。

 藤島幹ふじしまみき。俺の好きな人で、俺の彼女だ。
 いつも静かで、大人しい人。
 でも、実は明るくて元気な人。
 人と喋るのが怖くて、でも人と喋りたくて、そんな気持ちが彼女を縛っているだけで、本当はとても優しい人。
 そしてなにより、彼女には他の人にない個性がある。
 それは、彼女がであることだ。

 そう、彼女は人間であって、人間じゃないのだ。



 ーーー



 待ち合わせは校門前。
 今日も今日とて、下校は幹と一緒に帰ることになっている。
 幹と付き合い始めて一か月。
 彼女が人造人間だと知ったあの日は驚いたけれど、案外何とかなっているこの頃。
 まあ、そりゃそうか。
 俺が好きなのは幹なんだ。
 幹が一体何者だろうと、好きになことに変わりはない。
 例え幹が人造人間でなく宇宙人でも、俺は幹を好きになってただろう。
 俺は完璧超人の超絶美少女より、心優しい幹が好きなんだ。
 なんて、少し惚気すぎかな。

「お待たせ」

 とか考えてたら、後ろから聞きなれた声が聞こえてきた。

「ごめんね、ちょっとstが長引いちゃって」

 俺の彼女だ。

「ううん、だいじょぶ。それじゃいこっか、今日も手伝いあるんでしょ?」
「うん・・・博士、最近忙しそうだから・・・」

 手伝いというのは、幹の家にいる博士の手伝いの事だ。
 幹を作った博士は毎日研究に勤しんでいるようで、その手伝いを幹は毎日させられているらしい。
 それも夜遅くまでだ。
 幹の彼氏としては、幹が忙しそうにしてたら手伝ってやりたい。
 なので、俺は付き合い始めてからずっと、幹と一緒に博士の手伝いをしている。
 のだが

「じゃあ手伝うよ。どうせ帰っても暇だし」
「わ、悪いよそんなの・・・昨日も一昨日も、それよりももっと前から手伝ってくれてるでしょ?」

 どれだけ手伝いに行っても、毎日申し訳なさそうにされる。
 俺としては別に苦ではないのだが、幹の気持ちもわからなくはない。
 人の家の手伝いを、毎日自分の恋人にさせてるんだ。
 そりゃ申し訳なさそうにもなる。
 まあ、こういうのは時間の問題だろう。
 もっと互いを知って、互いを理解していけば、自然と慣れるはずだ。

「俺が手伝いたいんだよ。幹の重荷を、俺は少しでも減らしたい」
「ほ、ほんと?・・・じゃあ、今日もお言葉に甘えて・・・」

 しかし、一か月たった今もこれじゃ少し不安だな・・・。
 もっと頑張って、幹の彼氏として完璧な男になろう。
 そうしよう。



 ーーー



「どうぞ、上がって」
「お邪魔しまーす」

 幹の家は、一見普通の一軒家だ。
 パッと中に入っただけじゃ、研究に勤しむ博士が住んでるようには思えない。
 だが、それはあくまで表の姿だ。
 人造人間を作るような博士だ、そんな人の家が普通なわけもない。
 この家には、なんと隠し部屋が用意されている。
 といっても、これといった凄い仕掛けはない。
 家がガシャガシャと変形して、おどろおどろしい隠し部屋がドーンと出てくるとか、そういうのはない。
 この家の隠し部屋は、幹の部屋の本棚の裏にある。
 正確には、裏にあるのは隠し扉だが。
 隠し部屋に行くには、普通に本棚をずらして、その隠し扉を開けるだけだ。
 ちなみに、その隠し扉にカギはない。
 隠してはいるけど、セキュリティは甘々なのだ。

「あ、危ないから少し下がってて」
「ああ、わかった」

 ちなみに、本棚をずらすのはいつも幹だ。
『女の子一人に結構重ための本棚を動かせるなんて、男としてどうなんだ?』という意見もあるだろうが、これにはもちろん理由がある。
 それは、幹が俺よりも力があるということだ。
 俺も一応、並の男ぐらいには力はある。
 が、彼女はそんな俺の十倍以上の力がある。
 俺が腕をプルプルさせながら本棚をずらすよりも、幹一人の方が安全なのだ。
 男としては結構な無念だが、これが安全なら仕方ない。
 俺が無駄に介入したせいで、もしも幹の身に何か起きたらと思うとゾワッとする。
 なので、俺はこの場では木偶の坊というわけだ。
 無念なり。

「よいしょっと」

 まあしかし、こんだけ軽々しく持たれると、男の意地とか無くなってくる。
 力だけが男ってわけじゃないだろうけど、女子より弱いっていうのはな・・・幹が人造人間だとはいえな。

「それじゃあ、博士のところへ行きましょう」
「・・・ああ」

 せめて、この手伝いが幹の力になれてればいいけど。
 とか考えながら、俺は幹に続いて部屋に入った。

 部屋に入ると、相変わらずぐちゃぐちゃに物が散らかった汚部屋が迎えてくれた。
 少し異臭もするし、こりゃ片付けないとな。
 なんて考えてると、部屋の奥でガチャガチャと物音を立ててる博士に

「博士、ただいま戻りました」

と、幹が丁寧にあいさつした。

「俺も手伝いに来ました」

と、俺も続けて挨拶した。

ちなみに、俺は博士の事が少し苦手だ。
博士の手伝い自体に苦はないのだが、博士本人に少々難ありなのだ。
研究者は皆そんなものなのかもしれないが、俺が苦手なのは性格とかの話じゃない。
俺が博士を苦手な理由はただ一つだ。

「あ、おかえりレヴェ! それとゆうも!」

幹の博士は、子供なのだ。






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