猫足ルート

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かき氷とスルメイカ

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「何なんだろうね、オマツリさんって」
「昔はさ、あの橋から飛び込んで死んだ幽霊みたいなモノかと思ってたの。いわゆる、成仏できなくて彷徨ってる、ってやつ」
お姉ちゃんが、かき氷用のストロー(先が開いてスプーンになってるアレ)の先をガジガジ噛みながら言う。
「でもね、最近思ったんだけど、オマツリさんはお祭りそのものなのかも」
ガジガジ。ガジガジ。
「うまく言えないけど、お祭りの時って、皆が楽しそうにしてるじゃない?だから、その熱気、というか空気から生まれたんじゃないかなって」
もの足りなかったのか、冷凍庫から氷を取り出して噛み砕いている。
ガリガリゴリゴリうるさい。
うちの姉は噛み癖が酷くて全く躾がなっていない。
「つまり、お祭りを楽しむためにいるって事?」
「そう。もっと言うと、澄川祭りを楽しむためだけに生まれた存在なのかもしれない。だから、思い出せないんじゃなくて、もともと、記憶なんて無いの。それに、澄川祭が一番盛り上がるのは、二日目の夕方から夜にかけてでしょ?ほら、花火も上がるし。だから、それを楽しんだら――酷い言い方だけど――用済みだから、皆が家に帰る途中のあの橋で消えちゃうんじゃないかな。ま、ただの憶測だし、無理矢理なこじつけかもしれないけどね」
何個氷を食べるつもりだろう。
お腹壊しても知らないよ。
「もしかしたらそうかもしれないね」
私は買い置きしていたスルメの袋を開けてお姉ちゃんに手渡す。
「そう?まあ結局、オマツリさんが何なのかなんて、本人以外、あ、本人が知らないんだった」
嬉しそうにスルメを噛み始めたお姉ちゃん。我が姉ながらまるでおっさんだ。
本日二回目。
「オマツリさんはオマツリさんだしね。……初対面のフリするのが辛いけど。私、去年、髪の毛二つ結びにして行ったじゃない?花火の前に解けちゃったから、結び直そうとしたらポニーテールがいいって言われたの。だから今年はアイツの好みにしてやったのに。つまんないの」
スルメを何杯食べる気だ、姉よ。
いか臭いおっさんになってしまうぞ。
「そうだね。……あのさ、来年は二人で会いに行ってみない?」
「三人でお祭を回るって事?」
「うん」
「でも、二人だったらなんて言って呼び止めるの?一人でつまんない……は無理だよね」
「正々堂々と言えば。よろしければご一緒して下さいって」
「まあオマツリさんに拒否権はないでしょ」
来年が楽しみだ。
いつも通り、まるで初めて会ったように振る舞って。
来年は今年みたいな失敗なんかしないように気をつけよう。
そんな事を考えながら私もスルメに手を伸ばす。
 
スルメは足一本も残っていなかった。
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