五が丘の女探偵

姉川ゆきね

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探偵の秋休暇

緊張の食堂

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私と根津さんと加奈子さんは食堂に入った。全員の顔は暗く堅い。
「どうしてこんなことに……」
 菜々美さんは弱弱しくそう言った。飯山さんが彼女の腕をさすっている。気丈そうな彼女もさっきまで夕食をともにしていた人がいきなり亡くなったとなれば、怖くなるのも当然だ。
「さっき運んだときにご遺体を見ましたが、腰の左側がナイフで刺されていました。津村さんは右利きですから、そこに刺すのは難しいでしょう。それにナイフの柄(え)はわずかに下向きでした。自分で刺したとなると柄は上向きになるのが自然です。つまり津村さんは誰かに殺害された可能性が高い」
 私は推測を述べた。
「殺人事件ってこと?」
 菜々美さんが訊く。
「その可能性が高いです」
「じゃあ、どうするのよ! 犯人はまだ近くにいるってことでしょう!」
「落ち着いてください、菜々美さん。大丈夫です。早急に解決しますから」
「なんであなたにそんなことが言えるのよ!」
 このヒステリックな菜々美さんを落ち着かせるためには方法は一つだ。
「私は探偵です」
「……え?」
 この場所で名乗るつもりはなかったが、この状況下では仕方ない。
「私はエメラルド探偵事務所の竹井希杏です」
 私は菜々美さんに名刺を渡した。いつも持っていてよかった。
 菜々美さんは名刺をじっくり見ると、
「……本物の探偵なのね」
と、納得してくれた。
「こちらの根津さんは警視庁捜査一課の刑事さんです」
 すると、根津さんは警察手帳を見せた。
「だから、大丈夫です。私たちが必ず解決します。ご協力お願いします」
「わかったわ」
 菜々美さんは名刺をポケットに入れた。
「さて、早速みなさんにこれまでにわかったことを報告します」
 私がそう言うと、全員の視線が集まった。探偵としてこういう場面は何度も経験したけど、やっぱり慣れないな。
「現場の様子から見て、犯人が窓から出入りした形跡はありませんでした。つまり、出入りしたのは部屋のドアからになります。土砂崩れが起きるぐらいの大雨でしたし、ペンションの外からわざわざ来るとは考えにくいですね」
「探偵さんは何が言いたいの?」
 イライラした顔で村松さんが言った。
「犯人はこの中にいるということです」
    
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