五が丘の女探偵

姉川ゆきね

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探偵の秋休暇

エピローグ

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 私と根津さんは楓山を下りて、エメラルド探偵事務所に戻ってきた。ボストンバッグを車から降ろすと、所長が根津さんを中に招き入れた。
「二人とも大変だったわね。お疲れ様」
 所長がソファーに座った私と根津さんの前に飲み物を用意してくれた。私専用の湯飲みに入った温かい緑茶である。隣の根津さんも彼専用の湯飲みが前に置かれている。根津さんがあまりにしょっちゅう事務所に来るものだから、いつか所長が用意したものだ。
「本当は明日まで休暇を取っていたのに、今から来いって係長に呼び戻されました」
「あらお忙しいこと。じゃあここであまりのんびりもしていられないわね。――おかわり、持ってくる?」
「お願いします」根津さんはもう空になった湯飲みを所長に渡し、所長は台所に消えていった。
「そういえば、あの二冊の台本の謎、よく解けたわね」
 私は湯飲みを煽った。
「同じ映画研究会にいて、同じ夢をもつ二人のうち一人だけかなえた。そうすると、かなわなかった方はかなった方に心の突っかかりを抱いているんじゃないかと思ったんだよ。それって結構苦しくて、あいつを殺せば解放されるって思うんだよ」
「根津さんが刑事を目指してたときにそういうことがあったんだ」
「まあな。だから絋一郎さんの気持ちがちょっとわかるんだ。でも、彼は殺したいっていう気持ちを乗り越えられたとき自分の夢はかなうんだってことを知らなかった。可哀想な人だよ」
 そんなこと思いもしなかった。
「私はまだまだね。そんなことも見抜けないようじゃ」
「お前はまだ中身はガキだからな」
「ひどい!」
 そのとき携帯電話の着信音が鳴った。「俺の携帯だ」
 根津さんは電話に出た。
「……はい、……はい。……わかりました、すぐ向かいます。――大人の俺には仕事が入った」
 根津さんは勝ち誇ったような顔をして電話を切った。私のことをガキって言ったくせに、そのいたずら顔がガキなのよ。――でも、なんかキラキラしている。
「所長、お茶キャンセルで。今日のところは失礼します」
 根津さんはあわただしく荷物を持って事務所を出ていってしまった。
「あら、せっかく淹れたのに」
 ちょうど台所から出てきた所長はちょっぴり残念そうな顔でその湯飲みをテーブルに置いて隣に座った。
 でも、所長。根津さん、めちゃくちゃキラキラしてたから、そんな顔しないでください。
 加奈子さんが言っていたキラキラの魅力がよくわかる私だった。
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