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第1章:全てを司りし時計の行く末
1章10話 ヒロイン
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「湊きゅんは今の話から推測するに、一度死んだんだよね」
「ああ。簡単に言ってくれるが、絶命したよ。切り刻まれてな」
クイーンハートは状況の飲み込みが異様に早く、湊が殺され、マーニャの力が宿る左目の魔眼によりタイムリープしたことを理解していた。
「お兄さん、一度死んでタイムリープしたって本当?」
ミミは何やら自身の目を輝かせて湊のことを見つめる。ミミは元々湊の魔眼に興味を示していた。本人曰くかっこいいものが好きなようで、どうも魔眼をもつ湊と、そのタイムリープが気なるようであった。
「ああミミ。俺は本当に一回死んだんだ。でも、魔眼に宿るこのロリ猫やろうにタイムリープさせられた」
「か、かっこいいよお兄さん、マーニャさん!」
ミミは非常に興奮しているのか、湊とマーニャさんを絶賛する。
「そんな時を司る魔法なんて聞いたことない。そんなことが本当に可能だなんて……」
「いやいや。俺の力というよりこのロリ猫の力だから……俺は別にかっこよくはないし」
「何謙遜してるのにゃ。力を与えたのは僕でも、それをコントロールして次に生かしたのはお兄さんなのにゃ」
湊はミミから熱い視線を受ける。タイムリープなんて魔法、確かにその類のものは恐らくは通常の魔法の域を完全に超えているだろう。しかし、湊は自身が何も凄くなく、ただマーニャの力が異常なのだと謙遜する。一方、マーニャもマーニャで湊の判断能力と冷静さを賞賛しているようで、謙遜することはないと擁護する。
「私、誰かのためになりたいって魔法を学んできたの。お兄さん」
「あ、ああ、そうなのか……」
「そして、魔眼持ちのお兄さんが倒れていて、運命的な何かを感じたの。可哀想に思って、連れ帰って……そしたら、まさかそのお兄さんがこんな凄い魔眼を持った人だったなんて。しかも、過去に存在した地球人!」
「いやいや、俺は何も凄くなくて、ただマーニャの力で……」
「まるで私、不思議な物語の主人公様のヒロインみたい!」
ミミは湊との運命的な出会いを感じ、その側に初めて寄り添った自分を物語のヒロインみたいと表現する。
「私、お兄さんのヒロインになれるかな……?」
「ヒロインってお前……」
どうもミミの湊への期待は高いらしい。しかし、彼女から見た彼の存在は確かに異質なもの。何故なら彼は過去地球に存在した地球人であり、過去から未来に来た存在であり、魔眼を持った存在でもあるからだ。
「なれるよ、ミミちゃん。君ならヒロインに!」
クイーンハート校長はミミに対して、ガッツポーズをする。
「ミミちゃん、湊きゅん。君達は気づいているかもしれないが、このワールドクロックの存在は他言無用だ」
「ああ」
「マーニャの魔力を感じ取ったと同時に、その側にミミちゃんがいたのは、校長室に入る前から気づいていた。だけど、湊きゅんだけでなくミミちゃんにもワールドクロックの存在を明かした」
クイーンハートはどうも校長室に入る前からマーニャの魔力に気づいていたらしく、その隣にいるミミの存在も分かっていた。しかし、あくまでワールドクロックの存在は秘匿されている。この状況では、マーニャと関係を持った湊だけに事の事情を話し、魔法女学院の2年生徒であるミミには内緒にしておくこともできた。しかし、クイーンハートはこの2人に秘密を明かしたのだ。
「湊きゅんにはワールドクロックの短針を取り戻してほしい気持ちが私にはある。しかし、今回のようにいざこざが起きて、湊きゅんが襲われることもあると思うの」
「俺だけじゃ心細いからミミも巻き込んで協力しろってことか?」
「そうだよ湊きゅん。湊きゅんとミミ、君達は今日からタッグを組むんだ」
「お兄さんと、タッグを組む……」
クイーンハートは湊だけではなく、ミミも協力して、このワールドクロックの一連の出来事を探って欲しいようだった。ミミは興味津々で、嬉しそうな顔をしているものの、湊本人は巻き込んでしまった罪悪感が多少なりともあった。
「ミミ、なんか巻き込んで悪いな」
「いやお兄さん。大歓迎だよ」
ミミはそっと湊を手を握りしめる。
「近い、近いよミミ」
ミミと湊の距離は非常に近い。彼女のピンク色の髪が湊に触れ、それなりに膨らみのある胸が押し当てられる。
「さてさて、いい雰囲気になってきたじゃないか湊きゅん、ミミちゃん」
「いやどこがだよ」
クイーンハートは湊を少々小馬鹿にするのが好きなようであった。
「さて、湊きゅん達は今日はお疲れだろう」
「ああ、非常に疲れた」
「湊きゅんを襲ったやつが何者かは分からない。ミミの家も天井がぶっ壊れたらしいじゃないか。今日は安全も考慮して、この魔法女学院の寮に泊まるといいよ」
湊は何者かに襲われ、ミミの家は現在天井に大きな穴が空いている。この状況で安全も考慮すると、この魔法女学院の寮にひとまず宿泊するのが良さそうだった。
「おいおい待ってくれよクイーンハート校長!」
「どうしたんだい湊きゅん」
「ここは魔法女学院だろ!寮も女子寮じゃんか」
「まあ、何かしら嘘の事情を生徒には伝えておくから大丈夫よ湊きゅん。お風呂だって、そうだなあ、20時から1時間は君専用にしてあげようじゃないか!えっへん!寮内にある温泉を楽しみたまえ!」
「まじかよ……」
魔法女学院は完全女子制の学院である。その寮もまた女性しか住んでおらず、湊は自身が男だからか躊躇してしまった。
「俺男だぜ?」
「大丈夫さ。嘘の事情を伝えると言ったろ湊きゅん!しかも、魔法女学院には1年前、可愛い男の子が寮に住んでいたんだよ?2ヶ月くらいだけどね。可愛いうちの生徒だよ?」
「えっ?どういうこと?」
魔法女学院は完全女子制の学校のはずだが、何故か男の子が一時的に寮に住んでいたようであった。
「例外的に男の子が学園に入学した例もあると言うことだよ、湊きゅん」
「はあ……よく分からねえが」
「まあだから、そんなに心配しなくても大丈夫だってえ!」
クイーンハートは湊に心配する必要はないよと耳元で呟く。しかし何故かその目はミミを凝視していた。
「ちなみに、湊きゅんにはミミと一緒の部屋に泊まってもらう」
「だからなんでだよ!」
「まあまあ、そっちのほうが安全でしょうがあ。頑張りたまえ!」
クイーンハートはそう言って、何故か意味ありげにミミの隣に足を運ぶ。
「これでミミちゃんも喜ぶだろう?」
「え、は、はい!」
湊は校長がミミに何を言ったからは分からなかった。さらには、なぜかクイーンハート校長はミミの膨らんだ胸に手を当てて呟く。
「ミミちゃん。心配せずとも、湊きゅんは受け入れてくれるよ。この身体も」
湊にはそのクイーンハートとミミの会話の意味がよく分からなかった。何の話をしているのか、何を意図しているのかは謎のままであったが、ひとまず湊、ミミは寮に向かうことにした。
校長室を出た後、校長がハーギルを呼んでくれたようで、今夜お泊まりする寮室まで丁寧に案内してくれたのだった。
「湊君。どうだい、何か君達の襲撃に関して話がまとまったかね?」
「ああまあ。ある程度は話せたかも。でも今日は疲れたから、ひとまず寮に泊まらせてもらう形になりました」
「そうだね。湊君もミミも、今日はひとまずゆっくり休むといいさ。でも、なんで君達は同じ部屋なんだい?」
「それは俺が聞きたいですよ!」
ハーギルは当たり前の疑問を口にするが、何故かあまり気にせずに追求をやめる。その後、湊とミミが寮室に入り、ハーギルはその場を去った。
「はあ、疲れたなミミ」
「そうだね、お兄さん」
「そうにゃるねえお兄さん!」
「うわあ!」
湊は寮室に案内されるまで、ミミと2人でいたのだが、突然としてマーニャがその場に顕現した。
「びっくりしたあ。お前のこと忘れてたわ」
「びっくりするでない!僕はお兄さんの魔眼に宿った魔神ぞ!顕現するもしないも僕の自由にゃる!」
マーニャはプンプンと怒ったかと思えば、もういいにゃる、とだけ言って再び消失した。マーニャは湊の魔眼に宿った存在であり、自由に顕現したり消失したりできる。魔眼を有している限り、実質いつも一緒に行動しているのと変わらないのではあるが。
「びっくりさせてごめんね、ミミ」
「なんでお兄さんが謝るの?」
「いやいや、あのバカロリ猫の飼い主は俺だから……って痛!」
マーニャを小馬鹿にした瞬間に、湊の左目に痛みが走る。
「くそっ。本当に厄介な魔眼だなちきしょう」
「ふふ、お兄さん変なの」
ミミは湊とマーニャのやりとりが面白いらしく、微笑ましいとその口もとを緩める。
そんな湊とミミは、しばらくその寮室でゆったりと喋りながら、幾分くつろいだ後、時計に注目する。
「なあミミ。今日はいっぱい動いて疲れただろ」
「うん。汗びっしょりかも……」
「もうすぐ20時だから、その、温泉に入りにいこうかなって」
ハーギルに寮室まで案内された際に、ついでに1階通路より行ける温泉の場所を説明されていた。クイーンハートは特別に、今夜の20時から1時間だけ温泉を貸切にしてくれたため、汗を流そうと温泉に行くことを伝える。
ミミはわざわざ貸切のお風呂に入らなくても、21時以降または20時前に温泉に向かうこともできる。湊はもちろん、この女子学校では女性用の温泉しか存在していないため、貸切時間帯にお風呂に入る必要がある。
「もうすぐ20時だし、俺はこの貸切時間帯しかお風呂に入れない。だから、先に入ってくるね、ミミ」
「うん、分かった。私は後でお風呂に入ることにするよ」
結局、湊がミミより先にお風呂に入ることになった。20時ももう近いため、ハーギル先生に教えてもらった温泉へと向かった。
「はあ、それにしても女子学校の温泉に入るなんて、ちょっと悪い感じがするよなあ」
先程まで魔法女学院の生徒が入浴していたという事実があるため、湊は少し悪い気がした。しかし、同時に少々気持ちも高ぶっており、やや男子特有の興奮も感じながら温泉へと足を踏み入れたのだった。
「ああ。簡単に言ってくれるが、絶命したよ。切り刻まれてな」
クイーンハートは状況の飲み込みが異様に早く、湊が殺され、マーニャの力が宿る左目の魔眼によりタイムリープしたことを理解していた。
「お兄さん、一度死んでタイムリープしたって本当?」
ミミは何やら自身の目を輝かせて湊のことを見つめる。ミミは元々湊の魔眼に興味を示していた。本人曰くかっこいいものが好きなようで、どうも魔眼をもつ湊と、そのタイムリープが気なるようであった。
「ああミミ。俺は本当に一回死んだんだ。でも、魔眼に宿るこのロリ猫やろうにタイムリープさせられた」
「か、かっこいいよお兄さん、マーニャさん!」
ミミは非常に興奮しているのか、湊とマーニャさんを絶賛する。
「そんな時を司る魔法なんて聞いたことない。そんなことが本当に可能だなんて……」
「いやいや。俺の力というよりこのロリ猫の力だから……俺は別にかっこよくはないし」
「何謙遜してるのにゃ。力を与えたのは僕でも、それをコントロールして次に生かしたのはお兄さんなのにゃ」
湊はミミから熱い視線を受ける。タイムリープなんて魔法、確かにその類のものは恐らくは通常の魔法の域を完全に超えているだろう。しかし、湊は自身が何も凄くなく、ただマーニャの力が異常なのだと謙遜する。一方、マーニャもマーニャで湊の判断能力と冷静さを賞賛しているようで、謙遜することはないと擁護する。
「私、誰かのためになりたいって魔法を学んできたの。お兄さん」
「あ、ああ、そうなのか……」
「そして、魔眼持ちのお兄さんが倒れていて、運命的な何かを感じたの。可哀想に思って、連れ帰って……そしたら、まさかそのお兄さんがこんな凄い魔眼を持った人だったなんて。しかも、過去に存在した地球人!」
「いやいや、俺は何も凄くなくて、ただマーニャの力で……」
「まるで私、不思議な物語の主人公様のヒロインみたい!」
ミミは湊との運命的な出会いを感じ、その側に初めて寄り添った自分を物語のヒロインみたいと表現する。
「私、お兄さんのヒロインになれるかな……?」
「ヒロインってお前……」
どうもミミの湊への期待は高いらしい。しかし、彼女から見た彼の存在は確かに異質なもの。何故なら彼は過去地球に存在した地球人であり、過去から未来に来た存在であり、魔眼を持った存在でもあるからだ。
「なれるよ、ミミちゃん。君ならヒロインに!」
クイーンハート校長はミミに対して、ガッツポーズをする。
「ミミちゃん、湊きゅん。君達は気づいているかもしれないが、このワールドクロックの存在は他言無用だ」
「ああ」
「マーニャの魔力を感じ取ったと同時に、その側にミミちゃんがいたのは、校長室に入る前から気づいていた。だけど、湊きゅんだけでなくミミちゃんにもワールドクロックの存在を明かした」
クイーンハートはどうも校長室に入る前からマーニャの魔力に気づいていたらしく、その隣にいるミミの存在も分かっていた。しかし、あくまでワールドクロックの存在は秘匿されている。この状況では、マーニャと関係を持った湊だけに事の事情を話し、魔法女学院の2年生徒であるミミには内緒にしておくこともできた。しかし、クイーンハートはこの2人に秘密を明かしたのだ。
「湊きゅんにはワールドクロックの短針を取り戻してほしい気持ちが私にはある。しかし、今回のようにいざこざが起きて、湊きゅんが襲われることもあると思うの」
「俺だけじゃ心細いからミミも巻き込んで協力しろってことか?」
「そうだよ湊きゅん。湊きゅんとミミ、君達は今日からタッグを組むんだ」
「お兄さんと、タッグを組む……」
クイーンハートは湊だけではなく、ミミも協力して、このワールドクロックの一連の出来事を探って欲しいようだった。ミミは興味津々で、嬉しそうな顔をしているものの、湊本人は巻き込んでしまった罪悪感が多少なりともあった。
「ミミ、なんか巻き込んで悪いな」
「いやお兄さん。大歓迎だよ」
ミミはそっと湊を手を握りしめる。
「近い、近いよミミ」
ミミと湊の距離は非常に近い。彼女のピンク色の髪が湊に触れ、それなりに膨らみのある胸が押し当てられる。
「さてさて、いい雰囲気になってきたじゃないか湊きゅん、ミミちゃん」
「いやどこがだよ」
クイーンハートは湊を少々小馬鹿にするのが好きなようであった。
「さて、湊きゅん達は今日はお疲れだろう」
「ああ、非常に疲れた」
「湊きゅんを襲ったやつが何者かは分からない。ミミの家も天井がぶっ壊れたらしいじゃないか。今日は安全も考慮して、この魔法女学院の寮に泊まるといいよ」
湊は何者かに襲われ、ミミの家は現在天井に大きな穴が空いている。この状況で安全も考慮すると、この魔法女学院の寮にひとまず宿泊するのが良さそうだった。
「おいおい待ってくれよクイーンハート校長!」
「どうしたんだい湊きゅん」
「ここは魔法女学院だろ!寮も女子寮じゃんか」
「まあ、何かしら嘘の事情を生徒には伝えておくから大丈夫よ湊きゅん。お風呂だって、そうだなあ、20時から1時間は君専用にしてあげようじゃないか!えっへん!寮内にある温泉を楽しみたまえ!」
「まじかよ……」
魔法女学院は完全女子制の学院である。その寮もまた女性しか住んでおらず、湊は自身が男だからか躊躇してしまった。
「俺男だぜ?」
「大丈夫さ。嘘の事情を伝えると言ったろ湊きゅん!しかも、魔法女学院には1年前、可愛い男の子が寮に住んでいたんだよ?2ヶ月くらいだけどね。可愛いうちの生徒だよ?」
「えっ?どういうこと?」
魔法女学院は完全女子制の学校のはずだが、何故か男の子が一時的に寮に住んでいたようであった。
「例外的に男の子が学園に入学した例もあると言うことだよ、湊きゅん」
「はあ……よく分からねえが」
「まあだから、そんなに心配しなくても大丈夫だってえ!」
クイーンハートは湊に心配する必要はないよと耳元で呟く。しかし何故かその目はミミを凝視していた。
「ちなみに、湊きゅんにはミミと一緒の部屋に泊まってもらう」
「だからなんでだよ!」
「まあまあ、そっちのほうが安全でしょうがあ。頑張りたまえ!」
クイーンハートはそう言って、何故か意味ありげにミミの隣に足を運ぶ。
「これでミミちゃんも喜ぶだろう?」
「え、は、はい!」
湊は校長がミミに何を言ったからは分からなかった。さらには、なぜかクイーンハート校長はミミの膨らんだ胸に手を当てて呟く。
「ミミちゃん。心配せずとも、湊きゅんは受け入れてくれるよ。この身体も」
湊にはそのクイーンハートとミミの会話の意味がよく分からなかった。何の話をしているのか、何を意図しているのかは謎のままであったが、ひとまず湊、ミミは寮に向かうことにした。
校長室を出た後、校長がハーギルを呼んでくれたようで、今夜お泊まりする寮室まで丁寧に案内してくれたのだった。
「湊君。どうだい、何か君達の襲撃に関して話がまとまったかね?」
「ああまあ。ある程度は話せたかも。でも今日は疲れたから、ひとまず寮に泊まらせてもらう形になりました」
「そうだね。湊君もミミも、今日はひとまずゆっくり休むといいさ。でも、なんで君達は同じ部屋なんだい?」
「それは俺が聞きたいですよ!」
ハーギルは当たり前の疑問を口にするが、何故かあまり気にせずに追求をやめる。その後、湊とミミが寮室に入り、ハーギルはその場を去った。
「はあ、疲れたなミミ」
「そうだね、お兄さん」
「そうにゃるねえお兄さん!」
「うわあ!」
湊は寮室に案内されるまで、ミミと2人でいたのだが、突然としてマーニャがその場に顕現した。
「びっくりしたあ。お前のこと忘れてたわ」
「びっくりするでない!僕はお兄さんの魔眼に宿った魔神ぞ!顕現するもしないも僕の自由にゃる!」
マーニャはプンプンと怒ったかと思えば、もういいにゃる、とだけ言って再び消失した。マーニャは湊の魔眼に宿った存在であり、自由に顕現したり消失したりできる。魔眼を有している限り、実質いつも一緒に行動しているのと変わらないのではあるが。
「びっくりさせてごめんね、ミミ」
「なんでお兄さんが謝るの?」
「いやいや、あのバカロリ猫の飼い主は俺だから……って痛!」
マーニャを小馬鹿にした瞬間に、湊の左目に痛みが走る。
「くそっ。本当に厄介な魔眼だなちきしょう」
「ふふ、お兄さん変なの」
ミミは湊とマーニャのやりとりが面白いらしく、微笑ましいとその口もとを緩める。
そんな湊とミミは、しばらくその寮室でゆったりと喋りながら、幾分くつろいだ後、時計に注目する。
「なあミミ。今日はいっぱい動いて疲れただろ」
「うん。汗びっしょりかも……」
「もうすぐ20時だから、その、温泉に入りにいこうかなって」
ハーギルに寮室まで案内された際に、ついでに1階通路より行ける温泉の場所を説明されていた。クイーンハートは特別に、今夜の20時から1時間だけ温泉を貸切にしてくれたため、汗を流そうと温泉に行くことを伝える。
ミミはわざわざ貸切のお風呂に入らなくても、21時以降または20時前に温泉に向かうこともできる。湊はもちろん、この女子学校では女性用の温泉しか存在していないため、貸切時間帯にお風呂に入る必要がある。
「もうすぐ20時だし、俺はこの貸切時間帯しかお風呂に入れない。だから、先に入ってくるね、ミミ」
「うん、分かった。私は後でお風呂に入ることにするよ」
結局、湊がミミより先にお風呂に入ることになった。20時ももう近いため、ハーギル先生に教えてもらった温泉へと向かった。
「はあ、それにしても女子学校の温泉に入るなんて、ちょっと悪い感じがするよなあ」
先程まで魔法女学院の生徒が入浴していたという事実があるため、湊は少し悪い気がした。しかし、同時に少々気持ちも高ぶっており、やや男子特有の興奮も感じながら温泉へと足を踏み入れたのだった。
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