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第1章:全てを司りし時計の行く末

1章12話 お風呂の大事件!!暴れしミミのミミ-後編

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「今すぐにこの状況の説明を求む!」

「湊と同意見にゃる!」

現在、クイーンハートに手招きされ、ミミ、湊、クイーンハート、マーニャで仲良くお湯に浸かっている最中である。

「まあまあ、お姉さんの裸に興奮しないの、湊きゅん」

「いや確かに校長とお風呂入っている事実に驚きを隠せないけれども!」

湊は当初1人でゆっくり温泉を謳歌するはずだった。しかし今、マーニャが顕現、ミミが乱入し、クイーンハートまでが突入してくるカオス的状況が展開されている。
そして、通常ならば湊は女子と混浴している事実を糾弾するはずなのだが、今は話の主題となっているのはミミのち⚪︎ぽであった。

「率直に言おう、湊きゅん、そしてマーニャ様。このミミちゃんは、紛れもない女子である」

「いや、確かにそうだと俺も考える、いや、考えていた。だけど、ち⚪︎ぽが俺の思いを踏み躙るんだ……」

「そうにゃるそうにゃる。男根が生えているのにゃる。それも、湊のよりも立派な!」

湊もマーニャも、ミミが女子であることは知っている。そう思っている。いや、思っていたのだ。しかし、ミミの股間にち⚪︎ぽが存在していることが分かり、当初女子だと信じ切っていたミミに疑いの目を向けてしまう。

「だから言っただろ。ミミは女子だと」

「じゃあなんでち⚪︎ぽが生えてんだよ、ミミ、クイーンハート校長!」

「だから湊きゅん、さっきも言ったが、これは呪いなんだ。正体不明のね」

クイーンハートはこのミミの物について、呪いという言葉を話に持ち出した。

「呪いとはどういうことにゃる!?」

「私にも詳細は分からない。だが、これを良く見てくれ」

クイーンハートが発言した後、彼女はミミを立たせるように指示する。

「さあミミちゃん、立ってくれ」

「何を立ち上がらせるのにゃ!?」

「違いますマーニャ様。邪推しないで下さい。単純にミミちゃんに立ち上がって欲しいだけです」

校長が合図すると、ミミは素直に浸かっていたお湯から腰を上げ、立ち上がった。
しかし、角度的にミミの物がマーニャの眼前にくるポジションとなってしまった。

「なんて物をまじまじと見せるのにゃ。お、おお、お”お“お”お“お”お“お”、お“!お”!」

マーニャは眼前に現れた物に、白目を剥きそうな勢いで上目遣いをして汚い叫び声をあげた。最初は「お」とだけ発音していたが、次第に濁点が付くような叫び声になり、首をぐるんぐるんと振りながら、次第にリズミカルに跳ねるように、痙攣するように「お“」と汚いうめきをあげた。

「湊きゅん、マーニャ様。これを見てください」

「何を見せつけるのにゃあ!」

「何してるんですかクイーンハート校長!」

湊とマーニャは何に注目させてんだこの野郎とクイーンハートを糾弾する。
しかしクイーンハートの意図は違ったらしく、マーニャのお腹辺りを軽くなぞった。

「2人とも、これを見て下さい。このお腹に刻まれたオスとメスのマークを」

「こ、こ、これは!」

クイーンハートはミミのお腹を指し示すと、その場所には丸い輪っかに矢印または十字が付いて、いわゆるオスメスマークが刻まれていた⚪︎→、⚪︎十
その紋様に対して、マーニャは思い当たるものがあるようで――

「これは呪縛符!」

マーニャはそのオスメスマークを見るや否や、それを呪縛符と表現した。

「マーニャ!一体なんなんだこの卑猥なマークは!それに呪縛符ってなんだよ!」

湊はミミのお腹に刻まれたマークに対して、何かしら知っていそうなマーニャにその答えを求める。

「これは呪縛符だにゃ!何者かに長期に渡る魔法を掛けられた際に、その効果を持続させるために身体に刻む符号。略さずに表現するなら、呪縛持続効果符号のことなのじゃ!」

呪縛持続効果符号――湊はその言葉と説明を聞いて、頭を整理する。彼も馬鹿ではない。この話の展開から、クイーンハートと言わんとすることを理解しようと努める。

「つまりあれか?この呪縛符号を刻まれたミミは、女子であるのにち⚪︎ぽが生えてきた、いや、生えさせらえたと!」

「まあ、湊きゅんの説明はまあ当たりっちゃ当たりかなあ」

「誰が、何のために!どんだけ悪趣味な呪いだよちくしょう!俺の可憐なミミを返せ!許さねえぞち⚪︎ぽ!」

クイーンハートの残酷な宣言、それは、何者かがミミにち⚪︎ぽを生えさせる呪縛符を刻み、それが原因で本来は女の子であったミミに物が生えてきたというものであった。

「どんな魔法にゃる!そんな魔法聞いたことないにゃる!てか、聞きたくもないにゃるよおおお!!」

マーニャの発言は真っ当なもので、誰が何のために、なぜそのような魔法が存在するのかすら疑問で仕方なかった。

「そうだね。湊きゅんとマーニャ様の意見はごもっともなんだよ。なぜこのような呪縛符が掛けられているか、その理由すら謎なんだ」

クイーンハートですら、そのち⚪︎ぽが生えてくる呪縛符の真意が分からないらしい。この魔法女学院の校長ですら理解することができないミミの呪縛符は、このカオスな状況を作り上げたようであった。

「だらか私は、この不可解な呪縛符を刻んだ謎の人物を、チマルポXと読んでいる」

「何!チマルポXだと!?」

「チマルポXかにゃる!?きめー名前だにゃるね、クイーンハート」

チマルポX―クイーンハート校長がそう名付けた人物は、未だその存在が確認されていない。ただ判明している事実――それは、この魔法はミミのお腹に呪縛符の形で存在していることのみ。

「クイーンハート。ちなみに「ち⚪︎こX」じゃななくて「ちまるぽX」と読んでいるのはなぜかにゃ?」

「やめて下さいをマーニャ様。私とて可憐な乙女。そんな名前直球すぎます。卑猥な名前はボカして隠さなきゃあ⭐︎」

「隠せてねえんだよ、クイーンハート校長!!」

クイーンハートはあくまで直球な名前を隠して命名したつもりらしいが、チマルポXという言葉からはその卑猥なち⚪︎ぽという言葉を的確に隠すには至っていない。そのことに湊がすぐさま突っ込みを入れる。

「さっきからいいかげんにしなさいああい!!」

突如として、ミミがクイーンハートとマーニャを睨みつける。

「なんでお兄さんの前でち⚪︎ぽ晒しながら議論されなきゃいけないのお!」

ミミはそう言ってすぐさまお湯の中に潜り込んだ。そしてザブッと音を立てて再び水面にから顔を出す。

「さっきからち⚪︎ぽち⚪︎ぽち⚪︎ぽうっせえんだよ!」

「ご、ごめんミミちゃん……」

通常のミミでは考えられない卑猥な言葉の連鎖であるが、流石の本人も怒り心頭であったようだ。

「知りたいなら教えてあげる!この呪縛符が刻まれた私の身体は、状況に応じて女性と男性の身体が入れ替わっちゃうんだからあ!」

「身体が入れ替わるとにゃ!?」

「そうなんだからあ!普段はち⚪︎ぽなんて生えてない。通常の女性の身体なんだから。そして髪の色も本来はピンク色。だけど状況によって男子的な特徴を持った身体――つまりち⚪︎ぽの生えた胸ぺたの赤毛人間になっちゃうんだからあああああ!」

ミミがその呪縛符の刻まれた身体に付いて真実をぶちまける。

「ミミちゃんの言う通り、普段は普通の女の子なんだよ、湊きゅん。だけど、男性的特徴を持つように変化する時があって、それが起きると、性格も今のミミちゃんみたいに積極的になって、髪の色も真っ赤になるのよ」

クイーンハートがミミの説明に補足を加えた。湊は自身の頭の中で状況を整理する。
ミミは普段は正真正銘の可愛い女の子で女性の身体を持つ。しかしその変化が現れると、男性の物が生えてきて、胸はまな板になり、髪が真っ赤に染まる。そして性格もガラッと変わり、普段は消極的なおとなしいミミが、より積極的なアクティブ人間になるということであった。

口調と髪色が変わったのはそれが原因であった。

「ミミ……」

「お兄さん……」

ミミは全ての真実をぶちまけ、再び湊の瞳を見つめる。

「やっぱり私、お兄さんのヒロインにはなれないのかな……」

湊はこの温泉の中では気付き難かったが、しかし、ミミが泣いていることが分かった。
あからさまに大泣きしている訳ではないが、その目には涙が溜まっていることが感じ取れた。

「ミミ、お前……」

湊はミミのある発言を思い出す。ミミはヒロインという言葉に異常に反応している節があった。それは単純に魔眼持ちの湊を助けるポジションという意味で捉えられていたが、もしかしたらヒロイン、つまり女性として彼を助けるそのポジションに自身がいても良いのかという根本的な疑念があったのではないのかと深読みする。

何故ならヒロインは女性であり、当のミミは時により男性的、女性的にもなる、言わば両性的性質を兼ね備えているのだから。

「もう、知らない!」

ミミはその場を去るように温泉の出口へと走り出した。

「待て、ミミ!」

湊は追いかけようと走り出すが、すぐさま滑りやすい温泉のフロアで転倒し腰を打った。

「いててて」

すぐさま立ち上がる湊であったが、その場にミミの姿はなく、ただただ彼女に拒絶されたような虚無な空間のみが残るだけであった。

「なんでこんなことになっちまったんだ……」

そうだ、あの場ですぐにミミを否定するべきだったと後悔した。ミミはヒロインになれないと呟き、泣いて、この場を飛び出した。
それをあの場で否定するべきだったんだと悔やむ。

「クイーンハート校長。なんでミミはこの温泉に入ってきたんでしょうか」

「多分、湊きゅんにこのまま自分の秘密を隠しておけなくて、早々に打ち明けたかったんだと思うの。私もその気があるじゃないかと思って、温泉を貸切にしたんだけど……」

クイーンハート校長も、流石に時期早々だったかもしれないと後悔した。どうやら彼女もまたミミが秘密を打ち明ける可能性を悟っていたらしく、それを予期してこの時間を用意してくれていたらしい。
しかし湊、そしてマーニャを含め動揺が大きかったようで、真実を知って、すぐさま受け入れると言う行動には出れなかった。

そのため、湊は結果として大切なミミの信頼を裏切る形となってしまった。

「クイーンハート校長」

「なんだい、湊きゅん……」

「俺、ミミを追いかけます」

クイーンハートに湊はそう宣言した。

「ごめん、湊きゅん。私の配慮が回らずに……」

「いいや校長。後悔は後からでいい。今はミミが心配なんだ。だから――」

湊はすぐさま走り出し、温泉の出口へと向かった。彼はマーニャに来てくれと合図し、それに「当たり前にゃる」と反応して姿を消失、魔眼へと戻って行った。
クイーンハートは自分も追いかけようと足を踏み出すが、湊達の方がミミの気持ちを分かってくれているのではないかと考えて、その足を止めた。

「待ってろ、ミミ――」

こうして、ミミの捜索作戦が始まったのだった。
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