25 / 38
第1章:全てを司りし時計の行く末
1章24話 ダブルピース
しおりを挟む
「ダブルピース、お前らが次の対戦相手かよ」
湊は突然と現れてブラックピースとホワイトピースを認識し、次の対戦相手であることを悟った。
しかし、非常に違和感を感じる点が存在し――
「なあクイーンハート校長、これって2戦目で、次の3戦目で終了だよな?」
「ん、湊きゅんの言う通りだけど……」
「2戦目でブラックピースとホワイトピースが出てきて、次の3戦目でもう1人と戦うとすると、合計4人と戦うことになるんだが」
湊は当初クイーンハートから、3人と順番に戦うと説明されていた。しかし、この試合の流れからいくと合計4人と戦うことになり、初めて聞かされていた内容と違うことになる。
「ああ、確かに湊きゅんの疑問はもっともだよね。だけど、ちょっとそれは違うんだよ」
「違う?」
「そう。ブラックピースちゃんとホワイトピースちゃんは2人で1つの魂を共有している。例えば片方がダメージを受ければもう片方もダメージを受ける。つまり、2人だけど1人カウント扱いなんだ」
クイーンハート曰く、どうやら両者の魂は共有されており、言わば一心同体というものらしい。湊はこの2人が特殊な事情にある何かなのかと理解を試みた。
「じゃあ、あくまでブラックピースとホワイトピースは合わせて1人だから、初め校長の言ってた3人と戦うっていう転入試験の内容とは相違ないってことでおけ?」
「湊きゅんの言う通りだよ。2人で1人。彼女らは特別な生徒なんだよ」
湊はややクイーンハートの言い分が強引な様な気がしたが、まあそういうものなんだろうと理解した。
「はは、恥ずかしいよ湊君。また僕に関する知識が1つ増えちゃったね。ふんふんふん」
「気持ち悪い言い方するな、ブラックピース」
ブラックピースは能天気であまり物を考えずに発言するタイプのようで、今回もやや配慮に掛けた発言を湊にぶっぱなす。
「気持ち悪いなんてひどいよ、湊君。だって、湊君もミミちゃんといーぱいやましいことしてるじゃんか!ふんふんふん。えっち、すけべえ!」
「いや、それは誤解だよ!」
「ちなみに僕にえっちなことしようとすると、感覚を共有するホワイトピースにも刺激がいっちゃってバレちゃうから、隠して何かしようとしてもバレちゃうんだ。だから気をつけてね、み、な、と、君!ふんふんふん、残念残念……」
「しねえよ!?」
ブラックピースが卑猥な発言を湊にするため、むしろ会場からの評価が心配になる。
「いやね、実はお盛んな年頃の僕にとって死活問題でさ。ブラニーするとばれ……」
何かを言おうとしていたブラックピースの発言がホワイトピースに打ち切られる。
「もうだめだよ、ブラックピース!み、湊っちも困っているでしょう!」
ホワイトピースがブラックピースを戒めるように諭し、ブラックピースもへいへいとそれに応じる。
「じゃあ、もうそろそろ暇つぶしのお話も飽きたし、湊君、僕たちと戦っちゃう?」
「そうだよ、今は試合の時間だよブラックピース!い、い、いくからね湊っち。手加減なんてできないから、が、がんばって!」
クイーンハートがブラックピースとホワイトピース――湊がダブルピースと今しがた呼称した美少女2人の発言を試合開始を促す合図と解釈し、叫んだ。
「それでは、湊きゅんの転入試験2戦目を開始しまあす!―――うーん、始め!!!!」
ブラックピースとホワイトピースは戦闘が開始されるや否や、それぞれに異なる武器が顕現した。
ブラックピースの手には日本刀のような刀が生じ、ホワイトピースには白いキューピットの弓の様なものが現れていた。
「ふんふんふ。湊君、僕が君を侵してあげるよ」
ブラックピースはそう言って湊に凄まじい勢いで走り出した。一方、ホワイトピースはその場を動かずに弓を湊に構えた。
「ブラックピースが近接タイプ、ホワイトピースが後方支援タイプか」
湊はダブルピース両者を見て、つかさずにそう判断を下した。
「いいい、いくよブラック!せ、せ、せ、静的アロー!!」
ホワイトピースが静的アローと叫んで弓を発射した。当の湊はその弓に反射が追いつかず、矢は身体に深々と突き刺さった。
「ぐああああ!い、い、い、痛く、ない!?」
突き刺さった矢はなぜか直ぐに消失し、身体には何の傷跡も残っていはいなかった。
しかし、身体に傷がついていないとはいえ、異常が生じたことは明白であり――
「身体が、動かねえ!?」
ホワイトピースの放った静的アローが突き刺さった湊は、何故か身体が硬直して動くことができなかった。
「僕に侵されなよ、湊君!!」
湊が動けない隙を狙って、ブラックピースが一気に間合いを詰め、その手に握りしめる刀を彼に振りかざす。
「喰らえ!」
「あ、あぶねえ!!」
ブラックピースが振るった刀が身体を切り刻む瞬間、湊の身体は硬直から解け、ギリギリで短剣を合わせてその攻撃を受け止めた。
「ごごご、ごめんブラック!ちょ、ちょっと攻撃、はやかったかもお」
ホワイトピースは何やら攻撃のタイミングがずれてしまったようで、ブラックピースに向けて謝った。
「くそ、なんだあの魔法は!」
「ふんふんふん。今君が注意すべきは僕じゃないのかな?」
ホワイトピースの静的アローについて驚かされた湊は彼女に注意を向けるが、ブラックピースがその湊を戒めるように呟く。
「言っただろ、僕は君を侵すと」
「う、嘘だろおい!ミミから貰った短剣だぞ!!」
湊はブラックピースの刀を何とかギリギリで受け止めることができた。しかし、その受け止めたはずの攻撃は止まっておらず、湊の刀を侵食していることに気付いた。
「短剣が、刀に切られているのか!!」
「ふんふんふん。その驚きぶり大好きだよ、湊君」
「マジかよおい!剣が剣を切れるのかよ!」
「ふんふんふん。勿論だよ?これが僕の黒刀村雨。全てを侵すこの黒刀は武器であろうが防具であろうが魔法であろうが侵食するのさ」
ミミに買って貰った短剣がブラックピースの黒刀村雨に侵食されるようにゆっくりと切られていることが見て取れた。彼女の「湊君を侵食する」との言葉はまさにその通りであり、短剣が侵食され、剣が剣を殺す状況が生じていた。
「くそ、やられてたまるかよ!」
湊が自身の短剣を失うと、手持ちの武器は誘導鉄杭しか無くなる。しかし、この誘導鉄杭はあくまで攻撃用ではなく、空間系魔法残消転移のために使うギミック用器具である。そのため、今手持ちの武器を残すため、ブラックピースの刀を薙ぎ払い、湊は後方に後ずさった。
「このツインテール野郎!俺の大切な短剣に傷が入ったじゃねえか!」
「ふんふんふん。だから言っただろ湊君。僕はこの試合で君を侵すと」
「全てを侵す黒刀村雨と、動きを封じられる静的アロー……くそ戦い難いコンビだな。このダブルピースめ」
「ふんふんふん。そのダブルピースって僕達の愛称?結構気に入ってきたかも」
近接攻撃型で素早いブラックピースの黒刀村雨は、その攻撃を受けたとしても短剣が侵食され長くは持たない。対して後方支援のホワイトピースの矢は当たってもダメージはないが、動きが一瞬封じられてしまい、恐らくはブラックピースが近くにいる状態でそれを喰らうと、問答無用で勝敗が決してしまう危険性があった。
「戦い方を考えねえと……」
湊はホワイトピースを見た。
「お前、さっきから打ってこねえな、その矢」
「ひっ!!て、て、帝王と呼ばれし湊っちの眼光、ここ、怖いよう……」
「その強力な静的アロー、再度使用までインターバルがあるのか?」
「なな、ないよ!」
湊はすぐさま誘導鉄杭に残消符を刻んだ。そしてその鉄杭をホワイトピースの足元へと投げつける。
「残消転移」
「ひっ!その技はペペットちゃんに使ったやつ!?」
ホワイトピースは先程のペペットと湊の戦いを観戦している。そのため彼の「残消転移」の詠唱と共に、残消符の刻まれた物体と位置交換することを知っている。
「や、やめてえええ湊っちいい!」
湊はホワイトピースの足元に刺さった誘導鉄杭と位置交換した。一度魔法を使用すると誘導鉄杭の残消符は消滅する。現在彼はホワイトピースを短剣の攻撃範囲へと捉えた。
「終わりだホワイトピース!!」
「ざーんねん湊君!」
「へ?ブラックピース!?」
湊はホワイトピースの足元に転移して短剣を振りかざした。しかし、何故かホワイトピースの姿は消失し、ブラックピースが湊の目の前に出現した。
「危ない危ない」
「俺と同じ、位置入れ替えの魔法か?」
「僕達は2人で1人だよ、湊君?」
湊が振りかざした短剣はブラックピースの黒刀村雨に受け止められた。一方、消えたホワイトピースは先程ブラックピースのいた位置に出現していたのだった。
まるでその光景は、湊と同じく2人が互いの位置交換をしたように見えた。
「おいダブルピース!お前ら互いに2人の位置を入れ替えられるのか!」
「ふんふんふん。それが僕たち、2人で1人の双子の特権だよ?」
「俺の魔法をパクるんじゃねえ!」
「いやいや、まあ位置交換の点では似ているけど、僕達はあくまで2者間の位置変えだからねえ」
ブラックピースとホワイトピースに許された魔法、それが2者間の位置交換。湊の残消転移の位置交換と似ているものの、少々効果は異なっている様だった。第一にその位置交換は2人のダブルピース間でしか働かないものであるようだった。第二に、湊の残消符は一度使用すると消えてしまい、もう一度残消転移を使用するには再度残消符を刻む必要があるが、ダブルピースの位置交換は恐らくは何度も連続使用可能。
それが、2人の1人のダブルピースに許された特権なのであろうと湊は悟った。
「とことん厄介な奴らだな、ダブルピース」
「ふんふんふん。いやあでも、お兄さんの魔法も僕達から見たら相当厄介だけど?」
確かにブラックピースの言う通り、湊の魔法も相当厄介である。しかし、誘導鉄杭でホワイトピースの近くに転移して攻撃しようとしても、近接型のブラックピースと互いの位置を交換して応戦されては、完全に湊の残消転移の戦略を封じられる形になる。
「くそ、どこまでお前らは!」
湊は途方に暮れていた。しかしその最中も、刻一刻とブラックピースの黒刀村雨に短剣を侵食されるのであった。
湊は突然と現れてブラックピースとホワイトピースを認識し、次の対戦相手であることを悟った。
しかし、非常に違和感を感じる点が存在し――
「なあクイーンハート校長、これって2戦目で、次の3戦目で終了だよな?」
「ん、湊きゅんの言う通りだけど……」
「2戦目でブラックピースとホワイトピースが出てきて、次の3戦目でもう1人と戦うとすると、合計4人と戦うことになるんだが」
湊は当初クイーンハートから、3人と順番に戦うと説明されていた。しかし、この試合の流れからいくと合計4人と戦うことになり、初めて聞かされていた内容と違うことになる。
「ああ、確かに湊きゅんの疑問はもっともだよね。だけど、ちょっとそれは違うんだよ」
「違う?」
「そう。ブラックピースちゃんとホワイトピースちゃんは2人で1つの魂を共有している。例えば片方がダメージを受ければもう片方もダメージを受ける。つまり、2人だけど1人カウント扱いなんだ」
クイーンハート曰く、どうやら両者の魂は共有されており、言わば一心同体というものらしい。湊はこの2人が特殊な事情にある何かなのかと理解を試みた。
「じゃあ、あくまでブラックピースとホワイトピースは合わせて1人だから、初め校長の言ってた3人と戦うっていう転入試験の内容とは相違ないってことでおけ?」
「湊きゅんの言う通りだよ。2人で1人。彼女らは特別な生徒なんだよ」
湊はややクイーンハートの言い分が強引な様な気がしたが、まあそういうものなんだろうと理解した。
「はは、恥ずかしいよ湊君。また僕に関する知識が1つ増えちゃったね。ふんふんふん」
「気持ち悪い言い方するな、ブラックピース」
ブラックピースは能天気であまり物を考えずに発言するタイプのようで、今回もやや配慮に掛けた発言を湊にぶっぱなす。
「気持ち悪いなんてひどいよ、湊君。だって、湊君もミミちゃんといーぱいやましいことしてるじゃんか!ふんふんふん。えっち、すけべえ!」
「いや、それは誤解だよ!」
「ちなみに僕にえっちなことしようとすると、感覚を共有するホワイトピースにも刺激がいっちゃってバレちゃうから、隠して何かしようとしてもバレちゃうんだ。だから気をつけてね、み、な、と、君!ふんふんふん、残念残念……」
「しねえよ!?」
ブラックピースが卑猥な発言を湊にするため、むしろ会場からの評価が心配になる。
「いやね、実はお盛んな年頃の僕にとって死活問題でさ。ブラニーするとばれ……」
何かを言おうとしていたブラックピースの発言がホワイトピースに打ち切られる。
「もうだめだよ、ブラックピース!み、湊っちも困っているでしょう!」
ホワイトピースがブラックピースを戒めるように諭し、ブラックピースもへいへいとそれに応じる。
「じゃあ、もうそろそろ暇つぶしのお話も飽きたし、湊君、僕たちと戦っちゃう?」
「そうだよ、今は試合の時間だよブラックピース!い、い、いくからね湊っち。手加減なんてできないから、が、がんばって!」
クイーンハートがブラックピースとホワイトピース――湊がダブルピースと今しがた呼称した美少女2人の発言を試合開始を促す合図と解釈し、叫んだ。
「それでは、湊きゅんの転入試験2戦目を開始しまあす!―――うーん、始め!!!!」
ブラックピースとホワイトピースは戦闘が開始されるや否や、それぞれに異なる武器が顕現した。
ブラックピースの手には日本刀のような刀が生じ、ホワイトピースには白いキューピットの弓の様なものが現れていた。
「ふんふんふ。湊君、僕が君を侵してあげるよ」
ブラックピースはそう言って湊に凄まじい勢いで走り出した。一方、ホワイトピースはその場を動かずに弓を湊に構えた。
「ブラックピースが近接タイプ、ホワイトピースが後方支援タイプか」
湊はダブルピース両者を見て、つかさずにそう判断を下した。
「いいい、いくよブラック!せ、せ、せ、静的アロー!!」
ホワイトピースが静的アローと叫んで弓を発射した。当の湊はその弓に反射が追いつかず、矢は身体に深々と突き刺さった。
「ぐああああ!い、い、い、痛く、ない!?」
突き刺さった矢はなぜか直ぐに消失し、身体には何の傷跡も残っていはいなかった。
しかし、身体に傷がついていないとはいえ、異常が生じたことは明白であり――
「身体が、動かねえ!?」
ホワイトピースの放った静的アローが突き刺さった湊は、何故か身体が硬直して動くことができなかった。
「僕に侵されなよ、湊君!!」
湊が動けない隙を狙って、ブラックピースが一気に間合いを詰め、その手に握りしめる刀を彼に振りかざす。
「喰らえ!」
「あ、あぶねえ!!」
ブラックピースが振るった刀が身体を切り刻む瞬間、湊の身体は硬直から解け、ギリギリで短剣を合わせてその攻撃を受け止めた。
「ごごご、ごめんブラック!ちょ、ちょっと攻撃、はやかったかもお」
ホワイトピースは何やら攻撃のタイミングがずれてしまったようで、ブラックピースに向けて謝った。
「くそ、なんだあの魔法は!」
「ふんふんふん。今君が注意すべきは僕じゃないのかな?」
ホワイトピースの静的アローについて驚かされた湊は彼女に注意を向けるが、ブラックピースがその湊を戒めるように呟く。
「言っただろ、僕は君を侵すと」
「う、嘘だろおい!ミミから貰った短剣だぞ!!」
湊はブラックピースの刀を何とかギリギリで受け止めることができた。しかし、その受け止めたはずの攻撃は止まっておらず、湊の刀を侵食していることに気付いた。
「短剣が、刀に切られているのか!!」
「ふんふんふん。その驚きぶり大好きだよ、湊君」
「マジかよおい!剣が剣を切れるのかよ!」
「ふんふんふん。勿論だよ?これが僕の黒刀村雨。全てを侵すこの黒刀は武器であろうが防具であろうが魔法であろうが侵食するのさ」
ミミに買って貰った短剣がブラックピースの黒刀村雨に侵食されるようにゆっくりと切られていることが見て取れた。彼女の「湊君を侵食する」との言葉はまさにその通りであり、短剣が侵食され、剣が剣を殺す状況が生じていた。
「くそ、やられてたまるかよ!」
湊が自身の短剣を失うと、手持ちの武器は誘導鉄杭しか無くなる。しかし、この誘導鉄杭はあくまで攻撃用ではなく、空間系魔法残消転移のために使うギミック用器具である。そのため、今手持ちの武器を残すため、ブラックピースの刀を薙ぎ払い、湊は後方に後ずさった。
「このツインテール野郎!俺の大切な短剣に傷が入ったじゃねえか!」
「ふんふんふん。だから言っただろ湊君。僕はこの試合で君を侵すと」
「全てを侵す黒刀村雨と、動きを封じられる静的アロー……くそ戦い難いコンビだな。このダブルピースめ」
「ふんふんふん。そのダブルピースって僕達の愛称?結構気に入ってきたかも」
近接攻撃型で素早いブラックピースの黒刀村雨は、その攻撃を受けたとしても短剣が侵食され長くは持たない。対して後方支援のホワイトピースの矢は当たってもダメージはないが、動きが一瞬封じられてしまい、恐らくはブラックピースが近くにいる状態でそれを喰らうと、問答無用で勝敗が決してしまう危険性があった。
「戦い方を考えねえと……」
湊はホワイトピースを見た。
「お前、さっきから打ってこねえな、その矢」
「ひっ!!て、て、帝王と呼ばれし湊っちの眼光、ここ、怖いよう……」
「その強力な静的アロー、再度使用までインターバルがあるのか?」
「なな、ないよ!」
湊はすぐさま誘導鉄杭に残消符を刻んだ。そしてその鉄杭をホワイトピースの足元へと投げつける。
「残消転移」
「ひっ!その技はペペットちゃんに使ったやつ!?」
ホワイトピースは先程のペペットと湊の戦いを観戦している。そのため彼の「残消転移」の詠唱と共に、残消符の刻まれた物体と位置交換することを知っている。
「や、やめてえええ湊っちいい!」
湊はホワイトピースの足元に刺さった誘導鉄杭と位置交換した。一度魔法を使用すると誘導鉄杭の残消符は消滅する。現在彼はホワイトピースを短剣の攻撃範囲へと捉えた。
「終わりだホワイトピース!!」
「ざーんねん湊君!」
「へ?ブラックピース!?」
湊はホワイトピースの足元に転移して短剣を振りかざした。しかし、何故かホワイトピースの姿は消失し、ブラックピースが湊の目の前に出現した。
「危ない危ない」
「俺と同じ、位置入れ替えの魔法か?」
「僕達は2人で1人だよ、湊君?」
湊が振りかざした短剣はブラックピースの黒刀村雨に受け止められた。一方、消えたホワイトピースは先程ブラックピースのいた位置に出現していたのだった。
まるでその光景は、湊と同じく2人が互いの位置交換をしたように見えた。
「おいダブルピース!お前ら互いに2人の位置を入れ替えられるのか!」
「ふんふんふん。それが僕たち、2人で1人の双子の特権だよ?」
「俺の魔法をパクるんじゃねえ!」
「いやいや、まあ位置交換の点では似ているけど、僕達はあくまで2者間の位置変えだからねえ」
ブラックピースとホワイトピースに許された魔法、それが2者間の位置交換。湊の残消転移の位置交換と似ているものの、少々効果は異なっている様だった。第一にその位置交換は2人のダブルピース間でしか働かないものであるようだった。第二に、湊の残消符は一度使用すると消えてしまい、もう一度残消転移を使用するには再度残消符を刻む必要があるが、ダブルピースの位置交換は恐らくは何度も連続使用可能。
それが、2人の1人のダブルピースに許された特権なのであろうと湊は悟った。
「とことん厄介な奴らだな、ダブルピース」
「ふんふんふん。いやあでも、お兄さんの魔法も僕達から見たら相当厄介だけど?」
確かにブラックピースの言う通り、湊の魔法も相当厄介である。しかし、誘導鉄杭でホワイトピースの近くに転移して攻撃しようとしても、近接型のブラックピースと互いの位置を交換して応戦されては、完全に湊の残消転移の戦略を封じられる形になる。
「くそ、どこまでお前らは!」
湊は途方に暮れていた。しかしその最中も、刻一刻とブラックピースの黒刀村雨に短剣を侵食されるのであった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる