LIGHT and DARK~明日はきっと晴れる~

咲華

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序章

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――――自分を変えたいと強く思った時はありますか?

「はぁ……はぁ……」
広い建物の中を少女は駆け巡っていた。
(ここに居たら私自身はどんどん壊れてしまう!)
その一心でとにかく走った。
でも―――
バシッ
目の前に弓矢が飛んでくる。
「!?」
後ろを振り向くと
「姉ちゃん、どこに行く気なん?」
「蓮……」
泣きそうな顔をした少年が居た。
その隣に彼よりも幼い顔をした背の高い少年と、無表情の青年が立っている。
「俊に江くんまで居るんだね」
想定していたことだ。
思っていたよりも早かったなと、彼女は少しため息を吐いた。
(やっぱり彼は来なかったのか。せめて最後に会いたかったけれども……)
この場にそぐわぬことを考え、首を振った。
「葵姉ちゃん、ここから逃げるつもり?」
「…………」
俊がそう聞いても彼女はなにも言わない。
「まぁここから逃げることなんて不可能に近いだろ」
江は無表情からそっと微笑むと薙刀を構えた。
刃が光っていつもより鋭く見える。
「確かに3人相手は無理だよ。でも……」
そう言うと筒を投げた。
瞬間、あたりが白く包まれた。
「煙筒か!!」
蓮香がそう叫んで目をつぶる。
そして煙が晴れたあと目を開けると……
「逃げたか……」
少女はいなくなっていた。


--------------------------------------------------


「真ちゃーん!」
「どうした?」
真ちゃんと呼ばれた茶髪の青年は面倒くさそうな顔をし、駆け寄って来たオレンジ髪の少年の方を向いた。
しかし次の瞬間、彼もまた声を上げることになる。
「人が……女の子が倒れてる!」
「はぁ!?」
「とにかく来て!」
彼は強引に腕を引っ張り、歩き出す。
やがて、着いた場所には少女が倒れていた。
「これは……」
横には青髪の小柄な少年が居て手当をしている。
彼は足音に気づいて声を上げた。
「2人とも!」
「彰くん、その娘はどう?」
「問題はないよ。ただ気絶しているだけみたい」
その言葉を聞いて、オレンジ髪の少年―――篠宮隆斗がほっと肩をなで下ろした。
「それはよかった……ところで」
ここまで引っ張ってこられた青年―――剣鞘真也がチラリと少女の隣に置いてあるものに目を向ける。
「どうしてこの娘がこんな物騒なモノを……?」
真也が2つ置いてあるそれを手にする。ずっしりとしているが使い勝手は良さそうだ。
「これって、剣だよね……」
隆斗も彰もモノには気づいていたのだろう。不思議そうに皺を寄せていた。
「……訳アリ、みたいだな」
この国で武器を所持している人間は限られてくる。
少なくとも確実に一般人ではないと言いきれた。
「とにかく、その娘を家に運ぼう」
真也は先ほどの顔とは一変して真剣な目をしていた。
「うん」
隆斗はそう言って少女を抱きかかえると、家に向かって歩き出した。


--------------------------------------------------


「んん……」
「あ、起きたー?」
ベッドの上で目を覚ました少女に横から彰が声をかける。
途端に彼女がビクリと身体を震わせた。
「だ、誰!?」
警戒心を剥き出しにした少女の口が動く。
当たり前だ。目を覚ましたら知らない場所で寝かされていたら誰だって警戒する。
(しまった、もう少し、慎重に声をかければよかった……)
彰が後悔する。
相手は女の子。しかも武器を持って、傷を負って倒れていたのだ。
誰かに追われていたと考えられるのだから、警戒するに決まっている。
「そんなに警戒しないでも大丈夫だよ。俺は小野石彰。ここは僕らの家だから安心して?」
「僕らの家?」
首を傾げる彼女の反応を見るに、少し警戒心が取れたように見えた。
(敵じゃないって分かってくれたのかな?)
それだけで安堵する。
警戒されてしまったらお話もおろか、身体が休まらないだろう。
そのタイミングで
「よかったぁ……目が覚めたんだね!」
「身体は大丈夫か?」
隆斗と真也が入ってきた。
彼女がまたピクリと身体を揺らしたが
「大丈夫、僕の家族だから」
そう優しく告げると「なるほど」と呟き、一瞬こわばった顔が元に戻った。
「ああ、俺は剣鞘真也。よろしく」
「僕は篠宮隆斗って言うんだ! よろしくね」
それぞれ挨拶をされた少女は慌てて
「私は美影葵です。助けてくれてありがとうございます」
ペコリと頭を下げた。
そしてスッと顔をしかめると
「ロクにお礼も出来なくて申し訳ないのですが、私もう行かないといけなくて……」
そう言ってよろめきながらも立ち上がろうとした。
しかし
「だめ! まだ傷が癒えてないから!」
グイっと押さえつけるようにして彰が止めた。
「傷くらいならどうってことないですから」
平然とそう言い返し、彰の手を押しかえそうとする。
「体力も回復してないから絶対安静!!」
彼も負けじと声を張り上げた。
「でもっ!」
それでもまだ動こうとする彼女に対し、真也が眉間に皺を寄せる。
「なんでこんなに慌てるんだ?」
ピタリと、葵の動きが止まった。
「ちょっと、真ちゃん……」
隆斗が止めに入る。
「その状態で1人外に出すことはしたくない。どんな理由があれどな」
「それは俺もそうだけれど……」
「これだけの怪我している女の子なんて放っておけないからね」
「……というわけなんだ。それを返せるくらいの理由があるなら教えてくれ」
キッパリと、そう真也が言い切る。
葵は少し躊躇った後、口を開いた。
「……ここに居たら危害が加わるからです」
「なんで危害が加わるんだ?」
更に追及され、彼女はまた言葉を詰まらせた。
が、さっきの言葉を聞いて観念したのか、それとも言わないといけないと感じたのか、質問に応じた。
「私は組織の幹部だったから。だから逃げてきた今、私は追われている身になっているので……」
彰の考えは見事に的中していた。
(やっぱり追われていたんだ……だからあれだけボロボロに……)
「じゃあ、大丈夫だね」
即座に隆斗がニコッと笑った。
「え」
「今は心配しないで、とにかくゆっくり休んで?」
「いやいや! ちょっと待ってください!」
葵が慌てふためく。
「隆斗くんの言う通り、その理由だったら外に出すことは出来ないって判断したんだよ」
そう彰が補足すると、彼女はまた「どうして」と言いたげな目を向けてきた。
「だって僕らは苦安だもん」
あっさりと、隆斗がそう発する。
「苦安……!?」
そしてその言葉に葵がビクッと反応した。
恐らく、一番大きな反応だ。
その反応の理由もまた、この場にいる人間は容易に推測できた。
「ああ、だからといって何かをするつもりはないし、組織から守るくらいは出来るから安心してほしいんだけれどな?」
だからこそ、その彼女の不安を壊すように真也が隆斗の言葉を引き継いで話す。
―――苦安というのは、国の機関であり、裏社会の犯罪を取り締まる組織の名前だ。
(そしておそらくこの子は、葵ちゃんはその取り締まられる側の組織から逃げてきた……)
彼女はすごく複雑な表情を浮かべ、しばらく躊躇った。
が、やがて
「……分かりました」
と頷いた。
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