LIGHT and DARK~明日はきっと晴れる~

咲華

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始まりと再会

始まりと再会2

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「葵!」
動けるようになった真也はすぐ葵に駆け寄った。
彼女は流歌たちのいた場所を見つめたまま、ただ呆然としている。
(それもそうか……自分の古巣っていうだけでなく義兄弟に会ったようなものだからな)
しかも最悪の状況で。悲しいことに素直に喜べないのだろう。
「葵ちゃん」
隆斗がそっと彼女に近づき、頭を撫でた。
「隆兄……?」
か弱い声で、そう彼女が呟く。
「葵ちゃん、ショックかもしれないけれど、今は、ね」
「……うん」
葵がコクンと頷く。
しかし、心ここならずといった様子なのは変わらない。
「……はぁ、2人は葵を連れて先に家に帰っとけ。
俺が尚史に話をしとくから」
わざとらしくため息を吐いて見せる。
「でも……」
葵が戸惑ったような声を上げた。
それでも彼女が何を言っても真也は連れて行く気などない。
「葵、お前は落ち着かないとだろ。詳しい話は落ち着いてからすればいいから」
「……分かった」
彼女が渋々と了承する。
折れてくれてよかったなと思う反面、それでも明日には彼女から古巣の話を聞きださないといけない。
そう思うと、心が痛かった。
「葵、行こう?」
彰が葵の腕を引っ張り、ようやく彼女たちは帰路についた。
(彰、隆斗……葵のことよろしくな)
それを見送って真也も尚史の家へと向かった。



家に入れてもらうと、すぐに尚史に先ほど起きた話をした。
「なるほど……とりあえず車が通ってなかっただけ幸いだったね」
彼は終始黙って聞くと、息を吐いたのち、そのような言葉を発する。
「居眠り運転まであったら流石に対処できませんでしたから」
それでも、不思議な話である。
どうしてドライバーは救われたのだろうか。
そんなことを考えていると
「お久しぶり、真也くん」
「紗季さん、お久しぶり、いただきます」
尚史の嫁である音坂紗季がお茶を出した。
「お客さん?」
その彼女の後ろからひょこっと男の子が出てくる。
「そうよ、この人は真也くん。真也くん、覚えてる? 息子の雪成」
そう言われ、最後に見たのはいつだっただろうと考える。
かなり幼い頃以来だろう。
「……大きくなったなぁ雪成くん」
「えと……お久しぶり……です?」
だからか、こてんと首を傾げられてしまった。
「うん、お久しぶりだよ」
覚えていないのも無理はないだろう。
ふっと微笑むと、雪成もニコリと笑った。
「真也くん、ゆっくりしていってね。雪成、あっち行きましょ?」
「はーい」
2人が部屋を出ていくのを確認して、再度尚史に向き合う。
尚史は心配そうな顔を浮かべていた。
「葵ちゃん、大丈夫そう?」
「分からない……でも大丈夫だと思いたい」
でも、彼女の状況からして、それは叶いそうもない。
「うん、無理はしないでって言っておいて」
尚史は、葵の過去を知っている為、きっとそんな真也の心情を察したのだろう。
「……ああ、とりあえずまた何かあったら報告しに来ます」
その好意を素直に受け取ると真也はそう告げてお暇した。
(……とはいえ、このまま家に帰る気持ちでもないな……)
恥ずかしながら、まだ気持ちがざわついていた。
この調子で葵に会うのは少し気が引ける。


―――気が付いたら神社へと足を向けていた。
中は、どこか気持ちのいい空気で、さっきまで色々とイラついていたり困惑していたりした心が落ち着いていくのを感じる。
彼は何を願っているのか自分自身でもわからず、ただ静かに手を合わせた。

やがて目を開けると横で青年が祈っているのが見えた。
(あの人……)
その男性の表情を見て真也は思わずハッと息を飲む。
(どうしたんだ?)
自分と同じ歳くらいの青年はこれ以上ないくらいの不安と悲しみを感じさせられた。
顔は無表情で、ピクリともしない。
「あの……」
青年の祈りが終わったところで真也は思わず話しかけた。
「……俺になにか?」
彼が不思議そうに首を傾げる。
当たり前だ。初対面の人に話しかけられたらそんな反応にもなるだろう。
「いや……ものすごく真剣な顔をしていたから」
何と言おうか迷いながらも素直に告げてみる。
「あぁ……えっと貴方は?」
彼はどこか納得したように頷いて、名を聞いてきた。
「俺は剣鞘真也です」
「剣鞘さん……」
青年は俯いて苗字をポツリと繰り返した。
そして顔をあげると
「俺は、鈴峰です」
自らの苗字を名乗った。
(なんか、人形のような人だな)
先ほどから表情が動かない。
声色には少し変化が見えるものの、それでも微々たるものだ。
「鈴峰……さん、あんな真剣な顔して何を願ってたんですか?」
鈴峰は一瞬ためらったあと、フッと淋しげな顔をして言葉を放つ。
ようやく、そこで表情に変化が見えた。
「俺の幼馴染で妹みたいな存在だったやつの無事とこれからもそいつが幸せでと願っていたんです。数年前からあいつは俺と真逆の世界に行ってしまって」
「そんな……」
立ち入った話を聞いてしまった気がした真也が謝ろうとするが、彼は表情をまた元に戻して
「ごめんなさい、こんな話してしまって。 もう夜も更けてきたし、俺行きます」
「あっ……では……」
神社を出て行った。
「……不思議な人だな」
ポツリと呟いた言葉は空に消えていった。

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