LIGHT and DARK~明日はきっと晴れる~

咲華

文字の大きさ
5 / 7
始まりと再会

始まりと再会4

しおりを挟む

その光景はもう地獄だった。
 
見るところ見るところ真っ赤に染まって、火の粉が上がっていた。
肌は焼けるように熱く、どこに誰がいるのかもわからない。
泣き叫んでみても両親の姿はおろか、大人の姿がなかった。
「葵、こっちだ!」
ぐいっと隣で男の子が腕を引っ張った。
「江ちゃん……」
「ほら、ぼさっとしないでっ!! 焼かれて死んじゃうだろ!」
「だって、みんなが……!!」
「今は俺らが助かることを考えるべきだ!!」
「ちょっ!?」
急に抱きかかえられ、つい声が上がる。
色々と言いたいことはあったが、まずは自分の身が第一だとそこで気づいたため何も言わなかった。
「しっかりと捕まっていろよ!!」
「う、うん……!」
彼は女の子を抱えていることなど全く意に介さないかのように素早く駆けた。
どこをどう走っているか、どうすればここから助かるか、何もかも分からないまま、火と火の間を必死に潜り抜ける。
恐らく彼にもわかっていないのだろう。
(きっと江ちゃんは自分や私が助かることだけを考えてガムシャラに走っているんだ―――)
葵はただ、彼に身を預けることしかできなかった。
 
何とか火の手を逃れていた葵たちは、消火が終わった後の町の真ん中に戻ってきた。
「こんなのって……」
あったはずの家も木も何もかもがなくなり、敷地になっていた。
なにより、足元には誰のものか分からない骨が至る所にあり、葵は思わず顔をそむける。
5歳の少女にはあまりに刺激が強すぎた。
「生き残りは……恐らく俺ら以外はいないんだろうな」
「そんなっ!まだ何にも確認していないのに!!それなのに諦めるの!?」
ついそう叫んでしまう。
分かっていた、彼女自身、助かった町民は自分と彼だけだということは。
ただ、諦めたくなかっただけだ。
「…………」
ギュッと彼に抱きしめられる。
彼はブルブルと震えていた。それを感じ、彼女はハッとした。
「……ごめん、江ちゃん」
(江ちゃんだって辛いんだ……今は2人で支え合わないといけないのに)
「いや、それよりも……」
これからどうしようか、と彼が呟く。
焼け野原を目の前に、2人は失望するしかなかった。
「食べ物も、住む場所もなくなっちゃったもんね」
実質生きる術を失ったことになる。
「……驚いた、こんな中で生き残っているなんてな」
突然。
背後から声をかけられた。
ビクッと身体が震える。
「……誰ですか?」
さっきまで震えていた彼が彼女を護るように再度抱きしめ、キッと声の主を睨みつけた。
赤髪で少し低めの彼は、どうしてだかどこか大人びて見えた。
「―――俺は久遠流歌」
少し名乗るのに抵抗があったのか、彼は間を開けてそう名乗る。
「それで、行く場がないんだろ?」
「…………」
ずいぶん単刀直入に聞くなぁと感じる。
しかし、今はそれがかえってありがたかった。
「だったら、俺らと一緒に来ないか?」
「え」
「……それはどういうことですか?」
生きていける場所があるかもしれないという葵の明るい返事とは裏腹に彼の顔はとても険しい。
「そのままの意味だけれど。一緒に来ないかって」
「その場所はどういうところだ?」
「ちょっと江ちゃん……」
厚意で言ってもらっているのにその態度は失礼だ。
しかし彼はその意見を曲げるつもりはないらしい。
「まぁ、仕事はしないと生きていけないけれどな。女性はほとんどいない」
(別に女性がいようがいまいがそれは全然かまわないけれど……)
「……仕事というのは?」
彼は態度を変えることなくそう問う。
それに、流歌は渋い顔をして、黙り込んでしまった。
「……えっと……」
チラリと彼を見る。
彼もまた、顔色が悪かった。
(え、え……何が起きてるの……?)
意味が分からない。
「…………やむを得ないか……」
やがて、彼がボソっと呟くと、流歌を見据え
「一緒に連れてってくれ」
覚悟を決めた顔でそう言いきった。
「……江ちゃん……?」
何かが変わると、葵はそう感じた。

彼がまた葵をギュッと力強く抱きしめた―――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

後宮なりきり夫婦録

石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」 「はあ……?」 雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。 あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。 空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。 かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。 影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。 サイトより転載になります。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

ヤクザのお嬢は25人の婚約者に迫られてるけど若頭が好き!

タタミ
恋愛
関東最大の極道組織・大蛇組組長の一人娘である大蛇姫子は、18歳の誕生日に父から「今年中に必ず結婚しろ」と命じられる。 姫子の抵抗虚しく、次から次へと夫候補の婚約者(仮)が現れては姫子と見合いをしていくことに。 しかし、姫子には子どもの頃からお目付け役として世話をしてくれている組員・望月大和に淡い恋心を抱き続けていて──? 全25人の婚約者から真実の愛を見つけることはできるのか!?今、抗争より熱い戦いの幕が上がる……!!

処理中です...