LIGHT and DARK~明日はきっと晴れる~

咲華

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始まりと再会

始まりと再会5

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「……はぁ」
一体なんという夢を見ていたのだろうかと葵は思わず溜息を吐く。
あれは過去にあった出来事だった……というよりはもうトラウマに近いものだ。
あの出来事から、葵の人生が一変した。
「流歌にも俊にも会えて嬉しかったけれども……」
素直に喜べない。
「どうして2人はここに来たんだろう……」
自分目当てだったらもっと前からでもよかったはずだ。
(それに……どうして流歌が……? 江ちゃんもそこまで任務に協力的な人じゃないし……)
そこまで考えてふるふると首を振った。
考えても今は何も分からない。
であれば
「気になるけれど……まずは仕事をこなそう」
なにかをするつもりだったらその中で情報が入手できるだろう。
(でも……やっぱり割り切ろうとしてもつらい)
その時
「あーおいちゃん! おーはよー!!」
勢いよく扉が開いて隆斗が入ってくる。
「おはよ、隆斗兄……って!?」
「むぎゅう~」
彼は葵を思い切り抱きしめた。
「隆斗くん……」
後ろから入ってきたであろう彰の呆れ声が聞こえてくる。
「彰くんもギュウする?」
「さっき俺にしてきたじゃない。葵はまだ寝起きなんだから、驚かせちゃだめでしょ?」
「うー……」
そう言いながらも隆斗がしょんぼりとした顔でそっと離れる。
「葵ちゃん、ご飯できてるから支度して降りておいで?」
「うん」
彰がそれはそれは優しい顔でそう告げると2人は部屋を出て行った。
「―――巻き込んじゃったな」
溜息を吐く。
彼女がここで暮らすことを選んだその日から、3人を巻き込んでしまうということは覚悟していた。
「でもいざこうなると、どうすればいいのか分からないや」
悶々と考えていても仕方ないと感じ、とりあえず着替え始めた。


「おはよう、よく眠れたか?」
リビングに入ると真也が新聞から顔を上げて彼女を見た。
『それでは次のニュースです―――』
テレビからは淡々としたアナウンサーの声が聞こえてくる。
「あっ葵ちゃん」
来たんだ、と言いながら隆斗が机に料理を並べる。
相変わらず美味しそうな匂いだった。
ふらふらっと席に座ると
「うーん、やっぱ顔色悪そうだね、大丈夫?」
隣に座っている彰が葵の顔を覗き込む。
「……そんなに顔色悪いかな?」
困ったように彼女が笑う。
心当たりはあるものの、顔色に出ているつもりはなかった。
「葵」
ふと、目の前にいる真也が口を開いた。
「俺らは3人とも、お前を家族だと思っている」
「う、うん」
それは葵も同様だ。
今さらどうしたのだろうと思いながらも、やはりその事実は嬉しいものだが。
「だから、葵の過去の責任も、過去に何があったとしても、俺らが一緒に背負うから」
「…………」
思いがけない言葉だった。
「そうだよ、葵ちゃん! 可愛い妹にだけ背負わせたくないもん」
隆斗がコクコクと頷く。
「大丈夫、俺らはその覚悟がもうあるんだから」
彰にキッパリと言いきられる。
「…………」
(もしかして、巻き込んじゃったって思うのは間違いだったのでは?)
その皆の反応を見て葵はそう感じた。
(もし、皆が私のようなことになっていたら、私は皆と同じことを言っているだろうし……)
よく考えたら、3人の過去も自分はよく知らない。
でも、何があっても兄たちの味方であることには変わらないし、巻き込まれたなんて思いもしない。
……ならば
「ねえ、朝から申し訳ないんだけれど」
きっと、話すのなら今だろう。
「私の過去話なんだけれど、聞いてくれないかな?」
3人はしばし顔を見合わせて
「もちろん」
そう頷いた。

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