LIGHT and DARK~明日はきっと晴れる~

咲華

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始まりと再会

始まりと再会6

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「私は、神社がある町に住んでいたの」
規模的には町だったが、ものすごく田舎だったということを思い出す。
「すごく幸せだった、自然がいっぱいあって、居心地がよくて。少し利便性には欠けているけれど」
まぁ田舎だったしねとクスリと笑う。
「こことどっちが田舎なの?」
「分かんないけれど」
隆斗の言葉に笑いながら曖昧に返事をする。
が、すぐに顔を曇らせて俯いた。
「でも、私が5歳の頃に町で大規模な火災が起きたんだ」
「え」
どこからともなく声が聞こえてきた。
「約10年前の大規模火災―――鈴峰町火災か」
「真也くん、よく知ってるね?」
これには彼女は驚いた。
「そこまで有名だったとは思えないけれど……」
報道もあまりされず、いつの間にか時代の流れで消えたものだと思っていたのだ。
が、
「嘘っ! 「1日で焼け野原と化した鈴峰町」ってかなりマスコミが騒いでいたよ!」
隆斗までもがそう言いだしたのだ。
(そんなの聞いたことない……)
「俺は知らないなぁ……その時にはまだ国外にいたし」
唯一知らないと言った彰は一人しょんぼりと俯く。
「まぁ私も事件があった2日後にはもう国内にいなかったし……」
それに数日はテレビを見る精神力はなかった。
(事件のことも流歌か江ちゃんに聞いたくらいだし……)
そこまで考えて、首を振る。
いい加減、次に進まなくては。
むしろこれからが本題なのだから。
「話を戻すね。私は組織に入ると、俗にいう英才教育を受けた」
「英才教育……もしかして、葵ちゃんの戦闘能力は……」
隆斗の言いたいことは彼女が一番よく分かった。
一般的にこの世で武器を扱えるのは男性だけだ。女性には適正能力がないので、男性と比べると明らかに武術の面では劣ってしまう。
「その部分を私は徹底的に組織に入って学んだ」
「だからあんなに強いのか……」
真也が息を吐く。
「それからは、各国を巡って色んなことしてた。
どこかの国では戦争の手助けをするために裏工作をしたし、またどこかの国では毒薬を撒いたりした。
国そのものを滅ぼしたこともあった」
「…………」
みんなが黙りこむ。
(うん、きっとこれ聞いたらなにも言えないよね……)
それでも、と葵は続けた。
「誰かを殺したり、なにかを壊したりすることに精神が耐えられなくて。気がつくと私は依頼中のことを覚えなくなっていった」
自分を護るために、自分で違う人格を作り出していたのだ。
そのため、任務中の記憶だけすっぽりと抜けている。
「……それでも、自分がしたことには変わりないし、それによって罪を重ね続けた。そして血を吐いている自分の心とは裏腹に【フォース】は実績をあげて、幹部になっていた」
フォースとは、彼女の組織時代の二つ名だ。
そこでようやく葵が息を吐く。
「あとはみんなが知ってる通り。もう嫌になって、耐えれなくて逃げてきて、今では逆の立場になってる」
不思議なものだと、彼女は微笑んだ。


「そんなことがあったんだ……」
彰がそう呟き、隣に座っている葵の頭を撫でた。
「本当、みんな色々と背負いすぎでしょ」
隆斗がふぅーと大きく息をつく。
それもそのはずだ。苦安に所属している人たちはみんな何かしら抱えてるのだ。
そう言っている隆斗も、彰ももちろん大きなものを背負ってしまっている。
「本当、あのとき、俺らが拾ってよかったな」
ようやく言えた言葉はそんなことだった。
が、至極全うなことでもある。
「うん……下手したらその力を悪用されてただろうし……」
「一般の家庭に入ったらそれこそ巻き込みかねない……よね」
隆斗と彰もコクンと頷く。
それほどまでに彼女の価値は高すぎるのだ。
(どういう立場だったかは知っていたけど内情はこうだったなんてな……)
葵には隠しているが、当時、彼女を家に招いたときに苦安の情報部を頼って彼女の過去を調べたことがあった。
(でも調べるのに困難を極め、分かったことといえば、フォースという二つ名と戦いかた、そして幹部だったことだけ。それ以外では……)
そこまで考えて、真也がはっとした。
「まて、葵。お前はずっと鈴峰町で暮らしてたのか?」
「え? そうだけど?」
彼女はなにいってるの? と言ったような顔をする。
(まさか……お前……)
覚えてないのか。
そう言おうとして、言葉を飲み込んだ。
(間違いか? それとも―――)
どちらにせよ、今の葵には言うのを憚れた。
「その、私が急にこんな話をしたのは、別に私の過去を知ってほしかったわけではなくて、組織の内部を話すべきだと思ったからなの」
「内部?」
でも確かにそれはありがたかった。
組織の情報は本当に希少なものなのだ。どこにも漏れていないからか探しても探しても情報があまりにないのだ。
「うん……まずは組織の構図なんだけれども。組織のトップがいて、その下に実行部があるの。それで、その実行部の中にはリーダーがいて、その下に幹部があり、幹部はそれぞれ軍を1つ持っている」
「待って待って待って待って」
隆斗が言葉を遮る。
真也も止めようと思ったところだったからか丁度良かった。
「一気に話し過ぎだ」
「ごめん……」
一言そう突っ込むと彼女はペコリと頭を下げる。
えっと、と彰が首を傾げて。
「整理すると、組織のリーダーが、実行部のリーダーに指示をして、幹部に指示を出し、幹部ごとに自分の軍を動かす……ということ?」
「うん、そういうこと」
ようやく整理がついた。
「つまり葵ちゃんも軍を持っていたってこと?」
「……まぁ」
あまり思い出したくないのか、彼女が辛そうな顔を浮かべる。
「それで葵、続き」
「あ、うん。そうだね。だから目的とかは全部組織リーダーと、実行部リーダーしか分からない……はず。実行部のリーダーですら知らないことも多いけれど」
「…………」
とりあえず。
「組織図と目的の決め方が分かってよかった」
何も分からないままでは手の打ちようがなかったのだ。
少しでも情報があったほうがいい。
「みんな」
葵が真剣な顔を浮かべる。
「―――今回、組織が目の前に現れたということは、恐らく彼らが何かしら動いているということ。だから」
「ああ、警戒しよう」
「そうだね、まずは今の依頼をこなそう」
彰がそういうと、全員がしっかりと頷いた。

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