人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

文字の大きさ
338 / 912
四章 異世界旅行編 1 オリーブ王国を離れ東へ

324 森の散歩 と デュメリル村の名物

しおりを挟む
 これはまた、根掘り葉掘りと……ツツエを憐れに思うカズ。
 初対面のリザードマンひと相手に、また失礼なことを聞くんだ、と思うビワ。
 リザードマンの恋バナか……これはこれで面白いかもと、レラと一緒に話そうと考えるアレナリア。
 三者三様の考えは、ツツエにどんな事をもたらすのかは、止める者しだいだろうか。

 養殖池を後にした五人はツツエの案内で、村へと戻る道を外れ森の中へと入る。
 蔓草のトンネルを抜け、料理に使う木の実を拾い、香草を収穫して、木漏れ日の中を歩く。
 暫くすると、太い木の根本がぽっかりと開いているのが見えた。
 ツツエに誘われ中に入ると、そこは三畳程の空間があった。

「ここって昔からあるの。子供の頃、兄さんやザザウ達とよく遊んだわ」

「隠れ家みたいで、いい感じじゃない。あちしもこういう場所好き」

「子供の秘密基地って感じだな」

「子供の秘密基地? それなんなの」

「大人には秘密にして、子供達だけで隠れて遊ぶ場所かな。おもちゃとかを置いといたりして。嫌なことがあったら一人になれたりもしてさ。なんか、わくわくするような感じのとこ」

「兄さんも似たようなこと言ってました。休みなんかの時は、一人でここに来たりしてるみたいなんです」

「ツツエのお兄さんと話が合うんじゃないの、カズ。ごはんの時あちし達は女同士で話してるから、カズはゼゼイやザザウと話したら」

「そうだな。お兄さんのゼゼイさんは、お酒が好きって言ってたから、麦シュワか果実酒でよければ、夕食の時に用意しますよ」

「お客さんに出してもらうなんて」

「お酒の話が出たら、どうせレラとアレナリアも飲みたがりますから」

「それは兄さんも喜びます。でしたら村自慢の川魚をいっぱい食べてください」

「楽しみにしてます」

「やったー! 久々の魚だ!」

「はしゃぎ過ぎよレラ」

「じゃあアレナリアは、魚いらないんだ」

「そんなこと言ってないでしょ。私だって楽しみよ」

「夕食には香草焼きと、塩焼きの両方を用意しますから、楽しみにしていてください」

「聞いただけでお腹が空く」

「レラも兄さんと話が合いそうね」

「食い意地が張ってるのよ」

「そう言うんだったら、アレナリアの分はあちしが食べちゃうから」

「やらないわよ!」

「いつもながら……俺はどっちもどっちだと思うぞ」

「そうなの?」

 レラはともかく、アレナリアは少し意外だなと、ツツエは思った。

「どっちもちっこい割に、よく食べるんだ。気を付けないとぷっくり太るから、出す量をこちらで調整しないとならないんだよ。レラなんか、あればあるだけ食べようとする」

「オス…男性のカズさんが、皆さんの食事を?」

「俺かビワが作ってるね。アレナリアはたまに手伝うけど。レラは食べる専門」

「ワタシ、旅なんてしたことないから。なんか皆さんを見てると、スゴく楽しそう」

「楽しいよ。でも危険な事もあった。でもまあ、そこはあちしの活躍で、危険を回避したりして」

「また盛ったわね、レラ。あなたがそんな活躍したなんて、知らないわよ」

「ほらほら、砂漠でデザートクラブカニの集団をいち早くに見つけて、回避できたじゃない」

「砂漠で、カニ?」

 ツツエが不思議そうな顔をする。

「あれは私が気配に気付いて、レラが偵察に行ったんでしょ。カズの方が先に気付いてみたいだけど」

「そ、そうだっけか?」

「突っ込めって、みたいなこと言わなかったか? アレナリアとレラの二人が」

「そうだっけかなぁ~?」

 カズが真実を話すと、レラだけではなくアレナリアも誤魔化した。
 ツツエはレラとアレナリアのやり取りを見て、楽しそうに笑っていた。
 森の中を木の実や香草を収穫しながら散歩してると、いつのまにか足元の影は伸び、かなりの時間が経過していた。
 五人は暗くなる前に村へと戻る。
 時折周囲を見渡すカズを気にして、ツツエに気付かれぬように、アレナリアがコソッと聞いていたりもした。
 カズは心配かけまいと、敢えて何も言わなかったが、誰かに見られているのを、アレナリアも気付いていたようだった。

 デュメリル村に戻るとツツエに代わり、ザザウがカズ達四人を、一晩泊まる家に案内した。
 元々は村の外から来た者を泊める為の建物だったが、人族の商人の事があってからは、若い者達の集まりや子供の遊び場になっていると、ザザウは話す。
 ベッドは無く、落ち葉や干し草を詰めた寝具が、部屋の片隅に置いてあった。
 リザードマンも布団で寝るのかと、レラがザザウに聞くと、それは来客用だと説明した。
 長い間使ってなかったので、昼間の内に村の者達が作り直してくれたようだ。
 夕食は村長の家でとのことで、ザザウと共に向かう。

 カズは村長の家に向かう前に、村の入口の停めてある馬車を、寝泊まり建物の横まで移動させる。
 その最中、小声で馬のホースに変わった事はなかったかと聞いたが、何もなく馬車を警戒する様子はなかった、と。
 馬車の中を覗かれることもなく、近付くのは無邪気な子供のリザードマンくらいだとホースは話した。
 アイテムボックスが使えることを隠しているため、馬車から運んできたことにして、麦シュワと果実酒が入った大きめのかめを村長の家まで運んだ。

 魚料理が出来上がり運ばれると、夕食という宴が始まった。
 村のリザードマンが入れ替わり立ち替わりで宴に参加し、養殖池に居たゼゼイも村を守る村衛そんえいの仕事を終わらせて村長の家にやって来た。
 カズが用意した麦シュワと果実酒や、村が用意したウイスキーのような酒を飲みながら、魚の香草焼きを口いっぱいに頬張るゼゼイと、なぜかそれに対抗しようとするレラ。
 アレナリアとビワは、料理を作り運び終えたツツエと楽しそうに会話していた。

 村自慢の川魚と言うだけあって、肉厚で身はふっくらと柔らかく、香草焼きも塩焼きも中々の味だった。
 珍しく魚卵の塩漬けが出てきた。
 素焼きした魚と一緒に食べるのが、良い酒の摘まみになった。
 来客の際にしか口にすることのない魚卵は、村のリザードマンにとっても贅沢な一品だった。
 他には燻製にした魚や肉も並んだりもした。
 料理の種類としては少ないが量は多く、どれも客人をもてなそうとする気持ちが表れていた。

 カズはザザウに旅の事、特にトレントが生息していた森について聞いてきた。
 自分を含め、村のリザードマンの中には、トレントを倒すことのできる者は居るが、トレントが支配する森の中ではそうはいかず、どの様にして森を抜けてきたのかと。
 魔力感知のスキルがあり、魔法が得意なアレナリアも居たので、トレントから襲撃される前に発見でき、対処して森を抜けたと、怪しまれない程度でカズは話した。
 全部が嘘という訳でもない。
 ただカズが不安だったのは、酔ったアレナリアとレラが、余計なことを言うんじゃないか、だった。
 アレナリアはそこまで飲んでなさそうだったが、レラはゼゼイと共に、グビグビと呑みまくっていた。
 明らかに二日酔いのコースだ。
 時折レラがツツエの所にゆき、アレナリアと二人でヒソヒソと恋バナをしていた、いや、させていた。
 話に上がった相手の一人ザザウが近くに居たため、声を潜めながら、根掘り葉掘りと聞いていた。
 その圧に、ツツエは困った表情を浮かべていた。
 ビワが止めに入るが、酔った二人を止められる訳もなく、女性陣は何やら盛り上がってる様子が見てとれた。

 宴も終わりに差し掛かる頃には、頬をほんのり赤くしたアレナリアとビワ、レラは早々と泥酔してビワの膝の上でぐうすかと。
 村のリザードマン達も各々の家に戻り、残っているのは家の主こと村長ズズイ、そしてザザウとゼゼイと、その妹ツツエが居るだけであった。
 後片付けをするツツエにビワが手伝い、全てを済ませ、夕食という名の宴は終わった。

 カズは寝ているレラを抱え、ほろ酔いのアレナリアとビワを連れて、村長の家を出る。
 外はパラパラと雨が降りだしてきていた。
 一晩泊まる建物に入ると、ビワが置いてある寝具を広げ、寝る支度をする。
 するとここで問題が起きた。
 置いてあった寝具は、大きな布団が一組だけしかなかった。

「これは仕方ないわね。四人で一つの布団に入って寝るしか…」

「俺はいいから、三人で使って」

 むふふな表情を浮かべながら言うアレナリアの言葉を遮り、カズは一人離れて寝ると言う。

「私も…一緒の布団で寝ても……」

 酒に酔ったビワも、カズと一つの布団で寝ることを拒まなかった。

「今夜はよく飲んだようだから、早く横になった方がいい。布団は大きいけど、四人だと狭いから(実質三人だけど)」

 ビワの発言をさらっと流し、カズは三人を布団で寝かせた。
 レラは寝たまま起きることはなく、横になったアレナリアとビワも、酔いと疲れですぐに眠ってしまった。
 酒の耐性があるカズは、少量の酒では酔うことはなかった。
 もとより狙われる危険性があるゆえ、酔って寝るようなことはする訳がなかった。
 もしもの時を考え、カズは三人が寝る布団から離れて、壁に寄り掛かり目を閉じた。
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

処理中です...