人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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四章 異世界旅行編 2 トカ国

333 売れ残った帽子

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 ギルドを後にしたカズは、ギルドマスターグリズが言ったパーティーのことを考えながら、三人の待つ宿屋へと戻って行く。

 本格的なパーティー登録か……アヴァランチェではポピー、ボルタ、ワットの三人と一緒に依頼に行ったっけな。
 王都ではネメシアと海にストーンシャークの討伐、あとはアイガーさんと魔法で変装したフローラさんと一緒に、モンスターを討伐したっけ。
 どれも思い返せば、一時的なものだったし、パーティー名なんてなかった。
 王都でも冒険者としての行動は一人ソロだったから、常に誰かと組んでなんてのはなかったな。
 まあ一人ってのが性に合ってたから、パーティーを組もうとも思わなかったし、レラの面倒やステータスのこともあったから、誰とも組はしなかったろ。
 それに信頼できる相手も、それほど多くはなかったしな。
 帝国のこともまだ分からない、戻って知識あるアレナリアに相談した方がいいか。
 あ、でもアレナリアが知る帝国の知識って、新しいものじゃ……まあ古くても無いよりはましか。
 それに俺一人で考えるより、四人で旅をしてるんだから、レラとビワにも話さないと。

「……あれって?」

 ふと目に入った路地の小さな商店の店先に、カズは見覚えのある帽子を見つけた。
 カズは目に入った帽子に引かれ、その商店に入った。
 中には生活に使うような小物類から、何に使うか分からない物まで色々とある雑貨屋だった。
 棚の上や隅にはほこりが積もり、繁盛してるとは言い難い。

「おや、客かえ?」

「勝手に失礼します」

「客なら別に入ったってかまやしないよ」

 店の奥からはしわの多い、兎人族の女性が出て来た。
 人族の感覚だと、七十歳から八十歳くらいといったところだろうか。

「こんな薄汚れた店に来るなんて、物好きだねぇ」

「そんなことないですよ。昭和な雰囲気のあるいいお店ですよ(薄汚れてるのは、掃除してないからじゃないか)」

「昭和? よく分からないが、褒めたって何も出やしないよ。それもと油断させて店の物を盗む気かい?」

「そんなことしませんよ(随分とひねくれてるな)」

「まあいいさね。盗みたけりゃ好きに持ってきな。どうせもう店を閉めるんだ」

「そうなんですか?」

「見りゃわかるだろ。ここ何年も町を離れる連中が増えて、客なんて減る一方。それにもう歳だ、あとは生れた村でのんびりと過ごすつもりさね」

「兎人族とお見受けしますが、ここから北に行った小高い丘の向こうにある村ですか?」

「あんな小さな村を知ってるのか」

「先日そちらに寄って来たので」

「見たことのない人族だと思ったら、外から来た者かい」

「ええ。ところで入口の所にある、麦わら帽子なんですが」

「麦わら帽子を知ってるとなると、あんた旅人かい?」

「まあ、そうですかね」

「あれは随分と前に、この町に来た旅人から作り方を教わった帽子だよ。麦藁なんて燃料にするしか、この町では利用方がなかったんだがね。ちょいと暇潰しに作ったら、当時は珍しくて売れたんだが、今となってはただのガラクタさね」

「麦わら帽子を作れる旅人……どこから来た方でしたか?」

「さぁね。古い事だから、聞いたかどうかも忘れちまったよ」

「そうですか。せっかくなんで、あの麦わら帽子買わせてもらいます」

「好きにしな。値段もあんたが決めるといい。銅貨一枚だってかまやしないよ)」

「じゃあこれで」

「そこに置いといてくれ」

 カズは手近な台の上に代金を置いて、引っ掛けてあった麦わら帽子を持ち店を出た。
 カズが店を出た少し後、皺の多い兎人族の女性は、そこにあった硬貨を見て目を疑った。
 当時銀貨三枚(3,000GL)程度で打っていた物に、金貨一枚(10,000GL)の値を付けていったのだから。
 物を見る目がないのか、はたまた同情でもして置いていったのか。
 どちらにしても皺の多い兎人族の女性にとっては、売れ残りの品が金貨に化けたのは喜ばしい結果だった。


 麦わら帽子をアイテムボックスにしまって宿屋に戻ったカズは、ギルドで提案されたパーティーの話を、皆と昼食を取りながら話した。
 これから先のことを考えると、パーティーを登録しておくのもありだとアレナリアは賛成した。
 ビワは戦闘ができないので、不安がっていたが、アレナリアがパーティーの説明をすると、迷いながらも登録することを承諾した。

「問題はレラだな」

「あちし?」

「この国にフェアリーが居るか、ギルドでそれとなく聞くんだった」

「まさか、あちしだけ仲間外れにするきじゃないでしょうね」

「レラをいつものように隠したまま明日ギルドに行って、それとなくフェアリーに対する認識を確認してみましょう。その上でレラをパーティーに入れて、四人で登録するか三人で登録するか決めましょう」

「そうだな。レラを入れてパーティー登録して、狙われたら意味ないからな。それでいいかレラ」

「……仲間外れは嫌だなぁ」

「その場合は、私も登録しないから」

 レラの気持ちを考え、レラがパーティーから外れるときは、自分も外れるとビワは言う。

「どちらにしても、明日ギルドで話を聞いてからにしましょう」

「ちなみに登録する場合は、アレナリアが代表者になってくれよ」

「なんで? どう考えてもカズでしょ」

「ほら、ステータスのこととかあるから。それに同じBランクなら、アレナリアの方がギルドのサブマスをしてたってことで、なにかとさ」

「あまり気乗りがしないけど、仕方ないわね」

「わるいな。それと登録する場合は、パーティー名を考えないと」

「ならなら“美少女フェアリーと行く美味しい物を探す旅”なんて」

「目的変わってるがな(とこぞの旅行代理店のパンフレットに書かれてる売り文句かよ)」

「そうよ。それに変」

「だったらアレナリアはどうなの」

「“愛の巣”なんて(私とカズの)」

「恥ずかしげによくも、却下。どうせ自分とカズの、とか考えてるんでしょ。あちしとビワだって居るんだから」

「……じょ、冗談よ、冗談」

「どっちもどっちだ。……ああそうだ、ここのギルドマスターから、町に滞在するなら、依頼を受けて減らしてってくれって頼まれたんだ。俺が出てる間、二人を頼んで大丈夫か? アレナリア」

「大丈夫に決まってるでしょ。町からは出ないようにするし、いざとなったら絡んできた相手を、ボッコボコにしてやるから」

「不安だ」

「大丈夫だってば」

「あの時みたいに、知らない人にほいほい付いてくなよな」

「そんな事しないわよ。子供じゃないんだから」

「……」

 カズはオアシスの街を思い出し、根拠のないアレナリアの自信が不安なった。
 この事で、三人に新たに付与した装飾品を持たすか、町に滞在する間に考えておくことにした。

「明日ギルドに行く話はこのくらいにして、少し町を歩くか?」

「良いわね。この町特有の料理でも見つかれば、夕食が楽しみになるわ」

「あちしも賛成。部屋に籠りっきりなんて、やだもん」

「出掛けるんだったら、レラは鞄の中よね?」

「は! そうだった」

 ビワの発言で、自分の立場を思い出すレラ。

「パーティーを組むに当たって、レラを表立たせるか話してたばかりじゃないか」

「町で新しい料理を発見したいけど、あちしはまた鞄の中か」

「今、昼飯食べたばかりなのに、アレナリアもレラも夕食の話かよ(それしか楽しみがないのか? この食いしん坊め。誰だこんなにしたのは……俺だ!?)」

 結局のところ、レラは定位置の肩掛け鞄に入り、ビワがそれを持ち四人は町に出掛ける準備をする。

「私はいつもの格好で行くわ」

 アレナリアは相変わらずマントとフード。

「別にもう隠さなくてもいいんじゃないか? 色白の小さいエルフだからって気にしなくても」

「分かってるけど、人の多い町とかだと、これが落ち着くよの」

 アレナリアの使ってるフード付のマントは、ギルドで使っていた物のため、見た目が地味で男物って感じ。

「三人の内二人がマントとフードだと、変に目立つよな。ビワ、これ被ってみる?」

 カズは【アイテムボックス】から、先程買った麦わら帽子をビワに渡した。

「なんです?」

「麦わら帽子」

「麦わら帽子?」

「そう。さっきたまたま見つけてね。ビワなら似合うんじゃないかな?」

 麦わら帽子を受け取ったビワは、頭の上に乗っけた。

「少し大きいか?」

「ちょっと待ってください。……大丈夫です。耳を畳んで被れば、ちょうど良いです」

「耳畳んだら聞きづらくない? 帽子から耳を出せるようにしようか」

「遠くの音を聞くわけではないので、それほど支障はないです。なのでこのままで大丈夫です」

「そう。なら良かった」

「ビワだけなの? 私には?」

「あちしには?」

「今度な。アレナリアはマントじゃなくて、女性らしいコートとかにしたらどうだ?」

「嬉しいけど、見た目だけじゃ戦闘の邪魔になるわ」

「もっと大きな街に行けば、何かあるかも知れないだろ。付与だったら俺がするから」

「カズがそこまで言うなら、考えておくわ(やったわ。ねだってみるものね)」

「ねぇ、あちしは」

「レラのも考えとくから」

「忘れたら怒るわよ」

「はいはい」

 出掛ける準備を整えて、四人は町に繰り出す。
 商店露店は少ないものの、初めて来た国の町に少し興奮するアレナリアと、肩掛け鞄の中に隠れるレラ。
 ビワは時折周りを見渡し、目を背けるような仕草をする。
 カズはその目線の先が、町中で働く奴隷に向けられているものだと気付いた。
 決して無理矢理働かされてるわけではないのは、奴隷の表情から読み取れるが、ビワは付けられてる枷に目がいき、少し辛そうだった。
 かつて種族売買をする者に、捕らえられていた事を、身体が思い出しているのだろうか。

「ビワ」

「……あ、はい」

「大丈夫?」

「大…丈夫です」

「小さな町だから、それほど見る所もないし、そろそろ宿に戻ろう。アレナリア、食料売ってる店の場所は覚えたか?」

「ええ、覚えたわ」

 ビワを気遣い、早めに宿屋に戻ろうとカズは言う。
 アレナリアもビワの様子が少し変だと気付き、宿屋に戻るのを賛成した。

「宿に戻ったら、久々にお酒でも」

「夕食までは、まだ時間があるんだが」

「明るい内からお酒飲んでも、たまには良いじゃない」

「あちしも!」 

 明るい内からお酒とう言葉に、肩掛け鞄に入ってるレラが反応する。

「ちょっ……」

 誰かレラの声に気付かなかったか、カズは周りを見渡した。
 離れた所で町の子供が遊んでいたで、その声に紛れて気付かれることはなかった。

「ふぅ。宿に戻るまでもう少し静かにな」

 ビワが持つ肩掛け鞄を軽く指で弾き、カズはレラに注意をした。
 鞄の上部の隙間からちょこっと手を出し、分かったと答えるレラ。
 ビワはそれとなく鞄の持ち方を変えて、レラの手を見えないように隠した。
 今のビワに余計な世話をかけるなと、レラに注意をしそうになったが、肩掛け鞄に話しかけるの変なので黙っておいた。
 四人は宿に戻ると、この日はもう外に出ることはなく部屋の中で過ごした。
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