人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

文字の大きさ
781 / 912
五章 テクサイス帝国番外編 3.5 魔族領一人旅

759 漁場の調査

しおりを挟む
「にわかには信じられないけど、あの黒焦げになった物を確認して、わずかにビッグマウスと思われる特徴もあったし、海には肉片も浮いてた。そして旦那達の話を聞いて、ウソだとは到底思えない」

 漁に出たノットと十一人の村人達から話を聞いてきたアマ村長は、八体のビッグマウス・シャークと、一体のビッグマウス・シャーク・ロードを討伐したカズ本人に確認を取る。
 衣服の汚れも殆どなく、ビッグマウス・シャークを討伐したカズを前に、アマ村長は緊張する様になった。

「それでカズさん、みんなが言っていた事は本当なのよ…ね?」

「まぁ、そうですね。ロード…あのデカいビッグマウスに関しては、ちょっと威力が高かったようです」

 崩れ落ちるまでに真っ黒焦げになっておきながら、ちょっと威力が高かっただけじゃないだろうと、その場に居た全員が心底思った。
 流石にその雰囲気をカズも感じ取り、苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。

「次の漁は破損した船を直してからになるわ。ビッグマウスの脅威が無くなったかは、まだ分からないけど、ロードが倒されたのなら大丈夫だとワタシは思う。また気になった事があったら聞かせてもらうわ。疲れてるところありがとう。今日はゆっくり休んで」

 漁に出た村人達からの報告が終わり、解散する事になった。
 村人達は村長宅を後にする前に、カズに一言お礼を言ってから自宅へと戻った。
 なんだかんだと話は長引き、時刻は昼少し前になっていた。

「あんたも疲れてるでしょ。休んでちょうだい。ワタシはカズさんと、少し話をするわ。何もないんだから、嫉妬するんじゃないわよ」

「もうしない。腕っぷしだけじゃなく、魔力に関しても敵わないのがわかった」

 女房のアマ村長と二人で話すカズを疎ましく思わないと伝え、ノットは着替えて一眠りすると寝室に移動した。
 二人になるとアマ村長は真剣な表情をしてカズに向き直り、姿勢を正して深く頭を下げた。

「ありがとう、カズさん。旦那がバカな事をして、村人達を危険にさらした尻拭いをしてくれて。しかもあんな大きなビッグマウス、ロードを討伐してくれて」

「護衛との頼みでしたけど、追っ払うだけでは解決になりませんからね。現れたのを倒してしまうつもりで行きましたから。ただビッグマウスを束ねていた、ロードといわれる個体が出て来るとは思いませんでした」

「それを難なく倒してしまうなんて。とんでもない人に頼み事をしたみたい。ロードなんてワタシ達では倒せないわ」

「ノットさんは魔力で強化しているようでしたが、お二人は魔法とかは?」

「旦那は土属性魔法が使えるけど苦手で、戦闘は強化が主なのよ。ワタシは水属性なら使えるわ。あと風属性が少しだけ」

「傭兵では戦う際に、魔法やスキルあまり使わないんですか?」

「ワタシがまとめていたのは、この村みたいな傭兵が集まった団だったのよ」

「それは、傭兵として問題ありと?」

「ええ。肉体的戦闘面では問題ないのだけど、魔力の扱いが苦手だったり、属性魔法を制御できない問題集団。模擬戦を優秀な傭兵団としたら、あっという間にやられて終わり」

 冒険者ギルドと傭兵組合の違いはあれど、切り捨てずに問題集団を纏めて面倒を見る人はいるのだと知る。
 傭兵の問題集団と聞き、そんな一団を纏めていた人の紹介で、傭兵組合に行って大丈夫なのだろうかとカズは思った。

「そんな問題のある傭兵をまとめていたけど、傭兵組合に顔はきくから安心して。ちゃんと紹介状は用意するから」

「頼みます(顔に出てたのかな?)」

「明日の朝でいい?」

「いいですよ」

「なら今日は我が家で休んで。食事は村で作ってる野菜が中心になるけど、ゆっくり休める寝床は用意するわ」

「ありがたい申し出ですが、俺は昨日と同じ場所にテントを張って過ごします」

「どうして? 今回の事で村のみんなは、カズさんを少なからず受け入れてくれたわ」

「紹介状を明日くれるというなら、海辺の近くで様子を見ます。ロードを倒しましたが、他にいないとも限らないですから。というのは建前で、一緒に漁へ出た村人の中に、少しおびえてるような方がいた。からですかね」

 今回は余所者のカズを村の中に泊めるのに反対だというより、アマ村長や旦那のノットよりも強く、ビッグマウス・シャークを容易く討伐出来る実力者だと知り、そんな人物が村の中に居る事が怖いという意見が出るのは目に見えていた。
 それにビッグマウス・シャーク・ロードを倒した事で、他のモンスターが近海に現れないとも限らないのは本当のこと。
 あとは村人達に気を使われるより、一人テントで過ごした方が楽だというのが、カズの本音。

「本当にいいの? ここなら村人達の目を気にする必要はないんだよ」

「ノットさんの目が怖いからですかね。なんてのは冗談です」

「アハハッ。そうだね。旦那はワタシにべた惚れだからね」

「ごちそうさま。では俺は海辺に戻ります。黒焦げになったビッグマウスのロードは、埋めておけばいいですか?」

「そうしてもらえるかい。海に落としたら匂いを嗅ぎつけて、新たなビッグマウスが来ても困るからね」

「わかりました」

「後始末までさせて悪いね」

「やったのは俺ですから」

 アマ村長に軽く会釈をして、カズは村を出て今朝まで居た海辺に戻り、真っ黒焦げになったビッグマウス・シャーク・ロードの死骸を、土属性魔法の〈アースホール〉を使い、地中深くに埋めた。
 新たなモンスターが近海に出現して、村人達が船を出す場所の近くに来るかは、視界の端に表示されているマップの範囲を広げ、反応が出るかをテント内で確認する。
 それだけで過ごす事はせず、昼食を取った後から魔力操作と魔力制御をして時間を潰す。
 早起きしたので流石に日が暮れると眠くなり、夕食は取らずに〈アラーム〉を使い寝た。


 ◇◆◇◆◇


 目が覚めたが周囲は暗い。
 かなり早く寝た事で、昨日漁に出た時と同じくらいの時間に起きてしまった。
 夕食を取らずに寝た事で腹が鳴り、夜明けまで二度寝する気になれなかった。
 火を起こしてテントを片付け【アイテムボックス】に入れ、タマゴサンドとフルーツミルクを出して食べる。
 昼食までは保たないが、何時も朝食を取る頃までは十分。
 昨日の今日では、破損した船を直してないので、村人達が漁に出る事はなく、二艘の船が置いてある海辺に来る事はない。

 アマ村長から傭兵組合の紹介状を受け取るまで、まだまだ時間があるため沖合の様子を見に行く事にした。
 折角ビッグマウス・シャークのロードまで討伐したのに、他のモンスター脅威が発生して、この島を離れてすぐ村人が襲われたなんて事になったら目覚めが悪い。
 例えそうなったとしても、島を出た後では知る由はないのだが、漁場の確認くらいはしておこうと考えた。
 単なる自己満足に過ぎないが、別れた後で気に掛っては支障が出かねない。

 暗い内に〈飛翔魔法フライ〉を使い、昨日漁をしてビッグマウス・シャークに遭遇した漁場まで調査する。
 何ヶ所も漁場を回った事もあるが、船では数十分掛かったのを、一番遠い沖合の漁場まで十数分しか掛からなかった。
 移動中《魔力感知》と《気配感知》を使用しながら、視界の端に表示してあるマップにモンスターの反応が出るかを確認したが、何の反応も出なかった。
 海の底深くをモンスターが移動していたら流石に分からない。
 それでもマップだけで調べるよりは良いと、念の為に漁場から更に沖へと調べに向かう。
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

処理中です...