人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

文字の大きさ
856 / 912
六章 異世界旅行編 4 大陸の最東端へ

832 敗北をと考える

しおりを挟む
 モンスターで例えるなら、カズが遭遇したモンスターでも何体かは、フジよりも強いモンスターは存在した。
 オリーブ王国の大都市アヴァランチェ近くの山に生息する、フロストドラゴンの白真。
 危険度Aランクでレベル55の住壁鉱食大百足じゅうへきこうしょくおおむかでの変異種。
 危険度Aランクでレベル51のグラトニィ・ターマイト・クイーン・マザー。
 灼熱と極寒のダンジョンに生息していた、危険度Aランクでレベル66の溶岩食いのケラと、危険度Sランクでレベル76のマグマナマズ。
 魔族領でリッチにより召喚された、危険度SSランクでレベル96のグレーター・デーモン相手では、フジの攻撃は殆ど効果ないだろう。
 月の裏側で鎮座する謎の巨大な生物コラプサーの前では、フジは赤子以下の存在と化す。

 レオラとミゼットを除き、現状生息してフジよりも強いのは、マグマナマズとコラプサーだけ。
 マグマナマズは名前の通り地中深くのマグマの中で生息しているので、そもそも遭遇する事が難しい。
 巨大な生物コラプサーに至っては、地上から見える月の奥にある、月の裏側に行かなければ会う事はできない。
 この先の旅で、フジよりも強いモンスターか、敵対する者が現れたら、敗北を覚えさせる為に、フジに戦わせようとカズは考えて話した。

「それって、フジがかわいそうだよ!」

「でもねレラ。このままフジが負ける事なく、一番強いなんて勘違いしたらどうなると思う?」

「でもカズには勝てないんでしょ」

「カズとオリーブ王国にいるフロストドラゴンの白真を除いて。フジと母親のマイヒメとは、実力差はなくなってる思うわ。だから尚更」

「なんで同じくらいだとダメなの?」

「例えばフジとマイヒメがケンカしたとする。マイヒメは子供だからと我慢するだろうが、フジは考える間もなく行動に移してしまうだろう。苛立ちから力の加減ができなかったら、マイヒメは大怪我する事になる。どの種族も子育てをするうえで、恨まれようとも一度は痛い目に合わせるのも必要がある。フジの場合は、今がその時期。だろ? アレナリア」

「ええ。新人冒険者が調子にならないようにするのと同じ。痛さや怖さを知らないと、自分の実力を勘違いして、手に負えないモンスターに挑んで命を落とす」

「それは弱い冒険者でしょ。フジは強いよ」

「だからこれ以上敗北を知らずにいるのが問題なんのよ」

「まあ、必ずしも調子に乗るとは限らないけどな。たださっきのロックバードとの戦闘を止めた事で、機嫌を損ねてたもんでな」

「フジには言っちゃダメよ。レラ」

「……」

 みんなでフジを騙してるみたいで、レラは嫌だなぁと口を尖らせてカズを見る。

「そんな顔しないでレラ。カズさんだって、好きでそんな事をしようと思ってないんだから。ね、レラ」

「……うん」

「今まで通り素直なフジのままなら、今言った事をやるつもりはない。そうよね? カズ」

「ああ」

「もし、もしフジが勘違いして、調子に乗ったら。やる前にあちしに言ってよ」

「その時は、一番最初にレラに話す」

 これからのフジの行動に寄っては、敗北を覚えさせるという、可哀想だが辛い決断をしなければならない。
 勝てないと冷静に判断して、アレナリアに助力を頼むか?
 またはカズに助けを求めるか?
 そのどちらもせず自身の強さに驕り、行動不能になるまで戦うか?

 フジが自身の強さに驕り、道を踏み外さなければと、空高く飛ぶフジに目を向けるレラ。
 この世界に存在する一介のモンスターなら、強さに驕り無謀に戦い敗北して捕食されようがなんとも思わない。
 しかしフジは一介のモンスターではなく、これからも一緒に旅をする家族。
 モンスターだからと、即座に討伐対象にされるような生き方をしてもらいたくない。
 難しいことかも知れないが、危害を加えなければ危険ではないと理解してもらえる存在になってもらいたい。

 ロックバードの巣があった岩山から、馬車で三時間程移動して休憩を取る。
 今度は周囲に何も無い乾燥した土地。
 風が吹けば砂埃が巻き上がり、強くなると目を開けているのも辛くなる。
 このまま馬車で移動すると、全身細かな砂や土まみれになり、馬車の車輪も回りが悪くなりそうだった。
 そこで現在移動している乾燥した土地を抜けるまで、気球用のバスケットに乗り、フジに運んでもらう事にした。

 遠くの空に見えるフジを《念話》を繋げて呼び、また四人が乗った気球用のバスケットを運んぶように言うと、二つ返事で了承した。
 馬車の移動に合わせて飛ぶのは、遅過ぎて退屈していたらしい。
 運ぶのは苦ではなく、皆と一緒に飛べるので、移動は全てフジが運ぶ方がいいらしい。
 しかしビワの体調や、移動している場所の情報を得るためには、地上での移動は必須なので、そこは我慢してもらう。
 その代わり馬車での移動中は、好きにしても良い事に。
 世界を分かつ結界の向こう、魔族領にでも行かなければ念話が通じるので、そういう事にした。

 フジで上空を移動中に、遠くに街を発見した。
 日が暮れてから街に入り、宿屋を見つけるより、翌朝街道を進んで街に入ることにした。
 少人数の村よりも、それなりに栄えてる街を選んだのは、テクサイス帝国の帝都を出発する前に、冒険者ギルドで受け取った金貨を両替できるか? そのまま帝国の金貨が使えるかを確かめるため。
 こちら側の国境付近に、監視小屋のような物は空から見えなかったので、予想では帝国の通貨がそのまま流通していると考えられた。
 
 街道から外れた人気のない場所に降り、カズは【アイテムボックス】から小屋を出す。
 夕食を済ませて風呂に入り、寝るまでまったりと過ごす。

「俺、ちょっと風に当たってくるよ」

 カズは一人で外に出て、小屋のそばで寝ているフジの横を過ぎ、星が瞬く夜空を見上げて、管理神チャラ神に何度か《念話》を飛ばすも、やはり繋がることはなかった。
 
「な~に見てるの? カズ」

「レラか。別に何も」

 飛んで来たレラは、カズの隣で浮かんだまま一緒に夜空を見る。

「少し前まで、カズはあの月に居たんだよね?」

「正確には、今は見えない、あの月の向こう側にある、もう一つの月の裏側だな」

「そんな遠い場所から、よく帰ってこれたね」

「大切な家族がいるからな。是が非でも…だ」

「……カズがそんなこと言うなんて。なんか照れるよ」

「レラは褒められる事なんて、あんまりないし、イタズラばっかする子供と同じだからな」

「子供じゃないもん! 立派な大人の女だもん!」

「そうやってすぐに怒るところが、子供っぽいて言われるんだよ(特にアレナリアにな)」

「カズがまだしてくれないからだもん! アレナリアとビワにはしたのに……」

 カズと夫婦になったのに、まだ自分だけが身体を重ねてない事に、レラは寂しさを感じるようになっていた。
 大きさは憧れか欲望かアイテムでアレナリアと同じくらいの大きさでいるのにも慣れて、長時間維持出来るようになったのに、カズはまだ誘ってくれない、と。

「そうだな…悪かった。レラが寝たりして意識を失わなければ、一日維持出来るのはわかった。それと、レオラ達を国外に逃がさなくてよくなったからな。……明日行く街の治安が良さそうなら、アレナリアとビワにはこの小屋で過ごしてもらい、俺とレラは街の宿屋で一晩過ごすか?」

「! 本当に?」

「ああ。小屋には俺達が以外が入れないようにしておけば大丈夫だろ。ビワだけだと心配だが、アレナリアも一緒だし、それにフジがいるからな。そんじょそこらの冒険者やモンスターは、フジを見たら逃げ出すだろ」

「約束だよ! 絶対だよ!」

「街の治安が良ければだ。いいな」

「うん。いい、それでいいよ!」

「それじゃあ、戻るか。その事をアレナリアとビワに話さないとな」

 レラは凄く喜んで、カズと小屋の寝室に戻った。
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

処理中です...