不自由と快楽の狭間で

Anthony-Blue

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25.本当の自分は

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 いつものホテルより、明らかに年季の入った趣の外観を見て大丈夫なのかと少し不安を覚える。やはり、失敗したかなとは思ったが、ここまで来てホテルを変えるわけにもいかず、諦め気分で自動ドアの前に進む。ボクに反応して、ドアが開くと古びた外観よりは新しめのロビーが目に入る。さすがにタッチモニターとまでは行かず、部屋の写真と特徴が書いてあるパネルが並んでいた。近くによって品定めをしていると、後付けだとわかる文字が目に入る。

「バリアフリーのお部屋です。って書いてありますから、ここでいいですか」

 相変わらず、ボクの後ろでたたずんでいる美貴に声をかける。

「はい。わたしは構いません」

「じゃ、ここにしますね」

 と言って部屋番号の下にあるボタンを押すと、くすみかけた赤色の光が点いた。エレベーターに乗って2階に上がり201号室のプレートが点滅している部屋に入った。部屋の中は、改装したらしくきれいで、トイレもバスルームも段差もなくバリアフリーのお部屋というのは正しかったとほっとした。

「ちょっと心配してたけど、車椅子でも大丈夫そうで安心しました」

「そうですか。よかったですね」

 部屋の隅に立っている美貴は落ち着かなさそうに言った。

「美貴さん、座りませんか。ボクはもう座ってますけど」

「あ、はい」

 冗談を言ったつもりだったが、ウケもせずに言葉は通り過ぎて行った。

「あまり慣れてないですか」

「えっ、はい。車椅子の方とはあまり縁がなかったもので」

「そうなんですね」

 ボクは、こういうところのことを言ったつもりだったのだけれど、別な解釈をされてしまったようだ。この人にはそちらの方が問題なのだろうと思った。まあ、こんな会話のパターンは慣れているので気にしないつもりだ。

「こういう形で、男性に会われるのはあまりないのですか」

 誤解を招かないように別の言い方で質問した。

「そんなに、多くはないです。でも、最近お金が必要なことがあって何回か会いました」

 ソファーに座った美貴は、少しリラックスした感じで言葉を続けた。

「この前出会った男の人とホテルに来たんですが、財布を忘れたとかで私がホテル代まで出すことになってしまって」

「えっ、それってエッチもしたんですか」

「そうです。すべて終わってホテルを出る時に言われてしまって。次に会う時にお金渡すからって言われたんです。でも、それっきり連絡がなくなってしまって」

「それは、確信犯ではないですか」

「そうなんでしょうか」

 その時、ボクの頭の中でこの人が言いたいことが浮かんだ。

「すみません。気がつかなくて」

 ボクは、財布の中から約束した金額を美貴に差し出した。

「あっ、いえ、そんなつもりで言ったんじゃないんです」

「こういうのって、先払いが当然なんですよね」

「そうみたいですね」

 お札を受け取って、お札を数えながら美貴は自分の財布にしまった。まあ、受け取ったお金を数えるのは当然なことなのだろうが、目の前で行われたその行為を見た時、今までとは違った感情がボクの胸の中に湧き出した。美貴は、ほんとうにお金だけのためにやっているのだなと感じた。知らない男と初めて会っても、体を投げ出すことをいとわない。では、ボクもいい人のふりをして相手に気遣いなんて必要ないのではないか。もう二度と会わなくていいとわかっているなら、欲望のままにしても良いのだろうという想いが黒く胸の中に溜まっていった。

「じゃあ、これで触っていいよね」

 ボクは美貴の返事も待たずに、手を伸ばして白いブラウスの上から大きく隆起している胸を鷲づかみにした。

「えっ」

 驚いたような顔をした美貴の胸は、弾けるような弾力もなくボクの指を飲み込んだ。

「ちょ、ちょっと待ってください。まだ、シャワーも浴びてないのに」

「そんなの気にしないからさ」

 こんなの自分ではないという感情を押しのけるかのように、本当はこんな風にしたかったのだという欲望の感情がボクを支配してゆく。

「だめですよぉ」

 力なく言う美貴の腕を取り、近くに引き寄せる。ボクの手は再び胸へと手を伸ばす。中年女性の乳房はこんなにやわらかいのかと思いながら、強くもみし抱いてみる。

「うっ」

 小さくうめいた美貴は、強く抵抗もしないままでいた。ボクは、スカートの裾を捲り上げ肉付きのいい太ももの奥に手を押し入れた。指には湿り気のある布地が当たる。

「もう、濡れてるの」

「ちっ、違います」
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