緑の体だからゴブリン?花が咲いてるからドライアド?いいえ、超ミドリムシです!異世界で光合成して家族が増殖しました!

もう我慢できない

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157話 ミドリムシはヤスデを捕まえる

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「むっ!?」「あら~?」

 蟲毒の戦士を見下ろしていた2人は同時に声を上げる。2人は声を上げると同時に同じ方向に顔を向け、目を細める。

「何かくる?」

「なにやら怪しい人がきますね~」

 そう言って2人が言ってから5分ほどたつ。

「へぇ~ 本当につかまってやがるな……」

 そう言って、広場で髪で再びグルグル巻きにされた蜘蛛の戦士を建物の上から見つけ呟く者。そのものは蜘蛛の戦士の様にヤスデの下半身に人の上半身を持った蟲人であった。

 緑の家族の蟲人達は、緑達の影響か人の姿に僅かに蟲の面影を残すだけであるがこの大陸の蟲人達を見ると体に元となった蟲の部分が多い者ほど強い傾向が見られた。

 その傾向に当てはめるとこのヤスデの蟲人も強い蟲人と思われる。

「まぁ、話が本当か見に来たけど、これでうらが取れたな。帰ってしらせるか……」

 そう言ってその場を離れようとした蟲人だが不意に声をかけられる。

「ここからは逃げれませんね~」

 その声を聞き蟲人が声の方に体を向けると景色が歪み3人が姿を見せる。

「ファントムさんを呼んで正解でしたね~」

 そういって頬を染めながらレイが呟く。

「そうだね、まったく気づかなかったみたいだし」

「お2人に呼ばれた時は何があったのかと驚きましたが…… この者も蟲毒の戦士の1人かもしれませんね」

 3人が現れたことに気づいた蟲毒の戦士は慎重に距離を取ろうとするが腐緑が口を開く。

「おや? 逃げようとしているね。蟲毒の戦士は好戦的だと思ったけど慎重なタイプも居るのかな?」

 3人の会話を聞きヤスデの蟲人は、更に警戒する。

 ヤスデの蟲人は、3人の会話から自分を一切危険視しない3人に警戒し一言も喋らない。蜘蛛の蟲人とは違い、ヤスデの蟲人は慎重と思われる。そんな中、ファントムが口を開く。

「ふむ、これだけスキを見せていますが攻撃してくる気配がありませんね……」

 そう言った瞬間3人の気配が変わる。その気配が変わった事と同時に3人の実力の片鱗を感じ取ったヤスデの蟲人の頭の中は大混乱におちいっていた。

『やばい! やばい! やばい! 龍種の尾を踏んだ! 死んだ! 死んだ! 確実に私死んだ! 逃げる? 無理? 軍門に下る? だめ3人の実力からしたら戦力にならない! こうなったら戦って何とかスキを見つけて逃げる? 私が逆の立場なら油断するけどあの3人、穏やかに話しているけどスキがない!』

 自問自答を繰り返していたヤスデの蟲人は硬直している。

「ふむ、では捕まえようか?」

 腐緑がそう言った瞬間、ヤスデの蟲人は動けなくなる。それは、3人が何か行動を起こしたわけではなく、ただ捕まえようと考えただけで、その場にあった空気がさらに張り詰める。変わった空気によりヤスデの蟲人は恐怖で動けなくなる。

 ガクガクと足を震わすヤスデの蟲人。その様子を見て手間が省けたと3人が近づく。

 淡々と迫ってくる3人を見たヤスデの蟲人は思わず口を開く。

「お! お願い! します! どうか! どうか! ……苦しめずに殺してください……」

 そう言って蟲人は、頭を下げる。それは、恐怖で動かなくなった体で唯一動いた頭を動かす。その時、髪でグルグル巻きにされた蜘蛛の蟲人が口を開く。

「ん? ここは? お前達は誰だ!」

 そう言って3人を見て叫ぶ蜘蛛の蟲人。さきほど戦った兜が居ないことに気づき声を上げる蜘蛛の蟲人。ぐるぐる巻きにされた体でのたうち回り始める。それを見たヤスデの蟲人は動く。

『ここしかない!』

 そう心の中で叫んだヤスデの蟲人は、蟲生で1番のスタートダッシュを決める。

『行ける! これなら逃げ切れる!』

 そう確信して動き出し、トップスピードに達したヤスデの蟲人は自分が逃げ切れたと安心する。火事場の馬鹿力か蟲人は自分の視界の全てのものがゆっくりと時間をすすめていることに気づく。

 自分の動きも緩やかだが蜘蛛の蟲人に恐ろしい3人も緩やかにしか動いておらず、離れた蜘蛛の蟲人の口の動きでさえはっきりと目で追える。

 ヤスデの蟲人はこれが究極の集中力の到達地のゾーンなのかと考える。この力があれば今までの危機をいかに楽に乗り越えられたかと過去を振り返るがこの時ヤスデの蟲人は勘違いをしていた。

 究極の集中力の到達地のゾーンは、ただ己の相対するもの1つに全ての意識が向かう事を知らなかった。戦いであれば相対する敵、スポーツであれば自分が行っているスポーツなどで過去のことなど考えない。

 自分がゾーンと思っている状態は、過去の危機的状況を振り返り、今直面している危機をどうすれば乗り越えられるか脳が勝手に検索をかけてる状態。

 それが走馬灯だと気づいていない。

「うあっ!」

 そんな勘違いをしたまま、ヤスデの蟲人が目に見えない柔らかいものに包まれそのスピードを落とし声を上げる。

「何しに来たか知らねぇがお前もつかまっちまってるな。ぎゃはははは! ぐぅっ!」

 ヤスデの蟲人の様子を見て笑っていた蜘蛛の蟲人の頬をレイの鎌が貫く。

「何を笑っているのですか~? あなたもつかまっていることを忘れないでくださ~い」

 そんなやり取りをよそヤスデの蟲人は声を上げる。

「やばい! 逃げないと! 死ぬ! 死ぬ! 死ぬ! 馬鹿が暴れている間に! あっ!?」

 そう言ってヤスデの蟲人は慌てるが一向に逃げ出すことが出来ない。思わず声を上げていたが自分の状況に気づく。

「ふむ、先ほどは諦めたと思いましたが……」

「今の一瞬のスキをついて逃げようとしたね、まぁ逃がさない様に周りに髪を張り巡らしていたけど気づかなかったみたいだね。まぁ、気づいたところでこの子に髪を切れたとは思わないけど……」

「たしかに、緑様達の髪を切り裂けるのは龍種の中でもある一定以上の力を持った方のみですね」

 ヤスデの蟲人が逃げる方向の先に腐緑とファントムがいつの間にかいる状況に気づき再び黙りこみ震えはじめる。腐緑とファントムはそれを見て話す。
 
「どうやら観念したようでし、この方も緑様達の元につれていきましょうか」

「ああ、そうしようか」



 今度こそ自分は終わったと思いヤスデの蟲人は大人しくし、腐緑とファントムとレイに周りを囲まれ案内される場所へと歩いて行く。なぜ自分は蜘蛛の戦士の様にぐるぐる巻きにされ運ばれないのかと不思議に思いながら。

 しばらく歩くと腐緑はある建物の中に入っていきさらに奥に進むと大きな扉の前で止まる。

 コンコン!

「どうぞ!」

 中から返事がありドアを開ける腐緑。腐緑達が中に入るとすぐさま声がかかる。

「あ! ふーちゃんにレイにファントムどうしたの? なにかあった?」

 緑が首を傾けながらした問いかけに腐緑が返事をする。

「いや~ 蜘蛛の蟲人毒に盛って大人しくさせていたんだけど、毒の量の調整が難しくて。毒がきれては気づいて暴れるを繰り返していてね。その事をどこからか聞きつけた別の蟲人が様子を見に来たので捕まえたんだ」

「侵入者ですか!?」

 話をそばで聞いていた蟲人の司令官が腐緑につめよる。ものすごい剣幕に腐緑は焦りつつも落ち強く様に返事をする。

「ちょっと! 慌てないでちゃんと捕まえたから! 近い! 近い!」

「詳しく! 詳しく! 教えてください!」

「はなれてください~」

 腐緑が返事をするも自分達の国に敵が入り込んでいたと聞かされた司令官は気が気じゃなく、腐緑から情報得ようと詰め寄る。

 レイが離れるように言うが指揮官は言う事を聞かづを詰め寄り、腐緑がいら立ちを覚え始めたのを感じ取ったレイは、蟲人の顔の前に自分の鎌を突き出す。

「うっ!」

 それに驚いた司令官の蟲人は我に返り慌てて飛びのき、腐緑からはなれて謝罪する。

「し! 失礼しました!」

 そう言って深々と頭を下げ、一呼吸し落ち着きを取り戻する蟲人。改めて腐緑の方を向き、司令官は口を開く。

「お恥ずかしい。慌てすぎました。お話を聞いてもよろしいでしょうか?」

 緑達を信用せず無礼な態度を取っていた司令官の蟲人は、ウィスプ達、龍種のやり取りを聞き態度を改め丁寧に腐緑に尋ねる。

「では私がご説明いたします」

 落ち着きを取り戻した司令官の対応に自分がとファントムが経緯を説明する。

「となると、その蟲人が蜘蛛の蟲人が捕まったという情報をどこから手に入れたかが問題だな…… この国に入り込んだ敵の手の者がいるのか……」

 ファントムから話を聞いた司令官が呟く。それを聞いた腐緑が考えていた1つの提案をする。

「それで1つ提案なんだけど、この捕まえた蟲人に2重スパイをしてもらおうと思うんだけどどうかな?」

「「2重スパイ?」」

 腐緑の話を聞いた、その場に居たミドリムシ以外の者全員が首を傾げるのであった。

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