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156話 ミドリムシが大陸に来た理由

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 嗚咽までしながら涙を流すウィスプが落ち着きを取り戻したの見計らって緑が話しかける。

「3人共なんでウィスプはそんなに泣いたの?」

 緑達の家族全員が不思議に思ていることを緑が真っすぐ尋ねる。緑の質問にサラマンダーが頬をかきながら話始める。

「緑、こいつは俺達のナンバー1の龍種の中で1番若いやつなんだ…… 俺達がお前達の大陸に行った理由を以前話したよな?」

 サラマンダーの言葉に緑が頷く。

「俺達がシェイドの野郎の言う事を聞かなかったのは、もちろんあいつが気に食わないのと、こいつへのあたりを俺達に向けさせるためでもあったんだ……」

 そう言って3人をまとめて抱きしめ、今も泣き続けているウィスプの頭をなでながらサラマンダーが答える。

「聖属性と闇属性は相反するためにそれを扱う者達の相性も悪いことが多く、こいつとシェイドの野郎もそれに当てはまってな…… 俺達以上にこいつは酷い命令で嫌な事をすることが多かったんだ」

「私達がシェイドの命令を無視したり、命令とは違う事をして腹を立てさせてこの子へ注意が行かないようにしていたのよ……」

「あいつが出すウィスプへの命令は口に出すのも腹立たしいものでシェイドに我等3人が他の大陸でそれおぞれ国を落とす様に言われた時にこいつも連れ出したのだが、ウィスプはそれまで戦っていた者達と手を組み戦うとこの大陸に残ったのだ……」

 サラマンダーの後にウンディーネとノームも以前の事を振り返り説明する。ノームが話終わるとウィスプが顔を上げ口を開く。

「皆が返ってきたという事は、強いものをつれてきたの!?」

 ウィスプが期待に目を輝かせて3人を見つめる。だが、3人は苦笑いをしてこたえる。

「ああ、実はな…… 俺達、負けちまった……」

「ああ、強い者を連れてくると言っておいて恥ずかしいはなしだが……」

「私達、この人の配下になっちゃったのよ」

 そういって3人が緑を指さし、ウィスプが目を見開き緑を見つめる。そんな視線にさらされた緑がすぐさま否定する。

「ちょっと3人共! 僕は3人を配下にしたなんて思ってないよ! それこそ家族と思っているのに!」

 緑の言葉を聞き3人は優しい目で緑をしばらく見つめた後、ウィスプに視線を移すと同時に声をそろえる。

「「こういう、お人よしだ」」

「ああ、確かに緑はお人よしだな」

「同じ顔……」

 3人の龍種の後に頷き、その言葉に同意する魔緑が前に出ると緑とほぼ同じ顔が出てきたことにウィスプが驚く。しばらくの間、微動だにせずウィスプは緑達を見つめるが自分がフリーズしていたことに気づき声を上げる。

「はっ! でも3人が配下になったけどこの大陸に居てるということは! 助けにきてくれたの!?」

「いいえ!」

 ウィスプの問いかけに直ぐに緑が力一杯答えるとウィスプは絶望した表情を浮かべる。だが、すぐさま緑が口を開く。

「この大陸を幸せにしにきました!」

 その言葉を聞いたウィスプの目からは涙がこぼれる。ウィスプは涙を少し流しながら少し笑う。

「ふふふふ、助けにきたのではなく幸せにしにきたんですか…… 改めまして私は聖属性の龍種のナンバー1のウィスプと言います。どうかよろしくお願いします」

「僕は【水野 緑】と言います! よろしくお願いします!」

 3人の龍種を抱きしめていたたウィスプは彼等をはなすと緑の前に歩み寄る。ウィスプは緑の傍まで来ると耳にかけていた髪が落ちるほど深々と頭をさげる。

「よろしくお願いします。この大陸を幸せにしてください」

 ウィスプがそう言うと今度は3人の龍種がウィスプを抱きしめる。

「俺達の主は懐がでかいし強い、何も心配することはないだろう」

「ああ、サラマンダーの言う通りだ。我らはシェイドの命令道理に担当した国に向かったがその国で戦力になる者を従わせるつもりだったが嬉しい誤算がおきた」

「ええ、私達の配下にして戦力になる者を探そうとしていた私達を打ち負かす者が現れたわ。しかも、とても優しいひと。ここに来るまで私達はこの大陸の事を一切はなさなかったけどここに来ることになったわ」

「ああ、蟲人達も強者を求めて渡った大陸が俺達と一緒になるとはな予想外だった……」

 抱きしめられたウィスプが口を開く。

「それは、誰もが3人が命令道理に行動するとはおもっていなかったもの」

「ふふふふ、そうねでもそのおかげで私達のお願いではなく主様が自らの意志でここにきてくれたわ」

「我らが主に願っても同じ結果になってなかったかもしれないがな」

 ウィスプの言葉にノームが呟く。

「よかった…」「ああ、本当によかった…」」「ええ本当に…」

 そう言って誇り高い龍種の3人が涙を流すのであった。



「さて、この蟲毒の戦士はどうしようかな?」

 そう言ったのは腐緑で緑達が感動の再開をしている間、捕まえた蟲毒の戦士を見張るように言われた腐緑は戦士を見つめていた。

「殺してはだめなんですよね~?」

 腐緑の独り言の後にレイが言葉を漏らす。腐緑1人に見張りを任せない様に緑がレイに一緒にいるように頼んだため、蟲毒の戦士は腐緑とレイに見張られていた。


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