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160話 ミドリムシのスキルの暴走

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 緑が持つ超光合成で作られたエネルギーが緑の感情の暴走によって勝手に魔力に変換されはじめる。

「おい、腐緑! 緑の周りに魔法で結界を張るぞ!」

「わかったよ! まーちゃん!」

 そう言って2人は緑の周りに2人係で魔法で魔力を抑える結界を構築する。

 だが、この時2人の取った行動は最悪の事態を招いた。結界の中にあふれかえった魔力が圧縮され勝手に凝縮しはじめた。

 その結果、勝手に凝縮された魔力は、緑の得意な魔法が水の魔法のために水になりはじめる。その事にいち早く気づいたの水の属性龍のウンディーネが叫ぶ。

「ちょっと! 2人共! 結界を解いて! 緑の足元に水ができはじめているわ!」

「「!?」」

 その言葉に2人が緑の足元をみてぎょっとする。

「ちょっと! まーちゃん! どうする!? 結界解く!?」

「待て! 今解いたら緑の魔力にあてられて本当に死人がでるぞ!」

 緑の魔力を魔力を感じれることができる者達(この世界ではほとんどの者)はその巨大さに非常に大きなストレスを感じると思われる。それこそ恐怖で死にかねないほどの……。

 ここでさらに状況は悪い方に加速する。

「なっ! 何が起きた!」

 魔緑と腐緑が結界を解くかどうか話している間に一瞬で結界の中が水で一杯になった。

「えぇええええ! 結界の中が一瞬で水で溢れたよ!」

 魔緑に次いで腐緑も叫ぶ。

 状況の悪化が加速した原因それは、魔緑が開けた穴であった。

 緑達がウィスプ達の国に来て数日、今日はじめて緑達の実力を知ることになった戦い。迫りくる龍種と蟲毒の戦士との戦いは昼すぎに決着がつき今にいたる。

 そのため魔緑の開けた穴からは日光がさしていた。それだけであればよかったが今緑の周りには狭くない範囲で水があり、その水から反射した日光を緑が浴びた。

 暴走状態の緑。そこに日光を浴びる。緑の意志とは別に勝手に行われる【超光合成】が膨大なエネルギーを作り出す。

 キィィィイイイイイイイ!!!!!!

 しばらくすると響きはじめる謎の怪音。

 ピキ! ピキピキ! ピキピキピキピキピキピキ!

 水が凍り魔力の結界を抜けて氷の薔薇が伸びていく。その氷の薔薇は、実在の薔薇と変わらぬ大きさで伸び続ける。それは草木が日光を求めるように魔緑の開けた穴から外に伸びる。

 細い氷の薔薇は光ファイバーの様に浴びた日光を自分の中を通し緑に集めていく。

「おい! ノーム! ウンディーネ! ウィスプ!」

 さらに増大し続ける緑の魔力にサラマンダーが叫び龍種の4人も動く。

「魔力の結界を上部に穴をあけて逃げ道を作って張るぞ!」

 ノームが叫ぶと魔緑と腐緑の結界のさらに外に4人が上部に穴の開いた結界を作り出す。

「魔緑、腐緑2人共一旦結界を解いて! その後に私達の作る結界を手伝って!」
 
「わかった!」「そうっちの方がいいね!」

 そう言って2人が同時に魔法の結界を解く。

「うぉおおおお!」「むうっ!」「くぅう!」「んんんっ!」

 魔緑と腐緑が結界を解き自分達の結界に圧力が加わりうめき声を上げる4人だがその圧力はすぐさま和らぐ。

「「助かった!」」

 4人の作った結界に魔緑と腐緑の魔力が加わる。

 6人がかりで作った結界の上部には逃げ道が作られており、緑の大量の魔力が柱の様に立ちのぼっていた。

 6人がかりで結界を作り少しだけ余裕のできた6人が、この後はどうするか話はじめるが良い案がでない、緑は落ち着きを取り戻すも暴走状態にある自分のスキルに再び慌てふためいていた。

「止まって! 止まってよ~!」

 途中から現状を理解した緑が何とかスキルの暴走を止めようと必死に叫びスキルを止めようとしていた。

 なおも増大する緑の魔力に蟲人達やそれに気づいた干支緑達、獣人の3姫、緑の家族全員で結界をはる。

 そんな彼らの前に1人の女性が突然現れる。

「女神!」

「「女神様!?」」

 魔緑が思わず叫んだ言葉に龍種の4人が驚きの声を上げるが魔緑が続ける。

「ここに来たって事は何とかできるのか!?」

「……」

「このまま魔力が暴発したらこの大陸自体が消し飛ぶんじゃねぇか!?」

 魔緑が叫ぶも女神は青い顔をしてだまっている、それにイライラした魔緑が叫ぶ。

「「!?」」

 魔緑の言葉にその場にいた意識を保っている全員が息をのむ。

「……いいえ……そのような事になりません……ですが… 緑さんが変わってしまうかもしれません」

 その言葉の直後

「うわぁああああ!」

 突然、緑が叫び声を上げたかと思うとそれまで緑から溢れていた魔力が消え、それと同時に緑が気を失い膝から崩れ落ちる。

 それに気づいたヒカリとクウがすかさず緑を支え静かに床に寝かす。

 その光景を見て全員が安堵するが女神だけは青い顔したままであった。

「何かまずいの?」

 女神のあまりの様子に腐緑が以前微動だにしない女神に話しかける。

「皆さん、鑑定ができる方は、緑さんを鑑定してみてください。

 水野 緑
  【職業】魔王

「緑さんが魔王になってしまいました……」

 そう女神が呟くのであった。
 
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