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162話 ミドリムシの目覚め
しおりを挟む「ん…ううん……あれ? 僕はいったい」
緑が目を覚まし辺りを見渡す。そこは見覚えのある部屋だった。いつの間にかベッドに寝かされていた緑は上半身をおこす。
「ここは……ダンジョンの中の僕の部屋?」
そう緑が呟いた瞬間、部屋のドアが開けられる。ドアを開けたのは洗面器とタオルを持ったヒカリで緑の体を拭こうと緑の部屋に来たのであった。
ヒカリは暗い顔をしながらドアを開けるが部屋の中の光景に思わず声を上げる。
「み、緑様! お気づきになられたんですか!?」
そう言った、ヒカリは持っていた洗面器をその場に落とし、慌てて緑のベッドに駆け寄ると緑を抱きしめる。緑が抱きしめられたことに慌てるもすぐさま、緑の胸に顔をうずめたヒカリから泣き声が聞こえてきたために緑は、ヒカリをそっと抱きしめ返す。
そのまましばらくの間、緑はヒカリの頭を優しく撫で続ける。2人は時間が経つのを忘れ、ヒカリは泣き、緑はヒカリの頭を優しく撫でるのであった。
しばらして、ヒカリから泣き声が聞こえなくなったので緑が声をかける。
「ヒカリ心配をかけたね、ごめんね」
緑の言葉に思わずヒカリが顔を上げる。泣きはらした目を大きく見開きながらヒカリが思わず声を上げる。
「そんな! 緑様が謝ることなどありません!」
そんなヒカリの言葉に緑は言いかえる。
「そっか、じゃあごめんねじゃなくて。ありがとうだね」
そう言うと緑はこれでもかというほどの笑顔をヒカリに見せる。
「ヒカリ、心配してくれてありがとう」
「緑様……」
2人の顔が徐々に近づいていき、お互いの呼吸を感じられるくらいの距離になるとヒカリはそっと目を閉じる。緑も目を閉じようとした瞬間、開けっ放しであった扉からクウがはいってくる。
「緑さんきがついたんですね♪ よかったです♪」
クウがそう言って入ってきた瞬間、扉の向こうから「あちゃー」と複数の声が聞こえてくる。それに気づいたヒカリが思わず尋ねる。
「クウ、何時からいたんですか?」
「ヒカリさんが洗面器を落とした直後からです♪」
「……ほぼ、はじめからじゃないですか……」
「ここであんな音を出せば皆集まって来るに決まっているじゃないですか♪ それに、ヒカリさんだけずるいです、クウも心配していたんです」
そういってクウも緑を抱きしめる。そんなクウを緑はヒカリと同じように頭をなでる。
「気持ちいいです♪」
喜ぶクウの顔を見て緑は2人の頭をなで続ける。しばらくの間、頭をなで続けていた緑は手を止め2人に尋ねる。
「よし! じゃあ、そろそろ僕が寝ていた間の話を聞いてもいいかな?」
緑がそう言うと開けっ放しにされていたドアを魔緑がノックする。それに気づいた3人が魔緑の方に顔を向ける。視線が自分に向いた事を確認した魔緑は短く緑に尋ねる。
「体は大丈夫か? 立てそうなら会議室で話をしたいんだが……」
魔緑の言葉にヒカリとクウは眉をしかめるが緑が2人に話しかける。
「ヒカリもクウもそんな顔をしないで。数日の間寝てたみたいだけど体はだ丈夫だから」
そう言って緑は、ベッドからでるとあることに気づく。
「あ、パジャマだ……2人がきせてくれたのかな?」
「はい」「そうです♪」
「ありがとうね」
「後でもう一度礼を言っておけよ。お前の体をふいたりして健気に世話をしてくれていたんだぞ」
「そうなんだ、2人には一杯ありがとうを言わないとだめだね、ありがとう」
「さっきも言いましたが気にしないでください」「どういたしましてです♪」
「よし、じゃあ着替えちゃうか!」
「では私達は、部屋からでます」「扉の前で待ってます♪」「着替えたら会議室に来てくれ」
「いや、大丈夫」
緑がそう言うと一瞬で服が変わる。その様子を見て魔緑が尋ねる。
「それは、魔力で作っているのか?」
「うん、僕なんだか魔法で色々な事ができるようになったみたいなんだ……でもなんでだろう?」
「ああ、それも予想がつく。とりあえず会議室で話そうか」
魔緑がそう言うと4人は緑の部屋をで会議室に向かうのであった。
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