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おまけ
第一節 始まりの日
わたしの家は、おとうさんとおかあさんの三人暮らしでした。家は、とっても田舎にあります。そこで、何の不安もない、何の心配もない毎日を送っていました。
今は昼下がり。おとうさんは、いつものように仕事で出かけています。おかあさんは、夕食の用意をしていました。わたしは、その姿をながめながら、学校の宿題をしていました。
今日の宿題は、算数の文章問題のように、むつかしいものではありません。ですが、わたしはうんうん頭を悩ませていました。
将来の夢――。
自分はいったい、何になりたいんだろう? やっぱり、女の子らしくケーキ屋さんだろうか? それともお嫁さん? 友だちは、お医者さんって言ってたっけ。
「う~ん」
「エリス、まだ決まらないの?」
「うん……どうしよう、おかあさん」
「お母さんは、エリスが決めたことなら、何だって応援するわ」
「おかあさん、そればっかり……」
「ふふっ、まあ時間はたくさんあるんだから、たくさん悩みなさい」
「う~」
わたしが大きくなった姿を、もくもくと想像する……。ぼんやりとだけれど……人に何かしてあげられるようになっていたら、いいかなぁ。おとうさんは林業をしているけれど、そういうのとは、ちょっと違うのかな。おかあさんはお嫁さんだし……。
ドン……ドン……と、固いものを切る音がする。
料理かぁ……。料理が上手くなったら、いろんな人に喜んでもらえるかな? どうだろう? おかあさんに聞いてみようかな。
ドンッ
「あっ!」
「おかあさん?」
……返事がない。
何か、悪いことが起こったんだって、なんとなく分かった……。
「おかあさん、どうしたの?」
「……」
「おかあさ――」
「ちょっと、失敗しちゃった。エリス、ちょっと、裁縫道具を取ってきてくれないかしら……?」
取れかけの指から、真っ赤な血が吹き出していた。
わたしは――すぐさま、裁縫道具を引っ張り出してきた。
「おかあさん、これ……っ」
「ありがとう、エリス……」
「治る? 治るよね?」
おかあさんは、頑張って針に糸を通そうとしていた。でも、なかなか上手くいかない。わたしはと言えば、お裁縫なんてできる訳がない。見ていることしかできなかった。
やだ……。おかあさん……おかあさんにひどいことが起こるなんて、やだよ……。これから、どうなっちゃうの……? 指がなくなるなんて、悲しいよ……。
――お願い、神様。
治して……。おかあさんの怪我をきっと治して……。お願い……っ!
「―リス! エリス!」
「……え?」
わたしは、なぜかお布団の上で横になっていました。今までのことは、夢だったのでしょうか?
「おかあさん……」
見ると、おかあさんの指には、傷一つありません。
ああ、なんだ。やっぱり夢でした。良かった……。本当に良かったです。
「エリス! ありがとう、ありがとうね……!」
「おかあさん……?」
「信じられないかも知れないけれど、あなたが、お母さんの傷を治してくれたのよ」
「傷……。さっきの、夢じゃなかったんだ……。あれ、もう夕方になってる……」
「どこもつらくない? 大丈夫?」
「うん……平気」
わたしが……ほんとにおかあさんのケガを治したの? それなら……他の人のケガも治すことができるの? だとするなら、将来の夢はお医者さん?
わたしは――このあと、奇蹟を起こす聖女を養成する機関があることを知る。その機関に入ることは、わたしの性格からして必然だった。たとえ、お母さんとお父さんと離れ離れになったとしても……。そうして、聖女見習いとしての厳しい日々が始まるのだった――。
今は昼下がり。おとうさんは、いつものように仕事で出かけています。おかあさんは、夕食の用意をしていました。わたしは、その姿をながめながら、学校の宿題をしていました。
今日の宿題は、算数の文章問題のように、むつかしいものではありません。ですが、わたしはうんうん頭を悩ませていました。
将来の夢――。
自分はいったい、何になりたいんだろう? やっぱり、女の子らしくケーキ屋さんだろうか? それともお嫁さん? 友だちは、お医者さんって言ってたっけ。
「う~ん」
「エリス、まだ決まらないの?」
「うん……どうしよう、おかあさん」
「お母さんは、エリスが決めたことなら、何だって応援するわ」
「おかあさん、そればっかり……」
「ふふっ、まあ時間はたくさんあるんだから、たくさん悩みなさい」
「う~」
わたしが大きくなった姿を、もくもくと想像する……。ぼんやりとだけれど……人に何かしてあげられるようになっていたら、いいかなぁ。おとうさんは林業をしているけれど、そういうのとは、ちょっと違うのかな。おかあさんはお嫁さんだし……。
ドン……ドン……と、固いものを切る音がする。
料理かぁ……。料理が上手くなったら、いろんな人に喜んでもらえるかな? どうだろう? おかあさんに聞いてみようかな。
ドンッ
「あっ!」
「おかあさん?」
……返事がない。
何か、悪いことが起こったんだって、なんとなく分かった……。
「おかあさん、どうしたの?」
「……」
「おかあさ――」
「ちょっと、失敗しちゃった。エリス、ちょっと、裁縫道具を取ってきてくれないかしら……?」
取れかけの指から、真っ赤な血が吹き出していた。
わたしは――すぐさま、裁縫道具を引っ張り出してきた。
「おかあさん、これ……っ」
「ありがとう、エリス……」
「治る? 治るよね?」
おかあさんは、頑張って針に糸を通そうとしていた。でも、なかなか上手くいかない。わたしはと言えば、お裁縫なんてできる訳がない。見ていることしかできなかった。
やだ……。おかあさん……おかあさんにひどいことが起こるなんて、やだよ……。これから、どうなっちゃうの……? 指がなくなるなんて、悲しいよ……。
――お願い、神様。
治して……。おかあさんの怪我をきっと治して……。お願い……っ!
「―リス! エリス!」
「……え?」
わたしは、なぜかお布団の上で横になっていました。今までのことは、夢だったのでしょうか?
「おかあさん……」
見ると、おかあさんの指には、傷一つありません。
ああ、なんだ。やっぱり夢でした。良かった……。本当に良かったです。
「エリス! ありがとう、ありがとうね……!」
「おかあさん……?」
「信じられないかも知れないけれど、あなたが、お母さんの傷を治してくれたのよ」
「傷……。さっきの、夢じゃなかったんだ……。あれ、もう夕方になってる……」
「どこもつらくない? 大丈夫?」
「うん……平気」
わたしが……ほんとにおかあさんのケガを治したの? それなら……他の人のケガも治すことができるの? だとするなら、将来の夢はお医者さん?
わたしは――このあと、奇蹟を起こす聖女を養成する機関があることを知る。その機関に入ることは、わたしの性格からして必然だった。たとえ、お母さんとお父さんと離れ離れになったとしても……。そうして、聖女見習いとしての厳しい日々が始まるのだった――。
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