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12歳と薔薇色の…
メリット2
しおりを挟む「――俺は、醜い」
マリアンヌの引きつり気味な顔が見えていないのか、うつむいたまま天使が言葉を繰り返した。どこからどうみても美少年にしか見えないのに、嫌味かっとマリアンヌは思った。
「あなたのような美しい人の……お、お、夫……には……ふさわしく、ないから……」
俯いて震える美少年の訴えに、マリアンヌはやっとこの世界の美醜感覚を思い出した。そういえば確かに言われてみれば天使の容姿はこの世界基準で身体も華奢で全体的に色素も薄く、顔もマリアンヌ好み――つまり縄文人とは程遠い姿――だった。
と、なれば世界的に見ても絶望的に不細工であると言わざるを得ない。――が、マリアンヌには関係なかった。
「それで?」
「え?」
「それだけの理由なら得に問題ないけれど……」
「――えっ!?」
まるでそれが最も大問題なのでは……? と驚き顔の天使を見て、マリアンヌはなるほどと思った。おそらく、夫になるのが嫌なのではなく、この世界でも稀にみる不細工要素の塊である己に、マリアンヌのような美しい要素詰め合わせな妻は気後れするのだろう。
なにせ、世界史上最も美人とまで謳われるマリアンヌなのだ。条件だけを聞けば、詐欺師も真っ青になるほどマリアンヌにデメリットしかなく、己にメリットしかない結婚には疑問や不安が勝るのだろう。
……疑問も何も、単純に顔が好みであるという俗な理由であるのだが、それが理解される筈もない。
「それ以外に夫になれない理由は?」
「ない、けど……」
「じゃあ決定ね。これからよろしく」
マリアンヌはここぞとばかりに勢いで承諾させてしまえ、と、有無を言わさず天使の両手を外から包んでにっこり握手した。そして天使が気圧されたように「は、はい……」と頷いたのを言質、取った――とマリアンヌはほくそ笑んだのであった。
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