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ノエルのはなし
女神との邂逅10
しおりを挟む「――俺は、醜い」
き、聞こえなかっただけかもしれない。
そうは思いつつも、予想した反応と違って、急に雰囲気が一転した少女の様子に何を間違えたか、と目まぐるしく考えた。――醜いだけで、生きているのすら罪だとでもいうように迫害されてきたことを忘れたのか。
そんな醜い己が、この女神がごとく美しい少女を試すようなことを言ったのが良くなかったのかもしれない。夢ならば言ってもいいなどと思うのでは無かった。
――今更ながらあまりに精巧な夢に、現実かもしれないと思い始めていた。
「あなたのような美しい人の……お、お、夫……には……ふさわしく、ないから……」
ビシバシと飛んできていた鋭い威圧の痛さに、これは現実なのかもしれないと思い始め、あまりの無礼をした己を鑑みて、声を震わせながら許しを請うように慌てて理由を説明する。
――そうだ。これが現実ならなお、悪い。処分されないだけマシと言える。
震えながら沙汰を待つ。ただでさえ能力のお陰で見逃してもらっていた分際で、数々の無礼の上塗り。少女から溢れ出る怒りの深さに、今度こそ処分されるに違いないと震えた。
「……それで?」
「え?」
――だが、少女は理由を聞くと、すぐに物騒な気配をしまった。思わず顔を上げて少女の美しい顔を凝視するが、そこに怒りの気配は微塵も見受けられなかった。さらに――
「――それだけの理由なら得に問題ないけれど……」
バツの悪そうな、しかし心底そう思っているのが伝わる表情で少女が告げた。
「――えっ!?」
思考が止まった。つまり、醜いのは、問題ではなく……ではいったい、何に怒りをあらわにしていたというのか。醜いということ以外に怒る部分はあっただろうか……?
思考が混乱し、体験したことのない、他とは明らかに違う少女の未知の対応のせいで、謎がさらに深まった――。
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