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ノエルのはなし
女神との邂逅16
しおりを挟む「ゆ、ゆ、ゆゆゆ夢ではなかったの……ッ!?」
悲鳴にも似た声に、ぼんやりとしていたノエルの意識が覚醒へと導かれた。
――夢? じゃない……?
聞こえた言葉を反芻するように頭の中で繰り返し、暫くして瞬時にアレコレを想い出して飛び起きた。そして飛び起きた先に吃驚した顔のマリアンヌを見つけて反射的に遠くへ飛び退いて固まった。
――夢じゃなかったのか……!
確かに己の中に感じる行為の残痕、マリアンヌの魔力を感じて夢ではないことを悟ってしまった。調子に乗ってあんなことやこんなことをしてしまった――と狼のまま器用に青褪めるノエルを見ることなく、マリアンヌはさっさと着替え支度へと向かってしまった。実にドライな反応であった。
だが、そのマリアンヌも着替え終われば昨夜のことを責め立てるかもしれない。同意があったとはいえ、マリアンヌも積極的だったとはいえ、あれはやり過ぎだった、気がした。
何も言わずに出ていったのがマリアンヌの怒りのほどをあらわしているようで、とても怖かった。気付いたらマリアンヌが去った後のベッドへ無意識に潜りこんでいた。とてもいい匂いがして、心が落ち着いた。
そうだ。たとえマリアンヌが怒っても、もう夫婦の儀式は執り行われた。だから、ノエルのことを嫌いになっても関係ない。そうだ、怯えることはない。シーツにくるまりながら、ノエルはそう情けなくも自身を勇気付けた。
「それで? いつまでそこで震えているのかしら、ノエル」
そして、堂々としようという気概はどこへ消えてしまったのか。マリアンヌが戻ってきてノエルに声を掛けてからもシーツから顔を出す勇気はなく、情けなくもぶるぶると震えていた。
ノエル自身も何故そこまでマリアンヌから隠れていたいのか分からなかったが、いま顔を出してもどのみち衝動的に逃げるだろうことはなぜか己でもわかっていた。
「はぁぁぁぁ……」
マリアンヌの疲れたようなため息に、思わずびくぅ……! と反射で怯えた。
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