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ノエルのはなし
女神との邂逅23
しおりを挟む「……泣くことないでしょう。ほら、こちらにおいでなさい」
そう言って手を優しく包み込むようにベッドへ導くマリアンヌは、この世に実在していない、まるで己のためだけに顕現した女神に見えた。次から次へと零れる雫が柔らかな感触へと導かれる。
――ここはとても、安心する場所だ。
「――何度も、何度でも言うけれど、あなたは私の初めての夫。そして、私が夫にしたいと望んで夫にした夫よ」
マリアンヌが枯れてひび割れた杯を満たすように――ゆっくり、優しく、そっと優しく甘い毒を注いでいく。きっと、この毒に呑まれてしまえばすべてが受け入れられるだろう。――なにもかもすべて忘れて。
もう逃げる必要も、怯える必要も、孤独になる必要も、ない――そして、消える必要も。きっと――
「――もう何も恐れることなどありません。ノエルはもうひとりではありません。あなたには、マリアンヌという妻がいます。あなたは、――ノエルは私の夫です」
――きっとここが、俺の居場所だ。
◇◆◇◆◇
「――マリアンヌ・モエ=ウテナ。本日の式典をもって、汝を女王と認めよう」
――ついに、この日がやって来た。
「――面を上げよ、新たな女王の誕生を祝福せよ!」
「――ノエル」
マリアンヌの言った通り、ただ寄り添うだけだ。
――キャアアアアア!!
いつも通り嫌悪される反応も、心には響かない、感じない、何も動かされない。この世で俺の心を動かせるのはたった一人だけ、――そう、愛しいたった一人の妻だけだ。
「――私、マリアンヌ・モエ=ウテナは、こちらに控える第一となった夫のような容姿の者を、心の底から好ましく思っておりますことを明らかにします」
――ここはとても安心する居場所だ。己の利己的な感情のせいで女神を失いたくはなかった。マリアンヌがそう、魅せてくれた。
――だからきっと、夫が増え、たった一人の夫でなくなっても、この先に何があったとしても後悔しないと確信した。すべては――
「――故に、今後の私の夫についても、私の好みを広く周知させていただき、私の夫を望む者はこの事実を考慮して望んで下さることを願います」
――女帝様のお気に召すままに。
【第一章(裏)-完-】
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