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序章 理想と創造
神と最初の大陸
しおりを挟むアトラはまず、生前の大陸を再現することにした。理由は明白。一番最後に最も力を入れたいからである。その後は力尽きて暫し寝てしまうだろうから先に労力の少ないところから創造することにしたのである。
まずはどこからにするかと考えたとき、やはり、まずは王道の人族だろうとアトラは考える。他のファンタジー種族は基本があってこそ出来るものである。こういう時はやはり初心に返るのが一番失敗が少ない。
神になったばかりなのだ。力の制御はまだまだ甘い。生前も、大地の起伏に一体どれだけの月日を費やしただろうか。ただの草を創るだけで一体何週間と掛かったことだろうか。そこからさらに植生をどうこう川や木、土の種類に至るまでの数々が膨大な時間をかけて造られたのだ。
ゼロから創ろうとは今思えば無謀もいいところであった。死の直前の頃であれば、一週間である程度は同じ作業が出来てしまうだろう技術を獲得したが、当初は専門用語などちんぷんかんぷんである。よく完成までこじつけたものであった。
と、まあ。そんなわけで今度は無機物ではなく、生命の創造である。クリック一つで出来るものではない。まずは大雑把に大きな大陸を創造、生成する。そして、次に山や川などの地形の起伏を生じ、最後に適当に植生を為す。初めてにしてはなかなかのものが出来上がった。
……アトランティスは今の今まで、土の無かった水の星であった。その第一号として立派な記念すべき大陸が出来、アトラは感無量であった。勢いのままに神になると承諾してほっぽり出されてからも黙々と作業を続けていたが、実は内心、アトラはとても大きな不安や恐怖に苛まれていた。
神というのは自己完結主義である。他の神について干渉はしないものの、新たな神の誕生には立ち会う。そういう生物だからだ。だからこそこれから先、新たな神でも誕生しない限り、アトラは永劫に一人きりであった。それが不安と恐怖の源であった。
きっと、アトラが神と成って気付いたこれに抗議すると分かって放り出されたのだ。神は自らの居場所を星に見出す。あの神が言っていたのはそういうことである。アトラの化身こそアトランティス。自らの子どものようなものであり、伴侶であり、肉親であり、半身、つまり化身、孤独や恐怖、不安を癒すための己自信なのだ。
分かっていても逸る気持ちは抑えられない。しかし、適当に周辺を飾っては本末転倒。だからこそ出来るだけ丁寧に周辺の銀河系を整え、やっと、やっと、星の形成にまでこじつけた。
だが、それはただの水の塊でしかなかった。何故水なのかは、単純に生前の地球の影響なのだろう。青い星は美しく、見ているだけで癒されると無意識のうちに創造してしまっていたのかもしれない。
しかし、ただの水。そこに息づく生命は皆無であった。否、微弱ながらも微生物らしきものは感じられるが、そんなものは生きているとは言えない。無機物も同然の機械のようなことしか出来ぬ生命など生命と呼べるものか。生前嘆いたプログラムのNPCのほうがよっぽど生命といえた。
だからこそ今はどうだ。確かに言葉は交わせないが、確かな生命の息吹が感じられた。緑に彩られた大地。そこに成る数多の果実や木。彩り豊かになるだけで、こうも心躍るとはと、アトラは感嘆した。生命の誕生。それはこうも美しいものであったか、と。
「――決めた。この大陸の名は『リベリア』、自由に息づく生命の、最初の大陸」
生前、アトラの理想郷にある大陸には名は無かった。それは、アトラが付け忘れたというわけではなく、単純に最期まで良い名が思い浮かばなかったからなのである。こうしてアトラはひとつ、生前の心残りをまず一つ、果たすことが出来たのであった。
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