7 / 31
序章 理想と創造
大陸創造2
しおりを挟むエルフと聞けば、耳の長い長命美形を予想すると思う。アトラも例に漏れずそれを主軸に創造することを計画していたのだが、ふと、思い出したのだ。そういえば、エルフはかつて妖精だと言われていたらしい、と。
事実かどうかはさておき、アトラは雷に打たれたように己の迂闊さに閉口した。エルフが妖精、それは結構である。美形の理由も幻想に求めるならば納得である。だが、問題はそこではない。
アトラは気付いてしまったのだ、エルフという存在しか創造の計画に存在していなかったことを……! 阿呆と罵られても致し方ないことを仕出かしてしまうところであった。アトラは冷汗をかいたような心地で計画修正に当たった。
まず、大陸まるまる人族と獣人族にしたのはまだいい。それぞれに多種多様な個や特性、差異が出る予定であるからこそひとまとめに出来たのである。
それがエルフはどうか。数々のファンタジーによれば排他的で変化を嫌う種族であるそうではないか。勿論、その気になればアトラが適当に調整できる種族の性格であるが、そういう問題ではない。
もしも修正し、活発で社交的なエルフなど誕生すればファンタジーあるあるの邪道なのである。それは並々ならぬ想いで理想郷を生前創り上げたアトラにとっては冒涜に等しいのだ。
そもそもアトラは王道が好きなのだ。好きが故に、エルフのみの大陸を創ってしまうと多大な問題が起きることも理解した。
そう、例えなくとも分かる。種族交流というものがそもそもなく、大陸外の生物は皆敵! のような思想に凝り固まり、最終的には他の大陸からは閉鎖的な未開の蛮族の地扱いされてしまうのは目に見えていた。
それはアトラの意図するところではない。アトラの理想郷とは、究極的に言えば「みんななかよくしよう」という幼児の考えたスローガンに等しい。
だが、社交的なエルフなど真のファンタジーといえるのか? 否! ならばエルフのみの大陸を創造するのか? それは厳しい。そこでアトラは必至に考えた。エルフと共存出来そうな種族を!
――そして閃いた。
そうだ。エルフといえばドワーフ。これだ! と。しかしアトラは気付いた。しまった! エルフとドワーフは犬猿の仲がファンタジーの王道だ! と。実にあほらしい悩みであるが、アトラは悩みに悩みぬいた。
――そしてさらに思いついた。
そうだ、いっそのこと世界を循環する気脈を基にした妖精の誕生地にしてしまおう、と。ついでに妖精からそれぞれの種に枝分かれしていく感じにしていけばいいのではなかろうか、と。
そうすれば元を辿れば同じ種族。犬猿の仲とまではいかなくても、細々とした交流くらいはしてくれそうだ、と。仲介に小さな妖精たちがあっちこっちいるのも素晴らしい光景であるとアトラは己の名案に満足した。
大陸の名は――そう、『ファタフェメニ』にしよう。意味は運命を共にする小さな妖精たち、というところだろうか。仲良きことは美しきかな。それが体現できるように願った素晴らしい名前である。こうしてアトラは名案に続いての名命名に満足し、エルフ達の大陸の創造計画を完成とした。
――しかし、後のアトラにも少々誤算があったとすれば、予想以上にそれぞれの進化による種族の色が色濃く出てしまったことであった。
いわゆる、妖精たちの一部がまさかの属性精霊として進化したこと、それによって属性による好悪が必然として発生してしまったこと、そしてなによりも何故か例の全くの別ルートの存在である四大精霊が世界の頂点であると世界に一時誤認されたのは全くの誤算であったと、アトラは後に語るのであった。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる