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第Ⅰ章 傲慢なる聖騎士
人質
しおりを挟む『人質から情報を得て欲しい』
今回の戦争未満の後処理が落ち着いたところで、久々の親睦を深める茶会でリオンはレイブンから頼まれた。理由はいくつかあるが、一番はリオンが妃教育により多言語話者であること、次に反抗されたところで単純な力業での制圧が可能であること、そしてレイブンの代わりとして申し分ない身分であることであった。
――なにせ人質とはいえ、相手は一国の王子なのだから。
聞き出す項目としては、今回の戦を起こすに至った理由だった。今回仕掛けてきたのは当初予想されていた異教国ではなく、小国とはいえ同盟国として付き合いのある国家であった。
宗教による争いではなく別の原因であったとしても、シークやリオンのような一騎当千の存在がいることは周知の事実。実際、シークに一掃されて被害甚大となっただけで、――天啓という干渉が無ければ――こちらに事実上一切の人的被害は無かった。
開戦するメリットが全くないのに、何故開戦したのか。
何を企んでいるのかも分からない相手に、王太子であるレイブンを対応に当たらせるわけにはいかない。故に、自衛の出来るリオンに白羽の矢が立った。
今までであればサルバド家に使者を立てやり取りをし、それなりの時間を掛けて頼まれごとを引き受けていたリオンにとって、今回の急で一方的な頼みには僅かな違和感があったが、気のせいとしてあっさり引き受けた。
それほど急を要するのかもしれないと一人納得して。
『お初にお目に掛かります。エネストラ王国王太子、レイブン・ゴート・エネストラの婚約者、リオン・サルバドと申します』
ぽかん、と大きく口を開けてこちらを見る同盟国ルシュタット公国の王子であるガザル・シャムシャール様であった。
リオンは事前情報通り褐色の肌に砂色の髪、深い青色の瞳から件の王子であると判断し、ルシュタット公国の母国語を使って挨拶を行った。
実質的な人質ではあるが、戦後処理も終わり和解は――人質を送ったことで――済み、あっさり元通りの同盟――従属ともいう――国となった。監視などはあるが、王子は丁重にもてなされている。
内情は尋問ではあるが、一応の体面として国交、外交として会うと相手の王子にも伝えられていたはずである。だがこの反応はいかがなものかと、最初の文言の後、リオンは黙ってアホ面を晒して固まる王子を観察していた。
何をされるか分かったものではない人質としてやってきたにしてはお菓子片手にぽかんと、緊張感の無いかなり能天気な王子だ、というのがリオンの第一印象である。
「あ、」
やっと王子が言葉を発したのは、リオンの挨拶から数分が経った頃であった。
そしてリオンは次の瞬間、俄かに気負っていた全てが吹き飛び、思考が停止することとなった。
「あ……あいシテル、けっコン、シて!」
「……はい?」
ルシュタット公国公用語で返事が返ってくるものと待ち構えていたリオンの頭は、片言のエネストラ国公用語により発せられた予測不能な単語に混乱し思考停止した。
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