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トウガラシくん
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待ちくたびれて、うとうとしていた俺は、ドアの開く音で目を覚ました。一瞬、辛いにおいがした気がしたのに、すぐにいいにおいがした。
あまぁい果物みたいなにおいだ。ももかな?りんごかな……。まぁ、チョコくんの匂いじゃないことはわかる。しょんぼりしながら、目を向けると、驚くことにそこにはチョコくんがいた。
「え、え?チョコくん?もう帰ってこれたの?髪の毛短くしたんだね、においもチョコレートにおいじゃなくなってるけどまさか、モンスターになんかされちゃったの……!?」
急に話し出したせいか、チョコくんもその後ろについて部屋に入ってきたルナさんも驚いた顔をしていた。
「アカネ、と言ったか?俺はチョコくん、とやらじゃない、カーティスだ。気絶したお前を運んで、俺の診療所に連れてきたんだ」
カーティスさん……チョコくんはそんな名前じゃなかったはず。幻覚じゃ……なかった?
「え、でも……チョコくんにそっくりでおれ……」
「アカネちゃん落ち着いて、ね。こちらカーティスさん。お医者さんです。チョコくんっていう人じゃないよ。カーティスさん、あなたにそっくりですって、身内にいるんじゃないですか、チョコくん」
こんなにそっくりなのにチョコくんじゃないんだ、ルナさんもそう言っているし。でも気絶する前は、この人、唐辛子のにおいがした気がしたのに……変わった。
「チョコ……知らない名だな」
「あの……助けてくれてありがとうございました」
そっくりで不思議に思うけど、チョコくんじゃないんだろう、別人だ、となぜかすぐ納得してしまった。
「いや、いい……。アカネ、聞きたいことがある」
「なんですか?」
「ルナの作ったスープを辛い、と言ったのは本当か?」
「は、はい。ごめんなさい……」
カーティスさんは表情が動かない、怒ってるんだ。ルナさんの料理を無駄にするんなんて……。
「もう!カーティスさんもう少し優しくですね!責めてるわけじゃなあからね~!」
「……悪い、怒ってるわけじゃない。あの料理は子供でも食べられる食材で作られた料理だ、辛い、という表現は普通では考えられない……。アカネ、なぜ木の実を食べようとしていたんだ?金に困ってかと最初は思ったが、着ている服も質の良いかなりの値段がするものだ」
困ったような表情のカーティスさん、そもそも俺を助けてくれた優しいひとだ。怖い人なんかじゃないよな……。
「それは……木の実しか食べられないからです。この世界の食べ物は木の実と水以外、全部俺には辛すぎてチョコくんがいないとなにも……。木の実だってあのときは食べられなかった……おれ、これからどうしよう」
「……なるほど。味覚異常が考えられるな」
「大変だったね。でも、良かった。ここにいるカーティスさんは味覚、嗅覚に関しては世界で一番詳しいお医者さんだから、アカネちゃん、泣かないで……」
「なんだって治せるわけじゃない。だがまぁ、なんとかはしてやりたいな……珍しい症例だからむしろ、こちらが話しを聞かせて欲しいところだが。……で、なぜチョコくんとやらがいれば食べられるんだ?」
「チョコくんは、あまいにおいがするんです。俺の大好きなチョコレートのにおい。近くにいれば、辛いものだって頑張れば食べられるようになるんです……」
チョコくんのにおいは好きだけど、出来るだけ迷惑をかけたくない。辛いものが食べられるようになれば、もっと肉がついて……。だから、俺はカーティスさんに聞かれたことはしっかり答えようと決めた。チョコレートなんて、この世界の人にはわからないだろうけど。
「ん?さっきのほっとちょこれーとってやつは食べられるの?」
不思議そうに、ルナさんが俺に聞いた。
「あ!それは、チョコくんの特製ドリンクで、あまくて俺が大好きなものです。水と秘密のジャムを混ぜて作ってくれてすっごく美味しいんですよ!」
「ジャムぅ?どんなジャムなんだろう……」
「……で、そいつは今どこにいるんだ?アカネ1人では、こうなることぐらいわかっていたんじゃないのか?」
「あー!本当にそうだね。こんな、ちっちゃくてかわいいアカネちゃんを……依存って言ったらへんだけど、チョコくん?がいなきゃご飯も食べられないっていうのに」
2人とも俺を心配して怒ってくれている。でも、チョコくんは全く悪くない。
「チョコくんは冒険者で、モンスターの討伐に行きました。1週間くらい……凄く心配してくれて、仕事を断るとも言ってくれたし、一緒に行こうとも誘ってくれたんです……でも、チョコくんはS級冒険者で、弱い治癒しかできない俺のせいで、仕事の邪魔をしたくなかった」
「んんん?ねぇ、カーティスさん?」
「なんだ」
「あなたにそっくりで、S級冒険者で、甘いにおいがする人なんて、俺1人くらいしか思い浮かばないんですけど……それについこの前、討伐に行ってくるとかなんとか言ってませんでした?」
「そうだな。だがチョコという名前じゃないぞ」
「ねぇねぇ、アカネちゃんチョコくんって名前って本当の名前?偽名とかじゃない?」
「偽名じゃなくて、チョコくんは俺がつけたニックネームです」
「……確定じゃないです?カーティスさん?」
「わからないだろう……」
「往生際が悪いでしょ。」
嫌そうな顔をしたカーティスさんと、面白そうな顔をしているルナさん。そして、ルナさんはまた俺に質問した。
「アカネちゃん、チョコくんの本名教えてくれる?」
あまぁい果物みたいなにおいだ。ももかな?りんごかな……。まぁ、チョコくんの匂いじゃないことはわかる。しょんぼりしながら、目を向けると、驚くことにそこにはチョコくんがいた。
「え、え?チョコくん?もう帰ってこれたの?髪の毛短くしたんだね、においもチョコレートにおいじゃなくなってるけどまさか、モンスターになんかされちゃったの……!?」
急に話し出したせいか、チョコくんもその後ろについて部屋に入ってきたルナさんも驚いた顔をしていた。
「アカネ、と言ったか?俺はチョコくん、とやらじゃない、カーティスだ。気絶したお前を運んで、俺の診療所に連れてきたんだ」
カーティスさん……チョコくんはそんな名前じゃなかったはず。幻覚じゃ……なかった?
「え、でも……チョコくんにそっくりでおれ……」
「アカネちゃん落ち着いて、ね。こちらカーティスさん。お医者さんです。チョコくんっていう人じゃないよ。カーティスさん、あなたにそっくりですって、身内にいるんじゃないですか、チョコくん」
こんなにそっくりなのにチョコくんじゃないんだ、ルナさんもそう言っているし。でも気絶する前は、この人、唐辛子のにおいがした気がしたのに……変わった。
「チョコ……知らない名だな」
「あの……助けてくれてありがとうございました」
そっくりで不思議に思うけど、チョコくんじゃないんだろう、別人だ、となぜかすぐ納得してしまった。
「いや、いい……。アカネ、聞きたいことがある」
「なんですか?」
「ルナの作ったスープを辛い、と言ったのは本当か?」
「は、はい。ごめんなさい……」
カーティスさんは表情が動かない、怒ってるんだ。ルナさんの料理を無駄にするんなんて……。
「もう!カーティスさんもう少し優しくですね!責めてるわけじゃなあからね~!」
「……悪い、怒ってるわけじゃない。あの料理は子供でも食べられる食材で作られた料理だ、辛い、という表現は普通では考えられない……。アカネ、なぜ木の実を食べようとしていたんだ?金に困ってかと最初は思ったが、着ている服も質の良いかなりの値段がするものだ」
困ったような表情のカーティスさん、そもそも俺を助けてくれた優しいひとだ。怖い人なんかじゃないよな……。
「それは……木の実しか食べられないからです。この世界の食べ物は木の実と水以外、全部俺には辛すぎてチョコくんがいないとなにも……。木の実だってあのときは食べられなかった……おれ、これからどうしよう」
「……なるほど。味覚異常が考えられるな」
「大変だったね。でも、良かった。ここにいるカーティスさんは味覚、嗅覚に関しては世界で一番詳しいお医者さんだから、アカネちゃん、泣かないで……」
「なんだって治せるわけじゃない。だがまぁ、なんとかはしてやりたいな……珍しい症例だからむしろ、こちらが話しを聞かせて欲しいところだが。……で、なぜチョコくんとやらがいれば食べられるんだ?」
「チョコくんは、あまいにおいがするんです。俺の大好きなチョコレートのにおい。近くにいれば、辛いものだって頑張れば食べられるようになるんです……」
チョコくんのにおいは好きだけど、出来るだけ迷惑をかけたくない。辛いものが食べられるようになれば、もっと肉がついて……。だから、俺はカーティスさんに聞かれたことはしっかり答えようと決めた。チョコレートなんて、この世界の人にはわからないだろうけど。
「ん?さっきのほっとちょこれーとってやつは食べられるの?」
不思議そうに、ルナさんが俺に聞いた。
「あ!それは、チョコくんの特製ドリンクで、あまくて俺が大好きなものです。水と秘密のジャムを混ぜて作ってくれてすっごく美味しいんですよ!」
「ジャムぅ?どんなジャムなんだろう……」
「……で、そいつは今どこにいるんだ?アカネ1人では、こうなることぐらいわかっていたんじゃないのか?」
「あー!本当にそうだね。こんな、ちっちゃくてかわいいアカネちゃんを……依存って言ったらへんだけど、チョコくん?がいなきゃご飯も食べられないっていうのに」
2人とも俺を心配して怒ってくれている。でも、チョコくんは全く悪くない。
「チョコくんは冒険者で、モンスターの討伐に行きました。1週間くらい……凄く心配してくれて、仕事を断るとも言ってくれたし、一緒に行こうとも誘ってくれたんです……でも、チョコくんはS級冒険者で、弱い治癒しかできない俺のせいで、仕事の邪魔をしたくなかった」
「んんん?ねぇ、カーティスさん?」
「なんだ」
「あなたにそっくりで、S級冒険者で、甘いにおいがする人なんて、俺1人くらいしか思い浮かばないんですけど……それについこの前、討伐に行ってくるとかなんとか言ってませんでした?」
「そうだな。だがチョコという名前じゃないぞ」
「ねぇねぇ、アカネちゃんチョコくんって名前って本当の名前?偽名とかじゃない?」
「偽名じゃなくて、チョコくんは俺がつけたニックネームです」
「……確定じゃないです?カーティスさん?」
「わからないだろう……」
「往生際が悪いでしょ。」
嫌そうな顔をしたカーティスさんと、面白そうな顔をしているルナさん。そして、ルナさんはまた俺に質問した。
「アカネちゃん、チョコくんの本名教えてくれる?」
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