この世の全てが詰まった物語

佳樹

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過去改変

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おっさんチョコレートは、ショッピングモールで大好物のお菓子を大量に買い、自宅へと急いでいた。
すると、道端で迷子になって大泣きしている男の子が周囲の注目を集めていた。
「うえーん。ママが居ないよ~。ママー何処に行ったの?」
周りの大人達は男の子の事を無視して通り過ぎていた。
おっさんチョコレートも面倒臭そうだったので、無視して通り過ぎようと思っていると、男の子と目が合ってしまった。
「パパー!」
男の子がおっさんチョコレート目掛けて走り寄って来た。
「人違いだよ。お兄さんは坊やのパパじゃ無いよ。」
「良かった。パパだ~。」
男の子はおっさんチョコレートのズボンを掴んで離そうとしない。
「おいクソガキ違うって言っているだろ!こっちは早く家に帰ってお菓子を食べたいんだよ!」
おっさんチョコレートが男の子を怒鳴りつけると何やら周囲がざわつき始めた。
「こんな可愛い子を捨てようだなんて、無責任な父親だ事。」
「目つきも悪いし、今までに何人も罪も無い人を殺したような顔してるわ。」
「あら嫌だ、こちらをずっと厭らしい目で見てるわ。」
小太りの50代のおばさんが、おっさんチョコレートを汚い物を見る様な目で言った。
おっさんチョコレートは迷子の男の子を見て見ぬ振りをしていた群衆に、犯罪者とまで言われると段々と悔しくなって来た。
そして、その群衆の一部でもあった自分に対しても情けなさを感じた。

「あー!分かったよ一緒に坊やのママを探してやるよ!」
「本当!?おじさん、ありがとう。」
おっさんチョコレートは男の子の手を繋いで母親探しを始めた。
「ねえねえ、その手に持ってる大きな袋には何が入っているの?」
「これか?この中にはお菓子が沢山入っているんだぞ。」
男の子の目が輝いた。
「そんな物欲しそうな目で見ても一つも遣らないからな!全部俺のだからな!」
「分かってるよ。一緒にママを探してくれるだけで十分だよ。」
そう言われると、おっさんチョコレートは何だか自分が小さな人間に思えて来た。
良い事をしている筈なのに、釈然としない気持ちだった。
「しょうがないな、一個だけだぞ。」
おっさんチョコレートは袋の中から飴玉を一粒取り出した。
「あっ!ママだ!」
男の子が遠くに母親の姿を見つけて駆け出した。
母親も男の子に気付き、長い髪を振り乱しながら男の子の元へと急いだ。
「とっても心配したんだからね!無事で良かった!」
母親が男の子を強く抱き締めた。
「ママー!ママー!」
男の子は母親の胸の中でワンワン泣いた。
おっさんチョコレートもその光景を遠くで見てワンワン泣いた。
そしておっさんチョコレートは二人には何も言わず、静かにその場所から立ち去った。

おっさんチョコレートは再び家に向けて歩き始めた。
すると今度は、みすぼらしい服装の老人がおっさんチョコレートの前に現れた。
「爺さん。通行の邪魔だからそこをどいてれ!」
おっさんチョコレートは自分の進路を妨害する老人に対して厳しく言った。
老人はおっさんチョコレートに優しく微笑み、ゆっくりと話始めた。
「先程、あなたが迷子の子供を助ける所を見せて貰いました。
あなたはこれまでの人生で、人の役に立つ事をしたのは今回が初めてでしたね。」
「そんな事ないぞ。今までにだって何度も・・・」
おっさんチョコレートは、人の役に立った事を思い出そうとしたが、どんなに過去を遡っても何も出て来なかった。
「そうだ!公園のトイレの紙が切れた時にそれを替えた事があるぞ!」
おっさんやチョコレートはしっかりと社会貢献していたので得意気な表情を浮かべた。
「おーい!何してんだ?」
丁度近くを通り掛かった、おっさん野球帽とおっさん伊達メガネがおっさんチョコレートに向かって話し掛けて来た。
「実は、変な爺さんに掴まって困ってたんだよ。」
「変な爺さんとは散々な良い様だな。これでも儂に会いたいと思っている人間は世界に数十億人も居るんじゃぞ。」
「ほら、変な爺さんだろ?」
「儂の正体を知ったらお主達、腰を抜かすぞ。儂の正体は・・・」
「神様とか言うんだろう。そうやって最近この辺で、お賽銭とか言って金を巻き上げる悪質な不良老人グループが居るんだよな。」
「お主達、神の存在を信じて居ないのか?」
「神様が居るなら、こんなにも清廉潔白な人間である俺達が貧しい生活を送るなんて可笑しいだろ。」
「まったく愚かな者達だ、人間は自分達の都合の良い様に神を解釈しようとする。
人智を越えた存在であるが故に、たかが人間如きが神を理解しようなどとする事自体、馬鹿げている。
まぁ、お前達にはちいと難しい話だったかのう。」
おっさん伊達メガネは目を閉じて深く頷いていた。
そして、いつもの知ったか振りの悪い癖がひょっこり顔を出した。
「私は全て理解しましたよ。つまり、簡単に纏めると、神はイタリア人って話でしょう。」
おっさん伊達メガネは得意気に言った。
「流石おっさん伊達メガネ!頭が良いな!俺達は全然気付かなかったぞ。」
おっさん野球帽とおっさんチョコレートは尊敬の眼差しでおっさん伊達メガネを見ていた。
「はぁ~。」
老人が呆れた様子で、溜め息を吐いた。
「儂がいつ、パスタやピザの話をしたと言うのじゃ?」
老人は回りくどい言い方をしても、この三人の理解力の低さでは何時まで経っても話が先に進まないと思った。
「儂が其方の前に現れたのは、初めて人助けをしたご褒美に、一つだけやり直したい過去を変えさせてやる為じゃ。」
「過去を変える事が出来るのか?」
「そうじゃ。目を閉じて強く念じれば、儂がその当時に戻してやる。過去を変えた後は、何もせずとも、自然と元の世界に戻る事が出来る。」
「さあ、強く念じるが良い。」
おっさんチョコレートは目を閉じて、戻りたい過去を強く念じ始めた。


目を開くと、そこは小学校の校舎の中であった。
目の前では少年時代の丸々太ったおっさんチョコレートが重たそうな寸胴鍋を持って歩いていた。
階段に差し掛かり、少年時代のおっさんチョコレートの足元がぐらつき、そのまま前に倒れるかと思われた。
しかし、間一髪、現代のおっさんチョコレートが、少年時代のおっさんチョコーレートの体を支え事無きを得た。
「おじさんありがとう。」
おっさんチョコレートも少年時代のおっさんチョコレートに笑顔で応えた。


すると突然、周りの景色が変わり、いつの間にか現代に戻っていた。
「これで、長年後悔していた事が解消された。」
おっさんチョコレートは心の中のしこりが取れ、清々しい表情を浮かべていた。


おっさんチョコレートが少年時代のおっさんチョコレートを助けた事により、その後の未来は大きく変化していた。
給食のカレーをひっくり返さなかった事により、小腹が空いていた現代のおっさんチョコレートのお腹は少しだけ満たされたのだった。


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