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硝子の心
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おっさんチョコレートはその日、両親と夕食前の家族団欒の一時を楽しんでいた。
「母上、今日の夕食は何で御座るか?」
キッチンで夕食の準備をしている母親に向かって、食卓からおっさんチョコレートが尋ねた。
「今日はチョコレートちゃんの大好きな甘口のカレーですよ。」
「ほ~、それは誠に楽しみで御座る。この日の為に生きて来たと言っても過言では無いで御座るよ。」
「何で何時もこいつに合わせて俺達まで甘口のカレーを食べなきゃなんねぇんだ?」
父親は目の前のおっさんチョコレートを睨みながら不満を露わにした。
「あなたが食べる分にはスパイスをたっぷり入れてあるからいいじゃないですか。」
この日、母親にはある作戦があった。
好き嫌いの多いおっさんチョコレートに苦手なトマトを克服させる為に、カレーの中に密かに原型が無くなるまで煮込んだトマトを入れていたのだ。
「母上の作るカレーは世界一ですからな。そのカレーを食べる僕と父上は世界一の幸せ者で御座る。」
おっさんチョコレートはカレーが好き過ぎる余りに、食卓に並ぶ前から既にスプーンを力強く握り締めていた。
「さぁ。出来ましたよ。」
母親が食卓にカレーを並べると直ぐに、おっさんチョコレートは目を輝かせながらスプーンでカレーを掬い上げ口に入れた。
「ブーーーッ!」
おっさんチョコレートは反射的にカレーを勢い良く吐き出した。
余りにも勢いが良かったので吐き出したカレーが父親の顔に直撃した。
父親は不意を突かれ、一瞬走馬灯の様に楽しかった少年時代が頭を過っていた。
「何やってんだ!馬鹿野郎!」
父親がおっさんチョコレートを力いっぱい引っ叩いたがおっさんチョコーレートはその痛みを感じる余裕すら無かった。
トマトを食べた事により、おっさんチョコレートの顔色は真っ青になり全身がブルブルと震えていた。
「と・・・トマトが入っている!!!トマトが入っている!!!謀ったなぁ!!!」
おっさんチョコレートは食べ物に対して人一倍貪欲であったので、直ぐにいつもと違うカレーの違和感に気付いた。
「ごめんなさい。チョコレートちゃん。本当にごめんなさい。」
おっさんチョコレートはこの世で最も信頼を寄せ、唯一自分の味方であると思っていた母親からの裏切りに遭い、この世には最早、自分の味方は居ないのだと感じた。
「この世は嘘だらけで刺客だらけだ!」
おっさんチョコレートは激しいショックを受け、椅子から立ち上がり、泣きながら自室に閉じ籠もってしまった。
そして、その日は夕飯を食べる事無く眠りについた。
翌朝、おっさんチョコレートは昨晩、食事を抜いた事により、激しい空腹に見舞われていた。
その日の朝食はカレーの次に大好きなカツ丼だった。
家族三人で食卓に座り、おっさんチョコレートがカツ丼を口に入れた。
「ブーーーッ!」
おっさんチョコレートは反射的にカツ丼を勢い良く吐き出した。
余りにも勢いが良かったので吐き出したカツ丼が父親の顔に直撃した。
父親は不意を突かれ、二日連続で一瞬走馬灯の様に楽しかった少年時代が頭を過っていた。
「朝から何やってんだ!馬鹿野郎!」
父親がおっさんチョコレートを力いっぱい引っ叩いたが、おっさんチョコレートにとってはそれ所では無かった。
お腹が空いているにも関わらず、昨日のトラウマで、食事が一切喉を通らなくなっていたのだ。
「一体この体に何が起こっているんだ?このまま何も食べられずに餓死してしまうのか・・・」
母親もおっさんチョコレートがこのまま死んでしまうかもしれないと思いパニックになっていた。
「チョコレートちゃーん!」
母親はヒステリックな叫び声を上げ、震える手で119番通報した。
おっさんチョコレートと母親にとって救急車が駆け付けるまでの時間は永遠の様に長く感じられた。
「チョコレートちゃんの命が係っているのに救急車はまだ来ないの!」
「段々目の前が真っ暗になって来たで御座る。」
おっさんチョコレートはゆっくりと床に横になった。
「こんなヤツの為に病院まで絶対付いて行かないからな。」
この時、父親だけは唯一冷静さを保っていた。
病院に運ばれたおっさんチョコレートは、食事を二食抜いた事により、激しく衰弱していた。
病室で横になっていたおっさんチョコレートと付き添いの母親に向かって、担当医から驚愕の事実が告げられた。
「このまま昼食を抜けば命の保証は出来ません。兎に角、何でも良いので胃の中に入れて下さい。」
「そ・・・そんなぁ・・・」
母親はショックを隠し切れない様子で、目に涙を浮かべていた。
おっさんチョコーレートもこんな所で死にたくないとジタバタしていた。
「泣いていられないわ。私がチョコレートちゃんを救わないと。」
母親は病室を飛び出し、院内の売店へと急いだ。
弁当やパンやおにぎり、お菓子、アイス、ドレッシングや調味料と言った、ありとあらゆる食料を買い占めた。
母親は急いで病室へ戻り、テーブルの上に買って来た食料を並べた。
おっさんチョコレートも差し迫った危機を感じつつも、食料をしっかりと吟味し、その中からホットドッグを手に取った。
そして、ホットドッグに母親が買って来た大量のケチャップを付け足して大きな口に入れた。
「やっぱり、死にかけた時にはケチャップをたっぷり付けたホットドッグが一番で御座る。」
おっさんチョコレートがホットドッグを美味しそうに頬張りながら幸せそうな笑顔で言った。
一瞬の静寂の後に、病院中が感動に包まれウィーン少年合唱団の歌唱後宛らの拍手喝采が巻き起こったのだった・・・
「母上、今日の夕食は何で御座るか?」
キッチンで夕食の準備をしている母親に向かって、食卓からおっさんチョコレートが尋ねた。
「今日はチョコレートちゃんの大好きな甘口のカレーですよ。」
「ほ~、それは誠に楽しみで御座る。この日の為に生きて来たと言っても過言では無いで御座るよ。」
「何で何時もこいつに合わせて俺達まで甘口のカレーを食べなきゃなんねぇんだ?」
父親は目の前のおっさんチョコレートを睨みながら不満を露わにした。
「あなたが食べる分にはスパイスをたっぷり入れてあるからいいじゃないですか。」
この日、母親にはある作戦があった。
好き嫌いの多いおっさんチョコレートに苦手なトマトを克服させる為に、カレーの中に密かに原型が無くなるまで煮込んだトマトを入れていたのだ。
「母上の作るカレーは世界一ですからな。そのカレーを食べる僕と父上は世界一の幸せ者で御座る。」
おっさんチョコレートはカレーが好き過ぎる余りに、食卓に並ぶ前から既にスプーンを力強く握り締めていた。
「さぁ。出来ましたよ。」
母親が食卓にカレーを並べると直ぐに、おっさんチョコレートは目を輝かせながらスプーンでカレーを掬い上げ口に入れた。
「ブーーーッ!」
おっさんチョコレートは反射的にカレーを勢い良く吐き出した。
余りにも勢いが良かったので吐き出したカレーが父親の顔に直撃した。
父親は不意を突かれ、一瞬走馬灯の様に楽しかった少年時代が頭を過っていた。
「何やってんだ!馬鹿野郎!」
父親がおっさんチョコレートを力いっぱい引っ叩いたがおっさんチョコーレートはその痛みを感じる余裕すら無かった。
トマトを食べた事により、おっさんチョコレートの顔色は真っ青になり全身がブルブルと震えていた。
「と・・・トマトが入っている!!!トマトが入っている!!!謀ったなぁ!!!」
おっさんチョコレートは食べ物に対して人一倍貪欲であったので、直ぐにいつもと違うカレーの違和感に気付いた。
「ごめんなさい。チョコレートちゃん。本当にごめんなさい。」
おっさんチョコレートはこの世で最も信頼を寄せ、唯一自分の味方であると思っていた母親からの裏切りに遭い、この世には最早、自分の味方は居ないのだと感じた。
「この世は嘘だらけで刺客だらけだ!」
おっさんチョコレートは激しいショックを受け、椅子から立ち上がり、泣きながら自室に閉じ籠もってしまった。
そして、その日は夕飯を食べる事無く眠りについた。
翌朝、おっさんチョコレートは昨晩、食事を抜いた事により、激しい空腹に見舞われていた。
その日の朝食はカレーの次に大好きなカツ丼だった。
家族三人で食卓に座り、おっさんチョコレートがカツ丼を口に入れた。
「ブーーーッ!」
おっさんチョコレートは反射的にカツ丼を勢い良く吐き出した。
余りにも勢いが良かったので吐き出したカツ丼が父親の顔に直撃した。
父親は不意を突かれ、二日連続で一瞬走馬灯の様に楽しかった少年時代が頭を過っていた。
「朝から何やってんだ!馬鹿野郎!」
父親がおっさんチョコレートを力いっぱい引っ叩いたが、おっさんチョコレートにとってはそれ所では無かった。
お腹が空いているにも関わらず、昨日のトラウマで、食事が一切喉を通らなくなっていたのだ。
「一体この体に何が起こっているんだ?このまま何も食べられずに餓死してしまうのか・・・」
母親もおっさんチョコレートがこのまま死んでしまうかもしれないと思いパニックになっていた。
「チョコレートちゃーん!」
母親はヒステリックな叫び声を上げ、震える手で119番通報した。
おっさんチョコレートと母親にとって救急車が駆け付けるまでの時間は永遠の様に長く感じられた。
「チョコレートちゃんの命が係っているのに救急車はまだ来ないの!」
「段々目の前が真っ暗になって来たで御座る。」
おっさんチョコレートはゆっくりと床に横になった。
「こんなヤツの為に病院まで絶対付いて行かないからな。」
この時、父親だけは唯一冷静さを保っていた。
病院に運ばれたおっさんチョコレートは、食事を二食抜いた事により、激しく衰弱していた。
病室で横になっていたおっさんチョコレートと付き添いの母親に向かって、担当医から驚愕の事実が告げられた。
「このまま昼食を抜けば命の保証は出来ません。兎に角、何でも良いので胃の中に入れて下さい。」
「そ・・・そんなぁ・・・」
母親はショックを隠し切れない様子で、目に涙を浮かべていた。
おっさんチョコーレートもこんな所で死にたくないとジタバタしていた。
「泣いていられないわ。私がチョコレートちゃんを救わないと。」
母親は病室を飛び出し、院内の売店へと急いだ。
弁当やパンやおにぎり、お菓子、アイス、ドレッシングや調味料と言った、ありとあらゆる食料を買い占めた。
母親は急いで病室へ戻り、テーブルの上に買って来た食料を並べた。
おっさんチョコレートも差し迫った危機を感じつつも、食料をしっかりと吟味し、その中からホットドッグを手に取った。
そして、ホットドッグに母親が買って来た大量のケチャップを付け足して大きな口に入れた。
「やっぱり、死にかけた時にはケチャップをたっぷり付けたホットドッグが一番で御座る。」
おっさんチョコレートがホットドッグを美味しそうに頬張りながら幸せそうな笑顔で言った。
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