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独身の頃からすでに始まっていたマウント
第1話
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「あれ、サエじゃん?!久しぶりだね!」
「真奈美、ここで働いてたんだ?!」
今から15年ほど前、私・西島冴子は就職先の歯科医院で同級生の久世真奈美と再会した。
中学の頃は地味で大人しいグループにいた私と、逆にオシャレで華のあるグループにいた真奈美。
特別仲良しというわけではなかったけれど、お互いを下の名前で呼び合うぐらいには親しかった。
真奈美は歯科衛生士の学校に通いながらその歯科医院でバイトをしていた。
家が近いという理由だけで受付助手になった私なんかとはまるで違う。
おまけに仕事の要領も良くて白衣がよく似合う、凛とした美人だ。
背が低めで小柄で、純日本人なのに彫りが深めのハーフ顔でもあり、色白の肌に黒くて長い艶髪が映える。
女から見ても、真奈美は美人だ。
そんな真奈美は私に明るく声を掛けてくれて、いつしか週に一度は必ず遊ぶぐらいの仲良しになっていた。
カラオケが好きなことも、洋楽が好きでクラブ遊びが大好きなのも共通の趣味。
何度も遊ぶうちに自然とお互いに『親友』という認識が芽生えていたと思う。
あてもなくドライブをしながら、くだらないネタ話でお腹を抱えて爆笑した。
好きな人や彼氏ができればその恋バナで盛り上がったし、どちらかが失恋したら居酒屋に直行して慰め合ったりもした。
そんな、ごく普通の親友。
でも、今考えれば私たちは本当に元々親友だったのかさえわからない。
付き合いが一年、二年と長くなるに連れ、明らかな綻びが生まれ始めた。
真奈美は時折、私に対してキツイ物言いをするようになっていった。
なんというか、いちいち言わなくてもいいような余計なことを言われるのだ。
たとえば私が彼氏にフラれて泣きながら電話をした時、私の話を聞いてくれた真奈美はこう言った。
「〇〇くんにとってサエはそこまで好きになれるような女じゃなかったんだよ。サエがその程度だったってこと」
事実そうだとしても、失恋したばかりの友達に対して普通は出てくる言葉ではないと思う。
相手の男のことを「あなたの良さがわからないなんて、その程度の男なんだよ」と言うのは慰めとして受け取れるが、その逆を言われてしまっては傷を抉られるだけだ。
そして、それに対して当然余計にショックを受けている私に、真奈美は決まってこう付け加えるのだ。
「ごめんごめん、私ってサバサバした性格じゃん?だからついズバッと言っちゃうトコがあるんだよね」
自サバ女である真奈美は、いつもサバサバしていることを免罪符にして無神経な毒を吐いては、まるで私の反応を楽しんでいるみたいだった。
今だからこそそう思えるが、当時の私は親友のことをそんな目で見てしまうことをそもそも拒否していたのかもしれない。
ある意味、バカだったのだ。
薄々気づいていても、ずっと自分の中で押し込めて気づいていないフリをしてきた。
これでは相手をつけ上がらせる一方だということにも気づかずに。
そんな自サバ女の真奈美の私に対する言動は、ますます酷くなっていった。
それも、他の共通の友達に対するものとは違い、なぜか私にだけ。
真奈美は女の私から見てもいつだってオシャレで綺麗で、自分の意見をはっきりと主張できるようなしっかり者だ。
本人いわく、看護師をしているお母さんが物凄く厳しくて気の強い人らしく、歯科衛生士という仕事もお母さんから強く勧められたそうだ。
ということは、別に自分が『絶対になりたい!』と夢見た仕事というわけじゃなかったのかもしれない。
それでも、当時フラフラしていた私から見れば真奈美はすごく真面目に努力している子にしか見えなくて、そんな真奈美が少し羨ましかった。
22、23歳ぐらいの頃。
歯科衛生士としてバリバリ働き始めた真奈美とは違い、それまでの私は夜のキャバクラで働いたり気ままにバイトをしてみたり、とにかく定職にも就かずフラフラしていた。
私は昔から、特にやりたい仕事も夢もないのが一番の悩みだった。
社会に出るたびに自分の存在意義がわからなくなって、お酒に溺れる時期もあれば好きでもない男とワンナイトを過ごすことも決して少なくはなかった。
自己肯定感が低すぎて、自分を大切にできなかったのだ。
そんな私が一番長続きしたのは、小さな整骨院の受付助手の仕事だった。
…といっても、人間関係が抜群に良かったからこその長続きだったんだと思う。
私はあまり人付き合いがうまい方ではなく、嫌なことがあると引きずってしまいがちだ。
そんな自分の性格をわかっている以上、何をどうすれば自分を変えられるのかもわからなかった。
そんなだらしない私のことをいつも見ていた真奈美。
同い年の同じ大人の立場として、多少なりとも私に対して苛立ちはあったんだと思う。
だからついつい、悪気なく私のことを見下してしまっていただけなのかもしれない。
そうは思えても、総合的に見るとやはり真奈美の私への態度は理不尽であり、それらは絶対に親友に向けられるものではなかったと思う。
この頃から明らかに『見下されてる?』と感じ始めた。
以降は、その具体例を挙げていく。
私自身にも至らない点はもちろんあるので、真奈美のことを一方的に悪者に仕立て上げるつもりはないことをご了承頂きたい。
ある日、真奈美からの電話でカラオケに誘われた私は金欠を理由に断った。
バイトを辞めて、次のバイトの面接に落ちたりしているうちに無職の時期が2ヶ月ほど経ってしまっていたのだ。
その理由を正直に真奈美に話してみた結果、「いいよ、私がカラオケ代ぐらい奢るから付き合って欲しい」と提案され、私は素直にお言葉に甘えた。
そして真奈美と二人でカラオケを楽しんだ後、真奈美が運転する車で帰路についた。
その車中、会話の流れで真奈美に唐突に訊かれたのだ。
「サエはなんで仕事しないの?」
痛い所を突かれた私は、ヘラヘラと笑ってごまかすしかなかった。
「〇〇ちゃん(共通の友人)も最近仕事辞めたけど、辞めた次の日には新しい仕事始めてたよ」
そんな言葉は、私のことを心配してくれての言葉だと受け取った。
でも、真奈美の次の行動で私は違和感を覚えることとなるのだ。
突然バッグの中から自分の財布を取り出した真奈美は、中から十数枚の福澤諭吉さんを抜き取り、誇示するようにそれを広げて私に見せつけながら言った。
「必死で働いた給料の一部のこのお金も、全部車の維持費とか美容代とか、遊び代なんかに消えてっちゃうのよねぇ」
その言動の目的と意味がわからなかった。
私に何が言いたかったのだろうか。
それでも、その時の私には何も言い返せる言葉などなかったのだ。
まともに仕事も続かず金欠状態のだらしない自分、そして一つの仕事を長く続けながら金銭的にも自立している真奈美。
どちらが人としてまともで説得力があるのかは明白だったからだ。
この頃から自然にゆっくりと、そして確実に、私と真奈美の間に上下関係が完成しつつあった。
もちろん真奈美が“上”で、私が“下”だ。
言うまでもないが、友人関係に上も下も存在しない。
対等な関係であるはずの親友に対して、私はその自己肯定感の低さから逆らえずにいたのだ。
一緒にいて楽しいと思える時間もたくさんあっただけに、尚更だ。
しかし、真奈美からの上から目線の態度や私の立場を無くすような言動は、治まるどころかどんどんエスカレートしていくのだ──。
「真奈美、ここで働いてたんだ?!」
今から15年ほど前、私・西島冴子は就職先の歯科医院で同級生の久世真奈美と再会した。
中学の頃は地味で大人しいグループにいた私と、逆にオシャレで華のあるグループにいた真奈美。
特別仲良しというわけではなかったけれど、お互いを下の名前で呼び合うぐらいには親しかった。
真奈美は歯科衛生士の学校に通いながらその歯科医院でバイトをしていた。
家が近いという理由だけで受付助手になった私なんかとはまるで違う。
おまけに仕事の要領も良くて白衣がよく似合う、凛とした美人だ。
背が低めで小柄で、純日本人なのに彫りが深めのハーフ顔でもあり、色白の肌に黒くて長い艶髪が映える。
女から見ても、真奈美は美人だ。
そんな真奈美は私に明るく声を掛けてくれて、いつしか週に一度は必ず遊ぶぐらいの仲良しになっていた。
カラオケが好きなことも、洋楽が好きでクラブ遊びが大好きなのも共通の趣味。
何度も遊ぶうちに自然とお互いに『親友』という認識が芽生えていたと思う。
あてもなくドライブをしながら、くだらないネタ話でお腹を抱えて爆笑した。
好きな人や彼氏ができればその恋バナで盛り上がったし、どちらかが失恋したら居酒屋に直行して慰め合ったりもした。
そんな、ごく普通の親友。
でも、今考えれば私たちは本当に元々親友だったのかさえわからない。
付き合いが一年、二年と長くなるに連れ、明らかな綻びが生まれ始めた。
真奈美は時折、私に対してキツイ物言いをするようになっていった。
なんというか、いちいち言わなくてもいいような余計なことを言われるのだ。
たとえば私が彼氏にフラれて泣きながら電話をした時、私の話を聞いてくれた真奈美はこう言った。
「〇〇くんにとってサエはそこまで好きになれるような女じゃなかったんだよ。サエがその程度だったってこと」
事実そうだとしても、失恋したばかりの友達に対して普通は出てくる言葉ではないと思う。
相手の男のことを「あなたの良さがわからないなんて、その程度の男なんだよ」と言うのは慰めとして受け取れるが、その逆を言われてしまっては傷を抉られるだけだ。
そして、それに対して当然余計にショックを受けている私に、真奈美は決まってこう付け加えるのだ。
「ごめんごめん、私ってサバサバした性格じゃん?だからついズバッと言っちゃうトコがあるんだよね」
自サバ女である真奈美は、いつもサバサバしていることを免罪符にして無神経な毒を吐いては、まるで私の反応を楽しんでいるみたいだった。
今だからこそそう思えるが、当時の私は親友のことをそんな目で見てしまうことをそもそも拒否していたのかもしれない。
ある意味、バカだったのだ。
薄々気づいていても、ずっと自分の中で押し込めて気づいていないフリをしてきた。
これでは相手をつけ上がらせる一方だということにも気づかずに。
そんな自サバ女の真奈美の私に対する言動は、ますます酷くなっていった。
それも、他の共通の友達に対するものとは違い、なぜか私にだけ。
真奈美は女の私から見てもいつだってオシャレで綺麗で、自分の意見をはっきりと主張できるようなしっかり者だ。
本人いわく、看護師をしているお母さんが物凄く厳しくて気の強い人らしく、歯科衛生士という仕事もお母さんから強く勧められたそうだ。
ということは、別に自分が『絶対になりたい!』と夢見た仕事というわけじゃなかったのかもしれない。
それでも、当時フラフラしていた私から見れば真奈美はすごく真面目に努力している子にしか見えなくて、そんな真奈美が少し羨ましかった。
22、23歳ぐらいの頃。
歯科衛生士としてバリバリ働き始めた真奈美とは違い、それまでの私は夜のキャバクラで働いたり気ままにバイトをしてみたり、とにかく定職にも就かずフラフラしていた。
私は昔から、特にやりたい仕事も夢もないのが一番の悩みだった。
社会に出るたびに自分の存在意義がわからなくなって、お酒に溺れる時期もあれば好きでもない男とワンナイトを過ごすことも決して少なくはなかった。
自己肯定感が低すぎて、自分を大切にできなかったのだ。
そんな私が一番長続きしたのは、小さな整骨院の受付助手の仕事だった。
…といっても、人間関係が抜群に良かったからこその長続きだったんだと思う。
私はあまり人付き合いがうまい方ではなく、嫌なことがあると引きずってしまいがちだ。
そんな自分の性格をわかっている以上、何をどうすれば自分を変えられるのかもわからなかった。
そんなだらしない私のことをいつも見ていた真奈美。
同い年の同じ大人の立場として、多少なりとも私に対して苛立ちはあったんだと思う。
だからついつい、悪気なく私のことを見下してしまっていただけなのかもしれない。
そうは思えても、総合的に見るとやはり真奈美の私への態度は理不尽であり、それらは絶対に親友に向けられるものではなかったと思う。
この頃から明らかに『見下されてる?』と感じ始めた。
以降は、その具体例を挙げていく。
私自身にも至らない点はもちろんあるので、真奈美のことを一方的に悪者に仕立て上げるつもりはないことをご了承頂きたい。
ある日、真奈美からの電話でカラオケに誘われた私は金欠を理由に断った。
バイトを辞めて、次のバイトの面接に落ちたりしているうちに無職の時期が2ヶ月ほど経ってしまっていたのだ。
その理由を正直に真奈美に話してみた結果、「いいよ、私がカラオケ代ぐらい奢るから付き合って欲しい」と提案され、私は素直にお言葉に甘えた。
そして真奈美と二人でカラオケを楽しんだ後、真奈美が運転する車で帰路についた。
その車中、会話の流れで真奈美に唐突に訊かれたのだ。
「サエはなんで仕事しないの?」
痛い所を突かれた私は、ヘラヘラと笑ってごまかすしかなかった。
「〇〇ちゃん(共通の友人)も最近仕事辞めたけど、辞めた次の日には新しい仕事始めてたよ」
そんな言葉は、私のことを心配してくれての言葉だと受け取った。
でも、真奈美の次の行動で私は違和感を覚えることとなるのだ。
突然バッグの中から自分の財布を取り出した真奈美は、中から十数枚の福澤諭吉さんを抜き取り、誇示するようにそれを広げて私に見せつけながら言った。
「必死で働いた給料の一部のこのお金も、全部車の維持費とか美容代とか、遊び代なんかに消えてっちゃうのよねぇ」
その言動の目的と意味がわからなかった。
私に何が言いたかったのだろうか。
それでも、その時の私には何も言い返せる言葉などなかったのだ。
まともに仕事も続かず金欠状態のだらしない自分、そして一つの仕事を長く続けながら金銭的にも自立している真奈美。
どちらが人としてまともで説得力があるのかは明白だったからだ。
この頃から自然にゆっくりと、そして確実に、私と真奈美の間に上下関係が完成しつつあった。
もちろん真奈美が“上”で、私が“下”だ。
言うまでもないが、友人関係に上も下も存在しない。
対等な関係であるはずの親友に対して、私はその自己肯定感の低さから逆らえずにいたのだ。
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