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1オレンジの薔薇「信頼・絆」
6年生
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12歳。小学6年生。
中学生になる少し前。
卒業という大事を目の前にした年。
そして──大人への一歩を踏み出すところ。
「6年生になっておめでとうございます」
担任の先生が言う。
「6年生って大変な時期だと思います。先生は初めて6年生を担当するので…未熟かもしれませんが、みんなのサポートできたらうれしいです」
それを教室で聞いていた栄生は思う。
(また綺麗事を…)
誰だって嫌だと思う。
だけど、それを表に出してはいけない。
イメージダウン。そして、嫌われるからだ。
だから、思ってもいないことを言う『綺麗事』
実質、栄生もやっているのだが。
(人のことを言えないけど。でも、綺麗事聞くとイラつく)
──と時間が過ぎていくうちに始業式を終えた。
「栄生ちゃん!」
そう手をふるのは親友のリコ。
「…一緒に帰る?」
「もちろん!」
リコと歩き出す、栄生。
「今日の先生どう思った?」
「男の先生って初めてだから緊張する」
栄生は、今まで担任は女の先生だった。
女の先生の方が話しやすくて、いいと思う。
けど、6年生は男の先生になった。
「そう?でも、私は前男の先生だったから慣れてるし…。前の先生より、優しそうだし。いいかも」
リコは前は栄生と違うクラスだった…。
「そうだったね。違かったからね…」
寂しそうに言う栄生。
「でも、今年は一緒になれたじゃん。最後一緒になれたんだよ?」
栄生はリコの笑顔に癒やされた。
──次の日──
「6年生だからいそがしいですよ。まず運動会」
そう言って先生は運動会の予定を説明した。
今まではただ自分の学年の出し物をしていればよかった。
しかし、6年生は違う。
運動会の係があるのだ。
応援団、プラカード係、案内係、音楽担当、放送係、準備係、フローガン係など数えるだけで12個ぐらいある。
栄生はもう決まっている。
「放送係やりたい人!」
『はい』
栄生含め、10人程が手を挙げた。
放送係は人気だ。
次の競技の説明、リレーのときには実況が入る。
みんな実況をやりたいのだろう。必死にじゃんけんをする。
(あ…負けるな)
栄生はじゃんけんでだいたい負ける。
いつも惜しいところで負けるのだ。
でも。
「勝った!?」
一人勝ちしたのだ。
放送係はクラスで一人ずつ。栄生だけが選ばれてものとなる。
みんなの視線が突き刺さる。うらやましい、ずるい…などといった視線だ。
(でも、勝ったんだ。実況できる)
栄生は喜びに満ちた顔で笑っていた。
「なんで栄生が勝つの」
沙羅は5分休みに栄生に食い下がってきた。
「勝ったんだから別に」
「なんかショックだった。栄生って棒読みなのにね」
「棒読みじゃないけど?」
「棒読みでしょ」
沙羅はため息をつく。
「投票だったら勝てたのに」
沙羅はクラス委員長。
人気もそこそこある。
「なんで棒読みが勝つのかな」
「……」
栄生はなぜか言い返せなかった。
棒読みと言われたらそうかもしれない。
言われてみれば──というかんじだ。
だけど、沙羅は少しムカッとくるクラスメイトだ。
「あーもうやだ」
沙羅は再びため息をつき、去ろうとした。
しかし。
「あのさ」
栄生は沙羅を力いっぱい睨む。
「わたしが棒読みやめればいいんでしょ。認めさせてやる」
たしかに棒読みかもしれない。
けれど、それを変えればいい。沙羅に認められるほどの。
「…できないくせに」
沙羅はあきれたように、去っていってしまった。
中学生になる少し前。
卒業という大事を目の前にした年。
そして──大人への一歩を踏み出すところ。
「6年生になっておめでとうございます」
担任の先生が言う。
「6年生って大変な時期だと思います。先生は初めて6年生を担当するので…未熟かもしれませんが、みんなのサポートできたらうれしいです」
それを教室で聞いていた栄生は思う。
(また綺麗事を…)
誰だって嫌だと思う。
だけど、それを表に出してはいけない。
イメージダウン。そして、嫌われるからだ。
だから、思ってもいないことを言う『綺麗事』
実質、栄生もやっているのだが。
(人のことを言えないけど。でも、綺麗事聞くとイラつく)
──と時間が過ぎていくうちに始業式を終えた。
「栄生ちゃん!」
そう手をふるのは親友のリコ。
「…一緒に帰る?」
「もちろん!」
リコと歩き出す、栄生。
「今日の先生どう思った?」
「男の先生って初めてだから緊張する」
栄生は、今まで担任は女の先生だった。
女の先生の方が話しやすくて、いいと思う。
けど、6年生は男の先生になった。
「そう?でも、私は前男の先生だったから慣れてるし…。前の先生より、優しそうだし。いいかも」
リコは前は栄生と違うクラスだった…。
「そうだったね。違かったからね…」
寂しそうに言う栄生。
「でも、今年は一緒になれたじゃん。最後一緒になれたんだよ?」
栄生はリコの笑顔に癒やされた。
──次の日──
「6年生だからいそがしいですよ。まず運動会」
そう言って先生は運動会の予定を説明した。
今まではただ自分の学年の出し物をしていればよかった。
しかし、6年生は違う。
運動会の係があるのだ。
応援団、プラカード係、案内係、音楽担当、放送係、準備係、フローガン係など数えるだけで12個ぐらいある。
栄生はもう決まっている。
「放送係やりたい人!」
『はい』
栄生含め、10人程が手を挙げた。
放送係は人気だ。
次の競技の説明、リレーのときには実況が入る。
みんな実況をやりたいのだろう。必死にじゃんけんをする。
(あ…負けるな)
栄生はじゃんけんでだいたい負ける。
いつも惜しいところで負けるのだ。
でも。
「勝った!?」
一人勝ちしたのだ。
放送係はクラスで一人ずつ。栄生だけが選ばれてものとなる。
みんなの視線が突き刺さる。うらやましい、ずるい…などといった視線だ。
(でも、勝ったんだ。実況できる)
栄生は喜びに満ちた顔で笑っていた。
「なんで栄生が勝つの」
沙羅は5分休みに栄生に食い下がってきた。
「勝ったんだから別に」
「なんかショックだった。栄生って棒読みなのにね」
「棒読みじゃないけど?」
「棒読みでしょ」
沙羅はため息をつく。
「投票だったら勝てたのに」
沙羅はクラス委員長。
人気もそこそこある。
「なんで棒読みが勝つのかな」
「……」
栄生はなぜか言い返せなかった。
棒読みと言われたらそうかもしれない。
言われてみれば──というかんじだ。
だけど、沙羅は少しムカッとくるクラスメイトだ。
「あーもうやだ」
沙羅は再びため息をつき、去ろうとした。
しかし。
「あのさ」
栄生は沙羅を力いっぱい睨む。
「わたしが棒読みやめればいいんでしょ。認めさせてやる」
たしかに棒読みかもしれない。
けれど、それを変えればいい。沙羅に認められるほどの。
「…できないくせに」
沙羅はあきれたように、去っていってしまった。
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