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第1章
1.女神に絡まれて、飛ばされて
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峡谷から女の悲鳴のような音が響く。
おどろおどろしい気配だ。
今にも悪魔かモンスターが出そうな雰囲気である。
「みんな、気をつけて」
勇者がパーティーメンバーに注意を促した。
こつり。
彼らの後ろで物音がした。
ばっ!
次に何かおぞましいものがうごめく気配!
「きゃっ!?」
「で、出た!?」
勇者たちが悲鳴を漏らす。そして……、
「じゃんじゃじゃーん!」
どーんと、背後に盛大な煙をまき起こしながら、面妖なポーズを決めた女が現れた。
その前に男がクールに風を受けながら、
「勇者たちよ。よく来たな。だが一歩遅かったようだぞ。ここに住むレッドマスタードラゴンは、この漆黒の旅団のリーダー、カノユッキーの獲物だ!!!!!」
そう宣言する。
得意げな顔で見下ろしていた。
なぜか木の枝の上にいて、体には葉っぱやら枝がからみついている。
まるで、慌てて木の上にのぼったかのようだ。
「お、おさるさん?」
「なんだありゃ!」
「ううむ、あんなモンスターは見たことがありませんなあ」
「あ、あっははははは! うっけるぅ! ばっかみたいだよぅ!」
様々な声がうずまいた。
「はぁ!? 異世界転生だと!?」
そう叫ぶように言ったのは高校生くらいの男で、
「そうそう♪ ぜひぜひぃ、かーくんに世界を救ってほしくてぇ~♪」
のりのりでニコニコな表情で返事をしたのは女であった。
女はさっき女神を自称していた。女神アルテノと。
女が身にまとう服は、男が通常見るそれとはずいぶん異なっていた。ありていにいってコスプレイヤーさんが女神コスをしている、というのが一番正確な表現だろうか。
が、意識をさましたときから自分がすでに死んでいることに男は気づいていた。なぜなら地面は明らかに雲であったし、目の前の女もさっきからフヨンフヨンと浮いている。
そして、自分にも死んだときの記憶があるのだ。
そう、齢16の丸道高校二年生 カタニ・カノユキが、あっさり若くして人生が終了してしまった不幸な記憶が。なお、男の格好は学ラン。黒一色である。
「あ、いやです」
「ええー!?」
まさか断られると思ってなかったようで、女は目をむいてぎょっとした。
金色の長髪をふりみだして、がたがたと歯を鳴らす。
そんな女のリアクションに男は興味なさそうにそっぽをむいて、
「人助けも、助けられるのももうたくさんです。さっさと地獄でも、天国でも送ってもらえませんか?」
ぷいっとした。
「もう、しょうがないな~」
ころっと。けろりとして、女神は言う。
「それじゃあこうしよう」
自信満々といった風で、
「世界を救うんじゃなくって、世界を救ってる人【勇者】を助けることにしよう♬」
「は? 一体何を言って」
「この未来視のレアスキルだってあげちゃうから。みごと世界をすくってぇ……じゃなかった。救ってる人【勇者】を助けて来てね!」
ちなみに助けそこなったら世界終了ね♪
「話を聞け! この暴走女神! 俺はやらないって言って」
「ええ~、まだ不安なの?」
「不安とかそういう問題じゃ」
「しょうがないなぁ。おっけ! わかったわ、これは特別サ~ビスなんだから」
はい?
「お姉さんも一緒についていってあげる。それなら不安もないでしょう?」
だ・か・ら・は・な・し・を。
「そもそもだな」
「ようし行くわよ行くわよ! わたしたちの新しい旅がはじまるんだわ~」
「おい、馬鹿! お前は女神なのに、そんなことしてていいのかよ。いいわけないだろ?」
「ふふーんだ、いいんだもーん。同僚のリコちんとおんなじこと言うんだねー。でも、もう199万年も頑張ってるんだから、お姉ちゃんにも息抜きが必要なんですぅ~」
「どれだけ働こうが、さぼりはさぼりだろうが!」
「さーいっくわよーれっつごー♪」
「うわー、はなせ! 聞こえないふりしてるんじゃないぞお前!」
騒々しさが去るとそこには静寂が戻った。
女神アルテノがいないこの場所はいつも静謐さに満ちている。
と、そこに。
ざっ、ざっ……。
男か女かもわからない。フードをかぶった人物があらわれた。
その人物はアルテノとカタニ・カノユキが去った跡を見る。
と、そこにある落とし物があることに気づいて、それをつまみあげた。
「やれやれ、困ったものですね」
それは年老いたような、若者が背伸びしたような不思議な声色であった。
「うわあああああああああああああああああああ!?」
どすぅぅぅんんんんっ……!
「あいてててて……ここは????」
周りを見回す。どうやら街の中のようだ。通りすがりの人々が突然空からふってきた俺たちに怪訝な表情を浮かべている。
が、
「うわー♬」
アーパーな声が響いた。
「成功した、成功した。異世界だよ~! いやー、やっぱシャバの空気はいいねえ♡」
はぁ……とカノユキはため息をつきながら、
「とりあえず俺はお前のことはもう女神だとは思わん」
とぼやいた。
「うんうん、頼れるお姉さんとでも思っててね!」
「そういうことではないわい!」
「さ、それよりもかー君。早速勇者たちを助けに行きましょう!」
アルテノが瞳をきらきらとさせて喜色満面といったふうに宣言した。
「まぁずは情報収集。それから寝床の確保ね。夜は一緒に今後の方針を考える第1回作戦会議よー」
大盛り上がりである。
「やらない」
カノユキの淡々とした声が響いた。
「……へ?」
間の抜けた女神の声が響いた。
「い、いまなんて……」
顔面を蒼白にしながら女神が聞いた。
「やらない、と言った。最初から言っているだろう。どうして俺がそんなことをしなくてはならないんだ。放っておいてくれ!」
「か、かーくん……」
じわっ、と女神の瞳に涙がたまる。
「うわああああああああああああああああああああん!」
そして、なんのためらいもなく号泣し始めた。
「お、おい、お前こんなところで!」
それでも190万歳か!?
「うわあああああああああああああああああああああん! だってだって、かーくんったら私のこと捨てるって言ったぁああああああ!」
お、おいいいいいいいいいいいいいいいいいい!
やめんか馬鹿! そんなことこの往来で言おうものなら……。
ひそひそ。
なにあの男。
あの女性を捨てるとかなんとか。
人間のくず。
ゴミムシ。
最低男。
「ちょ、くそ。ええい、わかったわかった!」
ころっと、けろりと、アルテノは涙をひっこめて、
「えー、わかってくれたの!? この世界を救う使命に燃えてくれたのね♬」
「誰が燃えるか!」
むしろ、しおしおのぱーだ。この馬鹿‼
カノユキはぶつくさと文句を言う。
「えへへへ~。でも話は聞く気になってくれたんだ?」
にこにこしながら言う。
「なんだかんだで優しい子だねえ、かーくんは」
「……」
「あれ、どうかしたの?」
「……なんでもない」
カノユキはそっぽを向く。
「いいから行くぞ」
そう言ってさっさと歩き出した。
「ああん、まってよ、かーくん。かのゆきたんってばあ」
「だれがかのゆきたんだ!」
あと、別にかーくん呼びも許して覚えはないぞ。
そんな声が響いた。
おどろおどろしい気配だ。
今にも悪魔かモンスターが出そうな雰囲気である。
「みんな、気をつけて」
勇者がパーティーメンバーに注意を促した。
こつり。
彼らの後ろで物音がした。
ばっ!
次に何かおぞましいものがうごめく気配!
「きゃっ!?」
「で、出た!?」
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「じゃんじゃじゃーん!」
どーんと、背後に盛大な煙をまき起こしながら、面妖なポーズを決めた女が現れた。
その前に男がクールに風を受けながら、
「勇者たちよ。よく来たな。だが一歩遅かったようだぞ。ここに住むレッドマスタードラゴンは、この漆黒の旅団のリーダー、カノユッキーの獲物だ!!!!!」
そう宣言する。
得意げな顔で見下ろしていた。
なぜか木の枝の上にいて、体には葉っぱやら枝がからみついている。
まるで、慌てて木の上にのぼったかのようだ。
「お、おさるさん?」
「なんだありゃ!」
「ううむ、あんなモンスターは見たことがありませんなあ」
「あ、あっははははは! うっけるぅ! ばっかみたいだよぅ!」
様々な声がうずまいた。
「はぁ!? 異世界転生だと!?」
そう叫ぶように言ったのは高校生くらいの男で、
「そうそう♪ ぜひぜひぃ、かーくんに世界を救ってほしくてぇ~♪」
のりのりでニコニコな表情で返事をしたのは女であった。
女はさっき女神を自称していた。女神アルテノと。
女が身にまとう服は、男が通常見るそれとはずいぶん異なっていた。ありていにいってコスプレイヤーさんが女神コスをしている、というのが一番正確な表現だろうか。
が、意識をさましたときから自分がすでに死んでいることに男は気づいていた。なぜなら地面は明らかに雲であったし、目の前の女もさっきからフヨンフヨンと浮いている。
そして、自分にも死んだときの記憶があるのだ。
そう、齢16の丸道高校二年生 カタニ・カノユキが、あっさり若くして人生が終了してしまった不幸な記憶が。なお、男の格好は学ラン。黒一色である。
「あ、いやです」
「ええー!?」
まさか断られると思ってなかったようで、女は目をむいてぎょっとした。
金色の長髪をふりみだして、がたがたと歯を鳴らす。
そんな女のリアクションに男は興味なさそうにそっぽをむいて、
「人助けも、助けられるのももうたくさんです。さっさと地獄でも、天国でも送ってもらえませんか?」
ぷいっとした。
「もう、しょうがないな~」
ころっと。けろりとして、女神は言う。
「それじゃあこうしよう」
自信満々といった風で、
「世界を救うんじゃなくって、世界を救ってる人【勇者】を助けることにしよう♬」
「は? 一体何を言って」
「この未来視のレアスキルだってあげちゃうから。みごと世界をすくってぇ……じゃなかった。救ってる人【勇者】を助けて来てね!」
ちなみに助けそこなったら世界終了ね♪
「話を聞け! この暴走女神! 俺はやらないって言って」
「ええ~、まだ不安なの?」
「不安とかそういう問題じゃ」
「しょうがないなぁ。おっけ! わかったわ、これは特別サ~ビスなんだから」
はい?
「お姉さんも一緒についていってあげる。それなら不安もないでしょう?」
だ・か・ら・は・な・し・を。
「そもそもだな」
「ようし行くわよ行くわよ! わたしたちの新しい旅がはじまるんだわ~」
「おい、馬鹿! お前は女神なのに、そんなことしてていいのかよ。いいわけないだろ?」
「ふふーんだ、いいんだもーん。同僚のリコちんとおんなじこと言うんだねー。でも、もう199万年も頑張ってるんだから、お姉ちゃんにも息抜きが必要なんですぅ~」
「どれだけ働こうが、さぼりはさぼりだろうが!」
「さーいっくわよーれっつごー♪」
「うわー、はなせ! 聞こえないふりしてるんじゃないぞお前!」
騒々しさが去るとそこには静寂が戻った。
女神アルテノがいないこの場所はいつも静謐さに満ちている。
と、そこに。
ざっ、ざっ……。
男か女かもわからない。フードをかぶった人物があらわれた。
その人物はアルテノとカタニ・カノユキが去った跡を見る。
と、そこにある落とし物があることに気づいて、それをつまみあげた。
「やれやれ、困ったものですね」
それは年老いたような、若者が背伸びしたような不思議な声色であった。
「うわあああああああああああああああああああ!?」
どすぅぅぅんんんんっ……!
「あいてててて……ここは????」
周りを見回す。どうやら街の中のようだ。通りすがりの人々が突然空からふってきた俺たちに怪訝な表情を浮かべている。
が、
「うわー♬」
アーパーな声が響いた。
「成功した、成功した。異世界だよ~! いやー、やっぱシャバの空気はいいねえ♡」
はぁ……とカノユキはため息をつきながら、
「とりあえず俺はお前のことはもう女神だとは思わん」
とぼやいた。
「うんうん、頼れるお姉さんとでも思っててね!」
「そういうことではないわい!」
「さ、それよりもかー君。早速勇者たちを助けに行きましょう!」
アルテノが瞳をきらきらとさせて喜色満面といったふうに宣言した。
「まぁずは情報収集。それから寝床の確保ね。夜は一緒に今後の方針を考える第1回作戦会議よー」
大盛り上がりである。
「やらない」
カノユキの淡々とした声が響いた。
「……へ?」
間の抜けた女神の声が響いた。
「い、いまなんて……」
顔面を蒼白にしながら女神が聞いた。
「やらない、と言った。最初から言っているだろう。どうして俺がそんなことをしなくてはならないんだ。放っておいてくれ!」
「か、かーくん……」
じわっ、と女神の瞳に涙がたまる。
「うわああああああああああああああああああああん!」
そして、なんのためらいもなく号泣し始めた。
「お、おい、お前こんなところで!」
それでも190万歳か!?
「うわあああああああああああああああああああああん! だってだって、かーくんったら私のこと捨てるって言ったぁああああああ!」
お、おいいいいいいいいいいいいいいいいいい!
やめんか馬鹿! そんなことこの往来で言おうものなら……。
ひそひそ。
なにあの男。
あの女性を捨てるとかなんとか。
人間のくず。
ゴミムシ。
最低男。
「ちょ、くそ。ええい、わかったわかった!」
ころっと、けろりと、アルテノは涙をひっこめて、
「えー、わかってくれたの!? この世界を救う使命に燃えてくれたのね♬」
「誰が燃えるか!」
むしろ、しおしおのぱーだ。この馬鹿‼
カノユキはぶつくさと文句を言う。
「えへへへ~。でも話は聞く気になってくれたんだ?」
にこにこしながら言う。
「なんだかんだで優しい子だねえ、かーくんは」
「……」
「あれ、どうかしたの?」
「……なんでもない」
カノユキはそっぽを向く。
「いいから行くぞ」
そう言ってさっさと歩き出した。
「ああん、まってよ、かーくん。かのゆきたんってばあ」
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