「枝分かれ」する未来が少し見えるので、時どき合流する面白パーティーのふりをして、主人公たちをちょっと助けようと思う

初枝れんげ@出版『追放嬉しい』『孤児院』

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第1章

4.未来を読む

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「一言くらい言えよ……」

「えー、なになにー、も・し・か・し・て」

プルプルと、ニマニマと。口元を抑えながら女神が顔を寄せる。

「あの勇者ちゃんに一目惚れでもしちゃったのー」

「なわけあるかい! ばか!」

にゃははーといって、女神はくるりんとひるがえりながら距離を取る。

「さ、て、と。それでどうするのかな、かーくん」

ちょっとばかり真剣な様子でカノユキにたずねた。

「さすがに本当に嫌だったら、ひとまず冒険者になるのはやめて、違う方法を考えるけど……」

……。

「……いや」

俺はあるき出す。

「ここまで来たんだ。登録くらいはしておこう」

金はかかるのか?

登録は無料ですよー。

ギルドのお姉さんと、カウンターでそんなやりとりをする。

「あらぁ。やっぱりさっきの勇者ちゃんが気に入ったのかな~」

こころがわったのかなー。

だまらっしゃい。

俺はため息をつく。もっと現実的な話だ。

「とりあえずタネ銭を稼がなくてはな」

「あ、あははー」

笑っている場合か。まったく。

(このままでは宿もとれんからなー)




「ほらほらかーくん! あそこにモンスターがいるよ、モンスター‼」

モンスターを発見して嬉しそうに飛び跳ねる女神がいた。

城下町マジェスタの郊外。広大な沃野が広がっていた。遠くには山々や森が見える。

「なに!? おい、危ないんじゃないのか。不用意に近づいてはっ……」

「だーいじょうぶよ、大丈夫‼ これはこの辺では一番弱いラビットスライムっていうモンスターなの! レベル1、レベル1だよ。こうやってぴょんぴょんするだけで強さはたいしたことないから。素手のかーくんでもぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼‼‼」

見事に捕食されていた。ケツを。

がぶがぶがぶ。

「た、たすけてええええええええええ‼ お、お姉ちゃんのお尻は噛んじゃだめえええ‼」

どろどろ!

「や、やだあああああ! とけてる、とけてるよぉ! お姉ちゃんと神聖な衣がぁああああああああああ!?」

神様に怒られる~と、べそをかく。

「お、おいバカ女神」

くそ、どうすれば。俺には戦闘の経験なんて、とても……。

とその時である。

ブオン‼

「なっ!?」

眼の前に突然、ビジョンが浮かび上がる。2つのビジョンが!

1つ目は、そのままお尻を溶かされて死亡する駄女神の姿。

2つ目は、助けを呼んでくるが、それまでにやはりお尻を溶かされて死亡するアーパー女神の姿。

「お前どっちもケツを溶かされて死ぬぞ?」

「そ、そんな死に方いやだよおおおおおおおおおおおおおおおお‼」

なんとかしてよー。

「よし、ならばこうだあああああ!」

作戦など何もなし!

突っ込むのみ!

「だ、だめだよ、かーくん。突っ込んできても、このスライムには打撃系は通じないんだから!?」

ゲームの常識でしょ!?

「うるさい、黙って俺の」

「俺の!?」

「俺のおおおお」

「おおおお!?」

「気が散るから繰り返すな! いいからの俺の腕をとらんか!」

「え、あ、はい」

「よし、引き抜くぞ!」

「ひ、引き抜く!?」

「そうだ。よく見ろ!」

俺はそう言って、アルテノの足元を指す。

「スライムは地面に体をくっつけて、お前を拘束している!」

「あっ、そっか」

そっかじゃない。

「いいから、引き抜くぞ!」

「えっ、あっ、でもでも待って、かーくん。そんなことしたら私の服が‼ 溶けちゃったところが見えちゃったりしちゃうよお!」

「うるさい、そんば場合か!」

ケツを溶かされて死ぬぞ!



「う、うううう。けがされちゃったよ」

「うるさい」

無事だったんだからいいだろうが。

「それより出し惜しみするな! 仮にも女神だろうが。魔法かなにか使えるんだろう!」

「そ、そうよ。わたしは女神! やれる女なのよ‼」

ボロボロの衣服をなんとかつくって立ち上がる。どう見てもあまり近寄ってはいけない人である。

「そう、私は女神! 天上神界第3位! ……の奇跡と幸運をつかさどるゴルチェの娘にして、愛と風の女神! さあ、地上の塵芥ともいうべき汚らわしいモンスターよ。純粋な神威によりてこの世からきれいさっぱり消え去りなさい‼」

女神が両手を前にかかげ、そして叫ぶ!

「ホーリー・メガ・ブラストゥオオオオオオ!!!!!!!!!!」

どおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!

空気を極限まで圧縮した後に一気に開放するメガブラストは時空を歪めるほどの破裂を伴って爆発する。

固い地面は何メートルもえぐれ、そのあとには何も残らない。

ぱらぱら……と。砂や土が降り注いでくる。

「どーよ! わたしの力を見せればざっとこんなもんよ! ねー見てくれたかーくん! このお姉ちゃんの力……を……」

となりに立つ真っ黒な人物。すなわちカノユキを見て、アルテノは冷や汗をかきはじめる。

「おーまーえーなー」

ぼろぼろの黒い男は、額に欠陥を浮き上がらせていた。

あ、あれ?

「加減をしらんのか!」

倒せばいいってもんじゃあ、ないだろうが!

「だってだって、魔法を使えって言ったのはかーくんなのにー! だいたいさー!」

両手をだだっこのように振り回しながら自己弁護を行う女神。

「未来視でこうなることはわかってたでしょ!?」

「馬鹿! だから俺の未来は見えないと言ってるだろうが!」

「へ? あ、そうか。ううーん。じゃあなんでかーくんは未来もわからないのに私を助けに来てくれたの?」

「う、そ、それはだな」

「つんでれなの?」

「やかましいわ!」
 
はぁ、やれやれ。ん?

「そういえば、あのスライムのいた後に何か残ってるな」

土に埋もれてわかりにくいが。

「え? ああ、それは魔石ね。モンスターを倒すと手に入るのよ。この世界では通貨としても流通しているわ」

ファンタジーだなあ。

「ま、何はともあれ、こうやってお金を稼いでいきましょ。今日の宿代を稼がなきゃ」

はりきっていくわよー

おー

そんなやる気のない掛け声が草原に響いたのだった。

ちゅどーん。ちゅどーん。
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