「枝分かれ」する未来が少し見えるので、時どき合流する面白パーティーのふりをして、主人公たちをちょっと助けようと思う

初枝れんげ@出版『追放嬉しい』『孤児院』

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第1章

3.こいつが勇者・・・・・・だと

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「で、これからどうする」

「おお、かーくん。やる気だねぃ」

お姉さんはうれしいぞい!

どこの誰がやる気なものか。

……とそういえば。

「阿呆女神よ。お前お金はあるのか?」

お約束な気がして怖いな。

「え?」

「ん?」

「なんちゃって!」

は?

「くーふっふっふっふ。かーくんったら心配顔しちゃって~。持ってるわよ、持ってるわよ。あったりまえでしょ」

女神はそう言って懐から財布を取り出す。

「備えあれば憂い無し。こんなこともあろうかと、この国の硬貨、レッカを持ってきたわけよ!」

そう言って、財布を逆さにする。

チャリーン……と、確かに硬貨がテーブルに落ちた。

そうわずか1枚だけ。

「いささか、心元ない気がするが気のせいか?」

「あわわわわ……あわわわわわわわわ……」

どうやら気のせいではないことだけはわかった。

「ぬわんで!? どうしてないの!? あたしのレッカちゃんは!? 100万レッカは入れといたはずなのにぃ‼‼‼」

女神とは思えない周章狼狽ぶりを披露する。

そして、今度こそ。

「うるせいぞ!」

「さっさと出て行け!」

ぽいーん、がちゃん!

俺たちはなけなしのレッカを取られたあと、外へと蹴り出されたのであった。



「えぐえぐ、ぐすぐす。どうしようどうしよう、かーくん。私達一文なしになっちゃったよう」

えっぐえっぐ。ぐすぐす。

鬱陶しい……。

「一度天界にでも戻ればどうだ?」

「だ、だめよ!」

アルテノは青い顔でいう。

「い、今戻ったら間違いなくつかまっちゃう。そうしたら、神様たちからとんでもないおしおきされちゃうわ」

くわばらくわばら、と歯の根をがちがちとあわす。

一体どんな拷問が待ってるんだ……。

「ならどうする気だ」

呆れながら問う。

「ううーんと。ええーーーーーーっとぉぉぉぉおぉっぉおおお……」

「まあ、そう簡単にお金を稼げる方法が思いつくはずもないか」

だが、

「ぴかりーん! お姉さんひらいめいちゃった!」

嫌な予感しかしない……。

「お金なんて勇者を助けるついでに稼いじゃえばいいんだよ! ううーん、やっぱり私って天才だね!」

一挙両得ぅ~! などと喝采を叫んでいる。

いやいやいやいや。

「意味がわからん」

「もう、かーくんったら頭かたいなあ。つまりこういうことだよ。こっち来て!」

おいこら、ひっぱるんじゃない。




「……ってここは、まさか」

『冒険者ギルド』

そう書かれた看板が、建物に掲げられている。

荒くれ者っぽい男や、鎧を装備したいかにも戦士風の男。杖を持ち黒色のローブを目深にかぶった者など、雑多な人種が出入りしている。

怪しげだが、活気もある。

「そう! かーくんも男の子なんだから冒険者に憧れちゃったりするお年頃でしょう!? その夢を叶えてあげちゃう」

ウインクして、じゃじゃーんなどと言っている。

いらぬことを。

「俺の夢は平穏な人生を送ることだ。波風をたてず、安穏としたじじいになることで……」

「もう~、なんでその歳でそこまで枯れちゃってるのよぉ! さあ、中に入るわよ!」

さあ、さあ、さあ、さあ!

ええい、おすなおすな!

「やめろ、ひっぱるな。俺は冒険者などにはなりたくはな……」

どん!

「おっと、す、すみません」

「い、いえこちらこそ」

ふわり。

「へっ」

カノユキは目を丸くする。

場違いなひどく良い匂いが鼻をくすぐったからだ。

花のような匂いだ。

こんなむつくけき男どもが集まる冒険者ギルドにはあまりにもにつかわしくない、かぐわしい香りであった。

「あっ、ごめんなさい。あのお怪我はありませんでしたでしょうか?」

はっ、として、

「いや、こちらこそ失礼しました」

というか、こちらが一方的に悪いんだよな。とカノユキは冷静に思う。

が、もう一度瞠目してしまう。

眼の前にいたのは独りの少女であった。

ぱっちりとした瞳。だが、しっかりとした芯のようなものが宿っている。きりっとした眉をしているが、顔全体の印象はなぜか優しい。髪はこざっぱりとしたショートで、すがすがしい雰囲気だ。青色の鎧を身にまとっていて、全体的に軽装備、といった印象がする。腰に剣を刺していた。

「あ、あの……、私の顔に何かついていますでしょうか?」

もう一度はっとするカノユキ。

「い、いやなんでもない。断じて、な」

はぁ、と女性はわかったようなわからなかったような、曖昧な頷きを返す。

(俺としたことが、どうしたというんだ。女をまじまじと見るなんて)

「ははーん、ほっほーん」

アルテノがにやにやとしている。

何をにやついているんだ、この女は。鬱陶しい……。

「とにかくすまなかったな。あーえっと、俺はだな」

まさか異世界からやってきたとは言えんしな。

「ここの冒険者だ」

予定だが。まあ、このあと登録するから誤差だ。誤差。

「まあ、そうだったんですね」

女はぱっと笑顔になる。

「それでしたら、またどこかのダンジョンでお会いするかもしれません」

「ダンジョン?」

「ええ、はい。こう見えて私も冒険者ですから」

そういってふわりと微笑んだ。

ふうん。こんなお嬢さんがねえ。

俺は不思議な気持ちになる。

「おい勇者! いつまでそんなみすぼらしいやつと話してやがるんだよ!」

「ちょ、ちょっと、ポンタ! 失礼でしょう!?」

「何言ってやがる。くだらねえやつといつまでも会話してるからだろうが」

失礼なやつだ。が、

「どこだ?」

キョロキョロとあたりを見回す。

すると、

「ここだぁ! このポンタ様がみえねえってか! このトーヘンボクがぁ!」

そう言って、ひゅるりん、と。

有り体に言えば、リス。

こじんまりとした、可愛らしい、リスが一匹。

くりくりとしたつぶらな目。

そいつが勇者と呼んだ少女の肩のうえで、カノユキに向けてぎゃんぎゃんと吠えたてるのであった。

「やれやれ」

と、またしても別の声が聞こえた。

「ポン。君はもう少し言葉遣いをなんとかしなければならないな」

と、次に学者風で、どこか貫禄を感じる男が後ろから現れた。

「そうそう、カリスの言う通り。だからあんたはモテないんだからねえ!」

同時に髪の毛をツインテールにした女が現れる。目がどこかイタズラ好きそうにしていて、何やら近づくと痛い目にあいそうな雰囲気だ。

「な、なんだとお‼ イブキ、てめえ!」

今度は仲間割れをはじめる。

なんとも騒がしい。にぎやかにすぎるパーティーのようだ。

「もうーストップストップー!」

勇者、などと呼ばれていた少女が大声で叫んだ。

「もう、みんなやめてよ。あの、す、すいませんでした。ほらいくわよ!」

ぞろぞろと連れ立って去っていった。

カリスは困ったような表情で一礼し、イブキと呼ばれた少女は手を振って笑顔でさっていく。ポンタはけっ、という表情を浮かべながら。

「あの本当にすいませんでしたー」」

最後に少女が一礼する。

カノユキもつられて頭を下げた。どうにもペースにのせられてしまう。不思議な雰囲気をもった少女だった。

……というか。

「勇者って女かよ!?」

俺の絶叫が冒険者ギルドに響き渡ったのであった。

隣でアホ女神が、ええーお姉ちゃん一言も男だなんて言ってないしー、などとのたまっていた。

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