17 / 23
第3章
17.カノユキついに王女を助ける
しおりを挟む
たったったったっ。
時間は夜。人通りの少ない路地裏めいた道。そこを誰かが走っていた。
はぁはぁはぁはぁ。
(!?)
と、とっさに身を隠す。細い横道に身を投げ込むようにして姿勢を低くした。喘鳴がもれないように口に手を当てて。それは小柄な少女。
一瞬ののち、
「おい、どっちにいった‼」
「こっちに来たはずだぞ!」
「絶対に逃がすな! 逃したら俺たちがどうなるか……」
「わかってる。このあたりをくまなく探せばきっと」
(まずい、このままじゃ見つかっちゃいますわ!)
少女は焦る。
(どこかに、隠れるところは……)
だが、物陰一つない。少しでもこの横道を覗き込まれれば終わりだ。
後ろに一歩下がる。
と、そのとき何かを踏んでしまう。
がさり。
「おい、こっちで音がしたぞ‼」
(しまった!)
少女は再び焦る。
(ど、どうしたら……)
と、その時である。
後ろから、
「おい」
声がかかったのである。
「こんなところで何をしてるんだ?」
それは黒髪、黒目の少年であった。
「未成年者略取、幼児性愛、ロリコン・・・・・・」
「断じて違うわい」
女神アルテノ。水色の長い髪、美しい大きな瞳。その整った顔をこれでもかというくらい憔悴させている。
一方の男はカノユキ。黒髪、黒目、中肉中背。不機嫌そうに目の前の女神に反論していた。
「だってだって、おっかしいよう! こーんなきれいな女神のお姉ちゃんがいるのに、ぜーぜんぜん興味を示さないしい! 普通はこーんな超絶美少女女神と同居してたら、一回くらいベッドにもぐりこんできて、若さを爆発させるもんじゃないの!?」
ベッドの上に立って、舞台女優のように、手を胸にあてて歌うように主張した。
「すまんな。タイプじゃない」
「フられた!?」
「あ、あの……」
と、いつまでも終わらないしょうもない議論にしびれを切らして、一人の少女が口を開いた。
「さ、さきほどは助けていただいて本当にありがとうございました」
美しいブロンドを腰まで伸ばした少女が丁寧に礼を言った。あどけなさが残るが、その瞳には真摯なものが宿っていた。何かを背負って生きているような、信念を感じさせる。
「それはいいが。一体どうしてあんなところにいたんだ?」
なお女神は、あ、ほんとに助けただけだったんだ、などと言っている。
「えっと……それは……」
そういったきり、うつむいてしまい、言葉が途切れてしまった。
おい、お前の胡散臭さに引いてしまったじゃないか。
えっ、わたし!?
「あっ、いえ、そうではないんですの」
少女はぽつりぽつりと話し出す。
「そうではありませんの。あの、あなたがたにはとても感謝しています。この国を代表してお礼申し上げます」
国?
代表?
カノユキとアルテノは顔を見合わせる。
「ですが……」
少女は憂いを帯びた瞳で続けた。
「だからこそ事情を説明することはできないのです」
「どういう……ことだ?」
ふるふると少女は首を振り、
「知ってしまえばただではすみません。お見受けしたところ、あなた達は駆け出しの冒険者様たち。この事態をおさめることは無理でしょう」
「そ、そんなことないわよ!」
「そりゃそうだな」
…………。
「って、かーくん! もー」
いや、事実だし。
「だが、他に頼る当てでもあるのか?」
「はい」
少女は力強く頷き、
「勇者パーティーに会いたいと思っています」
そうはっきりと言ったのである。
「行っちゃったけど、良かったの、かーくん?」
「さあなあ」
「さあなぁ、って……」
「命をかけて何かをしようとしてるやつを中途半端に止めるべきじゃあ、ないだろう?」
ため息をつきながら言った。
「命って……。あんな子供が……」
「いいや、あれは王女だろう」
「……へ?」
アルテノの動きが止まる。
「お、王女? 王女って、あの王女?」
お姫様?
そうだが。
カノユキは簡単に頷いた。
まじかー。ていうか、そんなの見て分かるものなの?
さてな。
カノユキは後頭部に手を当てて枕にしながら、
「だが、話しぶりや物怖じしない態度を見てれば、まあ、多分そうなんじゃないか?」
「へー、ちゃんと見るとこ見てるんだ」
んー、とカノユキは考えてから、
「お前が節穴なだけだろう?」
「なにをう!」
時間は夜。人通りの少ない路地裏めいた道。そこを誰かが走っていた。
はぁはぁはぁはぁ。
(!?)
と、とっさに身を隠す。細い横道に身を投げ込むようにして姿勢を低くした。喘鳴がもれないように口に手を当てて。それは小柄な少女。
一瞬ののち、
「おい、どっちにいった‼」
「こっちに来たはずだぞ!」
「絶対に逃がすな! 逃したら俺たちがどうなるか……」
「わかってる。このあたりをくまなく探せばきっと」
(まずい、このままじゃ見つかっちゃいますわ!)
少女は焦る。
(どこかに、隠れるところは……)
だが、物陰一つない。少しでもこの横道を覗き込まれれば終わりだ。
後ろに一歩下がる。
と、そのとき何かを踏んでしまう。
がさり。
「おい、こっちで音がしたぞ‼」
(しまった!)
少女は再び焦る。
(ど、どうしたら……)
と、その時である。
後ろから、
「おい」
声がかかったのである。
「こんなところで何をしてるんだ?」
それは黒髪、黒目の少年であった。
「未成年者略取、幼児性愛、ロリコン・・・・・・」
「断じて違うわい」
女神アルテノ。水色の長い髪、美しい大きな瞳。その整った顔をこれでもかというくらい憔悴させている。
一方の男はカノユキ。黒髪、黒目、中肉中背。不機嫌そうに目の前の女神に反論していた。
「だってだって、おっかしいよう! こーんなきれいな女神のお姉ちゃんがいるのに、ぜーぜんぜん興味を示さないしい! 普通はこーんな超絶美少女女神と同居してたら、一回くらいベッドにもぐりこんできて、若さを爆発させるもんじゃないの!?」
ベッドの上に立って、舞台女優のように、手を胸にあてて歌うように主張した。
「すまんな。タイプじゃない」
「フられた!?」
「あ、あの……」
と、いつまでも終わらないしょうもない議論にしびれを切らして、一人の少女が口を開いた。
「さ、さきほどは助けていただいて本当にありがとうございました」
美しいブロンドを腰まで伸ばした少女が丁寧に礼を言った。あどけなさが残るが、その瞳には真摯なものが宿っていた。何かを背負って生きているような、信念を感じさせる。
「それはいいが。一体どうしてあんなところにいたんだ?」
なお女神は、あ、ほんとに助けただけだったんだ、などと言っている。
「えっと……それは……」
そういったきり、うつむいてしまい、言葉が途切れてしまった。
おい、お前の胡散臭さに引いてしまったじゃないか。
えっ、わたし!?
「あっ、いえ、そうではないんですの」
少女はぽつりぽつりと話し出す。
「そうではありませんの。あの、あなたがたにはとても感謝しています。この国を代表してお礼申し上げます」
国?
代表?
カノユキとアルテノは顔を見合わせる。
「ですが……」
少女は憂いを帯びた瞳で続けた。
「だからこそ事情を説明することはできないのです」
「どういう……ことだ?」
ふるふると少女は首を振り、
「知ってしまえばただではすみません。お見受けしたところ、あなた達は駆け出しの冒険者様たち。この事態をおさめることは無理でしょう」
「そ、そんなことないわよ!」
「そりゃそうだな」
…………。
「って、かーくん! もー」
いや、事実だし。
「だが、他に頼る当てでもあるのか?」
「はい」
少女は力強く頷き、
「勇者パーティーに会いたいと思っています」
そうはっきりと言ったのである。
「行っちゃったけど、良かったの、かーくん?」
「さあなあ」
「さあなぁ、って……」
「命をかけて何かをしようとしてるやつを中途半端に止めるべきじゃあ、ないだろう?」
ため息をつきながら言った。
「命って……。あんな子供が……」
「いいや、あれは王女だろう」
「……へ?」
アルテノの動きが止まる。
「お、王女? 王女って、あの王女?」
お姫様?
そうだが。
カノユキは簡単に頷いた。
まじかー。ていうか、そんなの見て分かるものなの?
さてな。
カノユキは後頭部に手を当てて枕にしながら、
「だが、話しぶりや物怖じしない態度を見てれば、まあ、多分そうなんじゃないか?」
「へー、ちゃんと見るとこ見てるんだ」
んー、とカノユキは考えてから、
「お前が節穴なだけだろう?」
「なにをう!」
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
お気に入り・感想、宜しくお願いします。
異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】
きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。
その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ!
約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。
―――
当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。
なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる