「枝分かれ」する未来が少し見えるので、時どき合流する面白パーティーのふりをして、主人公たちをちょっと助けようと思う

初枝れんげ@出版『追放嬉しい』『孤児院』

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第3章

17.カノユキついに王女を助ける

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たったったったっ。

時間は夜。人通りの少ない路地裏めいた道。そこを誰かが走っていた。

はぁはぁはぁはぁ。

(!?)

と、とっさに身を隠す。細い横道に身を投げ込むようにして姿勢を低くした。喘鳴がもれないように口に手を当てて。それは小柄な少女。

一瞬ののち、

「おい、どっちにいった‼」

「こっちに来たはずだぞ!」

「絶対に逃がすな! 逃したら俺たちがどうなるか……」

「わかってる。このあたりをくまなく探せばきっと」

(まずい、このままじゃ見つかっちゃいますわ!)

少女は焦る。

(どこかに、隠れるところは……)

だが、物陰一つない。少しでもこの横道を覗き込まれれば終わりだ。

後ろに一歩下がる。

と、そのとき何かを踏んでしまう。

がさり。

「おい、こっちで音がしたぞ‼」

(しまった!)

少女は再び焦る。

(ど、どうしたら……)

と、その時である。

後ろから、

「おい」

声がかかったのである。

「こんなところで何をしてるんだ?」

それは黒髪、黒目の少年であった。



「未成年者略取、幼児性愛、ロリコン・・・・・・」

「断じて違うわい」

女神アルテノ。水色の長い髪、美しい大きな瞳。その整った顔をこれでもかというくらい憔悴させている。

一方の男はカノユキ。黒髪、黒目、中肉中背。不機嫌そうに目の前の女神に反論していた。

「だってだって、おっかしいよう! こーんなきれいな女神のお姉ちゃんがいるのに、ぜーぜんぜん興味を示さないしい! 普通はこーんな超絶美少女女神と同居してたら、一回くらいベッドにもぐりこんできて、若さを爆発させるもんじゃないの!?」

ベッドの上に立って、舞台女優のように、手を胸にあてて歌うように主張した。

「すまんな。タイプじゃない」

「フられた!?」

「あ、あの……」

と、いつまでも終わらないしょうもない議論にしびれを切らして、一人の少女が口を開いた。

「さ、さきほどは助けていただいて本当にありがとうございました」

美しいブロンドを腰まで伸ばした少女が丁寧に礼を言った。あどけなさが残るが、その瞳には真摯なものが宿っていた。何かを背負って生きているような、信念を感じさせる。

「それはいいが。一体どうしてあんなところにいたんだ?」

なお女神は、あ、ほんとに助けただけだったんだ、などと言っている。

「えっと……それは……」

そういったきり、うつむいてしまい、言葉が途切れてしまった。

おい、お前の胡散臭さに引いてしまったじゃないか。

えっ、わたし!?

「あっ、いえ、そうではないんですの」

少女はぽつりぽつりと話し出す。

「そうではありませんの。あの、あなたがたにはとても感謝しています。この国を代表してお礼申し上げます」

国?

代表?

カノユキとアルテノは顔を見合わせる。

「ですが……」

少女は憂いを帯びた瞳で続けた。

「だからこそ事情を説明することはできないのです」

「どういう……ことだ?」

ふるふると少女は首を振り、

「知ってしまえばただではすみません。お見受けしたところ、あなた達は駆け出しの冒険者様たち。この事態をおさめることは無理でしょう」

「そ、そんなことないわよ!」

「そりゃそうだな」

…………。

「って、かーくん! もー」

いや、事実だし。

「だが、他に頼る当てでもあるのか?」

「はい」

少女は力強く頷き、

「勇者パーティーに会いたいと思っています」

そうはっきりと言ったのである。



「行っちゃったけど、良かったの、かーくん?」

「さあなあ」

「さあなぁ、って……」

「命をかけて何かをしようとしてるやつを中途半端に止めるべきじゃあ、ないだろう?」

ため息をつきながら言った。

「命って……。あんな子供が……」

「いいや、あれは王女だろう」

「……へ?」

アルテノの動きが止まる。

「お、王女? 王女って、あの王女?」

お姫様?

そうだが。

カノユキは簡単に頷いた。

まじかー。ていうか、そんなの見て分かるものなの?

さてな。

カノユキは後頭部に手を当てて枕にしながら、

「だが、話しぶりや物怖じしない態度を見てれば、まあ、多分そうなんじゃないか?」

「へー、ちゃんと見るとこ見てるんだ」

んー、とカノユキは考えてから、

「お前が節穴なだけだろう?」

「なにをう!」

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