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8.義理の弟から嫌われるよう頑張ります!
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「アイリーン、ケガはもう大丈夫なのかい?」
お父様が心配そうにおっしゃった。でも、元々ケガはかすり傷程度で大したことなかったので、正直暇を持て余しているような状態だった。とはいえ、こうやって心配してくれる優しいお父様には感謝しかないのだけど。
「はい。もう大丈夫です! 元々かすり傷なんですから。心配しすぎですわよ、お父様!」
「娘が拐かされて心配しない父親がいたら見てみたいものだね」
「あ、あははー」
私は焦りながら、笑ってごまかした。もちろん、さらった犯人たちが悪いのだが、貴族令嬢なのだからもっと身辺《しんぺん》には気を付けるべきだという暗黙の指摘を受けて、それについてはごもっともです……、といったところなのだ。
しかも、どうやら自覚はなかったのだけど、私は街中にいると嫌に目立つらしいのよね。やはり貴族だからだろうか。服装は一見華美には見えないものを着用している(でも実際はお父様が職人に仕立てさせた一流品なのだけど……)から、理由はよく分からないのだけども……。
「ともかく、今後は気を付けます」
「ぜひ、そうしておくれ。ああそれで、今日呼んだのは一つお願いごとがあってね」
お願い事? 私は首を傾げる。お父様が私にお願いだなんて珍しい。もちろん、どんなお願い事でも、ほかならぬお父様の依頼なら御受けするつもり……
「実はバスクが午後から来るらしい。少し相手をしてあげてくれないか?」
「……」
「アイリーン?」
「忘れてた!!!!!!」
「うわっ⁉」
私は突然大声を上げてしまい、お父様は驚かれた。
「い、いきなりどうしたんだい?」
お父様はずり落ちかけた椅子に座り直しながら、続きを話す。
「義理の弟のバスクが来るのがそんなに驚くことだったのかい? もちろん、午後というのは少し急だったかもしれないね。何せ久しぶりの再会だ」
「お、おほほほ。すみません。お父様。そうなんです。久しぶりだったので、驚いたのですわ。とても嬉しいです」
「そうかそうか。アイリーンならそう言ってくれると思っていたよ。父さんは大事な会議があってね、すまないが頼んだよ」
私は一生懸命微、笑みを顔面に貼り付けたまま、書斎を後にしたのだった。
そして、自室に帰ってから、
「第3の裏切り者! 許すまじ!!」
と叫んだのであった。
さて、私がそんな風に叫んだのには訳がある。そう、心変わりして私を裏切った男のうちの一人が、実はこの義弟のバスクなのである。
バスクは元々、お父様の親友の子爵令息だったのだけど、その子爵様と奥様が急逝してしまった。まだ10歳だったバスクの他には跡取りもいなかったため、一旦、お父様のご温情で、公爵家の養子として引き取ったのである。ただ、それは一時の処置というのが実態で、公爵家で領地経営の方法や武芸の訓練、社交のマナーなどを一通り学んだ後、子爵家へ再び戻り家督を継ぎ、領地を経営をする予定であった。
よって、今はかりそめの姉弟関係であり、彼は義弟ということになる。また、普段は子爵領にいて、公爵家から派遣された教育係の手を借りながら、領地経営を学んでいるのだ。
そんなバスクは最初の頃は人見知りな性格で、なかなか打ち解けられなかったのだが、私たち家族が何度も粘り強く接しているうちに、次第に打ち解けて本当の家族の様になれたのだ。
そして、前世では、無事にバスク子爵として、公爵家から離れた後に、私のことをこっそりとだが「ずっと好きだった」と告白してきたのである。もちろん、既に王太子殿下と婚約関係にあった私にはその愛を受け入れることは出来なかったし、それはバスクも分かっていた。バスクはそれでも「思うだけなら自由」と言って、秘めた思いをずっと心にとどめておくことを誓ったのだった。
それが前回のルートだったわけだけど……、
「永遠の愛とか誓っておきながら、心変わりしてるし! 絶対許すまじ!!!!」
いや、もちろん振ったから、浮気とかではないけど、あれだけ私に愛を囁いていながら、ミーナリア=スフィア子爵令嬢になびいて、私を異国の地へ追放することに賛同したのだから、信じられない!
よって、答えは簡単。
キース王太子殿下やクライブ副騎士団長と同じく、絶対に私を好きにならないように振る舞う! ていうか嫌われるようにしよう! 前回のルートでは何くれと世話を焼き、優しくしてしまった。それをやめて、いやむしろ嫌われるようにすれば、私を好きになることもなく、よって裏切られることもなく、死亡ルート回避につながる! 私の本当の自分の人生を取り戻すためにも、この対応は必要不可欠だ!
「よーし、一生懸命、嫌われるぞ、おー!!」
私は自室で拳を天高くつきあげたのであった。
お父様が心配そうにおっしゃった。でも、元々ケガはかすり傷程度で大したことなかったので、正直暇を持て余しているような状態だった。とはいえ、こうやって心配してくれる優しいお父様には感謝しかないのだけど。
「はい。もう大丈夫です! 元々かすり傷なんですから。心配しすぎですわよ、お父様!」
「娘が拐かされて心配しない父親がいたら見てみたいものだね」
「あ、あははー」
私は焦りながら、笑ってごまかした。もちろん、さらった犯人たちが悪いのだが、貴族令嬢なのだからもっと身辺《しんぺん》には気を付けるべきだという暗黙の指摘を受けて、それについてはごもっともです……、といったところなのだ。
しかも、どうやら自覚はなかったのだけど、私は街中にいると嫌に目立つらしいのよね。やはり貴族だからだろうか。服装は一見華美には見えないものを着用している(でも実際はお父様が職人に仕立てさせた一流品なのだけど……)から、理由はよく分からないのだけども……。
「ともかく、今後は気を付けます」
「ぜひ、そうしておくれ。ああそれで、今日呼んだのは一つお願いごとがあってね」
お願い事? 私は首を傾げる。お父様が私にお願いだなんて珍しい。もちろん、どんなお願い事でも、ほかならぬお父様の依頼なら御受けするつもり……
「実はバスクが午後から来るらしい。少し相手をしてあげてくれないか?」
「……」
「アイリーン?」
「忘れてた!!!!!!」
「うわっ⁉」
私は突然大声を上げてしまい、お父様は驚かれた。
「い、いきなりどうしたんだい?」
お父様はずり落ちかけた椅子に座り直しながら、続きを話す。
「義理の弟のバスクが来るのがそんなに驚くことだったのかい? もちろん、午後というのは少し急だったかもしれないね。何せ久しぶりの再会だ」
「お、おほほほ。すみません。お父様。そうなんです。久しぶりだったので、驚いたのですわ。とても嬉しいです」
「そうかそうか。アイリーンならそう言ってくれると思っていたよ。父さんは大事な会議があってね、すまないが頼んだよ」
私は一生懸命微、笑みを顔面に貼り付けたまま、書斎を後にしたのだった。
そして、自室に帰ってから、
「第3の裏切り者! 許すまじ!!」
と叫んだのであった。
さて、私がそんな風に叫んだのには訳がある。そう、心変わりして私を裏切った男のうちの一人が、実はこの義弟のバスクなのである。
バスクは元々、お父様の親友の子爵令息だったのだけど、その子爵様と奥様が急逝してしまった。まだ10歳だったバスクの他には跡取りもいなかったため、一旦、お父様のご温情で、公爵家の養子として引き取ったのである。ただ、それは一時の処置というのが実態で、公爵家で領地経営の方法や武芸の訓練、社交のマナーなどを一通り学んだ後、子爵家へ再び戻り家督を継ぎ、領地を経営をする予定であった。
よって、今はかりそめの姉弟関係であり、彼は義弟ということになる。また、普段は子爵領にいて、公爵家から派遣された教育係の手を借りながら、領地経営を学んでいるのだ。
そんなバスクは最初の頃は人見知りな性格で、なかなか打ち解けられなかったのだが、私たち家族が何度も粘り強く接しているうちに、次第に打ち解けて本当の家族の様になれたのだ。
そして、前世では、無事にバスク子爵として、公爵家から離れた後に、私のことをこっそりとだが「ずっと好きだった」と告白してきたのである。もちろん、既に王太子殿下と婚約関係にあった私にはその愛を受け入れることは出来なかったし、それはバスクも分かっていた。バスクはそれでも「思うだけなら自由」と言って、秘めた思いをずっと心にとどめておくことを誓ったのだった。
それが前回のルートだったわけだけど……、
「永遠の愛とか誓っておきながら、心変わりしてるし! 絶対許すまじ!!!!」
いや、もちろん振ったから、浮気とかではないけど、あれだけ私に愛を囁いていながら、ミーナリア=スフィア子爵令嬢になびいて、私を異国の地へ追放することに賛同したのだから、信じられない!
よって、答えは簡単。
キース王太子殿下やクライブ副騎士団長と同じく、絶対に私を好きにならないように振る舞う! ていうか嫌われるようにしよう! 前回のルートでは何くれと世話を焼き、優しくしてしまった。それをやめて、いやむしろ嫌われるようにすれば、私を好きになることもなく、よって裏切られることもなく、死亡ルート回避につながる! 私の本当の自分の人生を取り戻すためにも、この対応は必要不可欠だ!
「よーし、一生懸命、嫌われるぞ、おー!!」
私は自室で拳を天高くつきあげたのであった。
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