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3話
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爽やかな風が吹き、木の葉がそよそよと揺れる。小枝に止まる小鳥の囀りが、穏やかな昼下がりを彩っていた。
そんな公園に、剣や鎧を身に纏った場違いな少女が3人。それは紛れもなく、レリア達であった。
「さて、これからどうしよっか?」
「どうするも何も、もう帰るしかないんじゃないっスか?」
悩むレリアに対し、フリージアはこれ以上なく単純明快な答えを返した。どうやらその答えはレリアに求められていなかったらしく、シカトされてしまったが。
「隊長がこの程度で諦めるわけないでしょ……ですよね、隊長?」
「うん、今回の件は個人的にかなり興味があってさ。もう少し自分で探ってみたいな」
オルレアの方は、流石に長い付き合いなだけあって、レリアがこの程度で諦めない事も織り込み済みである。彼女は次のプランを用意していた。
「屋敷に入れなくてもやれる事はあります。まずは近所の方に聞き込みをして、情報を集めるべきでは?」
「まあ、それがセオリーなんだろうけど……ふむ、どうにかして捜査に加われないかなあ」
「流石にそれは無理っスよ。関係者の手引きでもあるんなら別っすけど……」
当然、そんなものはない。唯一チャンスがあった階級でのゴリ押しも通用しなかった今、まともに捜査に加わる手段は皆無だ。
一行がどうしたものかと悩んでいた、その時。
「あんたら騎士だろ? こんなとこで何してんだ……?」
3人が声のした方を見る。そこには、燃えるように真っ赤な髪の快活そうな少女が居た。
真っ赤な髪と瞳、派手なイヤリングとほんの少し見える隈はやんちゃであることを想起させる。レリアが普段関わりを持たない手合いであった。
(でもこの娘、見覚えがある気がする……)
「あたしはフレイツィヒ。呼びにくい名前だから気軽にフレイって呼んでくれ。あんたらは?」
「私達は第六騎士団ローゼライ区担当隊所属の騎士だよ。私は隊長のレリア。こっちは部下のオルレアとフリージア」
「オルレアと申します。以後お見知り置きを」
「どうもっス!」
フレイに気を取られて気付かなかったが、彼女の少し後ろには1人の女性が立っている。黒髪の美しい、上品な女性だった。レリアが軽く会釈をすると、女性も同じように返した。
(同業者か。……多分、この少女の護衛かな)
それなりに腕利きであろう護衛も気になったが、本題の方が重要だ。
お互いに軽く自己紹介を済ませると、フレイは問いかける。
「それで、あんたらはどうしてこんなとこに?」
「第七騎士団長ファウルハイトの屋敷に、脅迫状が送られたって聞いてね。事件に興味が沸いたので来たんだけど……部外者はダメだってさ」
それを聞いて、フレイは驚く。後ろの護衛も、よく見ると少し驚いている様子だ。
「興味が沸いたから来たって……それで捜査に加われる方がおかしいだろ!」
「あと少しだったんだがね」
「あと少しでいけたのかよ。そんなんでうちの警備平気なのか?」
呆れながらも、フレイは笑みを見せる。騎士の常識では測れないレリアの行動は、すっかり彼女の気を良くしたようだった。
レリアの方はフレイの一言が気になったようで聞き返す。
「うちの警備と言ったか? 君、いったい……?」
「あ、名前しか言ってなかったもんな、ごめんごめん」
先ほどの話が余程面白かったのか、フレイはまだ笑いながら告げる。
「あたしはフレイツィヒ・ゾンネ。なんたら団長のファウルハイトってのは、あたしの親父だよ」
「……ファウルハイト団長のお子さんだったのか」
レリアはまさか、渦中の騎士団長の娘と出会うとは思っていなかった。
少し驚きつつも、すぐに意識を切り替える。
(彼女の口利きがあれば、屋敷に入れるかもしれないな……)
「それで、どうかな。私達も捜査に加えてもらえない? 決して損はさせないぞ?」
レリアがそう言うと、フレイの後ろに立っていた護衛が口を挟む。
「レリア殿……幾ら何でもそれは……越権行為も良いところです。ですよね、フレイ様?」
「面白そうだし、良いんじゃね?」
想定外の返事に、護衛の騎士はぽかんとする。あっさりと許可を貰えたレリアの方も、少し拍子抜けであった。
「ど、どうしてですフレイ様? こんな何処の誰とも分からないようなやつらに……」
「あたし、昔このレリアって騎士は見た事あるんだよな。この人めっちゃバリバリ仕事してたんだよ」
「そ、それだけ!?」
「おう、そんだけ」
肩をがっくり落とす護衛を横目に、レリアはフレイに問いかける。
「やはりそうか。何処かでフレイと会った気がしたんだ。それが何なのかは覚えていないんだけど……君は覚えてないか?」
「あー……あれ、何だったかなあれは……ご、ごめん、思い出せねーや!」
「……そっかあ」
フレイは少し目を泳がせた後、申し訳なさそうにそう答えた。だが、レリアはそれが嘘だと思った。一個人の仕事ぶりを覚えている程記憶が鮮明なのに、それが何故だったか忘れるとは考えづらいのである。
(何か誤魔化したい事情でもあるのかな?……ああ、騎士団の世話になった、って事か)
少し考えれば見当がついた。いくら団長の娘とはいえ、一般人だ。騎士団に用事があるということは、何か犯罪に関する件で訪れた可能性が高い。
(この子、やんちゃそうだからな。過去に何か微罪か何かで捕まったのかな?)
そうだとすれば、誤魔化したがる事情も分かる。無理に問いただす必要もないので、レリアは下手につつかないことにした。
「気にする事ないよ、私も思い出せないんだから」
するとやはり、フレイはホッとした顔になった。
「そっちこそ気にすんなよ。じゃあ、行こうぜ」
ずんずん進むフレイと、それに付いていく護衛の騎士。さらにその後ろから付いていくフリージアは、2人を見て悩ましい表情を浮かべていた。
「フリージア、どうかしたの?」
「あ、たいちょー。いや、大したことじゃないっス。なんかあの騎士、見覚えがあるような気がして……」
「……ふむ」
フレイの護衛は、立ち振る舞いから見るに実力がある騎士だ。騎士団の中でも、名の知れた存在なのかもしれない――レリアはそう思った。
そんな公園に、剣や鎧を身に纏った場違いな少女が3人。それは紛れもなく、レリア達であった。
「さて、これからどうしよっか?」
「どうするも何も、もう帰るしかないんじゃないっスか?」
悩むレリアに対し、フリージアはこれ以上なく単純明快な答えを返した。どうやらその答えはレリアに求められていなかったらしく、シカトされてしまったが。
「隊長がこの程度で諦めるわけないでしょ……ですよね、隊長?」
「うん、今回の件は個人的にかなり興味があってさ。もう少し自分で探ってみたいな」
オルレアの方は、流石に長い付き合いなだけあって、レリアがこの程度で諦めない事も織り込み済みである。彼女は次のプランを用意していた。
「屋敷に入れなくてもやれる事はあります。まずは近所の方に聞き込みをして、情報を集めるべきでは?」
「まあ、それがセオリーなんだろうけど……ふむ、どうにかして捜査に加われないかなあ」
「流石にそれは無理っスよ。関係者の手引きでもあるんなら別っすけど……」
当然、そんなものはない。唯一チャンスがあった階級でのゴリ押しも通用しなかった今、まともに捜査に加わる手段は皆無だ。
一行がどうしたものかと悩んでいた、その時。
「あんたら騎士だろ? こんなとこで何してんだ……?」
3人が声のした方を見る。そこには、燃えるように真っ赤な髪の快活そうな少女が居た。
真っ赤な髪と瞳、派手なイヤリングとほんの少し見える隈はやんちゃであることを想起させる。レリアが普段関わりを持たない手合いであった。
(でもこの娘、見覚えがある気がする……)
「あたしはフレイツィヒ。呼びにくい名前だから気軽にフレイって呼んでくれ。あんたらは?」
「私達は第六騎士団ローゼライ区担当隊所属の騎士だよ。私は隊長のレリア。こっちは部下のオルレアとフリージア」
「オルレアと申します。以後お見知り置きを」
「どうもっス!」
フレイに気を取られて気付かなかったが、彼女の少し後ろには1人の女性が立っている。黒髪の美しい、上品な女性だった。レリアが軽く会釈をすると、女性も同じように返した。
(同業者か。……多分、この少女の護衛かな)
それなりに腕利きであろう護衛も気になったが、本題の方が重要だ。
お互いに軽く自己紹介を済ませると、フレイは問いかける。
「それで、あんたらはどうしてこんなとこに?」
「第七騎士団長ファウルハイトの屋敷に、脅迫状が送られたって聞いてね。事件に興味が沸いたので来たんだけど……部外者はダメだってさ」
それを聞いて、フレイは驚く。後ろの護衛も、よく見ると少し驚いている様子だ。
「興味が沸いたから来たって……それで捜査に加われる方がおかしいだろ!」
「あと少しだったんだがね」
「あと少しでいけたのかよ。そんなんでうちの警備平気なのか?」
呆れながらも、フレイは笑みを見せる。騎士の常識では測れないレリアの行動は、すっかり彼女の気を良くしたようだった。
レリアの方はフレイの一言が気になったようで聞き返す。
「うちの警備と言ったか? 君、いったい……?」
「あ、名前しか言ってなかったもんな、ごめんごめん」
先ほどの話が余程面白かったのか、フレイはまだ笑いながら告げる。
「あたしはフレイツィヒ・ゾンネ。なんたら団長のファウルハイトってのは、あたしの親父だよ」
「……ファウルハイト団長のお子さんだったのか」
レリアはまさか、渦中の騎士団長の娘と出会うとは思っていなかった。
少し驚きつつも、すぐに意識を切り替える。
(彼女の口利きがあれば、屋敷に入れるかもしれないな……)
「それで、どうかな。私達も捜査に加えてもらえない? 決して損はさせないぞ?」
レリアがそう言うと、フレイの後ろに立っていた護衛が口を挟む。
「レリア殿……幾ら何でもそれは……越権行為も良いところです。ですよね、フレイ様?」
「面白そうだし、良いんじゃね?」
想定外の返事に、護衛の騎士はぽかんとする。あっさりと許可を貰えたレリアの方も、少し拍子抜けであった。
「ど、どうしてですフレイ様? こんな何処の誰とも分からないようなやつらに……」
「あたし、昔このレリアって騎士は見た事あるんだよな。この人めっちゃバリバリ仕事してたんだよ」
「そ、それだけ!?」
「おう、そんだけ」
肩をがっくり落とす護衛を横目に、レリアはフレイに問いかける。
「やはりそうか。何処かでフレイと会った気がしたんだ。それが何なのかは覚えていないんだけど……君は覚えてないか?」
「あー……あれ、何だったかなあれは……ご、ごめん、思い出せねーや!」
「……そっかあ」
フレイは少し目を泳がせた後、申し訳なさそうにそう答えた。だが、レリアはそれが嘘だと思った。一個人の仕事ぶりを覚えている程記憶が鮮明なのに、それが何故だったか忘れるとは考えづらいのである。
(何か誤魔化したい事情でもあるのかな?……ああ、騎士団の世話になった、って事か)
少し考えれば見当がついた。いくら団長の娘とはいえ、一般人だ。騎士団に用事があるということは、何か犯罪に関する件で訪れた可能性が高い。
(この子、やんちゃそうだからな。過去に何か微罪か何かで捕まったのかな?)
そうだとすれば、誤魔化したがる事情も分かる。無理に問いただす必要もないので、レリアは下手につつかないことにした。
「気にする事ないよ、私も思い出せないんだから」
するとやはり、フレイはホッとした顔になった。
「そっちこそ気にすんなよ。じゃあ、行こうぜ」
ずんずん進むフレイと、それに付いていく護衛の騎士。さらにその後ろから付いていくフリージアは、2人を見て悩ましい表情を浮かべていた。
「フリージア、どうかしたの?」
「あ、たいちょー。いや、大したことじゃないっス。なんかあの騎士、見覚えがあるような気がして……」
「……ふむ」
フレイの護衛は、立ち振る舞いから見るに実力がある騎士だ。騎士団の中でも、名の知れた存在なのかもしれない――レリアはそう思った。
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