窓際騎士レリアの捜査記録

スライム小説家

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31話

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 その後もしばらく、ベリルの話は続いた。アコナイトの頑張りからか、リハビリはすぐに終わったこと。ベリルが自身のつてで今の劇団を紹介したこと。そして、その劇団に入ってからのアコナイトの快進撃……
 そして今も、ベリルとアコナイトとの交友関係は続いていること。それらの話は聞いていて飽きなかった。中でも一番レリアの興味を引いたのは、ベリルによるアコナイトの女優としての評価だ。

「さっきも言ったけどね? アコナイトの負の感情の演技は本当にすごいんだ。悲しみとか怒りとか……真に迫るものがある。あれは演技を超えて、もうその感情そのものだよ!」
「ほう。そういう演技が得意な女優というのは珍しいんじゃないか?」
「そうなんだよ! そういうところもアコナイトの魅力なんだけど……皆が注目するのは、彼女の歌声と可愛らしい見た目ばかり。なんだかなあ」

 ふと、列のそばに置かれた看板が目に入った。薄紫色の髪の、優しそうな女性が描かれている。ポップな絵柄も相まって、とても可愛らしい。おそらくこれが、世間一般がアコナイトという女優に抱く印象なのだろう。

(……ベリルの目には、アコナイトという女優の別の一面が見えているのだろうか)

 レリアがそんなことを考えているうちに、一行はどんどん前へと進んでいく。そしてついに、レリア達は劇場に足を踏み入れた。早速スーツを着た藤色の髪の女性がレリア達に話しかけてくる。

「チケットのご提示をお願いします」
「はい、これでいいよね」
「……関係者の方でしたか。どうぞごゆっくり」

 うやうやしく礼をすると、女性は別の客へと向かっていく。

「さて、それじゃあアコナイトに会いにいこっか」
「……今からか?」

 壁にかけられた時計を見る。劇が始まる一時間前である。普通に考えれば、本番直前の今は色々やる事があるだろう。台本の最後の確認、舞台道具の準備、緊張を落ち着ける為の時間……劇には詳しくないレリアにだって、それくらいの事は想像できる。

「へーきへーき。アコナイトもいつ来ても歓迎するって言ってたもん!」
「そうは言っても、流石にこのタイミングは……」

 いくらなんでも迷惑だろうとレリアは難色を示した。だが、フリージアはそうではないらしく。

「たいちょー、こういうのは思い立ったが吉日っスよ! ダメなら追い返されるだけだし、行ってみるっス!」
「貴女ねえ……はぁ」

 いつもは変なことをするのはフリージアだけだ。その為レリアと概ねまともなオルレアで何とか抑えることが出来る。だが、今回は問題児が2人。しかもベリルは、権力的にも実力的にもフリージアより厄介だ。
 ベリルとフリージア。2人に押し切られる形で、レリア達はアコナイトが要るという控え室へと向かった。



 だが、肝心のアコナイトが控え室に居なかった。

「アコナイトが居ないっ!?」
「そうなんだよ、ベリルの姉御」

 ベリルと顔見知りらしい警備員によれば、アコナイトは数十分前に控え室を出て行ったらしい。

「最初はお手洗いか何かかと思ったんだが、全然戻ってこねえんだ。本番まで一時間切ったが、大丈夫なのかねえ」
「えー!? 困るなあ、それ。今会えなかったらホントに劇が始まる直前にしか会えないじゃん!」
「いや、普通に劇が終わった後にすれば良いじゃないか……」

 レリアの突っ込みを無視して、ベリルは警備員に問いかける。

「どこに行ったか分からない!? 最悪予想でも良いからさ!」
「いやあ、それがまったく……アコナイト様は普段こんな事しねえからなあ。どこ行ったんだかサッパリわからん」
「そんなぁ……」

 予測していなかった事態に、ベリルはがっくりと肩を落とした。そんなベリルを慰めようと、レリアが何か言おうとしたその時。

「……ベリルお姉さま? こんなところでどうしたの?」

 ふんわりとした、柔らかい声が背後から聞こえてきた。薄紫色の髪。真っ白なドレス。優しそうで、そして思ったよりもあどけない見た目。
 そこに居たのは、帝国一の女優であるアコナイト・ツォーンだった。
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